契約解除通知書とは?ひな形付きで記載事項を解説
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契約解除通知書とは
契約期間中は、契約内容から発するさまざまな権利義務および付随する行動や金銭授受がともないます。しかし、契約を解除すればこれらの権利や義務が消滅するため、双方が契約期間中に行ってきたことを辞めなければなりません。そのため、いつ契約が終わるのかを書面で確実に相手方へ伝える必要があり、そのための書面が契約解除通知書です。
契約書には、契約内容や契約による義務の履行とその対価の金額や、支払い時期および支払方法、万が一の場合の対処法やペナルティ(賠償金)などとともに、契約解除に関するルールを定めるのが一般的です。
契約条項として「契約解除権」が認められている場合に、契約解除権の実行要件を満たしたうえで、相手方に解除の意思を口頭で伝えれば契約は適法に解除できます。これは、契約の成立自体が口頭による意思の合意で成り立つことと同じです。
契約解除の3つの種類
契約解除には大きく分けて次の3つの種類があります。
契約解除の種類 | 解除理由 | 詳細 |
---|---|---|
約定解除 | 当事者間で自由に設定した解除理由 | ・手付金相当額を相手に支払って解除する ・破産、民事再生、会社更生の開始決定になった場合 ・重度の滞納になり、支払停止もしくは支払不能になった場合 |
法定解除 | 民法で規定された解除理由 | 債務不履行があり改善されない場合 ・催告解除:相手方に催告をしても期間内に履行されない場合 ・無催告解除:債務の全部または一部の履行が不能である場合、または債務の全部または一部の履行を債務者が明確に拒絶した場合。もしくは一部の履行不能でも、契約の目的が達成されない場合。その他、期間内の履行でなければ、契約の目的が達成されない場合や催告しても履行される見込みがない場合。 ※なお、債権者の故意過失など、債権者に責任があるような理由で債務不履行になった場合は、債権者からの契約解除はできない。 |
合意解除 | 当事者間で解除の合意をした 解除理由 | ・約定解除や法定解除ではなく、当事者が解除に合意した場合 ・解除予告期間の規定にそって解除意思を相手方に伝えた場合 |
契約解除通知書はどちらが送付する?
契約の締結も解除も、それまでの行動を一変させるような変化をともなうため、トラブルになりやすい口頭ではなく、書面で確実に相手方へ意思表示をします。したがって、契約の解除では解約を通知する側が契約解除通知書を作成し、相手方へ通知します。
解約通知書を送付する際の注意点
契約解除通知書は、相手方に到達した事実と到達日付が重要です。しかし、ポストに投函されて相手方が通知を見ているのに「契約解除通知を受け取っていない」と主張する可能性があります。そのため、相手方の対応に不安がある場合には、契約解除通知書を内容証明郵便で作成し、追跡もしくは補償が付いた郵送形式で送付します。そうすれば「いつ、どのような内容の文書が、誰から誰へ差し出された」ということが証拠として残り、余計な労力や揉めごとを防いでくれます。
電子メールやSNSメッセンジャーでも解約の意思表示はできるうえに、日付や時間が送受信履歴として残りますが、内容証明郵便ほどの証拠力とはいえません。また、SNSが普及した現段階でも、内容証明郵便の信頼性や相手に与えるインパクトの効果は絶大です。
契約解除通知書が必要になるケース
契約解除通知書を作成するのは、一般的には債務不履行が露見した状態で、相手方の履行が期待できず改善の見込みがないような状況です。つまり、これ以上契約を継続することにメリットがないような状況です。たとえば、次のような状況が挙げられます。
- 賃貸契約で重度の家賃滞納
- クーリング・オフ制度の実行
- 請負契約や業務委託契約の解除
- 契約不適合責任の解除権実行
賃貸契約で重度の家賃滞納
平素から借主が家賃を慢性的に滞納し、貸主からの採算の督促にもかかわらず支払が滞って久しいような場合には、改善の見込みがないと判断できます。このような慢性的な滞納は軽微とはいえない状況にあるため、貸主からの一方的な契約解除通知が必要です。
なお、2020年の民法改正によって、債務不履行の状況が社会通念上の判断で「軽微」であるときは、たとえそれが解除理由になると契約条項に規定していても、その状況だけをもって契約の解除はできなくなりました。
また、契約は解除できても退去を法的に強制する効力はなく、退去させるには裁判手続きが必要になります。
クーリング・オフ制度の実行
クーリング・オフ制度とは、下記の取引の場合に一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。
期間 | 契約対象 |
---|---|
8日間 | 訪問販売、訪問購入、電話勧誘販売、特定継続的役務提供(エステ・美容医療・語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室・結婚相手紹介サービスなど) |
20日間 | 連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘因販売取引(内職商法など) |
解除通知の方法は、クーリング・オフ期間内に所定のはがきなどの書面か、電子メールおよびファックスなどの電磁的方法で販売会社の代表へ通知します。期間内に発信すれば解約可能です。ただし、クレジットカード決済で支払いをしている場合、同時にクレジット会社にも通知を要します。
請負契約や業務委託契約の解除
家の建築や企業のシステム開発など、仕事の完成とともに報酬を得る請負契約は、仕事が完成するまでは注文側がいつでも解除可能です。しかし、請負側に非がなく、仕事による一定の効果が認められる場合は、役務に相当する報酬を支払います。そのため、請負人の怠慢などを原因に解除する場合は、契約解除通知書に明確な解除理由の記載が必要です。
契約不適合責任の解除権実行
引き渡されたものが契約書に記載された内容と異なり、代替品の差し入れ・価格の減額・補修などでも改善が見込めない場合には、解除権を行使するケースがあります。
契約解除通知書の主な記載事項
契約解除通知書に公的書式はありませんが、最低限記載すべき事項は下記のとおりです。契約解除通知書では、契約書のようなたくさん文言の記載は不要です。契約の特定に必要な情報や通知日付と、解除を決めた詳しい理由および解除する日を端的に記載します。
- 契約内容
- 契約した日付
- 契約解除に至った理由
契約内容
契約解除通知は、契約当事者の片方から他方への一方的な解約通知です。そのため、契約当事者を明確にして誰から誰への意思表示なのかを明確にします。さらに、どのような内容の契約なのかを端的にわかりやすく記載しておきます。
契約した日付
契約を特定するために契約締結日も記載します。クーリング・オフの解約では、契約締結からの経過日数がとくに重要です。
契約解除に至った理由
解約通知者には非がなく、相手方の説明や契約内容にそった対応ではないなどの指摘をして、それがきっかけで解約をすると宣言します。
契約解除通知書のひな形(テンプレート)
契約解除通知書を検討している場合に利用できるテンプレートを用意しました。契約解除通知書を作成する際にはぜひご利用ください。
契約解除通知書はいつまでに送る?
契約解除通知のうち約定解除や法定解除など「契約解除に至った理由」を記載するものについては、通知時点でその解約原因が継続している状況でなければ、解約理由の妥当性に疑義が生じる可能性があります。そのため、一刻も早く通知を送付することが大切です。
また、クーリング・オフのように解約通知期間が限られているものもあるため、迅速に通知書を発送しなければなりません。