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「社長に直接メールを送ったことはありますか?」組織を変える社内有志活動のリアル

最終更新日:(記事の情報は現在から1599日前のものです)
経営陣や人事がどんなに施策を打っても、社員のマインドを変えるのは容易ではない。社員一人ひとりがイキイキと働き、組織として最高のパフォーマンスを発揮するためにできることは何なのか。個人と会社はどんな関係を作るべきなのか。そんな問いに、ひとつの解を示すのが「社内の有志活動」という選択だ。本記事では、2019年9月に開催されたONE JAPAN CONFERENCE 2019のセッションから、ボトムアップで組織に変化を起こす5社・5団体のストーリーを紹介する。

人口減少、終身雇用の崩壊、副業・兼業の解禁、テクノロジーの進化。かつてないほどのスピードで、労働環境は変化している。採用競争が激化する中、人材を貴重な資源ととらえ、エンゲージメントを測定する、福利厚生を充実させるなど、働きやすい環境づくりに取り組む企業も増えている。

しかし、働く人が抱えているものはとおり一辺倒ではない。「もっと挑戦したい」、「もっと成長したい」、「縦割りで自由に動けない」、「仕事が楽しくない」、「会社に言っても無駄」。

会社はすべてに応えるのは不可能で、個人の問題だという。個人もまた、自分にはどうにもならず会社のせいだという。これが多くの組織のリアルではないだろうか。会社と個人、双方で当事者意識が薄い状態なのだ。

では、どうすればこの状況を打ち破れるのか。そんな問いに、「社内の有志活動」という選択で、答えを見出そうとする人たちがいる。

本記事では、2019年9月に開催されたONE JAPAN CONFERENCE 2019の中から「自己変革の小さな一歩の踏み出し方とは」と題したセッション内容をリポートする。モデレーターにONE JAPAN共同発起人であるローンディール大川陽介氏をむかえ、立ち上げから運営、会社の巻き込み方など、5社5団体の代表がリアルな体験談を語った。

【後列左から】 NEC 諸藤洋明氏、野村総合研究所 瀬戸島敏宏氏、キヤノン 大辻聡史氏【前列左から】ローンディール 大川陽介氏、ベネッセコーポレーション 佐藤徳紀氏、パナソニック 本田慎二郎氏

(撮影/畑智香子 取材・文/安住久美子)

まずはまわりの5人を替える【NEC・諸藤洋明】

NECで、官公庁向けシステム開発のプロジェクトマネージャーとして働く諸藤洋明氏は、2年前に仲間3人と立ち上げた有志活動「CONNECT」を運営している。主に社内向けのイベント、オンラインSNSのコミュニティ運営などを行い、参加する社員は700人、事業部数は全事業部の80%にのぼっている。社内コミュニケーションを活性化させたことが評価され、社内で表彰された実績もある。

諸藤氏:私自身は「やりたい」を、「やってみた」に移すまでのスピードをあげるのが、有志活動のひとつの意義だと思っています。

個人でやりたいという気持ちがあっても、なかなかそれを実行にうつせない。やってみた、というところに行くまでにはかなり障壁あると思うんです。でも大企業はいろいろなスキルを持った人が何万人といるので、そういう方々の想いとか、力を借りると意外と簡単にできることもある。

私自身プログラミングはできないですが、「こういうことを自動化したいです。」とコミュニティに投稿したら、数時間後にはアジャイルの開発をした人からコードが送られてくるといったことがありました。自分がイチから学ばなくても、アウトプットをつないでいくというのが、これからのビジネスの戦い方だと思うんですよね。

実は、私は31歳になるまでは新しいビジネスとか活動はしておらず、ただ目の前の業務に没入していたんです。僕が変わってきたのは、まわりの方に連れ出してもらったことがきっかけです。同僚や先輩などが「ちょっとこういうのに行ってみない?」と、いろいろな場へ参加するきっかけをくれました。誘いに乗り、場に参加するということをただ繰り返してきただけなんです。

そこで一番感じたことは、「人は環境の奴隷」ということ。別の言い方をすると、「自分は、まわりの5人の平均」。つまり、自分を変えたいと思った場合は、まずはまわりの5人を替えることが重要なんです。でも、いざ挑戦する人になりたいと思ったときに、まわりに挑戦する人がいるコミュニティってなかなかありませんよね。だからCONNECTは、挑戦する人に出会いにいける、笑顔で働いている人に出会いにいける場があればいいなと思ってやっています。

有志活動から学びキャリアを広げる【キヤノン・大辻聡史】

キヤノンのカメラ部門で、新コンセプトカメラの企画を担当する大辻聡史氏は、社内でMIPという有志団体を運営している。部門や会社の垣根を越えて人と人がつながる活動を目指し、主にメルマガの配信、社員がお試しで参加できるミニイベント、半年に1回の交流会などを行っている。

大辻氏:もともと社内には、10個以上の有志の勉強会があったんです。そういう勉強会がつながり、シナジーを発揮できるようにとMIPを作りました。MIPで交流を深めていくと、「共通のテーマで話そうよ」という人たちが出てくるので、そこから分科会を作りフォローアップなども行っています。熱気ある人がどんどん集まり、つながりができ、実際に成果も生まれています。

業務外の自主的なものづくりがはじまっていて、自分のしたいこと、自分の技術の転用をやってみることで、事業創出プロセスを学び、最新の技術を学ぶ場になっている。そして活動の噂が社内で広がると、業務で新しいアサインをしてもらえるという事例も出ています。業務外の活動が、新しいキャリアパスを広げていくんです。

人と人がつながると、社内で部門間の連携もしやすくなります。他の部署で良い研究ができているけど、活かす場がない、じゃあこっちで使えるかもとか。社内の中での技術の展開、価値の共有ができるようになってきています。

僕は何もできない系人間ですが(笑)、まわりの人のおかげでこうした成果が出てきたのだと思っています。

本業と有志活動は相互作用する【野村総合研究所・瀬戸島敏宏】

野村総合研究所の瀬戸島敏宏氏は、ITコンサルとしてAWSを使う仕事をする傍ら、Arumon、N次元という二つの社内有志団体を立ち上げ、運営している。

瀬戸島氏:手が動くやる気のある若手を集めて「圧倒的ジブンゴト」として役員を巻き込やみやっていこうというのがArumon、ONE JAPANで得たノウハウを会社に持ち帰り、風土改革をボトムアップで行っていこうというのがN次元です。

立教大学経営学部教授の中原さんがおっしゃっているのですが、かつては大企業に入ってから5年学んだスキルで定年まで生きていける時代だったと。でも今はどんどんアップデートをしていかないと、若手に負けてしまう。本業の中で経験できることって、減ってきていると思うんですよね。

私の場合は、本業で学べないことを学びたいと思って有志活動をはじめたんですが、活動が進んでいくと、本業と有志活動はミックスされ、相互作用をするようになってくる。業務上でお客さんから相談された内容が、Arumonのメンバーが強いテーマだったので助けてもらったり、逆に有志活動のときに仕事上でつながりがある多拠点のメンバーに声をかけたり。いろいろなコミュニティがミックスされ、あるとき点が線になっていく。

右からも左からも、俯瞰的に自分の置かれている立場を見れば、意外と目の前にある壁は小さいもの。いろいろな角度から物事を見るというのは大事なことだと思いますね。

ちょっとだけ挑戦してみる【ベネッセコーポレーション・佐藤徳紀】

ベネッセコーポレーションの佐藤徳紀氏は、社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所の教育研究企画室で研究員として働いている。2014年にベネッセで起きた個人情報流出事件で業績が悪化し、先輩たちが他社に転職していく姿を見送った佐藤氏は、ONE JAPAN濱松誠氏との出会いを機に、2015年9月One Benesseを立ち上げた。

佐藤氏:2016年~2017年の活動を振り返ると、当時社内の関心事であったプログラミング教育の勉強会を含め、さまざまな企画などを行い、立ち上げから2年で延べ350名が参加してくれました。社長との交流会のためにアポをとるためのメールをしたときは、正直手が震えました。社内提案制度において、グループの取締役5人にプレゼンしたときも吐きそうになりました(笑)。でもプレゼン前に仲間からダメだしをもらって何度も練習していたので、なんとか乗り越えることができ、優秀賞をいただくことができました。

若手社員の育成プログラムを目指した企業内アカデミア「ベネッセユニバーシティ」企画を提案したのですが、最初は批判も多かった。今やる必然性がわからないとか、これで変化を起こせるのかとか、費用対効果を示せとか。でも、一年後には関わっていただいた方々から感謝され、他の企画にも意見を求めてもらえるようになりました。やってみれば、変化は必ず起こせると思いました。

僕は何をしてきたかというと、「ちょっとだけ挑戦してきた」だけなんです。今日より明日が一歩進むということをずっとやってきました。でも一人ではできない。だから、仲間を頼るんです。ONEJAPANも仲間です。自分も含めて、いつからでも人は変われるじゃないか。それを信じているから、仲間を見つけてともに行動するんです。

教育領域の心理学でたびたび引用される、ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーは「発達の最近接領域」という言葉を使っています。「自分に身近な仲間や支援による適切な働きかけ」があれば、今の自分ではできないようなことをできるようになる、成長の幅があるということなんです。それは仲間と行動することが、自分を変化させる可能性を示しています。

それでも自分で一歩が踏み出せない場合は、どうするのか。スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授はこう言っています。The Knowing-Doing Gap、知識と行動にはギャップがあると。わかっていてもできない、それは普通のこと。

どうすれば今の延長線上にない、非線形・非連続な変化をして、自分の考える未来に近づけるのか。それはわかってからやってみる「Learn&Do」ではなく、「Do&Learn」。すなわち、まずはやってみる、挑戦してみて理解すること。それに加えて、Unlearnしろ。今までのやり方を捨てて考えろということが重要だと思っています。

「Unlearn、Do&Learn」 過去のやり方にこだわらり続けずに、仲間とともに挑戦せよ。

自分にタグがつき、仲間が増えていく【パナソニック・本田慎二郎】

One Japanの共同発起人、共同代表である濱松誠氏が最初に立ち上げたパナソニックの有志団体One Panasonic。濱松氏から代表を引き継いだのが本田慎二郎氏だ。現在社内の新規事業部門でオペレーション改革や風土改革などを担当し、One Panasonicのほかに、ナレッジのシェアリングを行う「松下村塾」という活動も行っている。彼の原体験は、入社2年目で担当したリストラ業務だった。

本田氏:私は人が好きで会社に入ったのに、人事でリストラを担当したんです。正直、トイレに駆け込んで吐いたこともありました。それぐらい強烈な経験をして、もうこういうことをしたくない。自分もなんとかしなくちゃだめだよな、という危機感を持ったのが有志活動へむかうきっかけでした。

濱松さんが立ち上げていたOne Panasonicに入ったものの、自分はグロービスに入学して忙しかったこともあり、その後一度幹部を脱退してしまうんです。濱松さんともけんかしましたね(笑)。

でもグロービスで学び終え、得たものをどうやって会社や社会に返していけばいいんだろう。そう考えたとき、もう一度One Panasonicで貢献できればいいなと思い、戻らせてもらいました。

One Panasonicの課題としては、組織のサイロ化、雇用の構造改革、どうせ言っても無駄症候群など。それをふまえて、一歩踏み出す風土を作る、クロスイノベーションを生み出すことを目指し、ひたすら社内外をつなげていくという活動を続けてきました。

最初は自分の危機感や想いからのアクション、それが仲間を呼ぶようになっていき、自分のタグになってくる。「あの人は動ける人だ」というタグがつき、タグがかたまってくると、それをベースに仲間が次の機会を作ってくれるようになりました。

はじめの1歩だけじゃなく、次の2歩、3歩というふうにアクションがつながっていくんじゃないかなと思います。

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