なぜペーパーレスに失敗するのか?実現しない企業にみられる特徴と理由とは
目次を閉じる
- ペーパーレス化とは
- ペーパーレス化の必要性
- SDGsや環境保護への取り組み
- DXやリモートワークの促進
- ペーパーレス化の現状
- ペーパーレス化の失敗例
- 電子文書を印刷してしまう
- 端末を使いこなせない
- 取り組みへの意欲が低い
- ペーパーレス化の成功事例
- 事例:自治体 H
- 事例:F社(IT業界 50人以下)
- L社(量販店 5,000人〜10,000人)
- ではなぜペーパーレス化が実現しないのか
- ペーパーレス化で効率が下がる?
- コスト上の問題
- ディスプレイの大きさの問題
- 従業員の理解がない
- ユーザーのITリテラシーの問題
- システム障害への不安
- 手書きでのメモがしにくい
- すぐ閲覧できない場合もある
- 一部電子化できない書類も
- 既存のオペレーションからの変更に対応できない
- ペーパーレス化のメリット
- 業務効率の向上
- コストの削減
- セキュリティの強化ができる
- バックアップの容易化
- 保管スペースが不要に
- 情報整理が簡単にできる
- ペーパーレス化のポイント
- 従業員の理解を得る
- 段階的導入を検討する
- タブレットのような身近な端末から導入してみる
- ペーパーレス化に一役買うサービスってどれ?
- メリットを理解してもらい、ペーパーレス化を成功させる
- BOXILとは
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、文字どおり「紙の利用を減らすこと」を指します。ビジネスにおいては、文書をデジタル化して保存や閲覧することをいいます。
近年クラウドサービスの浸透により、書類の電子化が進み、オフィスのペーパーレス化が進んでいる企業も多いのではないでしょうか。
ペーパーレス化について、メリット・デメリットも含め、詳しくはこちらの記事で解説しているので参考にしてみてください。
ペーパーレス化の必要性
ペーパーレス化がなぜ必要とされているのでしょうか。理由は主に次の2つです。
SDGsや環境保護への取り組み
ペーパーレス化の実現は、2015年に国連サミットで定められた世界的な目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」の一部を達成することにつながります。
紙の消費は森林の伐採を促し、環境破壊や地球温暖化につながります。森林は二酸化炭素を吸収し、温暖化防止する役割を担っている資源です。そのため、紙の消費を抑えることは、環境破壊や温暖化防止に間接的に貢献する行為と言えるでしょう。
行政でもSDGsの一環として手続きをデジタル化するとしており、2030年までの達成に向けて企業にも積極的な取り組みが求められています。
DXやリモートワークの促進
リモートワークを導入する企業も増えています。しかし、紙ベースに依存した業務フローを続けていてはテレワークを効率的に進められません。業務に必要な資料を入手するために出社する、申請や承認のためだけに出社するなど、ムダに出社を余儀なくされるケースもあるでしょう。
上記のような非効率的な業務フローを解消しDX化やテレワーク環境を整備するためにも、ペーパーレス化を進めることは不可欠です。
ペーパーレス化の現状
日本製紙連合会のデータによると、ITの発達により情報誌や新聞紙に代表される紙面でペーパーレス化は進みつつあります。
しかし、オフィス内で消費される紙の量は減っておらず、公益財団法人 古紙再生促進センターが2022年6月に発表した「オフィス発生古紙実態調査報告書」では下記のように記載されています。
機密文書(866 千トン)とシュレッダー紙(725 千トン)を合わせた排出量は、1,591 千トンとなっている
引用:公益財団法人 古紙再生促進センター「令和 3 年度 オフィス発生古紙実態調査報告書」(2024年3月4日閲覧)
なぜ日本でペーパーレス化が進まないのか、日本企業で失敗している事例を紹介します。
ペーパーレス化の失敗例
ペーパーレス化に失敗するよくある事例として、次のようなケースがあります。
- 電子文書を印刷してしまう
- 端末を使いこなせない
- 取り組みへの意欲が低い
電子文書を印刷してしまう
ある企業ではマニュアルや社内会議用の資料をペーパーレス化したことによって、大幅に削減することに成功しました。
しかし、従業員のペーパーレス化への取り組みが悪く、それぞれが利用するための資料の印刷をするため、会社に保管されていく紙は減っても消費される紙は減らない事態になりました。紙の消費が減らなければまったく意味がありません。
そのため、一見ペーパーレス化が成功しているように見えても数字で見ると何も変わっておらず、失敗している現状があります。
端末を使いこなせない
ペーパーレス化の推進には、新しいデジタル機器やシステムの導入が不可欠です。
しかし、ITリテラシーの低い社員が多いと、新しい機器やシステムを導入しても「使い方がわからない」「使いこなせない」といった問題が生じるようになります。すると、せっかくコストや時間をかけてシステムや端末を導入しても浸透せず、従来やり方に戻ってしまうのです。
ペーパーレス化の推進には、機器やシステムの導入が必須です。しかし、使い方から教育しなければ現場に浸透せず、失敗に終わってしまいます。
取り組みへの意欲が低い
ペーパーレス化への取り組みに対する意欲の低さも失敗につながります。
パソコンやタブレットに不慣れな方は、たとえデータ化して会議資料を配布しても「紙で見たい」と思うことが多いです。
また、ペーパーレス化の導入で業務のオペレーションが大きく変わるため、オペレーションが変わることに抵抗を抱く人や消極的な姿勢になる人も出てくるなど、現場から不満や反発の声が上がるケースもあるようです。
このように、システムを導入しても、ペーパーレス化の目的や重要性を現場が理解できなければ、ペーパーレス化は失敗してしまいます。
ペーパーレス化の成功事例
もちろん、ペーパーレス化を実現している企業もあります。実際にペーパーレス化につながるシステムを導入して成功した事例の、課題と導入後の効果を紹介していきます。
事例:自治体 H
東北にある人口およそ17万人の地方自治体Hの職員数は1,400人程度です。紙の使用量が大きな課題として認識されており、削減のためペーパーレス会議システムを導入しました。
自治体Hの事例ではコンピュータの更新時期を迎えていたこともあり、タッチディスプレイが使えて持ち運びにも適したデバイスへの刷新も実施します。
PDFに手書きで快適に書き込みができる製品を導入し、紙の使用量の大幅削減につなげられたようです。ペーパーレス会議の導入により、会議の質も向上する効果もありました。
事例:F社(IT業界 50人以下)
F社はスポーツクラブのマネジメントやITアプリの開発を手掛けています。
給与明細といった文書配布と、請求書や社内規則、各プロジェクトや契約情報などの文書ファイリングに、クラウドストレージ・ファイル共有サービスを導入しました。
クラウドストレージ・ファイル共有サービス導入により、 セキュアな情報共有とペーパーレス化が実現でき、情報漏えいの懸念が低減されたことを一番のメリットと捉えています。
L社(量販店 5,000人〜10,000人)
L社は全国で100以上の店舗を構えている、こだわりの生活雑貨を集めた店舗のチェーン展開をする企業です。
日本全国に新規出店が続き、店長会議の効率化とコストカットが課題としてありました。従来テレビ会議システムを導入していたものの、同時接続に制約があり、充分な役目を果たせていなかったため、新たな会議システム導入を検討したのです。
自在に書き込みでき保存もできるため、会議はスムーズに進められるようになりました。
ではなぜペーパーレス化が実現しないのか
日本においてペーパーレス化が実現にくい理由について挙げていきます。
ペーパーレス化で効率が下がる?
ペーパーレス化が行われることによって、紙や印刷コストの削減やスペースの確保などのメリットがあります。一方でペーパーレス化によって作業効率が下がってしまうケースもあります。
資料が紙であれば、デスクに並べて参照することは簡単にできますが、データ化した場合には、複数枚同時に資料を参照することが困難です。
もしパソコンの画面をフルに利用して参照した場合、肝心な作業スペースを確保できないため、作業ができなくなります。
日本では、こういったパソコンやモニターなどの機器をうまく活用できていないといった事態が、一番の原因なのではないでしょうか。
ペーパーレス実現を補助するペーパーレス会議システムについては、こちらの記事で紹介しています。資料を並べて表示できるペーパーレス会議システムも増加しています。
コスト上の問題
ペーパーレス化によってランニングコストを抑えられますが、導入コストがもちろんかかります。
会社として負担するコストを下げるためにシステムの導入をしたにもかかわらず、ペーパーレス化に必要なシステムにコストがかかってしまい、結果的に紙媒体のほうが運用コストは安く済むといった問題もあります。費用対効果が悪くならないように、コスト面に注目してシステム選定をしましょう。
ディスプレイの大きさの問題
資料を閲覧するモニターによっては文字が小さくて見づらく、紙で内容を確認したほうが、視認性のよいケースがあります。
日常的に使う資料の文字が見えにくいと、内容を把握するために余計に時間がかかるため、スタッフにとってストレスになりかねません。とくに経営層は年齢が若くない場合も多いため、導入を検討するに至らない可能性が高まります。
もし完全に社内をペーパーレス化するのであれば、資料を並べられて参照できるだけのモニターを複数用意するか、大画面のディスプレイを用意する必要があります。
従業員の理解がない
従業員がペーパーレス化に消極的なためペーパーレス化が進まない場合もあります。
日本人は紙の資料の利用に慣れており、紙媒体の資料に親しみをもっているスタッフが多いためです。
紙に慣れている人が多い場合には、使い勝手が悪くなったり、新しい使い方を勉強しなくてはいけなかったりするため、導入に対して消極的になるケースがあります。
ユーザーのITリテラシーの問題
資料のペーパーレス化には、最低限のITリテラシーが必要になります。
もし経営層や管理力にITリテラシーが足りない場合、セキュリティ面や利用面に不安が残るため、導入に賛成してくれないケースもあるでしょう。
ITリテラシーが足りなければ、逆に穴となり情報漏えいリスクが高まります。
システム障害への不安
紙媒体は手元にあればいつでも閲覧可能ですが、データで利用している場合には、もし停電や災害などでシステム障害が起こった際に、データの閲覧ができなくなることへの不安があります。
同時に、何かが原因でシステムが壊れてしまった場合、一度にすべての資料や情報を失ってしまうリスクもあるでしょう。
24時間常にバックアップをとっていれば、データの復旧は可能ですが、もしバックアップがない場合には復旧に時間がかかってしまいます。
システム障害時でも安心のデータセンターやクラウドサービスについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひ参照ください。
手書きでのメモがしにくい
ペーパーレス化が進まない理由として、手書きでメモが取れないことに不自由さを感じる人がまだまだ多いことも挙げられます。
資料が紙で提供されていれば、添削をしたり会議中のメモ書きをしたりできますが、ペーパーレス会議だと、タブレットといった電子デバイスに表示されている資料に適宜メモを入れるのが難しいケースもあるようです。
最近ではペン操作に優れたタブレット端末も登場しているので、今後さらに手書きも簡単にできるようになると考えられます。
すぐ閲覧できない場合もある
ペーパーレス化した情報を表示するために必要な電子デバイスの起動に時間がかかる、わずらわしい、と感じている人もいるようです。
充電が切れて使えず、閲覧したくてもできない可能性があるため、「常に充電状態を確認しておく」「予備のバッテリーを用意しておく」といった準備が必要になる点はデメリットと言えるでしょう。
しかし、紙で情報を保管している場合も、必要な書類がどこかに紛れ込んで見つからないことも多く、すぐに閲覧できない可能性がある点では同じです。
一部電子化できない書類も
近年ではペーパーレス化を意識した法改正も進み、ほとんどの書類が電子化による保管を認められています。一般的な契約書は電子化が認められているものの、「事業用定期借地契約」のような現在でも電子化が認められていない書面もあります。
これらの書類をやり取りする際には紙が必要になるため、電子データとのハイブリッド運用がしっかりできる設定にしておきましょう。
既存のオペレーションからの変更に対応できない
ペーパーレス化によって、従来紙を使用していた場面では業務のフローが必要になる可能性があります。新たなシステムが導入される可能性もありますね。既存のオペレーションからの変更に対応するために、準備期間を設け、フォロー体制を整えておきましょう。
ペーパーレス化のメリット
一見「無意味ではないのか?」と考えてしまうほどデメリットがあるように思えるペーパーレス化。環境への配慮ができるだけではなく、企業にとって有益なペーパメリットについて解説します。
業務効率の向上
ペーパーレス化によって、資料を簡単に検索できるようになるため、情報管理が楽になり、仕事の業務効率が向上します。
また、距離が離れている相手に対してもメールやチャットツールを利用することで情報共有がしやすくなるため、資料の共有にかかる時間を短縮できます。
コストの削減
ペーパーレス化によって、印刷コストや保管コストが削減できます。単価はそれほど高くないものですが、日常的に多くのスタッフが使うものであるため、結果的に少なくないコストがかかってしまうものです。
また相手の企業も同じツールを使っていれば、従来紙で郵送していた書類も電子化できるため、郵送費も削減できます。
セキュリティの強化ができる
紙での保管になると、すべての資料を厳重に守るためには、広い保管スペースが必要になります。
そのため、もしオフィスにスペースがない場合は、誰でも閲覧できる場所に重要な書類を置かなければいけいないため、セキュリティ面への不安が残るでしょう。
しかしデータ化することによって、盗難や紛失のリスクを減らし、セキュリティの向上につながります。外部へも安全に共有できる点でもメリットがあります。
「データ化してセキュリティは大丈夫なの?」と思う方がいると思いますが、現在ではクラウドのほうがセキュリティ対策やデータ紛失対策は万全です。次の記事で詳しく解説しているのでぜひ参照ください。
バックアップの容易化
ペーパーレス化には、重要書類のバックアップを保持できるメリットがあります。
紙の書類を保管しておく従来の方法には、書類の紛失や盗難、火災による焼失といったリスクがあります。失われた書類を復元することはほぼ不可能です。
ペーパーレス化によって書類をデータ化し、クラウド上に保存・バックアップしておけば容易に復元できます。
保管スペースが不要に
書類をペーパーレスにすることで、今まで必要だった紙書類の保管スペースは不要になります。場所だけでなく、書類を保管するファイルや棚も不要となるため、まとまったコスト削減につながります。
情報整理が簡単にできる
ペーパーレス化が進めば、情報整理も進むメリットが期待できます。
保管期限の過ぎたデータを探しだすことも瞬時にできるので、不要なデータを定期的に削除することも、特定の保管場所に移動させることも、時間をかけずに行えます。
ペーパーレス化のポイント
上記の課題とメリットを踏まえて、企業がペーパーレス化を進める際のポイントについて解説します。
従業員の理解を得る
従業員には、なかなかペーパーレス化の必要性を理解してもらえないケースがあります。
そこで、企業内で説明会を開くといった対応で、経営層を中心にペーパーレス化の必要性を理解してもらう必要があります。
ペーパーレス化が実現することで、どのようなメリットがあるのかを理解してもらえる工夫が必要です。
段階的導入を検討する
現在紙媒体での利用が主流なのであれば、一度に紙媒体をすべてデータ化しようとするとハードルが高いため、優先順位を明確にしたうえで段階的に導入することが重要です。
そのため、まずは重要度の高いところから段階的に導入することで、少しずつ社内に普及させていきましょう。
タブレットのような身近な端末から導入してみる
現代では、日常的にスマートフォンを利用している人が多いことから、パソコンよりもタブレットのほうが利用することに対して抵抗がない方も多いと思います。
パソコンでの利用のハードルを下げるためにも、視認性の高いタブレットの導入からはじめることが有効的です。
ペーパーレス化に一役買うサービスってどれ?
それではペーパーレス化を実現するために必要なサービスは一体なんでしょうか。
たとえば文書をPDF化して管理する文書管理システムで、データを保管しておくデータセンター、Wordファイルを保管するオンラインストレージがあります。他にも、モニターで資料を共有できるWeb会議システムが挙げられます。
それぞれのおすすめサービスの詳細は次のリンクから無料でダウンロード可能です。ぜひ参照ください。
また、契約書関連では電子契約システムの需要も急増しており、発注書も含め契約の段階からペーパーレス化を進めたい場合は要チェックです。
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メリットを理解してもらい、ペーパーレス化を成功させる
ペーパーレス化は必ずしもメリットばかりではなく、同時にデメリットも存在するため、導入の困難な側面があるのは事実です。
しかし、スタッフにメリットを理解してもらい、全社的にペーパーレス化を成功させることで得られるメリットは大きいので、導入時に活用してもらえるような仕組みづくりをしていきましょう。
BOXILとは
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