契約書の種類一覧!典型契約と非典型契約ごとに代表例を解説
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契約の分類「典型契約」と「非典型契約」
そもそも契約は、「法的な効果をもつ当事者同士の約束」を意味します。民法522条1項によれば、契約は当事者同士の意思表示が合致すれば成立すると定義されており、契約や契約書の内容は契約当事者が自由に決定可能です。
そのため契約の種類は多岐にわたりますが、大きくわけると典型契約と非典型契約の2種類があります。典型契約は簡単にいうと民法で定められた契約のことです。法律により契約規定が設けられているため、契約書に取り決めがなかったとしても、民法に定められた権利義務が発生します。
日常的に高い頻度で使用される、13種類の契約が典型契約に該当します。一方、非典型契約は民法で定められていない契約のことです。企業間取引で契約を締結する際に多く使われるもので、内容が自由に定められるためリース契約や秘密保持契約、ライセンス契約など、膨大な種類の契約が存在します。
典型契約の13種類を紹介
民法で定められた典型契約の類型として、13種類が規定されています。13種類の契約方法はそれぞれ異なる目的があり、必要な契約書類や契約条件も異なります。
- 贈与契約
- 売買契約
- 交換契約
- 消費貸借契約
- 使用貸借契約
- 賃貸借契約
- 雇用契約
- 請負契約
- 委任契約
- 寄託契約
- 組合契約
- 終身定期金契約
- 和解契約
典型契約の特徴を、例もあわせて解説します。
贈与契約
贈与契約とは、当事者の一方が財産を無償で譲る意思を表示し、第三者が受諾する契約のことです。贈与契約は当事者間の合意があれば契約が成立する類型で、単なる口約束であっても贈与者は財産を第三者に譲り渡す義務が生じます。
贈与契約が交わされる具体例としては、親が子に遺産を相続したり不動産を贈与したりする場合です。また、友人にお土産を渡すことも贈与契約に該当します。
売買契約
売買契約は当事者の一方が売ることに対し、もう一方が代金を支払って所有権を移す契約のことです。当事者による合意の意思表示で契約が成立する諾成契約の一種です。また売買契約には「基本契約」と「個別契約」が存在します。基本契約とは、相手と継続的に商品の取引を行う場合に、すべての取引で共通する基本条件を定める契約のことです。
一方個別契約とは、1回の商品取引のために締結される契約のことです。継続的な取引の場合は、後述する取引基本契約を結ぶ場合もあります。例として基本契約書では契約の目的や適用範囲、納品について記載されるのに対し、個別契約書は商品の種類や数量、代金といったより具体的な条件について記載されるのが特徴です。
なお契約当事者間で売買契約が交わされると、互いに次のような一定の義務が生じます。
- 売主側:所有権を相手に移行する義務
- 買主側:それに応じた代金を支払う義務
交換契約
交換契約は、当事者間で金銭以外の財産権を移転する契約のことです。いわゆる「物々交換」のことで、とくに土地の交換で用いられています。売買契約と混同されがちですが、交換契約はあくまで金銭以外の財産権であるため売買契約とは異なります。
ただし交換契約と売買契約の違いは、移転対象が金銭か、金銭以外かだけであるため、基本的には売買契約の規定を適用することが多いです。
消費貸借契約
消費貸借契約は、当事者の一方が何かを借りて消費した際に、同額や同等のもので返す契約のことです。消費貸借契約以外にも、「使用貸借契約」や「賃貸借契約」などがあります。
民法が制定された当時は味噌や米を借りると想定して作られたそうですが、現代ではキャッシングをはじめ、当事者間でお金の貸し借りをする際に用いられることがほとんどです。
また消費貸借契約は、「要物型」と「諾成型」があります。要物型は、対象となるものの引き渡しといった給付があって初めて成立する契約のことです。一方諾成型の場合引き渡しは必要なく、当事者間の合意があれば契約が成立します。
使用貸借契約
使用貸借契約は、当事者の一方が何かを借りて使用したあとに、返却する契約のことです。使用貸借契約は、当事者間の合意があれば契約が成立するため、効力が発生した時点で貸主には対象物を貸す義務が生じます。
- 借主は契約にもとづいて対象物を引き渡されたら収益化が可能
- 貸主は借主の対象物による収益化を妨げてはならないといった義務も生じる
- 貸主は借りた対象物を好きなように使用していいわけではない
- 借主には対象物の性質に応じた用法に従って、収益化する用法遵守義務が発生する
賃貸借契約
賃貸借契約は、当事者の一方が有料で対象物を借りられる契約です。当事者の合意があれば成立する契約で、双方に多くの権利義務関係が生じます。
貸主は、対象物を使用させる義務と修繕義務が課せられます。修繕義務とは、対象物の使用収益に必要な修繕を負う義務のことです。引き渡した対象物の契約が終了したときには、貸主に返還しなければいけません。
賃貸借契約にはレンタカーや賃貸物件などが該当します。たとえば、借りた時点でレンタカーが故障していた場合、借主は車に乗れません。このような場合は、貸主がレンタカーの修繕義務を負います。
雇用契約
雇用契約は、一般的な企業で社員と交わす契約のことです。契約した当事者が働き、雇用する側は社員の労働に対して報酬を支払わなければいけません。
雇用契約を交わした社員は、労働保険や社会保険の加入、有給休暇の取得などに加え、企業からの一方的解雇の禁止といった労働法上の保護を受けられます。
雇用契約の効力は、正社員や契約社員など雇用形態に縛られないため、アルバイトやパートにも適用されます。
請負契約
請負契約は、一方の当事者が業務を遂行した結果に対して、報酬を支払う契約のことです。たとえば、建物を建築してもらったりクリーニングを依頼したりするときに、契約が締結されます。
雇用契約と混同されることもありますが、請負契約は業務が完了しないと報酬を受け取れません。一方で、雇用契約は働いていれば、たとえ成果が出なくても報酬を受け取れます。請負契約と雇用契約では契約目的が異なるため、混同しないように注意しましょう。
また、請負契約と雇用契約では契約当事者との関係性も異なります。雇用契約の場合は雇用者に対して従属的な立場ですが、請負契約の場合は依頼者から独立した立場になるのが大きな違いです。
委任契約
委任契約は、契約当事者の一方が法律行為を委託して、相手に承諾してもらう契約です。たとえば、医師による診察や弁護士の案件依頼などが該当し、委任契約が締結されると受注者は依頼者から頼まれた契約行為を行う義務が生じます。
受注者は依頼者の利益のために行動し、依頼者の希望があれば近況を報告しなければいけません。また、委任契約はサービスの提供であることに変わりはありませんが、ほかの契約と異なり原則として金銭の受け取りがないといった特徴があります。そのため、報酬が発生する場合には、別途定める必要があるでしょう。
寄託契約
寄託契約は、契約当事者が依頼者のためにものを預かり、保管する契約のことです。ものを預けられた人は「受寄者」、預けた側は「寄託者」といわれます。ものの預かり契約では、報酬の有無は関係ありません。
寄託契約は、銀行にお金を貯めたりコインロッカーに荷物を預けたりすることが該当します。受寄者は寄託者により明確な返還時期の決まりがなかった場合には、授与者の都合で返還できます。
ただし、期間に定めが設けられている場合は、やむを得ない事情がないかぎり期限前に対象物を寄託者に返還できません。
組合契約
組合契約は、各組合員が出資をして共同事業を運営する契約のことです。ただし、共同で事業を営むとはいえ、出資した当事者が1人だけの場合組合契約は成立しません。組合契約は2人以上の組合員による出資が条件です。
組合契約の締結時に注意したいのが、財産の種類を明確に区別して考えなければいけないことです。組合契約には、「組合財産」と「固有財産」の2種類があります。組合財産は組合独自の財産で、固有財産は組合員個人が所有する財産のことです。
財産の種類が2つにわかれることで、組合財産が組合員によって勝手に使用されないようになります。
終身定期金契約
終身定期金は年金制度のことで、自分または第三者が死亡するまで、定期的に金銭や物を給付する契約のことをいいます。
この契約は当事者間の合意があれば契約は成立しますが、一般的には定期金給付を行う代わりに、渡す側が給付を受ける側に何かやってもらう事例が多いです。
ただし、近年は公的年金や私的年金が充実したことにより、終身定期金契約が使われる機会はほとんどありません。
和解契約
和解契約は、当事者が互いに譲歩して争いごとを解決するための契約です。和解契約は、すでに締結されている契約に対して実施されます。被害者と加害者がいる交通事故で用いられる示談が、和解契約に該当する場合が多いです。
和解契約には確定効と呼ばれる効力があります。和解の対象となる事柄がたとえ真実ではない場合でも、和解したら再度異議を申し立てられません。この点を踏まえて、和解するかどうか判断する必要があります。
非典型契約の主な種類
非典型契約は、法人同士の契約をはじめとして、ビジネスの場で用いられることが多い契約形態です。非典型契約には多くの種類があるため、企業間で使用されることが多い契約の種類を抜粋して紹介します。
- 取引基本契約
- 秘密保持契約
- 業務委託契約
- 金銭消費貸借契約
- 売買契約
- リース契約
- 賃貸借契約
- 派遣契約
- ライセンス契約
- 代理店契約
- 工事請負契約
- システム開発委託契約
- 保証契約
- 担保設定契約
- OEM契約
- 保守契約
- 共同研究契約
それぞれの契約について、概要を解説します。
取引基本契約
取引基本契約は、売買契約でも説明した売買基本契約と同様、相手と継続的に商品取引を行う場合、すべての取引に共通する基本条件について定める契約のことです。取引相手から継続的に同じ商品を購入したり業務を依頼したりする場合、基本的な取引条件は変わらないにもかかわらず、毎回契約書を作成して契約を交わさなければいけません。こういった負担となる作業を軽減するために締結されるのが、取引基本契約書です。
1度取引基本契約書を取り交わしさえすれば、後は商品名や単価、数量などが記された請書を交わすだけで簡単に契約が成立します。そのため発注や依頼時におけるコスト削減に加え、取引継続の予測が立てられたり、複合的な契約を内包できたりするメリットがあります。
秘密保持契約(NDA)
秘密保持契約(NDA)は、自社がもつ情報や技術を提供する場合に、他社への漏えいや不正利用を防止するために締結される契約のことです。一般的には、情報や技術を提供する前に当事者間で秘密保持契約を交わします。
また機密情報の漏えいや不正利用のリスクを回避する以外にも、特許申請や不正競争防止などを目的に契約を結ぶ場合もあります。
業務委託契約
業務委託契約は発注者が受注者に対して業務を委託し、受注者が委託された業務を完成して対価を受け取るために締結する契約のことです。業務委託契約には複数の類型が存在し、主に用いられるものとしては、典型契約で紹介した請負契約と委任契約が挙げられます。
請負契約は業務を遂行した成果物に対して報酬を支払う契約です。委任契約は業務を行うことに対して報酬が支払われます。どちらの契約も業務を遂行するのは受注者です。業務委託基本契約書でベースとなる条件を定め、個別契約書で業務内容の詳細について定めます。
金銭消費貸借契約
金銭消費貸借契約は、金銭を受け取る代わりにそれと同等の金銭を返金する契約で、端的にいえば借金です。ビジネスの場面では銀行から借り入れする場合が該当します。
金銭消費貸借契約を締結すると、借主には借りた額と同額の金銭を返金する義務が生じます。ただし、利息が付く貸主の場合は、借りた金額に加えて利息を返金する義務も生じるのが一般的です。
リース契約
リース契約とは、利用者が必要な物件や機械設備などを購入し、貸し出す際に交わす契約のことです。リース期間は比較的長期であり、契約書で定められた期間以外に中途解約は行えません。
リース契約は賃貸借契約と混同されがちですが、賃貸借契約は短期の契約が一般的です。リース契約と賃貸借契約は、リース期間や不動産の所有方法などが異なるため、混同しないように注意しましょう。
派遣契約
(労働者)派遣契約とは、一方が相手に対して労働者の派遣を約束する契約のことです。主に人材派遣会社と派遣先企業の間で契約を締結し、派遣の基本要件を定めます。法人間の取り決めは派遣基本契約書で定め、個々の派遣労働者に関しては派遣個別契約書で定めるのが特徴です。
また労働者派遣法では、契約で規定すべき項目が定められているため、契約するときにはこれらの必須記載事項が契約書に記載されているか、確認しましょう。
供給契約
供給契約は、同じ会社から継続的に供給したり購買したりする場合に交わされる契約のことです。基本的には取引基本契約と同じ効力があり、供給・購買する商品の種類や量などを、組織的に確約します。
貸主に一定量の購買義務が定められているため、取引基本契約よりも取引に対して強い責任を問われるのが特徴です。ビジネスの場面では、特定商品を継続的に取引する場合によく用いられます。
ライセンス契約
ライセンス契約は特許権の使用や実施を許諾し、対価としてライセンス料を受け取る契約のことをいいます。
ライセンス契約の対象としては、特許権に加え著作権や商標権、ノウハウなど多くの知的財産権が挙げられるでしょう。契約書を交わすときは、許諾行為や実施料、独占性の有無などが定められます。
代理店契約
代理店契約は、メーカーと代理店の間で交わされる契約のことです。メーカーが製造した商品を、代理店の販売力を活かして、より多くの消費者に販売するのが目的です。
代理店契約に似た契約で販売店契約もありますが、販売店契約はメーカーが販売店に商品を卸売して消費者は代理店から購入します。一方、代理店契約の場合はメーカーから消費者に直接販売されるため、販売店契約とは異なる契約です。
工事請負契約
工事請負契約は、一戸建てやマンションなどの住宅工事を受注する際に交わす契約です。工事を引き受ける受注者は、建物を完成させて引き渡すことで、発注者による対価の支払いを約束させます。
また、建物が発生した後に認識の違いで問題が起きないようにするのも目的です。工事請負契約を行うことで、工事内容が詳細に記載されるため、トラブルが起こるのを未然に防げます。
システム開発委託契約
システム開発委託契約は、発注者が受注者に対してシステムの開発に関する業務を委託するための契約です。システム開発委託契約を細分化すると、準委任契約や請負契約、もしくは準委任契約と請負契約の複合型に分類されます。
準委任契約とは事務処理に関する業務を委託する契約で、請負契約は完成した成果に対して報酬を支払うことです。また準委任契約と請負契約の目的を複合させたのが複合型です。
保証契約
保証契約は、お金を借りた債務者が債務不履行を行った場合に、債務者に代わって支払う義務を負う契約のことです。保証契約は書面で行わなければいけません。
身近な例では、賃貸借契約の締結に伴い、債務者が支払いできない場合に備えて保証契約が交わされます。その他にも物件を借りる際、両親に保証人となってもらい保証契約を交わすのがよくある事例です。また保証契約には、連帯保証契約と呼ばれる契約もあります。
連帯保証契約も債務者の代わりに支払い義務を負う契約です。ただし、保証契約よりも債務者に有利な契約とされています。
担保設定契約
担保設定契約は、金銭債権の履行を確保するために、債務者が保有する財産権に対して担保を設定する契約のことです。ビジネス上で担保設定契約が交わされるのは、金融機関が貸付を行った企業の不動産に対して抵当権を設定するケースです。
抵当権は、債務者にお金を貸すときに金融機関が設定する権利で、いわゆる担保を取ることです。債務者が債務不履行になった場合は、抵当権の対象となる不動産が差し押さえられ、競売にかけられ、そこで得た利益が返済金に回されます。
OEM契約
OEM契約は、販売元の商標を付けた製品の製造を委託する契約のことです。受託側は安定的な収入源の獲得や技術向上につなげられ、委託する側は生産コストを削減できたり生産能力不足を補えたりするメリットがあります。
ライセンス契約と混同されがちですが、ライセンス契約は自社が保有する特許やノウハウなど知的財産の利用を許諾する契約のことです。製造された製品の所有権は委託する側に帰属されるOEM契約とは、契約内容が大きく異なります。
保守契約
保守契約は、製品のメンテナンス業務に関する契約のことです。契約の対象は、パソコンやプリンター複合機をはじめ、障害予防や障害が発生した際の復旧作業などのメンテナンス、ソフトウェアに関する技術的な質問への対処などが含まれます。
保守契約において責任を負う期間は、半年から1年に設定されることがほとんどです。契約書に記載された期間を越えると、受注者にメンテナンス義務は生じないため、発注者は対応を求められません。
共同研究契約
共同研究契約は、新しい製品や技術について研究・開発する際、外部の企業や大学といった協力者と共同で行う場合に締結する契約です。技術や資金といった自社に不足している部分を補い、効率的に研究・開発を進めるために行われます。
契約書には役割分担や費用負担、成果物の利用方法、契約当事者の権利関係を明確に定め、後々のトラブルを未然に防ぎます。
契約書の種類は多岐にわたる
契約の種類は、典型契約と非典型契約の2種類にわかれます。典型契約は日常的に使われる13種類の類型が該当し、非典型契約は秘密保持契約やシステム開発委託契約、OEM契約などが挙げられ、種類は豊富です。
すべての契約を把握するのは難しいかもしれませんが、よく使用される契約を理解することでビジネスの場面でも役立ちます。ここで紹介した契約はビジネスで使用される機会も多いため、ぜひ理解しておきましょう。
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