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MRPとは
MRPとは、日本語で「資材所要量計画」といった意味があり、生産の資材を最適な数だけ所有するための手法です。わかりやすく簡単にいえば、必要な部品や材料を、必要なタイミングで必要な分だけ投入するための仕組みです。管理するものに人や物、設備が含まれることもあります。
Material Requirements Planningの略語
MRPは「Material Requirements Planning」の略語であり、製造業で代表的な生産管理方法として知られています。MRPは生産するものに必要な部品や材料を表にし、かかる時間やコストを算出することにより、適切な在庫管理を実現できます。
製造業では在庫を持ちすぎないことが、事業を成功させるうえで重要なポイントです。在庫は持ちすぎると管理コストがかかり、逆に不足状態は生産ラインが止まり損失を招きます。一方で過不足なく適切に管理することは簡単ではないため、これを正しく行うために生み出されたのがMRPです。
MRPとジャストインタイムとの違い
MRPとジャストインタイムとの違いは、製造工程の上流から指示をするのか、下流から指示をするのかにあります。
「ジャストインタイム」とはMRPと似た考え方で、トヨタ自動車が実践していることで有名な手法です。情報の伝達・指示にカンバン(生産指示標)を使うことから、カンバン方式とも呼ばれます。
両者は必要なものを必要なタイミングで、必要な分だけ調達することを基本的な指針としている点は同じです。しかし、指示をする立場やタイミングに違いがあります。
ジャストインタイムでは、下流側から上流側に対して必要な原料や材料を指示し取り寄せます。そのため製造の下流工程で設計や仕様の変更が生じても、過剰在庫を抱えずに済むのがメリットです。前の工程から材料や部品を取り寄せるため、プル(引っ張り)型の生産管理方式と呼ばれます。
一方、MRPは製造工程の上流側から下流側に対して、原料や材料の調達、製造のタイミングなどを伝えるのが特徴です。全体の製造計画から生産に必要な資材や部品を明らかにするので、プッシュ(押し出し)型の生産管理方式と呼ばれています。
MRPの重要性
MRPは需要に必要な在庫を可視化して、在庫状況と生産計画の調整を行います。もし、在庫と計画の最適化が不十分であれば、次のようなリスクが発生する可能性が高まります。
- 過剰在庫の発生により、在庫維持費が予想以上にかかる
- 原材料が不足して需要をカバーできず、在庫切れが起こり売上が減少する
- 生産体制が混乱し、生産量の減少や生産コストの高騰が発生する
また、MRPで在庫の最適化を行えば、在庫管理の工数も削減できるため、人材面の最適化も図れます。MRPは物質と人材双方の最適化のためにも必要だといえます。
MRPの仕組みと実現できること
MRPは、生産に必要な資材の種類と数量、必要な時期を明確にし、最適な発注や調達を可能にする仕組みです。
生産計画をもとに、BOM(部品構成表)や在庫情報、リードタイムなどをもとに計算を行い、必要なタイミングで必要な量だけを準備することを目的としています。
この仕組みにより、過剰在庫や欠品のリスクを回避し、安定した生産体制を実現できます。計算には、ロットごとに発注する「ロットまとめ方式」や、必要な量を都度発注する「L4L方式」などが使われ、需要の変動にも柔軟に対応可能です。
MRPの計算に必要な情報
MRPの計算に必要な情報は次の3つです。
- 生産計画
- 部品構成表(BOM)
- 在庫情報
生産計画
生産計画とは、製品の生産量や時期を決めるための計画のことです。受注数や需要予測から生産品数を計算して、販売計画を考慮しながら生産計画を策定します。生産計画を基準に部品構成表を作成していきます。
部品構成表(BOM)
部品構成表(BOM)とは、製品の作成に必要な部品の一覧表のことです。部品構成表をもとにして原材料がいつまでにどの程度必要であるかを把握し、材料の使用料を計算します。
部品構成表(BOM)には「サマリー型」と「ストラクチャ型」があります。サマリー型は必要な部品を並列にまとめた一覧表です。必要な部品数と手配数がわかりやすく、資材調達でよく使用されています。
ストラクチャ型は、製品の組み立て順序をふまえて階層で把握できる一覧表です。階層は製品、部品、原材料と親から子、孫と細かくなり、製品が完成するまでの作成順序や工数などを把握するのに役立ちます。
在庫情報
在庫情報は、在庫数と発注済みの未納数、仕掛数といった在庫を管理するための情報のことです。在庫情報をもとに発注のリードタイムと発注するロット数を計算します。状況を考慮しながら手配もれや納品遅れを起こさないようにすることが大切です。
MRPを導入するメリット
MRPを導入するメリットは適切な在庫管理ができ、その結果仕入れコストの削減や計画への柔軟な対応が可能になる点です。また生産性や顧客サービスの向上にも期待できます。
適切な在庫管理ができる
MRPの導入によって、事前の計画に沿った在庫管理ができるようになり、不要な在庫の抱えるリスクを軽減できます。
適切なタイミングで原材料の手配が可能になり、売れる可能性の低い在庫の数も減らせます。さらに、環境に合った在庫管理システムを活用すれば、人的な負担をかけずに在庫量を調整できるでしょう。
仕入れコストを削減できる
MRPによって効率良く資材を発注できるので、仕入れにかかるコストを削減できます。
無計画に資材を調達している企業は基本的に存在しませんが、それでも短期間に発注を繰り返すことで資材の調達コストが肥大化してしまうケースは珍しくありません。
MRPによって計画的に資材を調達できれば、仕入れコストを最適化でき、結果として顧客にとってリーズナブルな製品を提供可能です。
計画の変更にも柔軟に対応できる
在庫数の再計算がスムーズになるので、途中で受注のキャンセルや納期の変更が発生した際にも、柔軟に対応できるのもMRPのメリットのひとつです。
MRPの導入・運用によって製造現場が最適化されていれば、たとえ途中のキャンセルや納期および仕様の変更などがあっても、条件を変えて計画を修正しすぐに対応できるでしょう。無駄な作業も発生しなくなり、社員一人ひとりの生産性も向上するはずです。
生産性の向上
適切な在庫管理ができるようになれば、効率的かつ計画的に資材調達が行えるため生産性も向上します。これは資材の手配遅れによる生産ラインのストップといったリスクを回避でき、つねに効率よく生産ができるからです。
また仕入れコストの削減にもつながるため、企業全体で生産性を高められます。
顧客サービスの向上
適切な在庫管理は、商品の在庫切れや納期の遅延も防げるため、顧客サービスの向上にもつながります。納期の厳守といった、顧客のニーズに的確にこたえられることで顧客満足度が向上し、リピーターの獲得が期待できるでしょう。
MRP2からERPへの変遷
MRPはもともと、1970年代にアメリカで提唱されたもので、同国の製造業における国際競争力を高める目的がありました。そこから1980年代に入ってMRP2が提唱され、さらに1990年代になると ERP が登場してきました。MRP2およびERPの特徴も確認しておきましょう。
MRP2とは
1980年代になり、製造現場の生産性を向上させる必要性から、在庫管理に加えて製造スタッフや各種設備、資金などの要素もまとめて管理する手法が求められました。そこで、MRPを発展させたMRP2が登場しました。
本来は「Manufacturing Resource Planning」が正式名称ではあるものの、MRPの発展形であるため、MRP2と呼ばれて区別するのが一般的です。製造工程における原材料や部品、資材のみに目を向けるのではなく、より広い視点で製造現場に投入するヒト・モノ・カネの最適化を図れます。
ERPとは
1990年代に入るとMRP2をさらに発展させた、ERP(Enterprise Resource Planning)が登場しました。
MRP2までは製造部門の最適化を図る手法です。しかしERPになると販売部門や会計部門など、各部門をまとめ総合的に最適化することが目的となり、そのための管理システムも続々と登場しています。
現在はERPが主流であり、MRPのシステム以上にERPのシステムが業務効率化を支える存在として広く認知されている状況です。
なお、ERPが広く普及している背景として、BPR(Business Process Re-engineering)の広まった点が挙げられます。BPRは企業の戦略・組織・業務を再構築し、企業活動を顧客視点で統合管理する考え方です。
BPRの実現のため、基幹業務の情報を一元管理するためのERPの考え方やシステムが求められるようになりました。
MPS・製番管理・MESとの違い
MRPには、類似・関連する言葉としてMPS・製番管理・MESなどがあります。そこで最後に、用語集としてこれらの言葉の意味やMRPとの違いについて紹介します。
MPSの意味とMRPとの違い
MPSとは「Master Production Schedule」の略で、日本語で「基準日程生産計画」を意味します。MRPが製品をいつまでにどれくらい生産するかを計画するのに対し、MPSは製品に必要なものを準備するための計画です。
MPSはMRPの計画をもとにして、現在の在庫量をふまえたうえで必要な部品や材料をどのように調達するかを計画します。
製番管理の意味とMRPとの違い
製番とは、受注ごとに番号を割り振ることをいいます。一つひとつの製品に番号を振って決まった顧客のためにつくるのが製番管理であり、同じ製品をまとめてつくり、顧客に分配するのがMRPです。
MRPの場合、同じ製品・品番であれば在庫が共有できるのに対し、製番管理では同じ製品・品番でも在庫は共有できません。製番管理は受注量から材料の手配量を決めるため、在庫の過剰・不足が起きにくく管理しやすいのがメリットです。
製品を受注生産したい場合は、MRPよりも製番管理が適していると言えます。
MESの意味とMRPとの違い
MESとは「Manufacture Execute System」の略で、日本語で「製造実行システム」を意味します。生産計画をもとに、現場の作業スケジュールを管理し、機器による製造の進捗状況や実績情報などを収集・分析することで計画どおりに製造を進めるシステムです。
MRP・MPSが計画・準備を担当するのに対し、MESは製造機器と連携してそれを実行するシステムだと考えましょう。
MRPの運用プロセス・手順
それでは、製造部門における一般的なMRPの導入・運用プロセスを解説します。いかにして最適化するか、有効とされるプロセスを確認しておきましょう。
需要の予測と製造計画の策定
まずは、これまでの実績や市場の状況などに鑑みて、製造する製品の需要はどれぐらいあるかを予測します。できるだけ正確な需要予測を立てなければ製造計画の立案はできません。
さまざまな統計や市場データを分析し、どのような製品がどの程度必要とされているか、できる限りの予測を立てたうえで、製造計画を策定しましょう。
BOM(部品構成表)の作成
製品の製造計画を具体的に策定したら、必要となる部品や資材を計算してBOM(部品構成表)を作成しましょう。BOMは「Bill Of Materials」の略で、特定の製品を製造するために必要となる部品や資材を一覧表にしたものです。
BOMをベースにMRPを運用するのが基本となるので、どういった部品がどの程度必要なのか、正確に把握して表を作成しましょう。
資材の発注・調達
作成したBOMにしたがって、資材を調達します。必要となるすべての材料から現時点での在庫量を差し引き、不足している分を発注しましょう。
資材の調達には相応の時間がかかるので、業者の納品までに必要な時間は考慮が必要です。さらに資材置き場のスペースも考える必要があるでしょう。必要なタイミングですぐに資材を使えるように、部門間の連携も密にすることが大事です。
MRPの課題・デメリット
MRPは生産効率の向上に大きく貢献する一方で、導入や運用の過程でいくつかの課題が生じることもあります。代表的なデメリットと対処法について解説します。
運用の難しさ
MRPは高度なロジックに基づいた計画手法であり、システムの設定やパラメータ調整には一定の知識と経験が求められます。運用を誤ると、必要な資材が手配できなかったり、逆に不要な在庫が増えたりするリスクが生じます。
また、MRPの仕組みを現場全体で理解していないと、計画に対する信頼性が低下するかもしれません。
このような課題を解決するには、MRPの基本原理を理解した担当者を育成するとともに、運用マニュアルの整備や、トレーニング機会の提供が重要です。
導入初期は小さな範囲で試験運用を行い、業務への影響を抑えながら段階的に拡大していくのも有効な手法です。
マスタ情報の精度が重要
MRPは、部品構成表(BOM)や在庫数、リードタイムなどのマスタ情報をもとに計画を立てます。そのため、これらの情報に誤りや更新漏れがあると、正確な所要量や発注時期を算出できません。
結果として、欠品や納期遅れ、過剰在庫といったトラブルが発生する可能性があります。
こうしたリスクを防ぐには、マスタ情報の定期的な点検と更新が欠かせません。部品や工程の変更があった場合には速やかに反映し、情報の正確性を保つ体制を整えましょう。加えて、入力作業のミスを防ぐためのチェック体制や自動化の仕組みも有効です。
柔軟な変更対応が難しいケースもある
MRPは事前に立てた生産計画に基づいて資材の所要量を算出する仕組みのため、突発的な仕様変更や需要変動への対応が遅れることもあります。
計画が頻繁に変わる現場では、システム上の再計算や再手配に手間がかかり、納期遅れや調整負荷の増大につながりかねません。
この課題への対策としては、計画の安定性を保つ運用ルールを設けるとともに、必要に応じて一部の工程でジャストインタイム(JIT)方式を併用する方法もあります。
また、変更時の対応スピードを上げるために、柔軟な再計算が可能なシステムを選ぶこともポイントです。
MRPを運用する際の注意点
BOMはMRPの要となる部分であるため、とくに注意が必要です。MRPを導入する前にBOMがしっかりと整理されず、データの精度が低ければ正しい生産計画をつくることは不可能です。
また生産計画自体はシステムでも作成できますが、BOMは人の手でしかつくれません。面倒な作業ではありますが「なにが、どの工程で、どれくらい必要か」を明確化し、一つひとつ丁寧につくっていきましょう。
MRP対応の生産管理システムもおすすめ
MRPに対応した生産管理システムは、資材の発注タイミングや所要量を自動で算出し、在庫管理や調達業務を効率化するために用いられます。
代表的なシステムには、TPiCS-XやEXPLANNER/J、Smart生産管理などが挙げられ、それぞれ中小製造業から大手まで幅広く利用されています。
これらのシステムは、業種や製造形態に応じたカスタマイズ性が高く、BOMの階層管理や進捗の見える化、原価管理機能なども備えています。自社の業務に合ったシステムを選定することで、MRPの効果を最大限に引き出せるでしょう。
MRPの導入で正確な在庫管理を実現
MRPの概要とメリットを解説しました。MRPは「資材所要計画」のことで、製造現場が必要なタイミングで必要な資材を、必要な分だけ調達する手法です。1970年代にアメリカで提唱されて以来、時代を経るごとにMRP2からERPへと進化してきました。
現代からすれば少し古い手法ではありますが、製造業のベースとなる手法といっても過言ではありません。この機会に基本的な考え方を理解しておきましょう。
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