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NDA(秘密保持契約)とは?書類の目的・作成手順のポイントを解説

最終更新日:(記事の情報は現在から6日前のものです)
企業間での取引が行われる際には、NDA(秘密保持契約)の作成が必要不可欠です。ここでは、秘密保持契約とはどのようなもので、その目的は何か、さらに書類の作成手順についてもポイントを解説します。

企業間での取引の際には、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)が必要不可欠です。取引の際に秘密保持契約が締結されなければ、企業の提供した情報が漏えいする危険性があるからです。

秘密保持契約は自分たちを守るためになくてはならないものであるため、ビジネスマンに必須の知識と言えるでしょう。ここでは、秘密保持契約とはどのようなものかや、秘密保持契約書の作成方法を紹介します。

秘密保持契約(NDA)とは

秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)とは、自社の情報を相手企業に提供する際、内容を外部に漏らさないといった約束を行う契約のことです。たとえば従業員の雇用や業務委託などで、自社の情報を他者に開示しなければならない場合に行われます。

一般的には情報を提供する前に締結をするもので、この際「どの情報が契約の対象になるのか」を明確にするのが重要です。

秘密保持契約(NDA)の必要性

秘密保持契約(NDA)が必要とされるのは、主に情報漏えいや情報の不正利用などを防止するためです。前述したようにビジネスシーンにおいて、取引を行うなかで自社の情報を他者に開示しなければならないケースは少なくありません。

しかし開示した情報を自由に扱われたり、流出されたりすると独自の技術を失って競争力が低下することや、顧客を奪われるといった大きな損害につながるため、不用意には情報を与えられません。一方で有益な情報を開示された側は、得た情報を自社で活用したいと考えるでしょう。

このように開示する側とされる側では思惑が大きく異なるため、両者の考えの違いを整理しつつ、損害を未然に防ぎ、適正に情報を管理・利用するためにNDAの締結が行われます。

秘密保持契約(NDA)のメリット

秘密保持契約(NDA)を行うメリットとしては、主に「秘密情報の流出抑止」や、「損害賠償請求の権利を行使できる」といったことが挙げられます。それぞれ詳しく紹介します。

秘密情報の流出を抑止できる

NDAを締結すると、秘密情報の無断開示が禁止されるのはもちろん、目的外の利用禁止や取引終了後の情報の扱いについても定められます。そのため、情報を開示された相手側は、情報を不用意に流出しないよう、意識的に注意するようになります。

とくにNDAは損害賠償請求についても記載されているため、これも大きな抑止になると考えられるでしょう。結果情報流出のリスクを大幅に軽減し、秘密情報の安全性を向上できます。

損害賠償請求の権利を行使できる

もし秘密情報が流出した場合でも、損害賠償請求の権利を行使できるのは大きなメリットです。秘密情報の漏えいは、損害額が大きくなるケースや、業績自体に大きな悪影響を与えることも少なくありません。

こういった状況に備え、相手側に損害賠償ができるようにしておけば、万が一が発生した場合でも安心です。また秘密保持契約では、情報の流出につながりうる行為自体に差止請求権をつけられるため、被害の最小限に抑えやすいでしょう。

秘密保持契約(NDA)に関連する法律

秘密保持契約(NDA)に最も関連性のある法律は「不正競争防止法」です。不正競争防止法とは、事業者間における公平な競争を実現するため、不当な競争を防止するために作られた法律です。

主にNDAが何連するのは、取り締まりの対象となる「営業秘密の不正利用行為」であり、この営業ニ密に該当する要件は次のとおりに定められています。

  • 秘密管理性:社内で秘密情報として管理されている
  • 有用性:製造技術や顧客リスト、販売のノウハウといった業務に有益な情報
  • 非公知性:公然として知られていない情報

これらの要件を満たすのは、一部の営業利益を構成する情報といった範囲が限られたものであり、それ以外の情報は保護の対象とはなりません。しかしNDAでは、この営業秘密の範囲を大きく拡大し保護の対象を増やせるため、自社の重要な情報の漏えいや不正利用を防止しやすくなるでしょう。

秘密保持契約書類の作成手順

秘密保持契約書を作る段階で内容に認識の違いがあると、問題が発生した際に「言った」「言っていない」のように相手と揉めることがあります。自分たちの利益を確保するためにも、どのような手順で作成するか解説します。

契約内容の協議

契約内容は、どちらかが一方的に作成するものではありません。互いに協議しながら1つの内容を作る必要があります。秘密保持契約で記載される基本的な条項は次のとおりです。

  • 秘密保持契約を締結する目的:前文に記載するものであり、目的外利用の基準となる
  • 秘密情報の定義:開示する情報のうち、どこまでの情報が秘密情報なのかを明らかにする
  • 秘密情報の開示が認められる例外:開示された側がすでに知っていた情報や公知の情報などは、例外的に開示が認められる
  • 秘密情報の目的外利用の禁止:秘密情報をどこまでの範囲であれば利用していいかを明らかにする
  • 秘密保持義務:第三者への秘密情報の開示を禁止するとともに、弁護士といった開示できる例外的第三者も定める
  • 秘密情報の扱い方:開示された情報や書類を管理する方法や手段について、具体的に定める
  • 秘密情報の返還・破棄:契約終了時や要請があった場合に、秘密情報の返還や破棄を行うよう定める
  • 損害賠償:これらの条項に違反した場合、発生するペナルティについて定める
  • 有効期間・存続条項:契約の始期・終期や解約手続き、契約終了後どの範囲の義務を負うか定める

その他反社会的勢力の排除や、裁判の合意管轄といった一般条項の記載も行います。トラブルを避けるため、互いに各項目を細かく確認するのが重要です。一般条項の詳細や、次に紹介する契約書の作成方法についてはこちらの記事で紹介しているので、あわせてチェックしましょう。

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契約書の作成

契約の内容に双方納得ができたら、次は秘密保持契約書の原案を作ります。これは双方が作るのではなく、どちらか1つの会社で作られる場合が多いです。したがって、原案を作成する側の企業に有利な形で作成されることがたびたびあります。そのため協議した内容について認識の違いがないか、しっかり確認しましょう。

契約内容の確認・修正

契約書の原案が完成したら、事前に協議した内容と違いがないか、互いに確認します。もし自分で作ったものに対して反対意見が相手企業から出れば、まずは「修正の必要性」を協議しましょう。修正する必要がないと思う場合には、互いに納得できる妥協点を見つけることが重要です。

このように一つひとつの項目をチェックし、修正する作業を繰り返し、1つの秘密保持契約書の内容を作成します。

秘密保持契約書の作成と調印

両社が内容に納得できたら、それを実際に契約書として作成します。契約書はそれぞれが一部ずつ保有できるように全体で二部作成し、契約当事者たちが調印したら秘密保持契約書の手続きは完了です。

もし契約書が2ページ以上になる場合には、各ページのつなぎ目に契約当事者がそれぞれ契印をして、契約書が全体で1通のみであることを明確にしましょう。契印をすることによって、後から内容の差し替えを行えないようにします。

契印についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、こちらもあわせてチェックしましょう。

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秘密保持契約書のテンプレート

ここまで大まかに秘密保持契約書の作り方について紹介しましたが、契約書を1から作成するのも簡単ではありません。そこでそのままフォーマットとして利用できる秘密保持契約書の雛形を紹介します。

秘密保持契約書のテンプレートはさまざまなサイトで無料公開されていますが、なかでもおすすめなのが、経済産業省が公開している「秘密情報の保護ハンドブック」です。

P193に記載されている、「第4 業務提携・業務委託等の事前検討・交渉段階における秘密保持契約書の例」は、標準的なNDAの雛形として最適です。例を参考に、自社の状況や取引内容によって条項の追加・削除を検討しましょう。

秘密保持契約書作成のポイント・注意点

次は秘密保持契約書作成におけるポイントや注意点について解説します。非常に細かい部分もありますが、作成時不利にならないためにも、ぜひチェックしましょう。

締結を行うタイミング

締結日は基本的に「自社の秘密情報を開示する前」です。商談中に秘密情報を提供し、それがなんらかの形で漏えいするケースもあります。

そのため自社の秘密情報を相手企業に開示する前に、秘密保持契約を締結する必要があります。商談中で具体的な話が進んでいない場合、秘密保持契約について持ち出しにくいですが、自分たちを守るためには締結を主張しなくてはいけません。もしそれを面倒だと相手企業が主張するようであれば、そもそも取引先としての信用を疑うべきでしょう。

情報開示の目的は明確化させる

秘密保持契約は、情報を開示する側は機密情報を包括的に守れるように締結したい一方で、受領者側はできるだけ秘密保持の範囲を狭くしたいと考えます。

リスクを背負うのは情報開示側であるため、「なぜその情報を開示する必要があるのか?」を当事者同士で共通認識する必要があります。そこで認識のズレが発生しないよう、情報開示の目的は何かを明確にしましょう。

有効期間の妥当性を協議する

秘密情報の機密性が高ければ高いほど、秘密保持の有効期間は長くなります。そのため当事者間でどの程度の期間が妥当であるかを協議する必要があります。

情報の価値によって期間は異なりますが、きちんと事前に協議しなければ、永遠に秘密保持しなければならないケースも多々あるため注意が必要です。情報を開示する側はずっと秘密を保持してもらう方がいいので、事前に秘密保持の有効期間はいつまでかを必ず確認しましょう。

秘密情報の範囲・定義を明確に定める

契約書の作成手順でも紹介しているように、秘密情報については範囲や定義を明確に定めるのも重要です。開示された情報すべてが対象なのか、開示者が指定したもののみか、書面情報のみかなどは、会社によってもさまざまです。

そのため、範囲や定義を明確に定めないと秘密情報がどれかわかりにくく、情報の漏えいや不正利用につながる危険性があります。NDAを実効性のあるものにするためにも、できるだけ具体的に範囲・定義を記載しましょう。

秘密保持契約書に収入印紙は不要

秘密保持契約書には収入印紙を貼る必要はありません。収入印紙とは、契約書や領収書といった金銭のやり取りを伴うような、重要な書類を作成する際にかかる手数料(税金)を支払うための証明証です。

切手と似たようなもので、作成した契約書に貼りつけ、消印を押して支払いを証明します。しかし収入印紙はすべての契約書に必要なわけではなく、印紙税法に記載された「課税文書(雇用契約書や賃貸借契約書など)」だけが対象です。秘密保持契約書はこの課税文書には含まれていないため、収入印紙は不要です。

ただし契約書のなかに請負契約といった課税対象となる契約の内容が含まれている場合は、課税文書とみなされ収入印紙が必要になる場合もあるため、注意しましょう。

秘密保持契約(NDA)は電子契約でもできる

秘密保持契約(NDA)は電子契約もできます。電子契約とは、契約書の電子データをオンライン上で送信し、双方で内容を確認したうえで契約締結を行う方法です。署名・捺印の代わりに電子署名を行うことで、すべてをオンラインで完結できます。

そのため契約書の印刷や郵送、日程の調整といった手間やコストを省き業務効率の向上が可能です。またタイムスタンプの付与や電子署名といった要件を満たすことで、通常の契約書と同等の法的な効力をもてます。NDAに関しても、電子契約で締結が行えるため、すでに電子契約サービスを利用している場合や、DXを検討している場合はぜひ参考にしましょう。

自社を守るために秘密保持契約の正しい知識をもとう

時間と手間がかかることではありますが、秘密保持契約の締結は自社を守るために必要なものです。正しい知識をもっていることでトラブルを未然に防ぎ、相手との信頼関係を構築ができます。これまで秘密保持契約についてあいまいだった方は、ぜひこれを機会に秘密保持契約の正しい知識をもち、実務でも役立てましょう。

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