ティール組織とは?実現のための3要素と事例 - 上司不要の次世代組織論のポイント
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- ティール組織とは
- 上司やマネージャーが不要に
- ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
- ティール組織実現のための3つのブレイクスルー
- Wholeness(ホールネス)
- Evolutionary(エボリューショナリー)
- Self Management(セルフマネジメント)
- ティール組織に至るまでの5つの段階
- Red(レッド):衝動型組織
- Amber(アンバー):順応型組織
- Orange(オレンジ):達成型組織
- Green(グリーン):多元型組織
- Teal(ティール):進化型組織
- ティール組織の知っておくべきポイント
- 助言や対話が重要
- ティール組織はパラダイムであり手法ではない
- ティール組織は業種や規模に関係なく適用可能
- ティール組織は完璧ではない
- 達成型組織との違い
- ティール組織のメリット
- ティール組織の失敗・デメリット
- ティール組織の構築が難しい
- 優秀な人材を集めようとする
- ティール組織が目指す未来
- 社員が会社の存在意義を考え貢献する
- 職場の自分と本来の自分の乖離をなくす
- ティール組織を導入している事例
- ティール組織を目指してマネジメントの常識を変えよう
- BOXILとは
ティール組織とは
ティール組織とは、1960年代後半にケン・ウィルバーのインテグラル理論の中で提唱された組織ステージレベルの一つです。経営層や上司という立場である人材が、マネジメントを行わず組織として仕組みが完成し、かつ各個人がクリエイティブに活動している組織を指します。
上司やマネージャーが不要に
これまでの組織体系には上司によるマネジメントは当然とされてきましたが、ティール組織では上司やマネージャーを必要としません。
ティール組織は組織の達成すべき目標や目的に合わせて、それぞれが考えて行動することが重要です。そのため、これまでのマネジメントの概念を撤廃し、セルフマネジメントが必要不可欠になります。
組織マネジメントについて知りたい方は、次の記事をご覧ください。
ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
ティール組織について、フレデリック・ラルーが2014年に著書「Reinventing Organizations」で提唱しています。
日本語版である「ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」は、2018年に発刊さ、従来の組織論とは一線を画す新しい組織モデルに、大きな反響を呼びました。
ティール組織実現のための3つのブレイクスルー
ティール組織は登場したばかりの組織形態であるため、確立できる明確な手法は、まだ存在しません。ティール組織の実現のために、ラル―が重視する考え方が次の3つです。
Wholeness(ホールネス)
ティール組織におけるWholenessとは、思い切って自分自身のすべてを職場に持ち込むことです。職場の心理的安全性を高め、他の人に対してありのままの自分を見せても、傷つかず受け止められるような環境作りに注力します。
ありのままの個性を出せる組織は、自分と組織が持つ目的のために最大限の力を発揮します。
ティール組織を目指す企業の中には、自分らしく働くために子どもやペットを連れて来ることを認めているところもあります。
Evolutionary(エボリューショナリー)
ティール組織におけるEvolutionaryとは、組織の存在目的を確認し続けることです。創業者が決めたビジョンではなく、環境に応じて進化する組織の存在目的を意識します。
社員に対して、組織の存在目的に対して貢献できているか、といったアプローチで奮い立たせます。
Self Management(セルフマネジメント)
ティール組織におけるSelf Managementとは、自己管理能力のことであり、指示を待たない個人の意思決定が求められます。ティール組織では、意思決定に関する権限と責任を全構成員に与えられます。意思決定を適切に行うには、他者の助言を得られるシステムが重要です。
セルフマネジメントを実現するためには、次の3つが重要です。
- 情報の透明化:パフォーマンスや給料を含めたあらゆる情報を公開
- 意思決定プロセスの権限委譲:個人の意思決定を尊重しながらも、組織的なフィードバックも届く
- 人事プロセスの明確化:採用・退職、給料決定のプロセスが独自に明確化され、社長や役員の力が及びにくい
ティール組織に至るまでの5つの段階
組織の進化段階は5つに分かれており、それぞれ色で表現されます。ティール組織のティールとはTealと表記され、青と緑の中間の色です。5つに分けられた進化段階の特徴について解説します。
Red(レッド):衝動型組織
レッド組織は、ワンマン経営者の個人の力によって運営している組織です。今から1万年前に確立したと言われる組織形態であり、恐怖支配が特徴です。オオカミの群れのイメージです。
中長期的というより短期的な計画で組織を運営し、力のある人の影響が大きく、良い意味でも悪い意味でも依存している状態です。
Amber(アンバー):順応型組織
アンバーは琥珀色であり、厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって情報管理を行い、指示命令系統が明確な状態で運営する組織です。軍隊のような階級制による上意下達である点が特徴です。
個人は組織の中で与えられた役割に沿って行動します。そのため、リーダーに依存することはなくなり、再現性が高く長期的に安定して継続できる組織モデルとなっています。
変化や競争より階級的ヒエラルキーが優先されるため、変化の多い時代に対応できません。
Orange(オレンジ):達成型組織
オレンジ組織は、階級構造を維持しながら、環境の変化に柔軟に適応できるように発展した組織形態です。現代の企業の多くは、オレンジ組織であるといえます。機械のようなイメージです。
この組織では、個人は成果をあげることによって昇進できます。成果を効率よくあげることに特化した組織形態であり、変化対応と生存競争が激しく、イノベーションが起きやすいです。
しかし、この働き方は機械のようであるため、人間らしさを失うことや過重労働が問題となっています。
Green(グリーン):多元型組織
グリーン組織は、各個人が人間らしくあることを追求した組織形態です。各個人の主体性を尊重し、現場に十分な裁量を与えるボトムアップ式の意思決定プロセスが特徴です。オレンジ組織より風通しが良く、イメージは家族です。
組織のメンバーは互いに思いやりを重視し、リーダーはメンバーにとって活動しやすい環境を作ります。すべての人に平等な機会を得られるように気を配ることも、リーダーの役割です。
しかし、個人の意見を尊重するあまり決定が遅れ、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。また、個人の裁量が大きくなったとはいえ、階級制度は残ったままです。
Teal(ティール):進化型組織
ティール組織は、組織が社長や株主のものではなく、組織を一つの生命体として捉えます。メンバーは、生命体である組織の目的を実現するために、共鳴しながら関わっていく特徴があります。
強力な権限を持つリーダーが存在せず、自身で意思決定することが求められます。メンバー同士の信頼に基づき、ルールや仕組みを工夫しながら、目的実現のために組織運営を行います。
ティール組織には2つの形態があります。ティール組織の形態的な特徴から、役職を残す形態と役職を持たない形態に分けられます。
ティール組織とホラクラシー型組織の違い
ティール組織には明確なビジネスモデルはありませんが、ホラクラシー型組織には存在します。上下関係がなく、意思決定が分散されている点で共通しています。
ティール組織は、レッドからグリーンという組織形態を経て辿り着く、社員各自の自律的判断で機能する組織概念です。ホラクラシー型組織は、厳密なルールのもとで運営される、実践的な経営手法です。
ティール組織の評価制度
メンバーの報酬や評価は、基本給や福利厚生など各組織によってベースは変化しますが、360度評価といった全員が納得する評価方式を採用しています。
ティール組織の知っておくべきポイント
ティール組織を作りたいと考えている方は、次のポイントを押さえておきましょう。
助言や対話が重要
ティール組織では助言や対話が非常に重要な役割を果たします。
この組織形態では、誰でもどのような判断をして良いですが、そのために専門家や周囲の仲間からの助言が必要です。あくまでも助言なので、最終決定するのは本人の判断に任されます。
メンバー同士で交流して進めていく中で、何をすべきかを判断し仕事を進めていけるようになります。その中で、最適なリーダーを見つけ、関わるメンバーで助言し合いながら進めていくため、上司の役割はマネジメントではなく、業務に対する助言になるのです。
ティール組織はパラダイムであり手法ではない
組織のタイプというのは色分けして表現されるため、ティール組織も同様に一般的な組織の枠組みとして考えられがちです。
ティール組織は、これまでの組織論とは異なった新しいパラダイムであり、手法ではありません。他の組織論のように決まった形のモデルがないのが特徴です。
ティール組織は業種や規模に関係なく適用可能
ティール組織は、スタートアップ企業や一部の業種にしか適用できない組織形態ではありません。ティール組織を形成する企業には、数万人の社員を抱える企業もあり、業種も多岐に渡ります。
組織の規模や業種は関係なく、組織とメンバー間に信頼関係が構築されるだけで、ティール組織へと生まれ変わるのです。
ティール組織は完璧ではない
ティール組織には、決まったやり方や条件がありません。それぞれの会社によって違うやり方で導入されるのが一般的です。そのため、ティール組織は必ずしもベストではなく、変化するものであることを理解しましょう。
また、組織のメンバーの特徴や業種によっては、ティール組織ではない組織形態が望ましい場合があります。そのため、ティール組織を形成した方は、本当に正しい形態なのか考えることが重要です。
達成型組織との違い
組織としての成功を一番の目的として動くのが達成型組織であり、メンバー個人の自己実現を目指すことで、結果的に組織の目的を実現するのがティール組織です。
達成型組織は従来の組織モデルであり、組織としての社会的な成功を目的にしています。メンバーは組織の目的を達成するために機械のパーツのように働きます。
組織活性化について知りたい方は、次の記事をご覧ください。
ティール組織のメリット
ティール組織では、各個人に会社の意思決定権があるため、責任感を持って行動できるようになります。また、それに伴って営業力や情報管理能力といったスキルが高まり、会社全体の利益につながります。権力の分配により、権利の乱用や高い地位の社員の暴走は起こり得ません。
ティール組織は、完成すると社内での分裂やストライキといったリスクを抑えられます。
ティール組織の失敗・デメリット
ティール組織は非常に魅力的な組織形態ですが、作るのに失敗した例もあるようです。そこで、ティール組織が失敗してしまう原因やデメリットについて解説します。
ティール組織の構築が難しい
今まで構築されていたヒエラルキー構造をなくしたから、ティール型組織になるとは限りません。むしろ、ヒエラルキー構造でトップダウンの指示がある方がうまくいく場合もあります。
組織の世界観をそのまま導入することが難しいため、既存の組織に取り入れる際は細かな試行錯誤が必要です。
優秀な人材を集めようとする
ティール組織では、優秀な人材だけを集めようとすると失敗します。
ティール組織に必要なことは、各個人の個性を受け止めることです。社員同士が自由に対話することも大事となり、組織内の人間の価値観や感覚の一致が求められます。
ティール組織が目指す未来
ティール組織が目指す未来について紹介します。ティール組織の実態を掴めない方が多いなか、ティール組織になることでどのような未来を目指しているのでしょうか。
社員が会社の存在意義を考え貢献する
ティール組織になることで、社員自身が会社の存在意義を考え、それに対して自分は何か貢献できているかということを考えられます。これにより、個人が主体性を持って働けるようになり、何が会社にとって有益か意識できるようになります。
職場の自分と本来の自分の乖離をなくす
組織に個性をしばられて、自分らしさを閉じ込めてしまうような環境では、圧倒的な結果を出すことは困難です。ティール組織では、職場の自分と本当の自分の乖離をなくす環境作りが行われます。そのため、ありのままの自分を発揮でき、個人のパワーを引き出せます。
ティール組織を導入している事例
実際にティール組織として運営されているオランダの非営利在宅ケア組織 Buutzorg(ビュートゾルフ)の例を紹介します。
Buutzorg(ビュートゾルフ)は、オランダ国内で全850チーム、10,000人が活躍する組織であるにも関わらず、チームリーダーとなる存在はいません。1チーム最大12名まで限定することでそれぞれのチームを独立した組織とさせ、定期的にメンバー同士でミーティングをして進捗や仕事内容を確認するという形で運営されています。
ティール組織を目指してマネジメントの常識を変えよう
組織作りというのは10社あれば、10社すべて違うやり方なのは当然のことです。そのため、必ずしも正解というのは存在するわけではありませんが、マネジメントの方法を変えることによって社員の意識を変えられます。
こちらの記事では人間の5大欲求を利用したマネジメント手法を紹介しています。
もし、これから自社の組織作りに一手加えたいと考えているのであれば、ぜひこれを機会にティール組織を目指し、新しいマネジメントでの組織作りをしてみてはいかがでしょうか。
BOXILとは
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