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社宅使用契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から236日前のものです)
会社が社員に社宅を提供する場合には「社宅使用契約書」を作成して締結するときは、一般的な賃貸借契約における賃貸人と賃借人との関係とは少し異なります。そのため、社宅使用契約書の作成においては、賃貸借契約からどのような事項を流用して、どのような内容を付加するべきかを理解しておくべきです。 本記事では、社員への社宅の提供時に使用する社宅使用契の内容や税務について紹介し、主な記載事項や作成時の注意点について解説しています。記事の最後にはすぐに使えるひな形がダウンロードできます。

社宅使用契約書とは

企業が社宅に社員を入居させる際に、社宅を提供する会社と社宅に入居する社員が交わす契約を社宅使用契約といい、その契約を書面化したものが社宅使用契約書です。

そもそも社宅には、企業が所有する不動産に社員が居住する場合と、企業が一般の不動産を借りて、そこに社員が居住する場合(借り上げ社宅)があります。

借り上げ社宅には、すでに企業が賃貸契約を結んでいる物件に社員が入居する場合や、社員が気に入った物件を企業が賃借人となって賃貸契約を締結(法人契約)する場合、または社員が個人契約をして法人から住居手当をもらう場合などがあります。

社宅は社員の福利厚生を目的とする場合が多く、社員が賃料を負担する社宅の場合でも、一般的な賃貸物件と比較して社員の負担額が少なくなるよう設定するのが一般的です。自分で賃貸物件を借りるよりも少ない賃料で暮らせるため、実質的に社員の可処分所得が増えることで、社員の満足度が上がり離職率が下がる効果もみられます。

ちなみに民法の規定では、相応の賃料(周辺相場並の賃料)を支払って不動産を借りる契約は「賃貸借契約」であり、賃料を支払わずに不動産を借りる契約は「使用貸借契約」という分類です。

「社宅使用契約書」という名称から、賃料を支払わない使用貸借契約かと思われがちですが、使用貸借契約に限られるわけではなく、契約の中身は賃貸借契約である場合もたくさんあります。つまり、契約書のタイトルが「賃貸借契約書」かどうかより、社員が負担する賃料の額によって、実質的な契約の性質を判断すべきです。

社宅の税務上の取扱い

社員の給与には源泉所得税が課税されますが、社員が社宅使用料として自己負担する金額が一定の計算式で求める「賃貸料相当額」の50%以上であれば、賃貸料相当額の全額が非課税です。一方で、社員の自己負担額が50%未満であれば、賃貸料相当額と自己負担額の差額は給与として支給したものと見なし、源泉所得税を課税します。

実例を挙げると、実際の賃料が15万円、一定の計算で得た賃貸料相当額が10万円とします。この源泉所得税の課税判定においては、実際の賃料額は問題になりません。

(1)社員の自己負担額が7万円(賃貸料相当額の50%以上)の場合
賃貸料相当額10万円 - 自己負担額が7万円 = 差額3万円も源泉所得税は非課税

(2)社員の自己負担額が4万円(賃貸料相当額の50%未満)の場合
賃貸料相当額10万円 - 自己負担額が4万円 = 差額6万円に源泉所得税が課税される

このように、社宅における社員の自己負担額の設定によっても会社の負担税額は増減しませんが、社員の実質給与は増やせます。自己負担金額を上手に設定すれば、社員の満足度が上げられます。なお、全ての社員が公平に経済的利益を受けられるように、社宅制度には「社宅規程」の整備が必要です。

社宅使用契約書の主な記載事項

社宅使用契約書の主な記載事項とその意味や記載方法について解説します。

物件情報

社宅として社員へ提供する物件を特定する情報(所在、建物の名称、家屋番号、床面積など)を明記します。借り上げ社宅の場合は、家主と会社が交わす賃貸借契約書の記載を転記することになります。ただし、前述の社宅における賃貸料相当額の非課税枠を使うことを想定して、賃貸物件の登記事項証明書(登記簿謄本)の記載内容と相違がないかを確認し、適切な記載にしておきましょう。

使用料

社宅使用料を定め、その金額を明記します。多くの場合に、社員が実際に支払わずに給与からの天引きによって会社は社員から社宅使用料の支払を受けます。ただし、社員からの振込による場合には、支払期日、振込口座の情報、振込手数料の負担区分まで明記しておきましょう。

また、月の途中で入居または退去する場合のために、使用料は日割計算なのか月割計算なのかも記載する必要があります。

利用義務

単身用の社宅なら「原則として第三者の同居を禁ずる」とする場合がありますが、扶養家族との同居を想定して下記のような記載にします。

社宅に社員とともに居住できる者は、原則として以下の者に限る。

(1)社員の配偶者もしくはパートナー
(2)社員の子
(3)社員本人もしくは配偶者(パートナー)の親


ただし、同居人が変更する場合には、あらかじめ会社に届け出ること。

退去・明渡し

利用者が社宅を退去する状況(居住できなくなる理由)を下記のように明記します。

社宅利用者は下記のいずれかに該当する場合、社宅から退去しなければならない。

(1)解雇、退職、死亡により、社員ではなくなった場合
(2)本契約条項に違反した場合
(3)その他、会社が貸与の取消を妥当と判断した場合

損害賠償

利用者の故意過失によって社宅の内装や設備などを損壊した場合に、会社が利用者に対して補修費に加え損害賠償請求ができる旨を記載します。

原状回復

社宅の退去時に、利用者が社宅に入居した時点の原状に回復する義務があることを記載します。

一般的には、会社の社宅担当もしくは社宅管理代行者が、荷物がなくなった部屋を入居者とともに確認して、破損があれば原状回復費として給与などで精算します。

禁止事項

居住や使用に関する詳細なルールは、社宅使用契約書とは別に「社宅使用規則」として下記の内容を規定しておくのが一般的です。

  • ゴミ出し
  • 駐車場や駐輪場の利用
  • 騒音防止
  • 共用部の利用
  • 社宅管理の当番
  • ペット飼育
  • 転貸(又貸し)
  • 増改築
  • 可燃引火物の取扱い
  • 近隣住民への配慮

また、「会社からの度重なる指摘にもかかわらず、社員が上記の違反を改善しない場合には、会社は社員へ社宅からの退去を命じることができる。」としておくとよいでしょう。

社宅使用契約書作成時の注意点

社宅使用契約書作成では、社員同士の不公平感の排除や社宅使用料の負担額について注意しましょう。

不公平感の排除

全社員に社宅を提供できないことがあるため、社員によっては不公平感を抱く場合があります。そうならないために「社宅の提供が受けられる者の基準」を社宅規程および社宅使用契約書に定めておくことが大切です。たとえば「独身者」や「異動赴任地で住宅の確保が困難な者」など、該当する人物の条件を明確にして、同居可能な配偶者や子供なども記載します。

社宅使用契約書作成では、どうすれば社宅に関して社員同士が不公平にならないかを考慮することが大切です。例えば「自宅からの通勤が困難な者」として距離や公共交通の移動時間等の基準を補足として加える、また「希望者多数の場合には抽選で決定する」など、明確な基準を提示して、全社員が納得しやすいルールにすることが望ましいでしょう。

使用料負担額の設定

社員の使用料負担額は、社員の実質的な手取り給与にも影響します。手取り給与金額や手厚い福利厚生条件は、既存社員の満足度やこれから入社する方への対外的なアピール材料にもなるため、周辺事情を考慮しながら使用料を設定することが大切です。

社員の源泉所得税や会社側の節税に関係する内容は自己判断せず、税理士や社会保険労務士に相談して、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

社宅使用契約書のひな形(テンプレート)

社宅使用契約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、社宅使用契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

社宅使用契約書のひな形(テンプレート) 社宅使用契約書のひな形(テンプレート)

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