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Chatwork山口副社長に聞いた 長引くリモートワークでコミュニケーション総量を上げるコツとは

最終更新日:(記事の情報は現在から1280日前のものです)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う3度目の緊急事態宣言が発令される中、リモートワークを実施する企業で、社員同士のコミュニケーションの減少という問題が顕在化しています。 そんな中でも良いコミュニケーションを取るコツは何なのでしょうか。東証マザーズ上場でビジネスチャットツールを提供する株式会社kubell(本社・大阪市)の山口勝幸取締役副社長COOにそのコツを聞いてみました。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う3度目の緊急事態宣言が発令される中、リモートワークを実施する企業で、生産性を妨げるコミュニケーションロスに悩む声が増えています。

1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月以来、1年以上リモートワークが続く社もあります。新卒社員のオンボーディングの時期とも重なり、問題は深刻です。

そんな状況下で、良いコミュニケーションを取るコツは何なのでしょうか。東証マザーズ上場でビジネスチャットツールを提供する株式会社kubell(本社・大阪市)の山口勝幸取締役副社長COOにそのコツを聞いてみました。

Chatworkの山口勝幸取締役副社長COO Chatworkの山口勝幸取締役副社長COO

コミュニケーションのプロが指南するコツとは

小村: 早速本題ですが、リモートワークが長引く中で良いコミュニケーションを取るコツを教えてください。

山口:結論から言うと、コミュニケーションの総量をあげていくしかないのかなと思います。

オフィスワークでは、日常業務やお客さんとのやり取りを一つの場所でしていましたが、リモートワークでは、物理的にバラバラになるじゃないですか。オフィスにいたら五感で人のコミュニケーションを取れますし、情報が勝手に入って来ます。だからこそ、従業員はオフィス環境から満足感や帰属意識を得るのです。経営者はそこに利点を感じ、オフィスワークをやめられません。

一方、リモートワークは物理的に一人です。会議はZoomでもできますが、それ以外の情報取得が容易ではありません。このため、コミュニケーションの総量を上げられるかどうかが問題になります。

同期と非同期のコミュニケーションの違い

コミュニケーションツールは、同期と非同期の2種類に大別されますが、コミュニケーションの総量を上げるためにはハイブリッドに使う必要があります。同期コミュニケーションは、情報量が多い反面、時間を取られやすいもの。だから、同期コミュニケーションを取っていない時間でどう人とコンタクトを取るかが問題となります。

一番重要なのは、オフィスにいるかのような環境を作ることです。そうした環境は、対面や電話、ビデオ会議といった同期コミュニケーションと、チャットなどの非同期コミュニケーションをハイブリッドし足し算することで実現できます。

チャットは過去のやりとりの履歴を保存できますが、これによって同期コミュニケーションを取っていない時間の補完が可能になり、コミュニケーションの受け手が常にオフィスにいるような感覚を覚えるのです。

関連記事)チャットワークとSlackどちらを採用すべき?2大チャットツールを徹底比較!

同期、非同期コミュニケーションの最適は割合は?

小村:コミュニケーションの総量を上げる際に、同期と非同期のコミュニケーションの比率は何が理想なんでしょうか。

山口:同期、非同期の使い分けは組織の状態に応じてすると良いと思います。同期コミュニケーションは相手の時間を拘束し、コミュニケーションコストが高い傾向にあります。このため、同期コミュニケーションは繁忙期やプロジェクトの重要な局面など、メンバー間で意識の共有が必要なときに使えば良いと思います。

また、人間関係が希薄で気心が知れてない場面でも有効となるでしょう。相手の時間を割いてでもコンタクトを取る必要がある時も、電話などの同期コミュニケーションが適しています。

一方、非同期コミュニケーションは、時間を合わせてする必要がない、情報共有などに使えば良いと思います。いずれにしても、重要度と緊急度に応じた使い分けが重要です。

チームビルドがうまくいかない要因は?

小村:コミュニケーションの総量が上げることで、得られるメリットは何でしょうか。

山口:物理的に離れていても、チームビルドができたり、意思疎通ができたりすることです。リモートワークでも、オフィスに集まっているかのような生産活動を実現します。

逆に言えば、多くの企業は、組織の生産性やチームビルドに不安があるからこそ、リモートワークに踏み切れないのです。

小村:リモートワークでチームビルドがうまく行かない要因は、コミュニケーションの総量が足りないことでしょうか。

山口:そうだと思いますよ。多くの場合、コミュニケーションが多すぎるか少なすぎるかどっちかに寄っているため、チームビルドに問題が生じています。Zoomは一般化しましたが、それだけではコミュニケーション量が足りないのが実情です。

弊社では営業や企画といった部署別のほか、チームの成熟度やカラーに応じてリモートワークだったり、出社を取り入れたりしています。例えば、売上拡大の中心を担うセールスは、週一で出社するようにしています。(現在は緊急事態宣言中のためオフィス出社禁止)

なぜなら、セールスは、メンバーが年齢的に若いし、同時に社会経験も浅いからです。弊社は人員が一年で3倍に増える部署があるなど、組織が急拡大しており、毎月新しい社員が入ってきます。

こうした場面で、対面、非対面を通じたコミュニケーションの総量が足りないと、社員同士が互いに仕事を頼めないでしょう。

リモートで心理的安全を確保するための工夫

小村:以前からリモートワークで重要な点として、心理的安全の確保が大事だとおっしゃいましたが、心理的安全を確保するために意識すべきことは何でしょうか。

山口:心理的安全の確保には、相手の人となりが理解できていることが重要です。相手の人なりを理解するためには、コミュニケーションの頻度が重要となるでしょう。頻度を高める方法には、たとえば、チーム単位で朝5分程度のリモート会議をすることなどが挙げられます。

特に大企業にも当てはまるポイントとしては、雰囲気や組織文化といった無形的なものに意識を向けることも大切です。社員が間違った発言をしても、周りが許す、寛容な態度を示す。ある種の緩さを組織に作ることで、チャットツール上で発言量が減少するといった問題の防止につながるでしょう。

もちろん、テキストコミュニケーションでは怒りなど負の感情を出さないなどのルールを守る必要があります。そうしたルールを踏まえた上で、管理職が失敗を許容し、チャレンジを評価する雰囲気を作ることで、組織やグループの心理的安全が高まっていきます。

離職対策にも有効?

小村:チャットツールは、リモートワークをしていないサービス業などでも有効ですか。

山口:そうですね。チャットツールにはコミュニケーションを補完する機能があり、サービス業でも有効と言えます。

たとえば、チャットツールの導入によってコミュニケーションが改善した例には、介護業があります。忙しいサービス業の筆頭である介護業は四六時中、お客さんを相手しないといけません。そうすると、スタッフ同士のコミュニケーションが希薄になります。

すると、スタッフ同士で感情を共有できる場面が少なくなり、職場の人間関係が悪化。離職者も出るようになります。このケースは、労働集約型の仕事に見られる問題です。

しかし、サービス業でも、チャットツールを導入することで問題が可視化され、スタッフが互いの気持ちを理解できるようになります。テキストベースのコミュニケーションツールは、人と人の気持ちをつなぎ、離職防止の手段にもなり得るのです。

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絵文字や個人チャットはどう使う?

小村:チャットツールを上手に使うためのコツについてもお聞きしたいのですが、絵文字は円滑なコミュニケーションに不可欠でしょうか。

山口:絵文字は心理的安全性の確保につながります。喜怒哀楽を表現する際、ニコちゃんマークをつけておけば、その辺の気遣いとしても有効です。

ただ、スタンプはチャットツールをデータベースとして使うときに、タイムラインを消費しすぎたりしてしまうデメリットがあります。こうなると、ユーザーは欲しい情報にたどり着きにくくなる上に、見栄えも悪くなってしまうでしょう。

小村:グループチャットと個人チャットの使い分けはどのようにすれば良いでしょうか。

山口:オープンにできる内容は、個人チャットではなく、グループチャットでやり取りをしても良いと思います。周囲に共有した方が良い、勉強した方が良いと思うことはグループチャットでやり取りしても問題ありません。

内容をオープンにする良さは、何かあったら助けてもらえることです。助けが必要になる場合は、グループチャットですれば良いと考えています。

コミュニケーションで業績を伸ばした工務店

小村:Chatworkを導入した企業のなかで、コロナ禍であっても企業の業績を伸ばしたり、生産性を向上させりした会社はありますか。

山口:弊社の顧客である奈良市の株式会社楓工務店は、リモートワークで特筆すべき成果を残しています。建設業でありながらリモートワークに強みがあり、顧客との対面でほとんど会わずに家を建てるなど、優れた成果を残しています。

B to Bにチャットツールを導入する企業は一般的ですが、同社のコンシューマー(消費者)を巻き込んで事業を展開しており、ビジネス事例として面白いなと思います。

また、同社は人材育成へのIT活用にも長けています。リモートワークを実施している新卒社員に対しては、非同期コミュニケーションのみならず、ビデオチャットツールなどの同期コミュニケーションを常時接続するなどし、コミュニケーション不足を防いでいるのです。同期、非同期を組織の状態に応じて使い分けている好事例でしょう。

このほか、弁護士や医師などの専門職では、新しいビジネスモデルとしてビジネスチャットを導入した結果、事業のブランディング強化につながった事業所もあります。

介護事業者などの医療現場では、Chatworkを連絡ツールに取り入れ、嘱託医の内科の医師だけでなく、精神科や皮膚科といった専門領域の医師の相談体制の構築を可能にしました。これはいわゆる、B to Bでチャットワークが活躍しているケースでしょう。

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Chatworkの目指すところ

小村:他社と比較したとき、Chatworkの強みを教えてください。

山口:そもそもメイドインジャパンのチャットツールという強みを備えています。我々はこれを強みに、創業当初から中小企業を対象に市場を開拓してきました。

そうした中で、Chatworkがチャットツールのモデルケースとなったのは、我々自身が10年ぐらいのチャット運用を通じ、世界一と自負するチャットワークリテラシーを身につけてきたからです。

そうしたリテラシーを習得する過程で、中小企業だったらこの機能が使えて、この機能は使えないなどという点を把握しました。そして、インターフェースやタスク管理といった多機能面で中小企業に特化したシステム設計を実現しました。その結果、to Cやto Bに問わず、社外問わずカジュアルに使いやすい設計となっています。

その結果、2021年4月末時点で31万3000社に及ぶユーザーに使っていただいてます。

中小企業向けのインターフェース

小村:中小企業向けの設計とは具体的に何でしょうか。

山口:Chatworkはインターフェースがとっつきやすいと思います。リリース当初から機能を最小限に抑えたり、使い勝手にこだわったりと、引き算の美学でシステム設計に注意を払いました。

日本人特有ですが名前をメンションするときに、「何々さん」と自動的に表示するようにしました。日本ではお客さんや上司を呼び捨てにするのは好まれません。

既読がつかないのも特長で、今では一番人気の機能です。ビジネスパーソンは忙しく、既読を付けてもすぐに返信できる訳ではありません。既読がつかないという機能は、自分のタイミングで返信できるニーズを満たしていると言えます。

既読する機能があった方が良いのは、管理者側の視点です。ユーザーがチャットツールに縛られてほしくないという設計思想を組み込んでいるのが、Chatworkの大きな差別化のポイントだと位置付けています。

小村:今後の開発方針についてもお聞きできればと思います。

山口:さらにシンプルな形で使い勝手を良くする方向に引き続き取り組みます。

アプリの普及にも取り組み、リモートワークをしていない9割の人にも、このような働き方をしてもらいたいと考えています。

特に主要顧客とする中小企業の方々には、Chatworkを通じて人、モノ、金の調達につなげていただき、本業に集中できる時間を増やしてもらいたいと思います。創造的で楽しい働き方をしてももらうため、機能のラインナップ拡充に取り組む考えです。

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