パフォーマンスマネジメントとは?新しい人材管理方法の進め方と課題
これまで、企業の人材マネジメントに関してさまざまな手法が提唱、実践されてきましたが、近年は人と組織のパフォーマンスを最大化するためのパフォーマンスマネジメントという概念が世界的に注目されていることをご存じでしょうか?
これまでの目標管理制度(MBO)や、OKR(Objective & Key Result)といった手法に取り組む企業が多いなか、組織全体の目標と従業員の目標をリンクさせ、事業の新しい成果を生み出すために一人ひとりのパフォーマンスに注目する企業も増えています。
目次を閉じる
- パフォーマンスマネジメントとは
- パフォーマンスマネジメントの歴史
- パフォーマンスマネジメントが必要とされる理由
- 旧来のマネジメントの問題点
- パフォーマンスマネジメントに期待される効果
- パフォーマンスマネジメントの役割
- 環境整備や人材育成につながる
- 組織内の偏った目標設定を回避する
- 従業員の目標設定をサポートする
- パフォーマンスマネジメントの進め方
- 業務の進行状況を詳細に把握する
- チーム全体の目標を明確にする
- フィード・フォワードのコーチング
- パフォーマンスマネジメントの課題
- スタッフのエンゲージメントの低下
- コストと効果が釣り合わない
- 組織強化につながらない
- ビジネスの実態に合わない
- パフォーマンスマネジメントを活用する際のポイント
- ランクよりもフィードバックに重きを置く
- コーチングを徹底する
- タレントマネジメントの視点をもつ
- 管理職者への意識改革を推進する
- マネジメントに人材管理システムを活用する
- パフォーマンスマネジメントで計画的な組織改革を!
- BOXILとは
パフォーマンスマネジメントとは
パフォーマンスマネジメントとは、一人ひとりの従業員の能力やモチベーションを向上させ、成果創出にいたるまでの一連のマネジメントを継続的に行う手法のことをいいます。
従業員の成果を明確に定義し、それが創出されるまでのプロセスを管理し、改善するという工程を繰り返します。
従業員のパフォーマンスについて、目標達成につなげるにはどのような行動をとればよいのかをマネジャーが一緒に考え、具体的なアクションの成果について評価やフィードバックを行います。
管理者と従業員のコミュニケーションを密にして、問題解決や目標達成をサポートしながら組織全体の能力と生産性を高めていくわけです。
パフォーマンスマネジメントの歴史
もともとパフォーマンスマネジメントという概念は、組織の従業員が自ら立てた目標を実際の結果に結びつけるための人材マネジメントの手法として、アメリカのコンサルタントによって提唱されたものでした。
一人ひとりの従業員の仕事のパフォーマンスに注目し、具体的なアクションがどれほどの成果に結びついているかを計測、フィードバックすることによって、チーム内において望ましい行動を増やしていこうというアプローチとして紹介されました。
これが各国の企業に受け入れられ、生産性向上が重要視されるようになってきた日本でも注目されはじめ、これまでの単純な目標管理の手法に代わる新しい人材マネジメント手法として広がってきているのです。
パフォーマンスマネジメントが必要とされる理由
日本でこういった従業員のパフォーマンスに注目する管理手法が必要とされるのは、長引く不況や人材不足による企業の業績の低迷が背景として挙げられるでしょう。
特に少子高齢化に起因する人材不足のなか、刻一刻fと変化するビジネス環境についていくためには、既存の人材の生産性を向上させるしか方法がありません。
また、柔軟な対応が求められるビジネス環境では、当初の計画に固執するよりも、日々移り変わる顧客のニーズに対応する力が求められます。
そういった厳しい環境のなかで、組織としてどのようなアクションをとるのが望ましいかを明らかにし、それを従業員一人ひとりの個人的な目標とリンクさせることによって、組織全体の生産性を向上させようと考える企業が増えてきたわけです。
旧来のマネジメントの問題点
旧来のマネジメント手法は、上述のように、組織の目標を定めて一定期間ごとにその達成度合いを評価するMBO(目標管理制度)や、OKR(Objective & Key Result)といった手法が一般的でした。
これらの手法も効果的ではあるのですが、変化の激しいビジネス環境においては、半年あるいは1年前に立てた目標と実態にズレが生じてしまったり、当初の目標が必ずしも組織全体にとって望ましいものではなかったりといった弊害が指摘されるようになってきました。
詳しくは後述しますが、組織としての柔軟性の欠如や、評価自体が目的化してしまうなどの問題点が浮き彫りになってきたわけです。
パフォーマンスマネジメントに期待される効果
こういった問題点を解決するために、当初の目標や業績を達成するための数値上の管理よりも、一人ひとりの従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことに主眼をおいたマネジメント手法が注目されるようになりました。
従業員の生産性を向上させ、企業と従業員の双方が信頼し合い、お互いに貢献し合うというエンゲージメントを向上させることによって、めまぐるしく変化する環境に柔軟に対応できる企業を作り出そうと考える経営者や管理者が増えてきたのです。
事実、パフォーマンスマネジメントによって高い従業員満足度を達成しながら業績を上げている企業が増えており、これまでの数値一辺倒だったマネジメント手法に代わる効果的な管理手法として積極的に取り入れられはじめています。
パフォーマンスマネジメントの役割
人材不足の課題を解決できるパフォーマンスマネジメントには、次の3つの役割があります。
- 環境整備や人材育成につながる
- 組織内の偏った目標設定を回避する
- 従業員の目標設定をサポートする
環境整備や人材育成につながる
パフォーマンスマネジメントの役割には、人材育成と環境整備があります。パフォーマンスマネジメントは、従業員一人ひとりの成果を最大限に引き出すことを目的とした手法です。
自分で立てた目標を達成するために行動を起こし、その成果や結果について分析して仕事への意欲を高めていきます。
しかし、すべての従業員が初めから自主的に目標を立てて行動を起こせるわけではありません。パフォーマンスマネジメントを導入するにあたり、従業員が自主的に取り組めるように社内でサポートできる環境を整える必要があります。
組織内の偏った目標設定を回避する
パフォーマンスマネジメントでは、従業員が立てた目標の進捗状況を、上長と人事の担当者で確認することが理想です。
フィードバックする際に人事部の担当者が参加することで、部署内の偏った目標設定を回避できるメリットがあります。
また、人事部の担当者は企業視点で意見を伝えられるので、従業員の目標が企業の方向性と大きく外れることもありません。
従業員の目標設定をサポートする
パフォーマンスマネジメントを実施するにあたって、従業員一人ひとりのサポートも欠かせません。思うように目標を達成できない従業員もいます。
能力を存分に発揮して成果や結果を出すには、直属の上司や人事部の担当者が親身にサポートすることが大切です。
また、コーチング手法を活かして従業員の良き相談相手になれれば、パフォーマンスマネジメントの効果をより高められます。
パフォーマンスマネジメントの進め方
パフォーマンスマネジメントの概要について説明したところで、パフォーマンスマネジメントの具体的な進め方について説明します。一般的に、次のプロセスにしたがって実行されることが多いようです。
業務の進行状況を詳細に把握する
まず、現在の業務の進行状況を知ることで、従業員一人ひとりが目指すべき方向を明確にします。
個人の目標とチーム全体の目的・目標との整合性をとるためには、何よりも個人の現在の立ち位置を確認しなければなりません。それによって、どういう基準でパフォーマンスを測定すべきかが明らかになります。
チーム全体の目標を明確にする
続いて、チームとして個人が期待される役割や目標を明確にし、従業員がお互いどう支援し合うのかを確認します。
パフォーマンスマネジメントでは従業員と管理者の密なコミュニケーションとフィードバックが肝となるため、どのような基準で何が評価の対象となるのかを双方が納得できるかたちで明確にしておかなければなりません。
フィード・フォワードのコーチング
設定された目標にしたがって、実際に起こしたアクションに対するフィードバックを行います。これにより、現在の立ち位置と目標のズレを指摘し、なぜそれが生じたのか、原因は何かを明らかにします。
ただし、否定的なフィードバックでは従業員のモチベーションが下がってしまう可能性があります。
そこで重要となるのが、過去ではなく将来に意識を向けながら、成功のポイントを明らかにしていくフィード・フォワードという手法です。
否定的な評価ではなく、目標の達成につながるアイデアを従業員とともに話し合い、客観的なアドバイスとして受け入れてもらいます。これによって、従業員自らが目標に向かって軌道修正しようとする意欲が高まるとされています。
パフォーマンスマネジメントの課題
このように、従来の組織管理方法に代わる新しいマネジメント手法として注目されているパフォーマンスマネジメントですが、当初はいくつかの課題も指摘されていました。
以下では、より組織の実態に見合ったマネジメントをしていくために、従来型のパフォーマンスマネジメントの課題について説明しておきます。
スタッフのエンゲージメントの低下
パフォーマンスマネジメントは、従業員と管理者が信頼し合い、エンゲージメントを向上させることが狙いの一つだったわけですが、過度な評価やレーティングによって、むしろスタッフのモチベーションが下がってしまう可能性があることが指摘されています。
従業員が評価されることを好ましく思わず、管理者側も評価することに苦手意識をもっている組織が少なくなかったわけです。
ある調査では、企業の管理者の大半が採用されたパフォーマンスマネジメントのシステムに不満をもっていると回答しています。
コストと効果が釣り合わない
パフォーマンスマネジメントでは、一人ひとりの従業員を適切に評価するために時間をかけますが、それが必ずしも組織としての成果に結びつかないことが指摘されていました。言い換えれば、人材評価にかかるコストと効果が釣り合っていないということです。
日本の企業でも、きちんと人材を評価しようとすればするほど、どうしても仕組みが複雑化してしまい、場合によっては評価制度そのものが形骸化してしまうという声もありました。
組織強化につながらない
また、個人の成果を評価していくパフォーマンスマネジメントでは、従業員が自己のパフォーマンスに集中してしまうため、組織全体の強化につながらないことがあるという指摘もなされています。
コストをかけてマネジメントを行ったにも関わらず、組織力の強化につながらないことで、従業員と管理者の関係も悪化してしまう可能性があります。
ビジネスの実態に合わない
本来、めまぐるしく変化するビジネス環境に対応しながら組織全体の生産性を向上させるのがパフォーマンスマネジメントの目的ですが、特に変化の激しい現代では、年に1回、2回程度の評価では間に合わないという指摘も出ています。
頻繁なコミュニケーションとフィードバックが必要で、個人の取り組みよりも周囲への協力が求められる環境では、個人の成果の創出が難しくなってしまうケースがあるようです。
パフォーマンスマネジメントを活用する際のポイント
上述の課題を踏まえ、実際に成果の出るパフォーマンスマネジメントを行うためには何が重要なのでしょうか?
以下では、従来型のパフォーマンスマネジメントの課題を克服しつつ、実際に効果の出るマネジメントをしていくためのポイントについて説明します。
ランクよりもフィードバックに重きを置く
フィード・フォワードのフィードバックについては説明しましたが、実際には一方的なフィードバックしか与えられておらず、従業員のモチベーションが下がってしまっている組織は少なくありません。
特に過度なランク付けやふるい分けは、従来型のマネジメント手法の弊害をもたらしてしまうでしょう。
序列やランクを決定するのではなく、組織の従業員一人ひとりが目標に向け、そのためのプロセスを理解したうえで、目標に従事できる環境を作っていくことが重要です。
パフォーマンスマネジメントにおけるフィードバックは従業員と管理者の信頼が前提となっていますから、管理者は特に従業員のモチベーションに配慮したフィードバックを心がける必要があります。
コーチングを徹底する
フィードバックのなかにコーチングの視点を取り入れることも重要です。トップダウンで一方通行の指摘や注意では、従業員に当事者意識をもってもらうことは難しくなります。
従業員が自分の強みを活かし、主体的に自らの生産性を向上させることに意識を向けてもらうには、管理者による適切なコーチングが不可欠です。
的を射たコーチングは双方に信頼関係をもたらし、従業員は本心を打ち明けやすくなるため、これまで人材評価にかかっていた時間的コストを削減し、適材適所の人材配置や業務分担を可能にします。
また、組織のなかで自分がどれだけ重要な役割を担っているのかを理解できれば、従業員は自分だけではなく組織全体の生産性を意識した行動をとれるようになります。
タレントマネジメントの視点をもつ
近年は、人材の短所を指摘してその改善に終始するよりも、個人の生まれ持ったスキルを発掘し、最大限に引き出す手法が効果的であるといわれています。
これをタレントマネジメントといいますが、組織のパフォーマンスを向上させるうえで、この視点は非常に重要となります。
変化に対応できる企業とは、従業員一人ひとりが自らの強みを最大限発揮できる環境を構築している組織であり、その強みを自発的に全体の目標に整合できる人材がいる組織です。
タレントマネジメントによってそういった環境を備えることで適応力の高い組織ができあがっていきます。タレントマネジメントについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
管理職者への意識改革を推進する
パフォーマンスマネジメントを実施する際は、管理職の意識も重要です。
特に、パフォーマンスマネジメントは従業員へのサポートが必要になる場面が多いため、管理職自ら積極的にコミュニケーションを取らなければいけません。
しかし、管理職の対応によっては仕事への意欲が低下することもあるので、コミュニケーションを取るときは十分に配慮しなければいけません。
うまくサポートできていない場合は、管理職向けの研修を実施して意識改革を行いましょう。
マネジメントに人材管理システムを活用する
最後に、パフォーマンスマネジメントをサポートしてくれる人材管理システムについて紹介します。
人材管理システムとは組織の抱える人材を効率的に活用するためのサポートツールですが、これを積極的に利用することで、パフォーマンスマネジメントの実践にも役立ちます。
以下で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
パフォーマンスマネジメントで計画的な組織改革を!
現在、世界的な潮流となりつつあるパフォーマンスマネジメントについて解説してきました。特に日本ではさまざまな業界で深刻な人材不足を抱えており、既存の従業員の生産性を向上させ、いかに業績につなげられるかが重要な課題となっています。
また、すでに多くの世界的企業でパフォーマンスマネジメントによる組織変革が開始されており、硬直的な評価体制から、従業員一人ひとりのパフォーマンスに注目した評価体制へと移行しつつあります。
そのために、積極的に新しい人材管理システムを導入する動きも広がっています。
本記事を参考に、ぜひ人材のパフォーマンスに注目した最新の管理手法について理解し、取り入れることを考えてみてはいかがでしょうか。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
BOXIL会員(無料)になると次の特典が受け取れます。
- BOXIL Magazineの会員限定記事が読み放題!
- 「SaaS業界レポート」や「選び方ガイド」がダウンロードできる!
- 約800種類のビジネステンプレートが自由に使える!
BOXIL SaaSでは、SaaSやクラウドサービスの口コミを募集しています。あなたの体験が、サービス品質向上や、これから導入検討する企業の参考情報として役立ちます。
BOXIL SaaSへ掲載しませんか?
- リード獲得に強い法人向けSaaS比較・検索サイトNo.1※
- リードの従量課金で、安定的に新規顧客との接点を提供
- 累計1,200社以上の掲載実績があり、初めての比較サイト掲載でも安心
※ 日本マーケティングリサーチ機構調べ、調査概要:2021年5月期 ブランドのWEB比較印象調査