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【計算式付き】給与計算の正しいやり方 | 注意点もあわせて解説

最終更新日:(記事の情報は現在から152日前のものです)
給与計算の正しいやり方を、計算式や重要な理由を交えてわかりやすく解説します。この記事を読むことで、給与計算に必要な情報、計算手順、注意点など、給与計算の基礎知識を習得できます。

給与計算とは

給与計算とは、従業員に支払う賃金を計算する業務のことです。基本給や残業代、各種手当などの支給項目を合計し、そこから所得税や社会保険料を差し引いて、最終的に従業員の手元に残る金額を算出します。

給与計算は、単なる事務作業ではありません。従業員の生活を支え、自社との信頼関係を築くうえで欠かせない重要なプロセスです。法律に則って正確に計算することはもちろん、従業員が安心して働けるよう、透明性と公平性を確保することも求められます。

給与計算に必要な情報

給与計算を正確に行うためには、次の情報が必要です。これらの情報は、従業員から提出された書類や勤怠管理システムなどから収集します。なお、規定によって必要な情報は異なるため、柔軟に対応しましょう。

情報カテゴリ 詳細
従業員情報 - 氏名
- 住所
- 生年月日
- 扶養家族の人数
- 雇用形態(正社員、パート、アルバイトなど)
- 支払方法(銀行振込、現金など)
- 銀行口座情報
勤怠情報 - 労働日数
- 労働時間
- 残業時間
- 深夜労働時間
- 休日労働時間
- 有給休暇取得日数
支給項目 - 基本給
- 諸手当(通勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当など)
- 賞与
- その他の支給(臨時ボーナスなど)
控除項目 - 所得税
- 住民税
- 社会保険料
- その他の控除(財形貯蓄、組合費など)

給与計算のやり方

正しい給与計算のやり方について、情報の集計から最終的な差引支給額の計算まで、流れに沿って解説します。

1. 総支給額を計算する

総支給額とは、従業員に支払われる給与の総額を指します。基本給に加えて、残業代や各種手当を含めた金額です。総支給額を正確に計算するためには、次の3つの要素を考慮する必要があります。

労働時間の集計

タイムカードや勤怠管理システムなどを用いて、労働時間を正確に集計します。基本となるのは、所定労働時間です。これは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を基本として、会社が独自に定めた労働時間のことです。残業時間や休日労働時間、深夜労働時間なども忘れずに集計しましょう。

割増賃金の計算

残業や休日労働、深夜労働に対しては、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金の計算方法は、労働基準法で次のように定められています。

どのような労働時間か 割増率
法定時間外労働1 1日8時間、週40時間を超えた労働時間 25%以上
法定時間外労働2 1か月60時間を超えた分の労働時間 50%以上
深夜労働 22~5時までの深夜帯の労働時間 25%以上
法定外休日労働 週1日の法定休日に労働した時間 35%以上

残業や休日労働にはそれぞれ割増率が定められていますが、これらは「法定の労働時間や休日」に対して適用されるものです。法律とは別に会社で定めた休日に出勤した、1か月の労働時間が所定労働時間を超えたが労働基準法の定めは超えていない、といった場合は割増の必要はありません。

ただし、就業規則で割増を定めている場合は、それに従って割増をしなければなりません。

手当の計算

通勤手当や住宅手当、家族手当、役職手当など、会社が独自に定めた手当がある場合はその支給条件にもとづいて計算します。

たとえば通勤手当は、通勤距離や交通手段に応じて支給額が異なります。住宅手当は賃貸住宅に住んでいるか、持ち家に住んでいるかによって支給額が異なる場合があります。

手当の種類や支給条件は、就業規則や雇用契約書に従うため、確認しておきましょう。

2. 控除額を計算する

控除額とは、総支給額から差し引かれる金額のことです。主な控除項目としては社会保険料、所得税、住民税などが挙げられます。これらの控除額を正確に計算することで、手取り額を算出できます。

なお、社会保険料のうち労災保険料は事業者負担であるため、本記事では説明を割愛します。

健康保険料と厚生年金保険料の計算

健康保険料と厚生年金保険料は、従業員と会社で半分ずつ負担します。健康保険料と厚生年金保険料の計算式は次のとおりです。

健康保険料(および厚生年金保険料) = 標準月額報酬 × 保険料率 ÷ 2

【標準月額報酬】

標準月額報酬は、一般的にはその年の4~6月の平均給与額で算出されます。ただし、厳密には支払基礎日数(賃金や報酬の支払い対象となる日数)により異なります。詳しくは全国健康保険協会「健康保険・厚生年金保険の報酬の支払基礎日数の変更等について」を参照してください。

【保険料率】

保険料率は加盟している健康保険により異なり、加盟先には「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と「健康保険組合」のおおきく2種類があります。加盟している組合ないし協会の保険料率を参考に保険料を計算します。

「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の場合、全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」をもとに、標準月額報酬に応じて等級および保険料率が決定します。「健康保険組合」の場合は各組合によって保険料率が異なるため、それぞれの規定を確認して保険料率の数値を当てはめましょう。

雇用保険料の計算

雇用保険料は、失業した場合の給付や教育訓練給付などに充てられる保険料です。労働者が支払う保険料率は基本的に0.6%、「農林水産・清酒製造」の一部と「建設の事業」においては0.7%です。雇用保険料の計算式は次のとおりです。

雇用保険料 = 給与や賞与 × 雇用保険料率

※給与や賞与のほか、通勤手当や住宅手当も含まれます

介護保険料の計算

介護保険料は、40歳以上の人が加入する保険で、介護が必要になった場合のサービスに利用されます。保険料率は加入している健康保険組合や都道府県などにより異なります。計算式は次のとおりです。

介護保険料 = 標準月額報酬 × 保険料率 ÷ 2

なお、65歳以上は第1号被保険者として年金から天引きされるため、介護保険料を給与計算時に控除するのは第2号被保険者である40歳以上64歳以下の従業員です。

住民税の計算

住民税は前年の所得にもとづいて計算され、6月から翌年5月までの1年間、毎月給与から天引きされます。1か月あたりの住民税額の計算式は次のとおりです。

住民税 = 納付書記載の住民税額 ÷ 12

所得税の計算

所得税は、国に納める税金です。1月1日から12月31日までの所得にかかる税金で、毎月の給与から源泉徴収されます。この源泉徴収の額はあくまでもおよその金額で、1年間の所得税額が確定する12月に年末調整を行い、過不足があった場合は還付または追加徴収を行います。

課税所得金額 = 給与収入 - 非課税の手当 - 給与所得控除 - 所得控除

上記の計算式で課税される所得金額を計算した後、国税庁の所得税の即算表と照らし合わせることで、税率と控除額がわかります。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率

先ほど計算した課税所得、上記の表でわかった税率と控除額を、下記の計算式に当てはめることで所得税額を求められます。

所得税 = 課税所得金額 × 税率 - 控除額

そして、所得税から税額控除を除いた金額が実際に支払う税金となります。

基準所得税額 = 所得税 - 税額控除

税額控除の具体的な種類については、国税庁「No.1200 税額控除」を参照してください。

なお、令和19年までの確定申告には、所得税とは別に復興特別所得税が発生します。復興特別所得税は、基準所得税額へ2.1%かけたものが基本となります。

復興特別所得税 = 基準所得税額 × 2.1%

その他の控除

上記以外にも、財形貯蓄や組合費、寮費、社宅費などの控除があります。これらの控除額は、従業員との契約にもとづいて計算します。

3. 差引支給額を計算する

差引支給額とは、総支給額からすべての控除額を差し引いた金額、つまり従業員が実際に受け取る手取り額のことです。ここまで計算してきた総支給額と控除額を用いて、次の計算式で求められます。

総支給額 − 控除額

たとえば、総支給額が30万円、控除額が8万円の場合、差引支給額は22万円となります。

給与計算の注意点

給与計算の注意点について解説します。これらのポイントを押さえておくことで、より適切な給与計算ができるようになり、さまざまなトラブルを未然に防げるでしょう。

法改正への対応を怠らない

保険料率をはじめ給与計算にかかわる法改正は頻繁に行われます。これらの改正に対応できなければ、給与計算が法令違反となり、罰則を受ける可能性があります。常に最新の情報を収集し、給与計算システムや計算方法を適宜見直しましょう。

計算ミスは従業員の不信感につながる

給与計算のミスは、従業員の生活に影響を与えかねず、不信感や不満につながりやすいです。計算ミスを防ぐためには、ダブルチェック体制を構築したり、給与計算ソフトを活用したりするなどの対策が必要です。もし計算ミスが発生した場合は、速やかに訂正し従業員に謝罪と説明をしましょう。

セキュリティ対策は万全に

給与計算は個人情報や財務情報を扱うため、セキュリティ対策が欠かせません。情報漏えいは企業の信用を失墜させるだけでなく、従業員に多大な迷惑をかけます。給与計算に携わる担当者は、情報管理の重要性を認識し、パスワード管理やアクセス制限など、適切なセキュリティ対策を徹底しましょう。

給与明細は必ず交付する

労働基準法では、使用者には賃金支払の都度、賃金明細書を交付する義務が定められています。給与明細書には、総支給額、控除額、差引支給額などを記載する必要があります。また、従業員からの質問には、丁寧に説明する姿勢が重要です。給与計算に対する疑問や不安を解消することで、従業員の安心感や納得感を高められます。

労働時間管理と連携させる

給与計算は、労働時間管理と密接に関係しています。残業代や休日出勤手当などを正確に計算するためには、労働時間を正確に把握する必要があります。タイムカードや勤怠管理システムを活用し、労働時間管理と給与計算を連携させることで、計算ミスや不正を防ぎましょう。

正しい給与計算が重要な理由

正しい給与計算が重要な理由についてまとめていきます。これらに関する課題を抱えている企業は、給与計算のやり方を見直すことで解決できる可能性が高いです。

従業員のモチベーションに直結する

給与は、従業員の労働に対する正当な対価です。正確かつ公正な給与計算は、従業員の貢献を適切に評価しているというメッセージを伝え、仕事へのモチベーションを高めます。

反対に、不正確な計算や遅延は不満や不信感を招き、離職の原因になりかねません。優秀な人材を確保し維持するためにも正しい給与計算は不可欠です。

コンプライアンスに配慮する

給与計算には、労働基準法をはじめとするさまざまな法律が関わっています。最低賃金や残業代の計算、社会保険料の控除など、法令に準拠した給与計算を行うことは、企業の社会的責任であり、コンプライアンスの観点からも重要です。法令違反は、企業イメージの低下や罰金を伴うため、正しい給与計算は企業として必須の条件といえます。

経営判断の材料となる

給与計算は人件費の把握や労務管理など、経営上の意思決定に欠かせない情報を提供します。データがあれば生産性を評価したり、適切な人員配置を検討したりできます。また、今後の事業計画を立てるうえでも、人件費の予測は不可欠です。このように、給与計算は成長戦略を支えるのに重要な業務です。

トラブル回避のために正しいやり方で給与計算

給与計算は、従業員の生活を支え、企業の信頼を守るための重要な業務です。法改正への対応、計算ミス防止、セキュリティ対策など、注意すべき点は多岐にわたります。しかし正しい知識と手順を踏めば、けっして難しいものではありません。本記事で紹介した内容を参考に、正確かつスムーズな給与計算を目指しましょう。従業員が安心して働ける環境を整え、企業のさらなる発展につなげましょう。

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