契約書はPDF形式でも有効?メリットや注意点、変換方法
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PDF形式の契約書は有効
PDF形式の契約書は、紙の契約書と同様で法的に有効です。
そもそも契約は当事者同士の合意のみで成立します。必ずしも書面を用意する必要はなく、たとえ口約束でも契約締結が可能です。つまり、PDF形式の契約書でも契約そのものの有効性に変わりはありません。
書面が必要ないにもかかわらず、契約書にもとづいた契約が一般的に普及しているのは、訴訟をはじめとするトラブルの際に証拠を残すためです。契約書の内容は、契約成立の事実やその条件を客観的に証明できるため、裁判中に提出する証拠として認められます。そのため、契約トラブルのリスクを抑えられるよう、事前に契約書を作成するのが理想です。
電子帳簿保存法の要件を満たすとPDFでの保存が可能
PDF形式の契約書を保管するには、電子帳簿保存法の要件を満たさなければなりません。電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿書類の保存方法についてまとめた法律で、契約書や見積書をはじめとする取引関係書類も対象に含まれます。
たとえば、スキャナ保存の要件としては入力期限や解像度、検索機能の条件などが定められています。隠蔽や仮装が発覚した場合、罰則が課されるので注意が必要です。
電子帳簿保存法の概要や要件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
契約書をPDF化するメリット
契約書をPDF化するメリットは次のとおりです。
- 契約業務の効率化につながる
- 印刷費や発送費などのコストを抑えられる
- 管理業務の負担を軽減できる
- ガバナンスの強化につながる
- 柔軟な働き方に対応しやすい
契約業務の効率化につながる
一つ目のメリットは業務効率化につながる点です。
PDF形式の契約書は、メールやチャットで送信でき、オンライン上でやり取りが完結します。手元に原本を1通保管し、もう一方を相手に送り返すといった手間がかかりやすい作業も簡略化が可能です。印刷や発送などの作業が不要になるため、契約業務の効率が向上します。
紙の書面で契約を結ぶ場合の、契約書作成・印刷・押印・発送・保管スペースの確保など、さまざまな作業がなくなるのはPDF契約書の大きなメリットです。
印刷費や発送費などのコストを抑えられる
PDFの契約書で印刷や発送などの作業が不要になると、それに準じるコストの削減も可能です。契約書のPDF化によって削減できるコストとしては、紙の購入費や印刷代、印紙代、発送費など多岐にわたります。
このようなコストは1回の契約においては少額ですが、契約の機会が増えるほど無視できない金額となります。そのため、財務体質の改善や強化につながるほか、コスト削減によって生まれた資金をより重要な領域へと投資できるのもメリットです。
管理業務の負担を軽減できる
管理業務の負担軽減につながるのも見逃せないポイントです。
PDF形式の契約書は、サーバーや業務システムなどに保存するだけで済みます。フォルダ分けといったデータ整理が必要なものの、ファイリングやホチキス留めに比べて工数を抑えられます。ファイルのタイトルや保存日時などでデータを検索できるのもメリットです。
紙の契約書を管理する際の、ファイリング作業やホチキスでまとめる作業などの手間が省けます。また、文書の量が多くなっても、書類棚やキャビネットなどの保管スペースを確保する必要がありません。
ガバナンスの強化につながる
契約書をPDF化すると、ガバナンスの観点でもメリットが生まれます。
紙の契約書を管理する場合、「誰が・どこで・どのような文書を保持しているのか」といった情報を、管理者側でコントロールしにくい傾向があります。すると、契約書を紛失した際に対応が遅れるケースも珍しくありません。万が一、機密情報が外部に流出すると、信用失墜や損害賠償などのトラブルに発展する恐れがあります。
その点、PDF契約書はデジタルデータなので一元管理が容易です。たとえば、契約書管理システムにあらゆる契約書を集約すると、作成者や作成日時、タイトル、更新履歴などの情報を一目で把握できます。
柔軟な働き方に対応しやすい
PDF形式の契約書を利用することで、柔軟な働き方に対応しやすくなります。
仮にテレワーク制度を導入する場合、紙でのやり取りが中心だとすると、契約書の確認や承認のたびに文書を発送しなければならず効率性を損ねます。しかし、デジタルデータならインターネット環境さえあればメールやチャットでの送受信が可能です。働く場所を問わずスムーズに情報をやり取りできます。
契約書をPDF化するデメリット・注意点
契約書をPDF化するデメリットは次のとおりです。
- セキュリティ上の懸念が生じる
- テキストデータに変換するには手間がかかる
- 一部電子化できない書類がある
上記のデメリットは、PDF形式の契約書を利用する際の注意点にもなり得ます。そのため、契約書をPDF化する前に適切な対処策を講じましょう。
セキュリティ上の懸念が生じる
紙からデジタルデータへと移行すると、従来とは異なるセキュリティリスクが発生します。
一例としては、サイバー攻撃やマルウェア感染などが代表的です。サイバー攻撃の場合はデータの窃取や改ざん、マルウェア感染であればデータの消失が起こりかねず、最悪の場合は機密情報が漏えいするような事態に発展する恐れがあります。ほかにも、ヒューマンエラーや不正利用など、内部で問題が起こる可能性も考えられるでしょう。
そのため、PDF形式の契約書を保管する際は厳重なセキュリティ対策が不可欠です。
テキストデータに変換するには手間がかかる
PDFファイルはテキストデータに変換する際に手間がかかります。
本来、PDFファイルにはテキスト情報が含まれていますが、画像のようにデータを読み取るため基本的に内容を編集できません。PDFファイルのテキストデータを読み取るには、OCR(光学文字認識)が必要です。OCRを利用すればPDFや画像といった非構造化データを認識できるため、文章の修正やサイズの変更、色調整などが可能になります。
ただし、専用のOCRサービスを導入したり、OCR機能が搭載されたシステムを利用したりと、事前準備が必要な点には注意が必要です。導入コストも発生するため、費用対効果を正確に見極める必要があります。
一部電子化できない書類がある
契約書のなかには電子化できないものがあります。契約書を作る際に公正証書が必要な場合は、デジタルデータではなく紙での作成・保存が原則です。事業用借地権設定契約書や農地の賃貸借契約書などが該当します。
また、国税関係の帳簿書類のなかでも、棚卸表や決算関係書類などはスキャナ保存の対象外です。つまり、紙での保存が義務付けられているため、PDFファイルとして保存しないように注意しましょう。
契約書をPDF形式に変換する方法
契約書をPDF化する方法は、スキャナと電子契約システムの2種類があります。それぞれメリットとデメリットがあるため、目的や用途に合わせて最適な手法を選択しましょう。
文書をスキャナで読み取る
一つ目は、締結した契約書をスキャンする方法です。社内にあるコピー機や複合機を活用できるため、特別な知識がいらず誰でも容易に利用できます。スマートフォンやデジタルカメラで撮影し、PDFファイルに変換するのも良いでしょう。
ただし、1枚ずつスキャンする必要があるため書類の数が増えると手間がかかります。また、スキャナで読み取ったデータはあくまで原本のコピーなので、紙の原本に比べて法的効力が劣る可能性があります。
電子契約システム上で契約を締結する
二つ目は、電子契約システムで締結した契約書を保管する方法です。
電子契約システムとは、インターネット上で契約書の作成から送付、締結までの流れを完結できるツールです。電子署名やタイムスタンプもシステム内で付与できます。電子署名済みの契約書をPDFファイルとして保存できるため、原本と同じ取り扱いを受けるのが特徴です。
デメリットとしては、導入コストや運用コストが高額になる可能性がある点です。また、システム運用にあたってマニュアルや研修制度を採り入れるケースもあり、運用が軌道に乗るまでに時間がかかります。
対象範囲を決めて段階的に契約書のPDF化を実施しよう
デジタル化やペーパーレス化の重要性が高まるなか、まずは契約書のPDF化から始めるのも一案です。さまざまな施策のなかでも導入ハードルが低いため、デジタル化やペーパーレス化の第一歩としてスタートできます。ただし、書類の数が多い場合は、日常業務に支障をきたす恐れがあるため、対象範囲を決めて少しずつ取り組みを進めましょう。
PDF化した契約書を管理するには、契約書管理システムが役立ちます。データの一元管理や検索、権限管理、外部システム連携といった幅広い機能が搭載されており、効率良く契約書を管理できます。こちらの記事で詳細を解説しているので、契約書管理システムを導入したい人は参考にしてください。