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契約書の甲乙とは?意味や読み方、メリット・デメリット

最終更新日:(記事の情報は現在から8日前のものです)
企業間での契約では、当事者同士の正式名称の代わりに甲乙の表記がよく使用されます。甲乙を活用することで、契約書を効率良く作成できます。本記事では、甲乙の意味や読み方、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。

契約書の甲乙とは

契約書の甲乙とは、当事者同士の正式名称を略称して記載する方法です。契約書の冒頭に当事者同士の正式名称を記載し、その後は甲乙を用いることで、繰り返し正式名称を明記せずに済みます。契約書作成にかかる工数を削減し、よりスムーズに契約を締結できるのがメリットです。

甲乙の読み方・例文

甲は「こう」、乙は「おつ」と読みます。もともとは古代中国の甲・乙・丙・丁などの十干がルーツです。契約書に甲乙を記載する際は、冒頭で次のような文章を記載することが一般的です。

ABC株式会社(以下、甲という。)とDEF株式会社(以下、乙という。)は、以下のとおり業務委託契約を締結する。

その後の文章での定義も同時に行い、ABC株式会社は甲、DEF株式会社は乙と略称で記載するのが一般的です。

甲乙の優劣

甲乙は、契約の当事者同士の名前を略称することが主な役割なので、どちらか一方が優れているような意味はありません。先に名前を書いたほうが立場が上ということもなく、甲乙に優劣は発生しないことがわかります。

ただし、人によっては甲のほうが優位、乙のほうが劣位といった解釈をしてしまっているケースもあります。そのため、契約書を作成する際は常に相手方を甲として表記すれば、相手を不快にするリスクを避けられるでしょう。

当事者が3人以上いる場合の使い方

契約の当事者が3人以上いる場合は、十干に則って「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」を順番に記載します。たとえば、当事者が4人の場合は「甲・乙・丙・丁」を使用するイメージです。

契約書で甲乙を使用するメリット

契約書を作成する際に甲乙を使用すると、次のようなメリットが生まれます。

  • 正式名称を繰り返し記載せずに済む
  • 雛形を作成しやすい
  • 契約業務に慣れている人が読みやすい

正式名称を繰り返し記載せずに済む

甲乙を用いることで、当事者同士の正式名称を何度も記載せずに済みます。

契約書の冒頭で甲乙を定義すれば、その後の正式名称はすべて略称で記載できます。当事者同士の正式名称が何度も出てくるため、会社名や担当者名が長い場合は繰り返し記載する労力をかけずに済み、記載ミスの防止も可能です。

雛形を作成しやすい

雛形を作成しやすいのも甲乙を使用するメリットです。同じ契約形態であれば、同一フォーマットの契約書を使いまわせます。甲乙の表現は変更する必要がなく、冒頭の正式名称のみ相手方の名前を記載すれば済むので、テンプレート化が可能です。

雛形があれば、契約の都度文書を作成する必要がありません。ただし、同じ契約形態でも相手の立場や業務によって契約内容が変わる場合もあるため、完全に雛形に頼り切ることは避けましょう。

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契約業務に慣れている人が読みやすい

甲乙を使用することで、契約業務に慣れている人が契約内容を把握しやすくなります。

当事者同士の正式名称をすべて記載する場合に比べ、甲乙で略称表記し場合は文章がすっきりとまとまり可読性が高まります。甲乙の表記は一般に広く浸透しているため、甲乙を使用した契約書のほうが読みやすいという人も多いでしょう。可読性が向上すれば、読み間違いや認識ミスに陥るリスクを抑えられます。

契約書で甲乙を利用するデメリット

契約書に甲乙を用いると、次のようなデメリットが発生します。

  • 主語を取り違える可能性がある
  • 慣れるまで内容を理解するのに時間がかかる

主語を取り違える可能性がある

甲乙を使用した契約書では、主語の誤認識が起こりがちです。

二者間の契約では、甲と乙の定義を逆に捉えるケースも珍しくありません。また、契約の当事者が増えるほど、甲・乙・丙・丁などの定義が複雑になるため、主語を取り違える可能性が高まります。結果、相手から契約内容に関する質問や指摘を受ける機会が増え、かえって効率性を阻害することも考えられるでしょう。

一つの条項のなかに複数の甲乙が出現する場合は、甲乙をより明確な略称に変更するのが効果的です。たとえば、「受領当事者」の表現を使い、「秘密情報の受領当事者は、第三者にその情報を開示してはならない」のように表記すると良いでしょう。

慣れるまで内容を理解するのに時間がかかる

契約書を読み慣れていない相手の場合、内容を理解するまでに時間がかかることがあります。契約書を読み進めている途中で甲乙の定義があいまいになり、書面の冒頭を何度も確認するようなケースがあてはまります。

契約書は必ず甲乙の表現を使わなければならないわけではありません。そのため、相手に合わせて甲乙以外の表記を使うのも方法の一つです。


上記のようなリスクを回避するために、校正機能だけではなく契約の条文や条項も含めて確認できる、契約書レビューシステムの導入がおすすめです。

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契約書で甲乙以外の表記を用いるケース

契約形態や相手の立場によっては、甲乙以外の表記を使用することもあります。ケースバイケースで、可読性やわかりやすさを意識して適切な表現を用いることが大切です。

企業名を略称するケース

甲乙の代わりに企業名の略称を用いる場合があります。記載方法は甲乙と同様で最初に正式名称を使い、その後に略称を明記します。

たとえば、「株式会社ABC(以下、ABCとする)」といった表現が基本です。企業名の略称を使用することで、甲乙の表記に慣れない人でも、文面をスムーズに把握できます。

契約上の立場を表記するケース

甲乙の代わりに契約上の立場を表記するのも一案です。一例としては、買主と売主の表現があげられます。

たとえば、契約書の冒頭に、「ABC株式会社(以下、買主という。)とDEF株式会社(以下、売主という。)は、以下のとおり売買契約を締結する」と記載します。そして後の文章は、すべて買主と売主の略称で表記する形です。

甲乙よりも具体的な表現なので、主語を取り違えるリスクを最小限に抑えられます。

英文の契約書を作成するケース

英文の契約書では甲乙を使用しません。当事者同士の正式名称を明記するのが一般的です。

ただし、英文の契約書でも、「Buyer(買主)・Seller(売主)」といった形で、契約上の立場を表記する場合があります。また、甲乙の表記に近い「CompanyA・CompanyB」といった略称もありますが、一般的とはいえず、利用する機会は限られています。

特別な事情がない限りこのような略称は使用しないため、英文の契約書では基本的には正式名称を使って契約書を作成しましょう。

甲乙の意味を理解して契約書作成の効率を高めよう

契約書を作成するうえで、甲乙に対する理解が欠かせません。企業間での契約では、甲乙を使用する機会が多いため、使い方や役割を正しく認識しましょう。

また、甲乙以外にもさまざまな略称があるので、契約形態や相手の立場によって適切な表記を使用することが大切です。甲乙の意味を正確に理解したうえで、契約書作成の効率性を高めましょう。

また、作成した契約書の適切な管理も重要です。契約更新を忘れないように契約書管理システムを導入し、契約書管理台帳の作成を効率化してみてください。

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