RPAの導入に失敗する原因と対策は?事例も紹介
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- RPAとは
- RPAの導入に失敗する原因
- 導入の目的が明確になっていない
- 業務の棚卸しができていない
- 自動化できない業務をRPAに任せている
- 運用ルールがないままRPAを使っている
- メンテナンスを怠っている
- 必要な知識が不足している
- RPAを理解する担当者がいない
- 運用が属人的である
- 導入効果を検証・把握できていない
- RPA導入に失敗しないための対策
- RPAを導入する目的をはっきりさせる
- 業務を整理して自動化できるか確認する
- 担当者を決め、運用ルールを定める
- メンテナンスにかかる工数を把握する
- 簡単で小規模な業務から自動化する
- どのような成果を得られたか検証を行う
- 可能なかぎりベンダーの支援を使う
- RPAの失敗事例
- ITリテラシーが不足していた
- 複雑な作業を自動化の対象にした
- いきなり全社で導入してしまった
- RPAは手順を踏まえて導入する
- BOXILとは
RPAとは
RPAとは、「Robotic Process Automation」の頭文字をとった用語で、人間に代わってロボットが作業を自動化するシステムを指します。たとえば次のような作業です。
- 請求書や勤怠管理などのデータ収集・分析業務を行う
- SNSで投稿されている口コミを収集する
- サイトの閲覧者数や滞在時間などをレポートにまとめる
- Excelに記述されたファイルをWebアプリに転記する
RPAでは、顧客や従業員の情報、そのほか事務作業で扱うさまざまなデータを収集・分析し、目的にあった業務を実行可能です。一度RPA側の設定を行えば、指示どおりに業務を遂行してくれます。多くの業務がある中で、大量の定型作業をこなしたいときに適しているといえるでしょう。
ロボットが作業を代行するため、ヒューマンエラーが起きないのも大きなメリットです。設定を誤らなければ初歩的なミスは基本的にありません。ミスを見つける工数が削減されるため、その分クリエイティブな仕事に注力できるでしょう。
しかしながら、RPAツールを導入したにもかかわらず、失敗に終わってしまった事例も少なくありません。
RPAの導入に失敗する原因
RPAの導入に失敗してしまう原因として、次のものがあげられます。
導入の目的が明確になっていない
一番ありがちなのは、RPAを導入する目的が明確になっていない場合です。目的がはっきりしていないと、実際にツールを使う現場は混乱し、RPA本来のメリットを享受できません。
多くの企業が、RPAで業務効率化やコスト削減に成功しているのは事実です。ただし、他社が使っていることを理由に導入しても、成果はなかなか得られないでしょう。失敗しないためにも、導入の目的を明らかにし担当者(導入の先頭に立つ人)と、現場の間にて目的の共有が必要です。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
xxxxの業務を自動化したいから導入する | RPAが便利そうだから導入する |
業務の棚卸しができていない
RPAを使いこなすためには、業務の棚卸しを行う必要があります。業務の棚卸しとは、社内にどのような業務があるのか洗い出して整理することです。棚卸しができていないと、自動化すべき業務とそうでない業務が曖昧になり、RPAの効果を発揮できません。
棚卸しを行う際は、現場スタッフからのヒアリングが重要です。現場が非効率だと感じている業務は何なのか、ロボットが介入するべきでなく人の手でやるべき業務は何かなど、現場の声に耳を傾けましょう。実際に業務にあたるのは、現場で働いているスタッフです。実際の業務に役立つよう、しっかりと情報収集を行いましょう。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
現状の業務がこれだけある中でこの業務を自動化したい | 工数が足りないからとりあえず自動化したい |
自動化できない業務をRPAに任せている
自動化できない業務や自動化させるべきでない業務をRPAに任せた結果、失敗してしまうケースも少なくありません。前提として、RPAが得意とする業務は作業手順がルーティン化されている業務です。
Excelのデータを転記したり、SNSの口コミを収集したりといった定型業務の自動化に役立ちます。人間の判断が必要となる複雑な業務は状況によって作業手順が変わるため、RPAがうまく機能しません。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
単純作業や反復作業を自動化したい | 意思決定や状況判断を自動化したい |
運用ルールがないままRPAを使っている
RPAでは、これまで人間の手で行ってきた業務を、代わりにロボットが対応してくれます。しかし、業務の進め方に変更があった場合、ロボット側に修正の指示をしなければならないのが難点です。変更があったとき、会社としてのRPAの運用ルールが決まっていないと、RPAをうまく管理できず統制が取れません。
RPAはインターネット環境を必要とするため、PCやネットワークの不調によって不自然な動きをする場合もあります。RPAを正しく使うための運用ルールを設定したり、何かトラブルが起きた場合の対処を決めたりすることが大切です。
メンテナンスを怠っている
RPAのメンテナンスを怠ることでツールに不具合や誤作動が頻発し、RPAが本来の力を発揮できないケースです。メンテナンス例として次のものがあげられます。
- ロボットの動作確認
- ロボットの稼働状況の把握
- ツールのアップデート
- トラブル発生後のメンテナンス
RPA導入時には、メンテナンス方法をはじめ、トラブル発生時のマニュアルを作成しておくとスムーズです。万が一問題が起きた際の担当スタッフを決めておくと、滞りなく対応ができるでしょう。
定期的に現場スタッフにRPAツールの稼働について聞き取りを行うのもおすすめです。社内にRPAのメンテナンスができる人材を確保し、定期的に改修しましょう。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
エラーや不具合を都度対処 | 作成したらすべて自動化できるので放置 |
必要な知識が不足している
RPAの導入・運用にあたっては、ある程度の知識やノウハウが必要です。知識が不足していると、そもそもツールを使えなかったり、結果に対して適切なアプローチができなかったりと、困りごとが増えます。
RPAを操作する従業員には一定のITスキルが必要です。担当者(導入の先頭に立つ人)はもちろん、RPAを扱う現場スタッフにも最低限の知識が求められます。プログラミングやシステム開発が豊富な人材がプログラミングの知識があると理解も早いでしょう。導入にあたっては研修の工数もあわせて計算することが大切です。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
プログラミングできる人または研修を受けた人が運用 | 導入前後いずれにおいても知識を習得していない人が運用 |
RPAを理解する担当者がいない
RPAは、ExcelやSFA、CRMなど他のビジネスツールと比べて世間に浸透していません。そもそもRPAを認知している人が少ないため、担当者(導入の先頭に立つ人)は慎重に決めましょう。RPAについて何も知らない従業員を担当にしてしまうと、まずは理解を深めてもらうための教育をしなければなりません。
RPAをスムーズに導入・運用するためにも、RPAの特性をある程度理解した担当者を配属しましょう。知見のある人材が一人もいない場合は、自社で調べるだけでなく外部の勉強会やセミナーに参加してもらい、理解を深めていくプロセスが必要です。
運用が属人的である
そもそもRPAを扱える人材が少ないため、運用は属人的になりやすいです。運用が属人化すると、担当者の異動や辞職があった途端にRPAの運用ができなくなってしまいます。RPAの操作は未経験の従業員が片手間で扱えるほど容易ではありません。
担当者がいつ交代してもいいように、RPAを運用する可能性のある従業員に向けて、研修の実施や運用マニュアルの作成といった形で体制を整えておくことが大切です。
良い例 | 悪い例 |
---|---|
担当者が複数在籍。担当者が現場の従業員にやり方を共有 | 担当者1人のみがメンテナンスを実施 |
導入効果を検証・把握できていない
RPAを導入したはいいものの、効果検証を行っていないため、運用が曖昧になってしまうケースです。そうならないためにも、改善したい業務に対してRPAの導入前と導入後の両方の数値を把握しておきましょう。
また、RPAを導入した業務の効率は上がっていても、RPAの運用や管理に工数がかかっていれば、全体でマイナスになる可能性もあります。入力作業時間や残業時間など導入前後の数値をリサーチし、トータルでRPAの効果が出ているのか把握することが大切です。
RPA導入に失敗しないための対策
RPA導入の失敗原因をお伝えしましたが、次の施策を行うことで失敗リスクを低減できます。
RPAを導入する目的をはっきりさせる
なぜ自社でRPAを導入するのか、その目的を設定することが大切です。導入すること自体が目的になると、導入して満足してしまい、効果も薄くなってしまうでしょう。たとえば次のとおりです。
- RPAで経理を効率化し、売上アップを図りたい
- RPAで〇〇部門の残業を〇時間削減し、従業員の満足度を高めたい
目的をはっきりさせることで、どのようにRPAを運用するのかの方針も明確になります。どのような業務や部門にRPAを導入し、何を実現したいのか考えてみましょう。
業務を整理して自動化できるか確認する
RPA導入前に、対象業務を整理し自動化できるかどうか確認しましょう。
たとえば、業務手順が状況によって変化する作業はRPAに向きません。まずは業務を可視化して、イレギュラーが起こる可能性がないか、イレギュラーが起きてもRPAで対応できる範囲かを客観的に判断しましょう。
自動化できるか整理する例
業務 | 自動化の可否 |
---|---|
定例会議の資料作成 | グラフ出力は◯, 分析は× |
稟議書のチェック | 記載漏れの指摘は◯。承認の判断は× |
勤怠の月末締め | 該当者のチェックやメールの送信は◯ |
新事業の企画 | × |
担当者を決め、運用ルールを定める
RPA導入にあたっては、RPAに対する知見やノウハウをもつ担当者(導入の先頭に立つ人)をアサインできるかが重要です。該当する人材がいなければ、RPAに対して前向きな従業員をアサインし、育成を行いましょう。
人材をアサインしたら運用ルールを決めます。ルール設定では次のポイントを意識しましょう。
- どこの業務までをRPAに任せ、どこをアナログのままにするか明文化する
- RPAの操作方法や設定方法、更新などをマニュアルにまとめる
- トラブルが起きた場合の対処手順や責任者を決める
運用ルールが曖昧だと、せっかくロボット化させたのに人間が確認・修正をしなければならず、かえって非効率になってしまいます。業務範囲や責任者、トラブル対処などを明文化しておきましょう。
メンテナンスにかかる工数を把握する
RPAを円滑に運用するために必要なメンテナンス事項を洗い出し、具体的にどのくらいの工数がかかるのか把握しましょう。
- ロボットの稼働状況は2週間に1回チェック(担当者2名で3時間を想定)
- バグやエラー発生後はツールのアップデート作業を行う(担当者2名で2日間を想定)
メンテンナンスにあたっては、知識やスキルのある人材が必要です。担当者にプログラミングやシステム開発経験が乏しい場合や、担当者がいても社内リソースがない場合は、新たに人材を雇い入れることも検討しましょう。
簡単で小規模な業務から自動化する
RPAをいきなりすべての業務に導入するのではなく、まずは簡単かつ小規模にてシステムを導入し自動化しましょう。狭い範囲の業務から徐々に適用範囲を拡大していけば、結果的に失敗しにくい形で業務効率化を実現できます。
まずは小さな範囲でRPAを導入し、活用方法を確認したり、シナリオ作成の経験を積んだりと、RPAの基本的な内容や流れを把握しましょう。またスモールスタートでは、起こるトラブルも小さいです。トラブルの対応にもじっくりと時間を使えます。スモールスタートで、試行錯誤を繰り返しながら現場に浸透させるのが重要です。
どのような成果を得られたか検証を行う
RPAを導入して終わるのでなく、実際にどのような成果を得られたか検証を行うことが大切です。たとえば次のような項目を検証します。
- RPA導入で「残業時間」がどのように変化したか
- RPA導入で「売上や業務利益」がどのように変化したか
- RPA導入で「従業員の満足度」がどのように変化したか
残業時間や売上、利益は数値で測定できます。計測の難しい「従業員の満足度」については、1on1によるヒアリングやアンケートなどによって見える化させることが大切です。
可能なかぎりベンダーの支援を使う
RPAのツール自体を提供するベンダーのサポート体制も重要なポイントです。社内にRPAに精通した従業員がいれば対応できますが、そうでない場合は、とくにベンダー側の支援が必要不可欠でしょう。ベンダーによるサポート体制の例として次のものがあげられます。
- RPAをスムーズに導入・運用するための伴走体制
- 担当者のスキルアップを目的とした講習の実施
- シナリオ作成によるRPA作業手順の明確化
導入に失敗しないためにも、利用を検討しているツール、ベンダーがどのようなサポートを提供しているのか事前に確認しておきましょう。
BOXIL CHANNELでは、動画でもRPAの選び方を解説しています。あわせてご覧ください。
RPAの失敗事例
RPAは、定型的で反復作業の多い業務へ活用すると、仕事の効率化が図れます。しかし、RPAやITに関する知識が不足していたり導入目的を明確にしていなかったりしたために、思うような成果を得られていない企業があるのも事実。そのような、実際にRPAを導入して失敗した企業の事例を紹介します。
RPAの成功事例は次の記事で紹介しています。
ITリテラシーが不足していた
RPAによる、自動化を制御するには相応のITリテラシーが求められます。担当者をはじめRPAを利用する現場スタッフの知見が浅ければ、ツールを使いこなせず、思ったような効果も得られません。
なかには、派遣社員やパートスタッフにRPAの運用を依頼している企業もあるかもしれません。しかし、RPAを利用する場合は、ITの知識やプログラミングのスキルを持ち合わせているのが好ましく、不慣れな方が操作すると使いこなせるようになるまで時間がかかるでしょう。
▼実際にボクシルに寄せられた口コミ
複雑な作業を自動化の対象にした
RPAを導入しても、自動化する作業が不明確だったり複雑な作業を自動化させたりする場合では、効率化が難しいです。近年はAIによって、非定型業務の自動化もできるように進化しつつあります。しかしながら依然、現場ではルーティン業務を自動化させるのが主流です。
お伝えしたとおり、どこまでRPAに任せて、どこまで人間の手で行うのか、業務範囲を明確にしましょう。人間の判断が必要な場合やイレギュラーが発生する作業は、RPAは不向きなので注意しましょう。
▼実際にボクシルに寄せられた口コミ
いきなり全社で導入してしまった
RPAに期待しすぎたあまり、いきなり全社で導入し、運用や管理が回らなくなってしまうケースです。RPAに限らず、新しいツールを導入する際は、次のようなリスクを想定できます。
- 従業員が使いこなせずツールが浸透しない
- 規模が大きいためトラブル発生時の対応が回らない
- ナレッジが溜まっていないため解決手段を見つけるのに時間がかかる
導入直後はナレッジがほとんど溜まっていません。そのため、もし何かトラブルが起きた場合の対処に時間がかかってしまいます。そもそも従業員がRPAを使いこなせず、ツール自体が社内に浸透しない可能性も高いでしょう。失敗しないためにも、まずは部署単位やチーム単位など、スモールスタートさせることが大切です。
RPAは手順を踏まえて導入する
RPAを導入する際は、まず自動化すべき業務範囲を明確にし、導入目的を全社で共有することが大切です。「導入すること」が目的になると、現場へ浸透しない可能性があります。導入目的を明らかにしたうえで、次のようなステップを踏みましょう。
- RPAツールを最小限の規模で導入
- RPAツールを評価
- RPAツールを継続するか入れ替えるか判断
- (入れ替える場合は)RPAツールの要件詰め
- RPAツールの選定
- RPAツールのトライアル
- RPAツールの再導入
すぐに現場へ浸透させるのではなく、まずは小さな範囲から自動化し、PDCAを回しながら徐々に対象を拡大させましょう。
どのようなRPAツールがあるのか確認したい方や自動化する業務を整理できている方は、次のボタンよりサービス資料をダウンロードしてさっそく選定に移りましょう。
RPAツールをより多く比較したい方は、次の記事をチェックするのもおすすめです。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
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