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健康保険とは?社会保険・国民健康保険との違いや退職後の”任意継続”について解説

最終更新日:(記事の情報は現在から1594日前のものです)
国民全員が加入を義務付けられている健康保険とは、あらかじめ決められた保険料を払っておくことで病気や怪我になった際に、病院での保険料が控除されるものです。社会保険や国民健康保険との違い、退職後の任意継続など転職時にも役立つ情報を解説します。

健康保険とは

健康保険とは、生活をしていて病気やケガになってしまったときに、安心して病院にかかったり、必要な給付を受けとったりするために、あらかじめ決められた保険料を払って備えておく保険です。「国民皆保険」という言葉のとおり、日本国民全員の加入が義務付けられています。

健康保険には種類があり、職業に応じて健康保険(被用者保険)と国民健康保険のいずれかに加入し、毎月決められた保険料を支払い、体調が悪いときには恩恵を受けられます。

社会保険、国民健康保険との違いは?

会社員の方が加入する健康保険は、別名「社会保険」「被用者保険」とも言われており、同じものとして扱えます。一方で、国民健康保険とは、自営業者や無職の方といった方々が加入する保険です。

健康保険は3種類

健康保険は大きく3つに分けられます。国民皆保険制度の日本では、すべての人が保険に加入する必要があります。しかし、職業や立場によって加入する保険は異なります。

健康保険

健康保険は別名社会保険や被用者保険とも言われており、企業に所属している社員や、公務員の方などは全員加入が義務付けられています。また、社員の扶養家族についても同じ健康保険に加入することになっています。

健康保険は企業の規模によって加入先が分かれており、主な加入先は次のとおりになっています。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ):中小企業の従業員とその家族
  • 組合管掌健康保険(組合健保):大企業の従業員とその家族
  • 共済組合:公務員や私立学校教職員とその家族など。※その他、さまざまな共済組合があります
  • 船員保険:船員が加入

このうち、職業で加入先が決定する協会けんぽ・組合健保・共済組合などを総称して「被用者保険(職域保険や社会保険とも)」と呼ばれます。

国民健康保険

健康保険に加入していない方や、生活保護を受けている方以外は、国民健康保険に加入する必要があります。具体的な対象者については次のとおりです。

  • 自営業の方とその家族
  • 農業や漁業に従事している方とその家族
  • パートやアルバイトなどで、健康保険に加入していない方
  • 職場を退職して職場の健康保険から離脱した方
  • 3か月を超える在留資格を得ており、住所を有している外国籍の方

また、国民健康保険は「地域保険」とも呼ばれています。

後期高齢者医療制度

従来は老健制度といった形で高齢者向けの保険制度がありましたが、平成20年4月から新しい医療制度として後期高齢者医療制度が始まりました。

75歳以上のすべての方と、65歳から74歳の間で寝たきりといった一定の障害があると認定された方が加入できます。これらの方々は加入されている保険から脱退し、後期高齢者医療制度に加入します。

共通する保険内容

健康保険(社会保険)や国民年金に加入されている方の保険適用範囲の治療における自己負担額は同じになっています。具体的には、小学校入学前は2割、小学校入学後から〜70歳未満までは3割、70歳〜75歳未満までは2割です。

なお、後期高齢者医療制度が適用される方は自己負担額が1割となっています。ただし、現役並みの所得を有する方については自己負担は3割です。

また、次のような内容も共通しています。

  • 高額療養費:自己負担額の上限が定められているため、一定額以上は払わなくて良い
  • 出産育児一時金:加入者や家族が出産をした際に、現金給付が受けられる

健康保険と国民健康保険の違い

共通部分もありますが、「健康保険」と「国民健康保険」の差は大きいです。

健康保険(被用者保険)は、企業で働く人を保護するという意味合いが強いため、国民健康保険(地域保険)に比べて受けられる恩恵が大きいのが特徴です。違いをいくつか紹介していきます。

健康保険は家族分の保険料を払う必要がない

健康保険については、家族について「扶養」の考え方が適用されます。そのため、扶養家族分の保険料については支払う必要がありません。

もちろん健康保険証も渡されますし、同じように利用できます。。結婚したり子どもが生まれたりして家族が増えた場合であっても、支払う額は上がりません。しかし、収入によって保険料は算定されるので収入があがれば負担額は大きくなります。

一方で、国民健康保険は世帯全体が課税対象となります。扶養という考え方がないため、国民健康保険対象の人それぞれに額が決められており、世帯で対象となる人全員分を合算した保険料を支払う必要があります。保険料の通知書は世帯主宛に送られてくるため、世帯主が家族全員分を支払う義務を負います。

保険料額の上限は設定されているものの健康保険と違い、家族が多いほど負担は重くなります。

負担割合が異なる

健康保険(被用者保険)の場合は、給与額によって支払額が決定されるため、収入が多いほど保険料が高くなります。また、保険料は会社と従業員が半分ずつ負担するようになっています。

一方で国民健康保険(地域保険)はすべて自分で支払う必要があります。また、健康保険は企業から支払われる給与に基づきますが、国民健康保険はすべての収入に基づいた金額になるため、複数の事業をやっていればその分高額になります。

給付内容が違う

先述のとおり、健康保険(被用者保険)は働く人を保護する意味合いからうまれたため、傷病手当金や出産手当金といった休業補償も行われます。そのため、健康保険には休業している間でも労働者の収入が減って困らないようなセーフティーネットの役割があります。具体的な補償内容については次のようになっています。

傷病手当金

被保険者が病気やけがによって働けなくなり、連続して3日以上勤務できなくなった場合、4日目から、一日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が勤務に復帰するまで支給されます。支給期間の上限は18か月となっています。なお、企業から傷病手当金以上の報酬額が支給された場合には支給されません。

出産手当金

出産により会社を休み、企業から報酬が受けられない場合、産前42日(多胎分娩の場合は98日)から産後56日までの期間、欠勤一日につき標準報酬日額の6割が出産手当金として支給されます。出産予定日が遅れた場合も遅れた日数分給付日が増えます。

国民健康保険には補償がない

赤ちゃんからお年寄りまでが所属する国民健康保険には、「仕事を休む」という概念自体がありません。そのため、個人事業主などが働けなくなった場合に何らかの補填が行われることはなく、保険料の負担も続くままになります。

ただ、国民健康保険でも出産育児一時金として42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合については40,4万円)支給されます。

会社退職した場合、保険はどうなるか

企業に所属している間は健康保険への加入が定められています。しかし、企業を退職した後、転職先が決まっていなかったり、独立して個人事業を行ったりする場合は国民健康保険に切り替える必要があります。

しかし、一定期間であれば健康保険(被用者保険)に加入したままの状態を維持できる任意継続という制度があります。この制度を選択すると、退職時の収入にもとづき決まった保険料を支払えば、変わらず健康保険が利用できます。

健康保険を任意継続できる条件

健康保険を任意継続するためには、健康保険への加入実績が2か月以上あり、退職後20日以内に各都道府県にある協会けんぽ支部で手続きを済ませる必要があります。加えて、任意継続できるのは2年間と決められており、その間に転職先を見つけて転職先の健康保険に加入したり、保険料の支払いが少しでも滞ってしまったりした場合には、自動的に任意継続は止められてしまいます。

健康保険から国民健康保険への切替方法

転職や独立、もしくは失業などによって企業から退職し、健康保険から国民健康保険に切り替える場合、勝手に切り替わることはないため、手続きを行う必要があります。

手続きに関しては必要な書類を用意し、お住まいの市区町村の役場窓口で行う必要があります。しかし、現在は新型コロナウイルス流行による感染拡大防止のため、郵送といった手段で行う必要もあるため、くわしくは各自治体に確認する必要があります。なお切り替えに必要なものは次の三点です。

  • 所属する健康保険団体から発行される資格消失証明書
  • 世帯主および保険切り替えをする当人のマイナンバー通知カード、もしくは個人番号カード
  • 印鑑

任意継続を行わなかったり、保険の切り替えを行わなかったりしてしまうと、保険料未納といった問題が発生してしまいます。必ずいずれかの措置を行うようにしましょう。

健康保険を維持するメリット

独身の場合は、国民健康保険に切り替えても、健康保険(被用者保険)を継続しても保険料に大きな開きは出ません。しかし、妻(夫)や子どもといった扶養家族が多い人は、健康保険の任意継続が良いでしょう。

なぜなら、国民健康保険の場合、同一世帯の家族分の保険料を支払う必要があるからです。任意継続であれば、家族分の保険料は引き続きかからずに維持できるため、差額は大きくなります。

気をつけなければいけないのは、一度健康保険の資格を失って国民健康保険になると任意継続には戻れません。どちらを選ぶか決めきれないなら、一旦任意継続の手続きを行うのが良いでしょう。


なお失業された場合には雇用保険から給付を受けとれます。詳しくは次の記事をご参照ください。

雇用保険(失業保険)とは?保険料・加入条件・必要な書類を完全解説
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健康保険の中身を理解しよう

国民皆保険制度が整っている日本では、75歳になって後期高齢者医療制度が適用されるまでは健康保険(被用者保険)か国民健康保険(地域保険)のいずれかに加入しなければいけません。

どちらに加入するかは自身の職業によって決められるため選択の余地がありませんが、企業を退職したあとには健康保険を任意継続するか、国民健康保険に切り替えるか選択ができます。選択によっては保険料が大幅に増えることもあるため、自身の状況を踏まえて慎重に検討するようにしましょう。

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