秘密保持契約書(NDA)とは?ひな形付きで記載事項を解説
秘密保持契約書とは
秘密保持契約書とは、主にビジネス上の取引で秘密情報を交換する場合に、特定の情報を秘密としてお互いが保持し、本来の目的以外では使用・漏洩しないことを約束する契約書です。英語では「Non-Disclosure Agreement」と表記するため、頭文字を取って「NDA」と表されます。
この秘密保持契約書(NDA)には、下記のような重要な内容が含まれます。
- 秘密情報の範囲や用途の指定
- 情報の目的外使用や漏えいの禁止
- 契約に違反した側の賠償責任
とくに知的財産権やビジネススキーム、特許技術、顧客リストなどの機密性や価値が高い情報を扱う際には、打ち合わせの段階で秘密保持契約書を締結します。
秘密保持契約書は誰が作成すべき?
秘密保持契約書(NDA)の作成は、一般的に「秘密情報を開示する側」が契約書の原案作成を担当します。これは情報の機密性を確保するために、情報の性質や価値をよく知る側がルールを決めるのが自然だからです。
なお、秘密保持契約書の内容には技術仕様や特許技術など、専門的で一部の者にしか理解できない内容も少なくありません。また、同時に法律的な専門知識も必要になるため、弁護士や弁理士などへ相談しながら作成することが推奨されます。
秘密保持契約の詳細を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
秘密保持契約書の主な記載事項
当事者間で慎重に取り扱うべき「秘密情報」とは何かを定義し、秘密保持に必要な当事者間の共通ルールを規定します。なお、秘密情報を提供する側を「開示者」、提供を受ける側を「受領者」と呼びます。
記載すべき10個の項目について解説します。
- 秘密情報の定義
- 秘密保持義務
- 秘密情報の管理
- 権利帰属
- 返還または廃棄
- 保証・損害賠償
- 期間
- 例外対応
- 契約解除
- 管轄
秘密情報の定義
まずは秘密情報保持の目的と範囲を定めます。
目的の明確化
秘密情報の利用目的を明確化し、目的外使用を禁止する規定を設けて、受領者がどんな目的でどの範囲の情報を利用するのか定めます。
秘密情報の範囲
秘密情報の範囲は「開示の際に秘密情報であると明示した技術上または営業上の情報、本秘密保持契約の存在および契約内容、その他外部に漏えいすることで事業に悪影響をおよぼす一切の情報」です。しかし、下記のような例外も定めておきます。
- 開示を受けた時点で、受領者がすでに了知していた情報
- 開示を受けた時点で、すでに公知だった情報
- 開示されたあとに、受領者の責任でなく公知となった情報
- 受領者が、正当な権限をもつ第三者から秘密保持義務に抵触せずに取得した情報
- 秘密情報とは無関係に、受領者が自身で入手・開発した情報
秘密保持義務
秘密保持契約書の根幹となる重要な規定を定めます。
- 秘密情報の目的外使用の禁止
- 第三者への開示の禁止
- どの範囲の関係者まで開示可能なのか
秘密情報の管理
秘密情報の複製や既存商品の類似品の作成が想定される場合に備え、独自ノウハウや特許技術などの管理や取り扱いについて定めます。
たとえば「秘密情報の複製や類似品の作成は本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製情報や製造物は原本と同等の注意義務をもって保管・管理をする」と規定するのが一般的です。
秘密情報保持契約では、守秘義務を相手方に負担させることだけを定めればいいというものではありません。その情報を客観的に重要な秘密情報として扱い、厳重な管理状態を維持する意識を当事者双方が適切に共有しているかどうかが重要です。
権利帰属
秘密情報の開示をともなう取引から、特許をはじめ新たな知的財産権が発生する場合があります。互いの企業規模や提携の資本比率、情報の性質、製造担当などの状況に応じて、新しい権利の帰属や紛争対応の責任などをどの程度で負担するか判断します。
たとえば「共同研究によって取得した知的財産権の帰属先や帰属割合は当事者間で協議して定めるが、製造に関する知的財産権は原則として製造特許技術の開示者に帰属する」というような定めになります。
返還または廃棄
業務提携契約などの終了や開示者からの要請など一定の事由が発生した場合に、受領側に対して秘密情報の返還や破棄を促す規定です。
一般的に、返却・廃棄・消去の選択や指定は開示者が行います。一定期間までに開示者が指定する方法で情報や資料を処分しますが、電子データの場合にはデータを納めたストレージの返却ではなくデータ削除で対応します。
保証・損害賠償
相手方の故意や過失で秘密情報が流出すれば、契約違反(債務不履行)に基づく損害賠償を請求できます。秘密情報の流出による損害は非常に大きな企業損失になるからです。そのため、秘密保持契約のなかに有責側へ損害賠償が請求できるようにしておくことは、秘密情報流出を抑止する意味で非常に重要です。
なお、損害賠償に加えて「秘密情報流出につながる行為の差止請求権」も規定できます。ただし、差止請求権はまだ発生していない損害を防ぐ事前の抑止力であり、民法上の適法性に不安があるため、規定しても有効な効果が発揮できない場合があることを覚えておきましょう。
期間
秘密保持契約上の義務をいつまで有効にするのかを明確に限定する必要があり、基本契約と同期間で自動更新するのが一般的です。ただし、秘密保持契約が終了した瞬間に秘密情報を自社事業に利用されると困る場合は、「基本契約が終了してから◯年間は存続する」と定めます。
存続期間をどこまで継続するのかは、秘密情報の価値や性質によります。情報やノウハウによっては、時間の経過とともに価値を失うものや重要性が変わらないものがあるからです。
例外対応
原則として、受領者が秘密情報を開示する場合は、開示者から事前に承諾を得る必要があります。ただし、官公庁の命令や要請など法令上やむを得ない場合や、役員および従業員などの内部者へオペレーション上仕方がない場合には、必要最小限の開示が求められます。
開示できる要件や対象者の範囲が広すぎると、秘密保持の実効性が薄れてしまうため、厳格な範囲の設定と事前承諾の徹底を課すとよいでしょう。
契約解除
多くの秘密保持契約書に規定される契約解除事由には、目的外利用や対象外への漏洩などの規定違反に加え、反社会的勢力との関係がないことを示すものがあります。ただし、禁止事項への抵触ですぐに無催告解除を許してしまうと、契約を解除された受領者は秘密保持義務の消滅をよいことに、秘密情報の拡散や無断利用をする可能性があります。
つまり、契約解除の規定でとくに大切なのは契約解除自体ではなく、解除後に受領済みの秘密情報の返還や破棄を受領者に強制できるかという点です。
管轄
当事者が揉めた場合に争う裁判所の管轄をあらかじめ決めておくために、「本契約に関する紛争については◯◯地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする」と規定します。
秘密保持契約書のひな形(テンプレート)
BOXILでは、秘密保持契約を検討している場合に利用できるテンプレートを用意しています。契約書を作成する際にはぜひご利用ください。
なお、業界特有のルールや所属団体の方針および業法の改正などに対応するために、適宜リーガルチェックを受け、最新の状態が維持できるようメンテナンスしておきましょう。
秘密保持契約書に印紙は必要?
秘密保持契約書は印紙税法上の課税文書にあたらないので、原則として収入印紙の貼付は不要です。ただし、秘密保持契約書の文書内に継続的取引や業務委託取引など、課税文書に該当する規定が含まれている場合には収入印紙が必要になる可能性があります。他方、課税文書でもオンラインで締結されて紙の契約書が存在しない場合には印紙は不要です。
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