AI(人工知能)のビジネスモデル!データ分析活用、売上向上の事例を解説
AIを活用したビジネスの現状
ビジネスシーンにAIを導入する動きは数年前から各方面で注目されていましたが、最近では企業への導入事例も増えており、いよいよその有用性が世間的に認知され始めているといえます。
それでもAIビジネス自体はまだまだ黎明期にあり、法的な問題や権利関係に関する諸々の論点については十分に議論されていません。
しかし、多くの企業が今後さまざまな分野でAIをビジネスに取り入れる動きが広まってくることは間違いないでしょう。
そこで各々の企業にとって重要課題となるのが、AIを活用して利益につながるビジネスモデルをいかに構築するかということでしょう。
AIのビジネスへの応用事例を紹介しながら、AIを活用したビジネスモデル構築のポイントについて説明します。
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AIとは
AI(人工知能)とは「Artificial Intelligence」の略語であり、人間の知能に近づけたコンピューターシステムのことを指します。
SF映画などでは、人間と見間違うような高度な知能と自律的な思考力をもつ存在のように描かれていますが、現段階ではAIはそういったレベルには至っておらず、私たちの知的作業を代替させるツールとしての意味合いが強くなっています。
自ら学習する
ただし、人間が物事を学習するように、AIも自ら学習することによる推論や判断が可能です。
従来のコンピュータープログラムでは、目の前の課題や問題に対して、事前プログラムによって決められた処理を行い、回答を出力するというプロセスで問題の解決を行ってきました。
このレベルにおいては、現在のAIもそれほど変わりがあるわけではありませんが、現在のAIはあらかじめ適用すべき処理をプログラムすることなく、AI自らが学習してその場で適用するべき処理を決定できるようになる点に違いがあります。
状況に応じて柔軟な対応も
AIを備えたコンピューターは、これまでデータとして蓄積したパターンを根拠として、ある程度は状況に応じて柔軟な選択をすることが可能です。
AIの機械学習には、最近話題のディープラーニングをはじめとしたさまざまな種類がありますが、人間があらかじめ学習用のデータをコンピュータに実装し、その学習プログラムに基づいてAIが「経験」を積んで学習していくというプロセスが基本となっています。
さらにその学習したモデルを現実の状況(データ)に適用することによって、さらに精度を上げていく仕組みになっています。
そして最終的には、ある一定の分野において非常に高い確率で正しい判断ができるようになるわけです。
AIの進化とAIビジネスの興隆
このようなAIの技術向上にともなって、この仕組みをビジネスに取り入れようという動きも活発になってきました。
現在、すでにさまざまな企業の商品やサービスが導入され、活用がはじまっています。
たとえば、もっとも早くAIが取り入れられた分野としてはインターネットの検索エンジンや、Siriのようなスマートフォンの音声対応アプリ、Googleの音声検索といったものが挙げられるでしょう。
あるいは、いわゆるビッグデータの解析によるマーケティング施策の提案や、顧客の嗜好分析といったビジネスに直結する分野にもどんどん進出しています。
いまやAIは私たちが日常的に触れる商品・サービスの一部になっているといっても過言ではなく、多くの人が一度はAIが組み込まれた製品を使用したことがあるという時代になっているのです。
AI活用のメリット
AIをビジネスに活用するメリットとしては、常に高スピードで学習を続けさせることで、これまでマンパワーで支えていた単純な作業の代替が可能になることが挙げられます。
人の手では困難であったり時間が掛かりすぎていたりしたタスクを簡単に実行させられることもメリットの1つです。
当然、AIは未学習の状態では複雑な作業をさせることはできないため、人間の手であらかじめ知識を与えてある程度の学習をさせておく必要があります。
それに加えて、現場で継続的なトライ&エラーをさせ続ける必要もあります。
しかし、ひとたびそういった環境を整えることができれば、あとはAIが自ら学習して作業効率を改善していってくれます。
人間とは違って疲れることも休息が必要ということもあないため、一定の分野では人間以上のパフォーマンスを発揮してくれることが、AI活用の最大のメリットといえるでしょう。
AIのビジネスへの導入例
それでは、現在報告されているAIのビジネスへの導入事例について紹介していきましょう。
コールセンター
企業のコールセンター業務にもAI技術が活用されはじめています。
三菱東京UFJやみずほ、三井住友などの大手銀行のコールセンターや保険会社などにはIBMが開発したAI「Watson(ワトソン)」が導入されています。
IBM「Watson」はすでにさまざまな業界の約200社に導入されているAI技術であり、機械学習と自然言語処理を利用して必要な情報を素早く取り出す、非構造化データの分析をしてくれる、などの技術を持っています。
これを活用することにより、たとえば、問い合わせをしてきた顧客との会話内容をWatsonの音声認識システムがリアルタイムにテキスト化し、業務マニュアルやQ&Aデータから、その内容に適合する回答候補をオペレーターに提示することができます。
これによって、銀行などでは電話口でオペレーターが調査する手間や時間を省き、顧客に対してより迅速で正確な回答を実現しています。
AIタクシー
事業内容:通信事業を中心とし、ケータイ電話サービスやスマートライフ事業を展開
2017年2月、NTTドコモはAIを使ってタクシーに乗りたい客や、そのような方がいる確率の高い場所を予測して教えてくれる「AIタクシー」の概要を公開しました。
スマートフォンの位置情報から街中の人の流れを観測し、過去の乗車データや天気といった要素も考慮しながら、数十分後のタクシー需要をAIが地域別に導き出すというものです。
メディアにも大きく取り上げられたことがあるため、知っている人も多いでしょう。
本来、ベテランのタクシードライバーと新人ドライバーの売上を比較すると、およそ2倍もの差が出てしまうことがあるといわれています。
そこでAIタクシーを導入することによって、新人ドライバーでも売上を上げることができ、タクシー会社全体としても増収を見込むことができます。
アサヒビールによる実証実験
事業内容:酒類の製造と販売
アサヒビールでは、新製品の需要を予測するためにAIの機械学習システムを採用し、自社の需要予測と実需の乖離によって起こる欠品や不良在庫の発生を減らす取り組みを行っています。
これまでは社内会議やベテラン担当者の判断などに基づいて製造量を調整していましたが、欠品や不良在庫の廃棄がしばしば発生していました。
そこでNECによる最先端のAI技術である異種混合学習技術を採り入れ、発売直後の売れ行き傾向が似ている過去の製品を自動検索させ、そのデータを参考にしながら製造量を調整する取り組みを始めました。
これによって在庫率を過去の製品と同程度に納めることに成功しています。
ベーカリーショップ・飲食店の事例
いまや中小企業でもAIを積極的に取り入れて、自社の業務改善に取り組むことのできるAI技術が開発されています。
たとえば、パン屋やベーカリーショップのレジ装置に導入されはじめているBakeryScan(ベーカリースキャン)は、購入者がパンをトレーに載せてレジに置くと、このシステムが設置されているカメラからパンの画像を認識して種類を判別してくれます。
これによってパンの数量と価格から合計購入金額が自動で算出される仕組みになっており、新人の店員でもスムーズにレジ業務を行うことが可能です。
こういったAIによる画像認証技術はラーメン店などの飲食店でも導入され始めており、たとえば店の前に設置したコミュニケーションロボットに来店客の顔を認識させ、3回目の来店客にクーポンを発行するといったサービスを提供している店舗もあります。
AIを用いた帳票管理
請求書などの各種帳票の処理にもAI技術が使われ始めています。
事業内容:損害保険の販売
たとえば、東京海上日動火災保険では、今年(2017年)2月から個人の保険契約者が送付してきた手書き書類(請求書)をAIを使って処理する新システムを導入しています。
このシステムは、たとえ読みづらい字でも前後に書かれた文字や文脈などからAIが連想して判別し、データ処理を行ってくれるものです。
9割以上の精度で正確に判読でき、人間が手入力するよりも処理時間が50%程度短縮できるという結果になっています。
同社では年間約170万件ほどの手書き書類が届いており、AIの導入によって業務時間の短縮や効率化が実現できました。
AIを用いた労務管理
さらにAIを用いた労務管理にも注目が集まっています。
ITプラットホームソリューションの提供
日立ソリューションズでは、同社の人事向け総合ソリューションである「リシテア」シリーズの最新製品として、最先端のAI技術を取り入れた「リシテア/AI分析」を提供しています。
リシテアシリーズ自体は、これまで1,000社以上、160万人を超える導入実績があるシステムです。これまでに築き上げてきた大量のデータをAIに解析させることにより、たとえばメンタル面に問題を抱えている可能性のある人の推測や、他部署とのモチベーションの差異を可視化するといった機能をもっています。
これまでは、スタッフのモチベーションやメンタルといった精神面の要因はなかなか把握することが難しいとされてきました。
しかしAI技術を利用することで、問題を抱えているスタッフを救済しながら、人材活用を効率化できるようになってきました。
ビジネスにおけるAI活用のポイント
以上のようなさまざまな企業への導入事例を踏まえて、実際にAIをビジネスに活用する際のポイントについて説明します。
ビジネスモデルを工夫する
上述のように、すでに多くの企業や組織がAIをビジネスシーンに取り入れ、効率的な業務運営や商品開発・マーケティングなどに活用しはじめています。
この傾向はこれからどんどん進んでいくことは間違いないので、はじめはAIの導入というだけで付加価値がついていたものが、徐々に差別化の要因にならなくなってくることが予想されます。
そこで重要となるのが、AI技術の発展とともに成長できるしっかりとしたビジネスモデルを構築することです。
たとえどれほど優秀で便利なシステムだったとしても、AI自体はあくまでもツールであるため、確実に収益に結びつけることができなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
企業として顧客に提供する付加価値を維持しつつ、常に進化し続けるAI技術を確実に活かせるかどうかは、ビジネスモデルの質にかかっていると言っても過言ではありません。
全社視点で目的を明らかにする
何を目的としてどの分野にAI技術を導入するのかを全社的な視点から考える必要があります。
単純に便利だからといって盲目的に導入しても、既存のシステムに満足しているスタッフは積極的な活用を躊躇してしまうかもしれません。
まずは自社の問題を認識し、それを解決するためのオプションのひとつとしてAIの導入を検討すべきでしょう。当然、導入の際には各部署のスタッフへの説明や調整が欠かせません。
最終的な構想を明確化しておく
最終的に実現したい状態はどういうものかという構想のないままAI技術を取り入れても、その利便性を活かしきることはできないでしょう。
事実、AIを取り入れようとしている企業のなかには、ゴールが具体的に設定されていなかったり、IT技術を盲目的に信頼して過度な期待をしていたりなど、導入自体が目的化してしまっているケースも少なくないようです。
そのような状態から結果を出すのは容易ではありませんので、実際にどのようなシーンでAIを活用し、どのような価値を企業にもたらすのかを明らかにしておく必要があるでしょう。
収集データの質を重視する
AIを進化させるために最も補完すべきものは、アルゴリズムといった複雑な要素ではなく、実はデータそのものであることが多いといわれています。
これはAIを開発する側だけの問題ではなく、AIを活用する側にもいえることです。
AIは学習によって自ら精度を上げていくことができますが、そのベースともいえるデータの精度が成長に大きな影響を与えます。
そのため、事前に必要なデータを企業側でいかに大量に集めておくかということが重要になってくるのです。
質のよいデータを多く集めることができればその分AIの学習精度も高まり、高いパフォーマンスを発揮してくれるようになります。
AIを活用したビジネスモデル設計のヒント
最後に、これまでの導入事例やAI活用のポイントを踏まえて、AIを活用したビジネスモデルを設計する際に考えるべき事柄について説明します。
特殊なニーズの受け皿となるサービス開発する
上述のように、いまや多くの企業がAIをビジネスに採り入れ、さまざまな分野で活用しはじめています。
単純にAIを導入することを強みにしていても、すぐにそれが差別化要因ではなくなってしまう可能性が高いでしょう。
しかしAIの強みをよく理解し、それを長期的に活かすことのできる特殊なニーズを満たすことができれば、長期的に安定したビジネスになると考えられます。
たとえば医学分野では、うつ病のように脳が関係してくる病気の兆候のモニタリングや、スポーツ向けのコーチングアプリなどが存在しています。
それぞれのAIを横断的に活用してみる
顧客のニーズから逆算して、複数のAIシステムの統合やデータの共有化を考えながらのモデル設計も考えられます。
これによって時代の変化に柔軟に対応できるようになり、多種多様な顧客ニーズに合わせた運用がしやすくなります。
あるいはそういった技術ソースを活かして、データを保有してはいるものの活用し切れていない事業を支援する、といった立ち位置でのビジネス展開も考えられるでしょう。
AIによってリアルとデジタルを融合する
リアルとデジタルの融合という観点からAIを捉え、それを実現するようなビジネス展開を目指すという視点も重要です。
今後ますますデジタル技術は進化し続けるのは明らかです。
その可能性と現実の空間を組み合わせることによる革新的なビジネスを展開できる余地はまだまだ残っていると考えられます。
しかし重要なのは、自社の状況を客観的に把握し、どのような構想のもとでAIを活かしていくのかという視点を忘れないことです。
一口にリアルとデジタルの融合といってもさまざまな方法が考えられるので、全社的にじっくりを腰を据えて計画していく必要があるでしょう。
AIの特性と可能性について理解し最適なビジネスモデルを設計
AI(人工知能)技術を活用したビジネスモデルの構築について、AIの仕組みから実際の企業への導入事例とともにポイントを解説してきました。
単にAIを導入しただけでは、ビジネスとして差別化したことにはなりません。
あくまでも業務の効率化や意思決定の精度向上のためのツールとして捉えながら、明確な目的のもとで導入を進める必要があります。
今後、多くの企業がAI技術をビジネスに活用することが予想されます。
その動向を注視しながら、自社に最適な活用法を模索していきましょう。
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