売買契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説
売買契約書とは
売買契約書とは、買主が売主から商品やサービスを購入する際に、その契約内容や注意事項について異議なく合意したことを記録するために作成される契約文書です。売買契約書は売買の対象によって決定事項が異なるため記載すべき内容も異なります。
売買契約書の種類
売買契約書には、取引をする物品(有形物)や、サービス・ノウハウ・権利(無形物)など、取引する対象物や取引内容によってさまざまなバリエーションがあります。
売買契約には、下記のような5種類の取引対象商品や契約の用途があります。
売買契約の種類 | 詳細 |
---|---|
物品売買 | 企業間や企業と個人間などで商品の売買を行う場合 |
不動産売買 | 不動産取引を行う場合 |
債権・株式の売買 | 債券や株式など金融商品の取引を行う場合 |
知的財産の売買 | 特許権・著作権・商標権・実用新案権・意匠権など実態のないものの取引を行う場合 |
企業間の継続的取引 | 企業間で長期間に継続的な取引を行う場合 |
5つの売買契約について、それぞれどのようなものかを詳しく解説します。
物品売買
物品売買契約書は、物品(商品)の売買を行う際に作成する契約書で、企業間だけではなく対個人や個人同士の取引でも多く使用します。
物品の売買契約は、原則として当事者が自由に契約内容を決定できますが、物品売買の対象物は見た目が似ていると特定するのが困難です。そのため、対象物(商品)の名称や製造番号および仕様などの、識別番号や特徴を契約書に記載し、売買契約の目的物に対する認識が当事者間で完全に一致するように、明確に1つに特定できるように記載することが重要です。
不動産売買
土地や建物や使用権などの不動産売買を行う際は、不動産売買契約書を作成します。記名押印し、2通ある不動産売買契約書の原本を売主と買主がそれぞれ1通ずつ保有します。
不動産売買契約書は、売買契約手続きを行う不動産仲介会社のうち売主から売却を任されているかつ、物件の内容に詳しい方の仲介会社が作成することがほとんどです。なお、不動産会社が介入せずに個人間で不動産売買を行う場合には、個人がインターネットから入手した売買契約書のひな形を使用することがあります。
しかし、商品が高額であり複数の関係者と歩調を合わせながら契約する不動産売買契約では、一歩間違えれば大問題に発展する可能性があります。そのため、不動産会社が仲介をして契約書類を作成したほうが明らかにリスクは低いです。
そのため、インターネットから入手したひな形はそのまま使わずに、不動産会社にチェックしてもらい、不備のない売買契約が締結できるようにしましょう。
債券・株式の売買
債権や株式は原則として第三者へ自由に売却でき、その際に作成するのが「債権譲渡契約書」や「株式譲渡契約書」です。いずれも「譲渡」とありますが、譲り受けた対価として金銭を支給するため、有償で譲る「売買」を意味しています。
債権とは、発行者が資金調達に協力してくれた方へ渡す金銭の借用証書で、一定期間が経過すると資金提供者へ利子を付与して元本とともに返還されます。債権は、株式と同様に投資対象として人気が高くリスクの少ない金融商品であり、主に国債や地方債などがあります。
株式は、株式会社が証券取引所で投資家に株式を購入してもらって資金調達を行い、業績に応じた配当をします。ただし、株式の売買による差益なら配当よりも高い利益が上げられるため、価格が乱高下するリスクはありますが投資対象として人気の高い金融商品です。
知的財産の売買
「知的財産」とは、発明・考案・植物の新品種・意匠・著作物など、人間が生み出した「財産的価値を有する情報」です。知的財産権には下記の権利が含まれます。
- 特許権
- 実用新案権
- 育成者権
- 意匠権
- 著作権
- 商標権
- 上記の他に知的財産として法令で定められた権利
たとえば、自己使用しない特許権は売却し、出願人の名義を譲受人へと変更することがあります。特許の売却では売却条件が書かれた「特許権譲渡契約書」を作成して記名押印と対価の支払いを行い、特許庁への「移転登録申請」によって出願人の名義が譲受人へ変更されれば完了です。
企業間の継続的取引
企業間で継続的な売買の取引を繰り返し行う場合には、そのたびに契約を締結する手間を省くために、あらかじめ毎回の取引で共通する事項について「基本契約」を締結するのが一般的です。そして、基本契約に含まれない個別の取引については、別途「個別契約」を締結して補完します。
売買契約書の主な記載事項
売買契約書に記載すべき、主な事項について解説します。
- 売買の対象
- 引き渡し
- 代金
- 支払い方法
- 所有移転の時期
- 検査
- 遅延金
- 保証
- 危険負担
- 契約不適合
- 協議事項
- 合意管轄
売買の対象
売買の対象である商品の名称や数量を記載して目的物を明確に特定します。万が一商品に欠陥があった場合や輸送中の紛失および代金の不払いトラブルなどを早急に解決するために、個別の商品を特定できる型番や製造番号などの情報を記載します。
引き渡し
売主から買主へ、商品やサ―ビスを引き渡す期日や引き渡し方法を定めて記載します。その他にも、下記の項目について取り決めをしましょう。
- 引き渡し場所
- 指定場所までの運送費用
- 引き渡し期日までの保管費用
費用の額や負担割合なども、必要に応じて決定し記載しておきます。
また、納期がやむなく指定期日前後にズレる場合や代替品の納品で補う場合など、万が一の場合でも対応できるようにあらかじめ決めておけば安心です。
代金
代金の額や支払時期など、合意した代金を記載します。この代金の多寡によって、契約書に貼付する印紙税の金額が変動します。
支払い方法
代金の支払方法についても忘れずに記載しましょう。支払方法には「現金や手形」「銀行振込」などがあり、売主にとって都合がよい方法を指定するのが一般的です。
支払い方法が銀行振込の場合には、振込手数料は買主負担とするのが一般的です。しかし、念のため「売買代金は甲が指定する銀行口座に振り込む方法によって支払い、振込手数料は乙の負担とする」などのように記載しておきましょう。
所有移転の時期
所有権移転の時期とは、商品やサービスの所有(利用)権限が売主から買主へと移る時期です。一般的には、売主が買主へ目的物を引き渡した時点か、買主から売主へ代金を支払った時点のいずれかです。
なお、原則として目的物は代金と引き換えに渡すものであるため、商品の引渡し日は売買代金の決済日と同日にするのが一般的です。また、動産の所有権を第三者へ対抗できる要件は商品の引き渡しを受けていることであり、不動産の所有権を第三者へ対抗できる要件は不動産登記の完備です。
検査
引き渡された商品を買主が検査する方法や検査期間などについて定めます。通常であれば買主は納品を受けた直後に、商品に契約内容との不適合がないかを検査します。
このとき、買主の検査に期限を設けなければいつまでも修補や交換の請求を待つことになるため、商品売買契約の場合は、買主による検品の期限や不備の指摘および修正要求の期限とルールを定めておきましょう。
遅延金
もしも代金が期日までに支払われなかった場合に、売主が買主に対して請求できる「遅延損害金の金額や利率」を定めて記載します。
保証
完全な商品の引き渡しの判断において商品の品質が特に重要な場合は、契約不適合責任とは別に「保証する品質の基準」について記載してください。
危険負担
商品が自然災害により損害を受けた場合、買主が代金を支払う必要があるのか、または代替品を提供する必要があるのかといった、トラブルが生じる可能性があります。このような場合、契約において買主の義務や責任に関する明確な規定が重要です。
一般的には、商品の引渡しを受けてすでに手元で保管している買主に商品の管理責任があると考えるのが自然であるため、売買契約においても納品(引渡し時)時点を境に、売主から買主へと危険負担(責任)が移転すると判断します。
契約不適合
契約不適合責任とは、商品の数量や品質に不足がある場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。2020年4月に民法の一部が改正(債権法改正)される以前は「瑕疵(カシ)担保責任」と呼ばれていた責任の定義です。なお、瑕疵とは傷や不具合や不備を意味します。
契約不適合責任では、以前の瑕疵担保責任にあった「買主が知り得ない隠れた瑕疵」を売主の責任としていました。しかし、契約不適合責任では契約時に売主が告知した内容と実際が異なるなら、契約不適合責任の対象になり得るという明確な判断基準に変わりました。
協議事項
「契約書に記載のない内容は当事者双方が協議し誠実に解決する」と定めるのが一般的です。
合意管轄
万一のトラブルが裁判に発展する場合に、どの裁判所で争うのかを定めます。
売買契約書のひな形(テンプレート)
BOXILでは、売買契約書のひな形(テンプレート)を無料でダウンロードできます。売買契約書を作成する際にはぜひ利用してください。
売買契約書に印紙は必要?
売買契約書は、契約書の種類によって収入印紙を添付して印紙税を納税しなければなりません。ただし、電子契約の場合には課税対象の紙の契約書がないため、契約書をプリントアウトしなければ印紙税の納税は不要です。
次の表は「不動産の売買契約書」および「企業間で継続的な売買取引を行う売買契約書」に関して、記載された対価の金額に対応する印紙税額をまとめたものです。
契約書記載金額 | 軽減税率 | 原則税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 | 400円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5,000円 | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 | 60万円 |
収入印紙について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また、電子契約システムを利用することで印紙税が不要になることの詳細については、こちらをご覧ください。
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