共同経営契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
共同経営契約書はなぜ必要か
共同経営契約自体は関係者間の口約束でも成立します。しかし、事業の遂行に支障をきたさないために、共通のルールは共同経営契約書として書面化するのが一般的です。
複数人が共同して経営すると、それぞれが得意とする業務を複数同時に遂行して、得意分野の適切な経営判断をして、創出したアイデアを持ち寄れます。
しかし、業務範囲や責任の所在および利益・損失の配分などにおいて不平等感が生じやすくもなります。小さなすれ違いを放置していると、それが亀裂に変わり、揉めごとやトラブルへと発展するかもしれません。事業においては将来のトラブルを最小限にするために、共同経営契約を必ず締結して誤解がないように認識を一致させておくべきです。
共同経営契約書の主な記載事項
共同経営契約書の主な記載事項は、以下のとおりです。
- 経営者名
- 事業内容
- 事業所の所在地
- 契約期間
- 業務の分担
- 利益・損失配分
- 権限
- 契約解除
- 契約解除時の精算
経営者名
共同経営では、資本金を出資し合うもしくは単独出資で法人を設立するのか、個人事業者のまま集合体のような形態をとるのか、その決定により経営者名の記載方法が異なります。
一般的には、出資比率の最も大きい者が法人の最終意思決定権や代表権を持つことになります。つまり、意見が割れた場合の最終判断や経営方針の策定・変更などの舵取りの権限は、原則として出資比率と同じです。
取引する第三者から最高経営者が誰なのか客観的にわかりやすくするために、経営者名は明確にしておきましょう。
事業内容
事業の内容を簡潔かつ具体的に列記しますが、将来起こす可能性がある事業内容についてもあらかじめ盛り込んでおくのが一般的です。
将来的に共同経営契約書と定款や商業登記の内容とを一致させることを、融資を受ける金融機関や許認可を受ける行政機関から課される可能性があります。ただし、事業目的の追加や修正のために商業登記や定款を変更するには、数万円など手続き費用がかかります。
将来的に事業範囲を拡大する可能性があるなら記載しておくとよいでしょう。事業内容は同業他社を参考にするとよいのですが、あれもこれもと迷う場合には、今後5年以内に着手するであろう事業に絞るなどの基準で選ぶのも1つの方法です。
項目の最後は「前各号に附帯または関連する一切の事業」として記載事項の内容に幅を持たせておくと、カバーする範囲が増えるためおすすめです。
事業所の所在地
対外的な事業所の所在地を記載します。実際の就業場所は、共同経営者がそれぞれ別のオフィスで行っても問題ありません。ただし定款や商業登記の記載と一致させる必要がないか、作成前にあらかじめ調べておきましょう。
契約期間
契約期間に関しては、下記のように決めて記載します。
「共同経営契約の期間を定め、契約期間満了後に双方から異議が出なければ自動で更新する」
期間内でも当事者の一方側から解約前に一定期間を設けて解約(離脱)ができる場合、その規定もこの条項もしくは契約解除の条項で記載しておきます。
とくにジョイントベンチャー契約では、永続的な関係維持ではなく目的達成までの期間に限る場合が多いため、契約期間をあらかじめ定めておくことは重要な要素です。
業務の分担
誰がどの業務をどの範囲まで行うのか、また決定権限や事業責任をどの範囲までもつのかを明確に記載します。
共同経営は、経営の知識や経験を出し合って、自分にないものを補い合えるのがメリットです。しかし、「言わなくても相手がわかってくれるだろう」「自分の業務外もしくは責任外だろう」と、お互いの認識がすれ違えば悪影響が出てしまいます。
基本的には共同経営契約書で詳細に規定しますが、足りない場合には覚書や基本契約書などで補完するとよいでしょう。
利益・損失配分
共同経営関係では「お金」に関する見解の相違が、揉めごとに発展しやすいです。事業は利益を最大化させることが目的であり、各経営者も自分の売上や利益を最大化して、損失をできるだけ抑えようと考えるからです。
そのため、利益配分や損失負担をどのように分けるのかを明確にしておくことは最重要事項といえます。どちらか一方に業務の負担や責任が偏れば、それが不平等感や不信感に変化して亀裂を生みます。そうならないためにも、業務の重要度や負担割合に対して利益・損失配分が公平になるように、慎重に設定しましょう。
権限
法人の設立をともなう共同経営契約における公平な権限の決め方の一つは、当事者間の出資比率との連動です。たとえば、AとBの出資口数が6:4なら権限も6:4に振り分けると公平になり、最終的な経営判断もA側に偏重させられます。
契約解除
どのような場合に、共同経営者の一方から共同経営契約を解除できるのかの規定です。
共同経営関係は、当事者間の信頼関係という土台の上に、事業協力や利益の分担があります。もしも信頼関係を維持できない状況になった場合に、どのような手続きで関係を解消もしくは自分だけ離脱できるか、事前に取り決めをしておくことが非常に重要です。もちろん、穏便で平和的な関係解消の場合も同様です。
相手が不満を抱く状況で一方的に関係を解消すると、遺恨が残り賠償金の請求や訴訟など余計な問題を誘発します。そうならないために、関係が終了する明らかな状況を規定しておき、然るべき契約解除通告期間を設けて、きれいに解消できる方法を規定しておきましょう。
契約解除時の精算
共同経営関係の解消や一部の者の離脱の際に、それにともなう必要費や損害の補填などの精算方法はどのようにするのかを規定します。
この場合に、当事者間の債権債務関係や、共同経営者の相手方もしくは顧客への損害賠償などの「金銭」問題と、それ以外の「情報漏洩」や「競業避止」および「収益権や特許技術」問題などの精算方法をあらかじめ設けておくことが大切です。
共同経営契約書のひな形(テンプレート)
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