業務委託契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
業務委託契約書とは?
業務委託契約書とは、自社の業務を他者や個人などの外部に委託し、契約を結ぶ際に作成する契約書を指します。業務委託契約は、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つに分けられる場合が多いです。契約書には業務内容や報酬、支払方法、契約期間などの条件を記載し、署名・捺印したあとは双方が1通ずつ保管します。
業務委託契約書の必要性
業務委託契約書は、委託者と受託者との間で業務関係を明確に定義し、適切に管理するために必要です。契約書を結ぶことによって、委託者側は受託者側が委託業務を遂行しない場合のリスクに備えたり、制作物が発生した際は著作権を明確にしたりできます。
口頭でも業務委託契約を結ぶことは可能かつ有効ですが、あとでトラブルが発生すると水掛け論になったり、訴訟になった際に証拠として提出できなかったりするので、必ず契約書は結んでおきましょう。
業務委託契約書の主な記載事項
業務内容によって契約書に必要な記載事項は異なりますが、一般的に記載しておくべき16の事項を紹介します。トラブルを発生させないためにも契約内容には十分に注意しましょう。
- 業務内容
- 報酬
- 契約期間
- 支払条件や支払時期
- 成果物の権利
- 著作権・著作人格権の譲渡や制限
- 再委託
- 業務報告
- 作業場所・貸与物の提供
- 秘密保持
- 反社会的勢力の排除
- 禁止事項
- 契約解除
- 損害賠償
- 契約不適合責任の発生期間
- 管轄裁判所
業務内容
業務委託契約書には、委託される業務の具体的な内容と範囲を記載します。委託する業務に関しては、契約前に詳細な取り決めを行っておくことが重要です。詳細に取り決めを行わないと、契約した範囲内の業務なのか、別途で料金を払う必要があるのかが曖昧になってしまいます。
実際に業務を行うと、想定していた以上に付随的な業務が発生するため、各業務内容の条項の最後に「〇〇に関する業務の一切を含む」「これらに付随する一切の業務」といった条項を付けておくとよいでしょう。
また、業務委託の内容を変更する場合に備えて、「本契約の締結後に大幅な変更が生じた場合は、甲乙協議の上、変更ができる」といった規定をしておくと安心です。
報酬
報酬は契約書において重要な事項です。消費税の支払だけでなく、振込手数料はどちらが支払うのかなど、曖昧な点はすべて記載しておきましょう。
成果報酬型の場合は、要件や算出方法を定めておくことが重要です。契約内容が委任契約の場合、報酬は無償が原則であるため、報酬が発生する場合は金額を記載しておく必要があります。
契約期間
いつまでに業務を遂行するのか、業務の契約期間を明記します。成果物を提出する請負契約の場合も目安の期間を記載しておきましょう。
支払条件や支払時期
支払条件や支払時期は明確に記載しておきましょう。定額型・成果報酬型・時給計算型のどれに該当するのか、当月支払または翌月支払なのかを記載します。
成果物の権利
委託した業務が広告やパンフレット、ホームページなどの成果物の場合、受託者と委託者のどちらに著作権が帰属するのか記載する必要があります。明記しないと著作権の所有先を巡ってトラブルになる可能性があるので、注意しましょう。
著作権・著作人格権の譲渡や制限
著作権とは、著作者の財産的な利益を保護する権利のことです。具体的には、複製権・上演権・演奏権・譲渡権・貸与権などがあります。
一方、著作人格権とは、著作者の人格的利益を保護する権利です。具体的には、公表権・氏名表示権・同一性保持権などがあります。
これらを譲渡する際の要件や、使用する際の制限を記載しておきましょう。
再委託
受託者が第三者への業務の委託を許可するかどうかの旨を記載します。再委託を許可する場合は、第三者に再委託を許可する範囲、再委託先の責任について明確に記載しておきましょう。
業務報告
委託者は、受託者が業務を適切に行っているか、常に把握する必要があります。成果報酬型の契約形態の場合は業務工程を厳しく確認する必要性は低いですが、定額型の契約形態の場合は注意が必要です。
作業場所・貸与物の提供
業務を行う場所や必要な資材の提供に関する事項を明示します。
秘密保持
「秘密保持」は、業務遂行時に得た機密情報や個人情報などに関して、情報漏えいさせないことを約束させる項目です。具体的には、次のような行為を禁止・規定しています。
- 第三者への秘密情報の開示を禁止
- 例外的に情報公開を認める場合の要件
- 目的以外での秘密情報の利用禁止
- 秘密情報の開示や漏えいが発覚した場合の処遇
別紙で秘密保持契約を結び、「別紙に定める」のように記載する方法もあります。
反社会的勢力の排除
委託者・受託者のいずれかが、反社会的勢力、もしくは反社会的勢力と関係があった場合に、契約を解除する旨を記載します。暴力団排除条例が施行されて以降は、ほとんどすべての契約書に記載されている項目です。
禁止事項
業務委託中に遵守すべき禁止事項や制約を記載します。基本的に委託者側から受託者側へと特定の事項を禁止するもので、業務を適切に遂行してもらうためにも必要です。
契約解除
業務委託中に契約違反や不履行が合った場合、契約期間が途中であっても、契約を解除できる旨を記載します。結んでいる契約の信頼性と実効性を保つためにも、忘れずに定めておきましょう。
損害賠償
委託者・受託者のいずれかにおいて、一方的な契約解除や契約違反があった場合の損害賠償の責任や金額について記載します。
契約不適合責任の発生期間
委託者の成果に欠点や過失が合った場合に発生する「瑕疵担保責任」が、2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」という規定に変更しました。契約不適合の責任とは、委託した業務の成果物が契約の内容と異なる場合、受託者に対し業務のやり直しや損害賠償を請求できる事項です。
その際は、委託者がいつまでに請求権を行使できるのかについても定めておきましょう。
管轄裁判所
裁判が必要になった場合に、第一審をどこの裁判所で行うのかを記載します。委託者と受託者が離れている場合は、裁判所への交通費や時間がかかる可能性もあるので、事前に定めておきましょう。
業務委託契約書のテンプレート・ひな形
業務委託契約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、業務委託契約書を作成する際にはぜひご利用ください。
業務委託契約書に収入印紙は必要?
業務委託契約書を作成する際に、収入印紙が必要になる場合があります。契約の種類や契約金額によって必要な収入印紙代が異なるので、事前に確認しておきましょう。
請負契約の場合
請負契約とは、請負人が決められた仕事の完成を約束し、注文者がこれに対して報酬の支払を約束することで成立する契約です。請負契約に該当する例は次のとおりです。
- 工事請負契約書
- 広告契約書
- 会計監査契約書
請負契約は、契約金額によって収入印紙代が定められているので、こちらの表を参考にしてください。
記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
※出典:国税庁「No.7102 請負に関する契約書」(2024年1月11日閲覧)
継続的取引の場合
継続的取引とは、受託者と継続的に生じる取引を指します。継続的取引の基本となる契約書は、1通につき4,000円の収入印紙代が必要です。ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内、かつ、更新の定めがないものに関しては除かれます。
請負・継続的取引どちらでもない場合
請負契約・継続的取引のどちらにも該当しない場合は、委任契約に分類されるため、原則収入印紙は不要です。委任契約・請負契約のどちらにも該当しないものの、業務委託契約に該当する場合は、国税庁の該当ページで収入印紙が必要かどうか確認しましょう。
業務委託契約書の種類
業務委託契約書は「定額型」「成果報酬型」「時給計算型」の3種類に分類される場合が多いです。それぞれ支払方法が異なるので、内容を確認しましょう。
定額型
定額型は、委託者が受託者に継続的に業務を委託し、毎月定額の報酬を支払う種類の業務委託契約書です。毎月一定の支払を行うため予算管理には適していますが、受託者側が業務を怠っても支払う金額は変わらないため、業務委託の質を確保するのが難しくなる問題点があります。
成果報酬型
成果報酬型は、特定の成果や目標の達成に基づいて支払が行われる契約形態です。契約書で定められた成果が達成された際に、支払が行われます。
成果報酬型では、成果次第で多くの報酬を獲得できる点が受託者のインセンティブになる一方で、報酬を獲得するために「成績の水増し」といった不正行為が行われるリスクがあります。
時給計算型
時給計算型は、受託者の稼働時間にあらかじめ定めた時給をかけて報酬額を決定する契約形態です。定額型同様、十分な業務を行わなくても作業に時間をかければ報酬が発生するため、委託者は契約期間の途中でも契約を解除できる条項を契約書に記載しておき、リスクヘッジを検討する必要があります。
また、時給計算型で業務委託契約書を結ぶ場合、派遣社員との区別が曖昧になりやすく、偽装請負の指摘を受ける可能性があるので注意しましょう。
具体的には、委託者が受託者の作業に対し直接指導を行うと偽装請負と指摘される場合があります。厚生労働省の「労働者と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」を確認して、業務委託・労働者派遣のどちらに該当するのか確認しておきましょう。
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