メール共有システムとは?導入するメリット・デメリット、選び方
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メール共有システムとは
メール共有システムとは、「info@」や「support@」などの代表アドレスを複数人で共有し、管理できるシステムです。ひとつのメールアドレスを複数人で共有、管理することで問い合わせに対して、誰が、どのような対応をしたのか共有できます。
たとえば、商品を購入したいといった問い合わせがあった場合、メール共有システムを利用すれば担当者は誰なのか、顧客に対してどのような返信をしたのかがわかります。また、顧客に対して二重に返答をしてしまったり、対応漏れをしていたりも防げます。
ヘルプデスクや問い合わせ窓口に導入することで、顧客の問い合わせに対して迅速かつ効率的な対応が可能です。さらに、問い合わせが多い商品や人気のサービスの傾向がわかるため、顧客のニーズを把握できます。
メール共有システムの必要性
メール共有システムは、顧客の問い合わせが多い企業には必要なシステムです。なぜなら、問い合わせが一定量を超えると、人力での把握が難しくなり、対応漏れや二重返答が起きやすくなるからです。
また、複数人でメール対応をしている場合は、同じ質問に対して回答内容が統一されない恐れもあります。
たとえば、メーリングリストをCCに追加して情報共有をしていた場合、メールの件数が膨大になってしまいます。そのため、本来対応しなければならないメールを見落とす可能性は高いです。
メールを返信しないでいると、機会損失のみならず、顧客の信頼も失う可能性があります。
このように、顧客の問い合わせが多い企業にとっては対応漏れや二重返答を防ぐためにメール配信システムが必要です。
メール共有システムの利用シーン
メール共有システムの代表的な利用シーンは次のとおりです。
- カスタマーサポートで対応漏れや二重対応を防止
- ECサイトで対応のスピードアップ
- 営業メールで誤送信といったトラブル防止
カスタマーサポートで利用する場合は複数人で対応するケースが多くなります。そのため、メールの対応状況を「未対応・対応中・対応済」とステータス管理することで、対応漏れや二重対応の防止が可能です。
ECサイトで利用する場合はテンプレート機能を使うと定型返答のスピードが向上します。また、差出人別に担当者を振り分けたり、自動でラベルを付けて担当部署に振り分けたりも可能です。そのため、問い合わせを効率化できます。
営業メールで利用する場合はメール送信前に上司の承認が必要な際に重宝します。メールの対応状況を「承認待ち・承認完了」を追加することでメールを出していいのかどうかの把握が可能です。そのため、トラブルを未然に防げます。
メール共有システムの機能
メール共有システムの機能にはさまざまな機能が備わっています。代表的な機能は次のとおりです。
- 基本機能
- コラボレーション機能
- セキュリティ機能
- カスタマイズ機能
- 連携機能
- レポートと分析機能
それぞれ解説します。
基本機能
メール共有システムの基本機能には、メールの一元管理、メールフォルダの共有、タグ付け、検索機能などがあります。
メールの一元管理は共有メールアドレスやECサイトのお問い合わせメール、チャットといった複数のチャネルをまとめて管理できる機能です。メールを一元管理することで二重対応や対応漏れを防ぐ効果が期待できます。
メールフォルダの共有やタグ付けをすることで目的のメールを絞り込んだり、必要なメールを見つけやすくしたりできます。また、事前に設定をすることでメールを担当者や担当部署に自動で振り分けも可能です。
さらに、ステータス管理機能を利用すれば、現在のメール対応状況をシステム上で把握できます。対応状況が一目でわかるため、対応が必要なメールに迅速な返信が可能です。
コラボレーション機能
細かい申し送りや引継ぎをするための機能です。チャット機能、タスク管理機能、コメント機能などが含まれます。チャット機能やコメント機能を利用することで、引継ぎ担当者へメッセージを残したりメール返信の手間を削減できたりします。
また、タスク管理機能を利用することで、必要な業務の確認がスムーズです。
コラボレーション機能を利用することで、顧客への返信内容の確認をしたい際にチャット上で完結可能です。リアルタイムで相談できるため、他の業務の滞りを防止できます。また、タスク管理機能を用いることで、特定のスタッフへの偏りを防ぎ、平準化できます。
セキュリティ機能
不正アクセスやアカウント乗っ取りを防ぐための機能です。また、データのバックアップやデータセンターの監視機能も含まれます。主にデータ暗号化、アクセス制限、監査ログといった機能が代表的です。
データ暗号化機能を利用すると関係のない第三者がデータを手に入れても閲覧できない状態になります。また、アクセス制限機能を利用すれば、許可されていないユーザーのアクセスができなくなるため、安全性を保ちやすいです。
セキュリティ機能は企業にとって重要な要素のひとつです。顧客の個人情報が流出してしまうと、信用を損なうのみならず、損害賠償といった損失につながる可能性があるため、対策は必須となります。
カスタマイズ機能
メール共有システムを使いやすくするための機能です。システムの設定変更やユーザーインターフェースのカスタマイズ、プラグイン、外部システムとの連携などが代表的な機能です。
たとえば、楽天市場といったECサイトを利用して出店している場合、顧客とのやりとりはECサイトが用意したツールで行わなければなりません。複数のサイトを利用していると、チャットの対応のためにログインとログアウトを繰り返さなければならなくなり、手間がかかってしまいます。
しかし、メール共有システムを利用すれば、情報を一元管理できるため、業務の効率化が可能です。
また、システムの設定やユーザーインターフェースのカスタマイズが柔軟にできるため、ニーズに合わせて使いやすいシステムにできます。ニーズに合わせた設定にすることで、システムの定着が狙えます。
連携機能
メール共有システムは他のシステムやツールと連携が可能です。CRMシステムやカレンダー、ファイルストレージといった外部システムと連携することで、手間をかけずに顧客とスムーズなコミュニケーションができます。
たとえば、CRMシステムと連携すればメールマーケティングができます。購入意欲の高い顧客に対して一斉にメールを送信できるため、手間をかけずに顧客とのコミュニケーションが可能です。あらかじめ設定をすることで、自動でステップメールを配信できるため、手間をかけずに利益の向上が期待できます。
また、ファイルストレージと連携すれば、必要な文書ファイルのやり取りがスムーズになり、業務の効率化が期待できます。
レポートと分析機能
対応者ごとの対応件数や履歴などを集計し、グラフ化できる機能です。代表的な機能はメールの送受信状況や使用状況の分析、パフォーマンスレポートなどです。
レポートと分析機能を利用すれば担当者やメールの種別といいた項目ごとに集計ができるため、どのような対応をしたかの傾向が把握できます。たとえば、トラブルやお問い合わせといった業務のカテゴリ別にメールを分類することで、どのようなお問い合わせ内容が多いのかを把握可能です。そのため、お問い合わせ内容の対応策を立てやすくなります。
また、特定の担当者に偏りも把握できるため、業務の平準化が可能です。どの担当者がどれくらいのメールを処理し、残りの数を把握できるため、手が空いている担当者に業務を割り振れます。
メール共有システムの導入に向いている企業
メール共有システムは、すべての企業にとって必須ではありません。特に導入が向いている企業の特徴を3つ紹介します。
メール対応の件数が多い企業
日々の業務で大量のメールを受け取る企業では、対応の抜け漏れや遅延が発生しやすくなります。1日あたり数十件以上の対応がある部署は、メール共有システムがあると効率的に業務を進められるでしょう。
誰がどのメールに対応したか明確になることで、対応ミスや重複を防ぎ、効率を高められます。
複数人で顧客対応している企業
顧客からの問い合わせに対して、チーム全体で対応する体制を取っている企業は少なくありません。ひとつの窓口アドレスを複数の担当者が確認し、対応を分担しているケースが該当します。
このような企業では、対応の割り振りや進捗状況の把握が課題になりがちです。メール共有システムを導入すれば誰が対応中かを一目で確認でき、チーム内での連携や引き継ぎがスムーズになります。
顧客ごとに履歴や対応状況を把握したい企業
顧客対応ごとにやり取りの履歴を正確に把握したい企業も、メール共有システムの導入に向いています。特に、継続的な取引やサポートが必要な業種では、過去のやり取りが業務の質に直結するといっても過言ではありません。
メール共有システムには、対応履歴の蓄積や検索機能が備わっているものもあります。いつ、誰が、どのような対応をしたかを即座に確認できるため、顧客に対して一貫性のある対応をしやすくなります。
メール共有システムのメリット
メール共有システムのメリットは次のとおりです。
- 業務効率化の向上
- コラボレーションの強化
- セキュリティの向上
- 顧客満足度の向上
それぞれ解説します。
業務効率化の向上
メール共有システムを導入することで業務効率化の向上につながります。たとえば、現在のメール対応はどのような状態なのかが一目でわかるため、複数人で対応していても重複してしまうケースを防げます。
また、電話やSNS、チャットといった他のチャネルでの問い合わせもシステム上で一元管理ができるため、迅速な対応が可能となり、業務効率化が可能です。業務が効率化できれば、メール対応の品質向上にもつながります。
テンプレート機能が備わっている点も魅力のひとつです。頻繁に寄せられるお問い合わせに対しては、あらかじめ回答をテンプレート化することで回答できます。
コラボレーションの強化
メール共有システムがあればリアルタイムで情報共有が可能です。トラブルを未然に予防できるのみならず、迅速な対応につながります。
また、タスク管理も統合できるため、何を優先して処理をするべきかがわかります。従業員への業務の割り振りや引継ぎもスムーズになるため、リモートワークやチームを分散して業務に当たる際の情報共有がスムーズです。
セキュリティの向上
メール共有システムを導入することでセキュリティの向上につながります。データ暗号化、アクセス制限、監査ログといった機能があるため、不正利用や乗っ取りといったリスクの低下が可能です。
データの暗号化は第三者がメールを入手しても内容がわからない状態にできます。また、アクセス制限機能は許可されていないユーザーのログインを防げるため、情報漏えいのリスクを低下につながります。
さらに、監査ログ機能はメールボックスの所有者やアクションの詳細が記録されます。
顧客満足度の向上
メール共有システムを導入することで顧客満足度の向上につながります。
たとえば、メール対応状況を一元化すれば迅速なメール返信が可能です。顧客の立場からすると質問に対する回答が素早く、丁寧に返ってくることは企業への信頼につながります。
メール共有システムのデメリット
メール共有システムは多くのメリットがありますが、注意すべき点もいくつか存在します。導入前にデメリットを理解し、適切な対応策を考えておくことが大切です。
対応チャネルの制限がある場合がある
メール共有システムのなかには、メール対応に特化しているものもあります。
他のチャネル、例としてチャットや電話、SNSなどとの連携ができない製品も存在します。こうした場合、複数の顧客対応ツールを使い分ける必要が生じ、かえって管理が煩雑になることもあるでしょう。
このような問題を防ぐには、あらかじめ自社の対応チャネルを整理し、対応可能なシステムを選ぶことが重要です。チャネル横断で一元管理ができるツールを選べば、業務の分断を防ぎやすくなります。
誤操作や情報漏えいリスクがゼロではない
複数人でひとつのメールアドレスを共有する以上、操作ミスや対応漏れが起きる可能性はゼロではありません。
返信相手を間違える、誤ってメールを削除してしまうなどのトラブルも考えられます。特に情報管理のルールが曖昧なまま使い始めた場合、ミスや漏えいのリスクは高まります。
このリスクを減らすには、操作履歴が残るシステムや、権限を細かく設定できるツールを選ぶとよいでしょう。加えて、使い始める前にルールを明確にし、全員で共有することも有効です。
慣れるまでに時間がかかることもある
新しいツールを導入すると、使い方を覚えるまでに一定の時間がかかります。
メール共有システムも例外ではなく、慣れないうちは操作ミスが起きる、対応スピードが落ちるというもあるでしょう。特に従来の個別対応に慣れているチームでは、導入当初に戸惑いが見られることが少なくありません。
この課題を乗り越えるためには、導入時のトレーニングや、マニュアルの整備が役立ちます。また、段階的に機能を活用することで、無理なく定着できるでしょう。
メール共有システムの選び方
メール共有システムの選び方のポイントは次のとおりです。
- 導入目的とニーズを明確にする
- 必要な機能が搭載されているか確認する
- コストと予算を考慮する
- 連携サービスを確認する
このようなポイントを押さえて、目的や予算に合ったものを検討しましょう。
導入目的とニーズを明確にする
メール共有システムを導入する際は導入目的とニーズを事前に明確にするのが重要です。メール共有システムは複数の種類があるため、目的によってサービスを選ばないと機能が足りなかったり、反対に使わない機能があったりします。
たとえば、使用しているお問い合わせのチャネルがメールのみならず、チャットやLINE、Xといった複数である場合、複数チャネルを一元管理できるシステムがおすすめです。
一方で、メールのみのお問い合わせである場合は、メールに特化したシステムを選ぶとよいでしょう。メール特化型の方が複数チャネル型よりも安価の傾向があり、なかには特定の業界に特化したシステムもあります。
必要な機能が搭載されているか確認する
必要な機能が搭載されているか確認することも重要です。
たとえば、メールのほかに、LINEやフォームなど複数チャネルからの問い合わせを一元管理したい場合に、メールだけのシステムを選んでしまうとうまく活用できません。
あらかじめ必要な機能が搭載されているか確認しましょう。解決したい課題とおすすめの機能は次のとおりです。
| 解決したい課題 | おすすめの機能 |
|---|---|
| 二重対応、対応漏れなど | メールの一元管理 |
| 不正アクセス、アカウントの乗っ取り、データバックアップなど | セキュリティ機能 |
| タスク管理、業務連絡、業務の引継ぎなど | コラボレーション機能 |
| 外部システムとの連携、ITリテラシーの違う従業員が利用しやすい環境作り | カスタマイズ性 |
また、業務を効率化できる自動化のための機能が備わっているかも確認しておきましょう。
コストと予算を考慮する
メール共有システムを導入する際は導入コストと運用コストを考慮するのが重要です。初期導入費用や月額費用、メンテナンスコストをシステムごとに比較し、費用対効果がよいものを導入しましょう。
料金はIDごとの従量制が一般的です。そのため、システムを利用する人が増えると、料金も加算されるため、どれくらいの人数が利用するかも計算に入れる必要があります。
また、料金プランも検討しましょう。安価の料金プランでも基本機能は利用できます。高額のプランは基本機能に加えてカスタマイズの種類が増えたり、強固なセキュリティになったりするため、費用を抑えて導入したい際は安価のプランで始め、必要に応じて高額のプランに変更するのがおすすめです。
連携サービスを確認する
メール共有システムを導入する際は連携できるサービスを確認することが重要です。特にECサイトやCTI、CRM、SFAを利用している場合は連携できるか確認しておきましょう。
たとえば、ECサイトと連携できれば、楽天市場やAmazonの管理画面を行き来することなく、メールの確認、返信が可能です。そのため、業務効率化だけでなく、二重対応や対応漏れを防げます。
また、CRMと連携できれば、購入意欲の高い顧客に対して一斉にメールマーケティングができるため、利益向上が可能です。
メール共有システムで管理を効率化
メール共有システムは導入することで、対応漏れや二重対応を防止できます。対応漏れや二重対応があると機会損失のみならず、顧客の信頼を失うかもしれません。
一方で、システムを導入すると現在のメール対応状況が一目でわかるため、業務の効率化やメール対応の品質向上につながります。丁寧で迅速なメールの返信は顧客満足度の向上につながります。さらに、業務の平準化やセキュリティの向上、コラボレーションの強化も可能です。
顧客のお問い合わせが多い企業はメール共有システムを導入して、メール対応を効率化させましょう。
