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保守契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から209日前のものです)
保守契約とは、設置した機器の定期点検や不具合の緊急対応および補修や、業務システムの不具合の解消やサーバーメンテナンスなどに関する契約のことです。 保守契約は、パソコンやコピー機などの一般的な機器の保守でも多用される契約形態で、マンションやビルのエレベーターも必ず保守契約を契約して遠隔監視や緊急対応が取れるようにしています。 本記事では、保守契約の概要や対象を紹介し、保守契約に記載すべき事項について解説しています。記事の最後では、すぐに使える保守契約書のひな形がダウンロードできます。

保守契約書とは

保守契約とは、正常な動作のために保守やメンテナンスが必要なものに対して、不具合が起こった場合の対処方法や、日々の点検や調整などを一定の頻度で行うと約束した契約です。それらを書面にしたものが保守契約書であり、業務の委託者と受託者双方が1通ずつ保有します。

保守契約の対象としては、摩耗や劣化など金属疲労やグリスの注油および微調整が必要な機械系(工場の生産ラインの機器やエレベーターなど)やアップグレードし続ける業務システムのソフトウェアなどです。

契約書のタイトルは「業務委託契約書」「ライセンス保守契約書」「ソフトウェア保守契約書」など、締結する企業や契約内容によって異なります。

保守契約書の主な記載事項

保守契約書の主な記載事項とその内容を例文とともに解説します。

業務範囲

業務範囲とは、保守契約の受託者が行う保守業務の内容や責任をもつ範囲を定めた条項です。もしも、保守業務の範囲を明確に示していない場合には、受託者が通常行うべき保守作業を怠っていたとしても、それが契約違反であると判断することができません。

たとえば機械保守契約において「定期点検」するとしても、どの程度の頻度で実施するのか、何を対象に実施するのかを決めておかないと、双方が点検内容や作業時期について把握できません。また、点検の周期はメーカーの部品耐用年数や使用頻度などによって点検周期が長いものと短いものがあり、それに応じて点検項目も増減します。

そのため、点検の年間計画表や点検の内容などを網羅した仕様書を作成して、それ以外の保守対応の受付時間や休日の設定なども明確化しておくべきです。なお、条項については下記のようになります。

本契約に基づく本保守業務の範囲は、以下のとおりとする。
(1)不調対応:保守対象機器に故障その他によって不具合が発生した際の原因究明および復旧作業
(2)瑕疵対応:保守対象機器の不具合もしくは破損や故障があった場合の修補、必要に応じた部品交換および代替機の貸し出し
(3)監視実施:保守対象機器の遠隔モニタなど(遠隔モニタ結果の報告は一定期間ごとに行う)
(4)定期点検:保守対象機器の定期点検、ただし頻度や範囲については別添の仕様書に記載する
(5)顧客対応:保守対象機器に関する問い合わせへの回答および有益情報の提供

保守対象

保守対象の機器もしくはその付属物を詳細に特定します。対象機器などが多い場合には、契約書の条項に書かずに「対象機器の機種および設置場所などは別添の目録を参照する」としておくとよいでしょう。

機種 設置台数 設置場所
〇〇製作所
AB-CD-111−111
3台 本社1階 総務部総務課
〇〇製作所
AB-CD-222−222
2台 〇〇工場 1階 事務所
株式会社〇〇
EEE-FGH-34-56
4台 3台:〇〇支店
1台:〇〇営業所

上記の表のように保守対象の機器の内容を挙げるだけでなく、揉めやすく認識のずれが起こりやすい付属機器や類似機器については「保守に含まない機器」として記載しておきます。保守契約の受託者が、不要な作業まで受けてしまわないためにも重要といえます。

保守対象の機器に付属する別の機器があっても保守契約の対象外になる場合には「対象外の機器の目録」として明確に切り分けておくとよいでしょう。

対応時間

保守業務の対応曜日や時間を明確にしたうえで、不具合対応窓口などの保守業務窓口への連絡方法を定めておきます。

保守対応の時間帯は、通常の営業時間内は保守契約の受託者へ直接連絡するものとし、営業時間外には緊急対応センターなどの時間外窓口を指定するなどがあります。下記は一例です。

  • 保守業務については、土日祝祭日や所定の休業日および年末年始期間を除く、平日の午前8時から午後7時まで提供するものとする。
  • 時間外の問い合わせについては緊急センターが一次対応し、翌日8時までに本保守担当窓口へ連携する。
  • 提供時間内に受け付けた問い合わせであっても、状況や内容などにより翌営業日以降に回答もしくは対応を再開する場合がある。

このように、保守業務の範囲はできるだけ具体的に特定しておくと安心です。時間外に対応した場合の条件(追加料金など)がある場合には、時間外料金の金額や精算方法についても明示するとよいでしょう。

対応方法

保守対応の方法について、委託者からの通報や問い合わせ経路は、電話、電子メール、Webサイトのチャットなどを示します。

エラーメッセージや症状に対応するトラブルシュートを、受託者から遠隔で指示を受けながら委託者自身が機器操作をして復旧させるのか、連絡即訪問により最速の復旧作業を施すのかを定めておきます。エラーメッセージや症状によって、2つの方法を使い分ける場合もあるでしょう。

委託者自身が一次対応する場合と受託者が訪問対応する場合とで料金が異なる場合には「即時訪問し即日復旧した場合には緊急対応費として〇〇円」など、設定している場合には必ず記載しておきましょう。

また、保守契約の受託者がさらに外部へ再委託することを認めるのかどうか、緊急時に限り認めるのかについても、取り決めがあれば記載します。一般的には、委託者が再委託を承諾した場合にのみ認められます。

料金・支払い

金銭トラブルなどで関係が悪化しないように、契約内容に応じた料金体系や、時間外や特別な対応時の別途料金、支払方法などを明確に記載しておきます。

たとえば「本保守作業の代金は作業実施ごとに金〇〇円とし、月末で集計したものを報告書で金額とともに委託者へ提示します。そして、翌月末までに振込によって支払うものとする」などとし、振込手数料負担についても具体的に記載するとよいでしょう。

また、受託者側に出張派遣費の規定があれば、通常の料金とは別に出張料や交通費として請求する旨も記載します。また、双方が合意した交換部品の単価があればそれも目録で明示するとよいでしょう。

免責事項

保守作業にミスがあり委託者の機器が故障して、生産ラインが止まって損害が発生した場合、受託者が賠償責任をどこまで負うかを明確にします。故障した機器の補修による現状回復や実損害額の補填などです。

一方で、双方の責任といえない理由による不具合や損害として、天災地変による機器の動作不良や停電があり、その場合には保守契約の受託者は何らの責任も負わないと規定しておきます。

秘密保持

社内業務システムの保守作業では、社内の者しか見ることのできない顧客の個人情報や委託者の本業に関する機密情報(特許技術や営業戦略や買収計画などのインサイダー情報)を目にする場合があります。

このような情報が外部へ漏れ出ることがないように、保守契約書や業務委託契約書には「秘密保持の条項と罰則」を設定して、お互いの背信行為を抑制します。

中途解約

保守契約の期間の途中で解約できます。その場合を想定して「書面をもって通知すれば、本契約を解約することができる。その場合には、解約通知を受領した日の1ヶ月後の応答日に本契約は失効する」などとしておきます。

そして、支払い済みの委託料を日割もしくは月割りで精算して返還する場合にはその旨や計算方法も付記します。

また、当事者のいずれかに「不渡り、破産、差押、破産、税金滞納処分、免許取消、反社会的勢力との関係」などがあれば、相手方に無催告で一方的に解約できるという解除規定も記載しておきましょう。

保守契約書に印紙は必要?

保守契約書は、契約内容が「民法でいう請負」に該当しなければ収入印紙の貼付が不要な非課税文書です。

ただし、受託者が依頼された業務を完了することを目的とする契約であれば請負とみなされる場合があります。その場合には「収入印紙税法における第2号文書」に該当し印紙税の納税が義務付けられる可能性があります。最終判断は、税務署が契約書を見て行うため、不明であれば税務署へ相談するとよいでしょう。

ちなみに、保守契約書が2号文書に該当する場合に、保守契約金額の規定が月額の場合には、契約期間が1年であるなら月額×12か月の金額が印紙税の計算根拠の「契約額」となります。

保守契約書のひな形(テンプレート)

保守契約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、保守契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

保守契約書のひな形(テンプレート) 保守契約書のひな形(テンプレート)


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