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決算書とは?意味と基本知識 | 財務三表の読み方をわかりやすく解説

最終更新日:(記事の情報は現在から258日前のものです)
決算書とは正式には財務諸表のことです。中でも重要な書類は「賃借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の財務三表です。決算書の意味と内容、3つの諸表はどのように見ればよいのか、用語を含め基本知識についてわかりやすく解説します。

決算書とは

決算書とは、正式には財務諸表のことで、一定期間の企業の財務状況を示す書類です。中でも重要な書類は「賃借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの財務三表です。

  • 賃借対照表(B/S)
  • 損益計算書(P/L)
  • キャッシュフロー計算書(C/F)

決算書の意味と役割

決算書は、税金の申告および経営状況を報告する際に必要となります。また、決算書で、自社の経営状況を客観的に見ることで問題点に気づき経営改善に役立てられます。税務署に確定申告を行う際には必ず提出が必要になるので、企業であれば必ず作成しなければなりません。

決算書が必要になる場面としては、次のようなものが挙げられます。

  • 企業の確定申告を行うとき
  • 銀行に融資の申し込みを行うとき
  • 出資者、取引先などの利害関係者が経営状況を確認するとき
  • 自社の経営状況を把握したいとき

キャッシュフロー計算書の提出は必要か?

貸借対照表や損益計算書については、すべての法人が、税務申告の際に税務署に提出することが求められます。ただし、キャッシュフロー計算書については税務署への提出は不要で、作成義務があるのは金融商品取引法の対象となる上場企業といった一部の企業に限られています。

ただし、財務管理のために自主的に作成している企業も多いのが現状です。

決算書の作成時期は?

決算書の作成時期は企業によって異なります。日本の法律では、最低でも1年に1回、決算書を作成して税務署に申告しなければならないとされていますが、時期については指定されていません。

そのため、会社の戦略や環境に合わせて、繁忙期を避けた都合のよい月を決算月とするのが一般的です。なお、決算月は後から変更可能ですが、定款の変更や税務署への書類提出が必要となるため、頻繁には変えられません。

日本では半数以上の企業が3月決算としており、その他にも6月、9月、12月と3の倍数の月を決算月としている企業が多いです。なお、税務署に決算書を提出する際は、決算日から2か月以内と定められています。例として、3月31日に決算する企業の場合は5月31日までに決算書を作成し、提出しなければなりません。

決算書の財務三表とは

決算書の「賃借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の財務三表を見ることで、資金調達、投資活動、営業活動について把握できます。

賃借対照表とは

賃借対照表とは、ある時点での財産状況を知るための書類です。資産と負債、資本のバランスをまとめたもので、バランスシート(B/S)とも呼ばれます。主に、企業の倒産リスクや財務基盤の安定性を見るための書類です。

貸借対照表では、左側に資金の使いみち、右側に資金調達の方法を表します。

資産 負債

純資産
資産合計 負債・純資産合計
  • 資産とは、企業が所有する現金・不動産・在庫・設備といった経済的価値のあるものです。
  • 負債とは、企業が他者に対して支払う義務のあるもので、支払手形や買掛金などが含まれます。
  • 純資産とは、資産から負債を差し引いた残高で、資本金や資本余剰金などの自己資本が含まれます。

左の資産合計と右の負債・純資産合計は一致します。

賃借対照表を確認する際に一番重要なのは、自己資本(純資産)が十分に計上されているかです。自己資本は、資本金と企業が過去に得た利益の合計で、返済の必要がないものです。

純資産に占める自己資本の割合を「自己資本比率」といい、この割合が高いほど健全な財政状態であると判断できます。一般的な自己資本比率は20〜40%が平均で、40%以上あれば安定といわれています。

簿価と実際の価格に注意

貸借対照表において注意すべきことは、貸借対照表上の価格と実際の価格は異なる場合があることです。

例として、商品在庫として1,000万円が計上されていたとしても、その在庫に1,000万円の価値がないかもしれません。販売できない不良在庫が、1,000万円分存在するだけといった可能性もあります。

他にも、資本金1,000万円と貸借対照表に書かれていても、手元に実際に1,000万円の金額が存在するわけではありません。資本金の1,000万円は在庫や機械のようなさまざまな資産に代わっていますし、資産に帳簿ほどの価値がなければ、その企業の資本金1,000万円は実質なくなっているといったケースも考えられます。

貸借対照表に書いてある帳簿上の価格と実際にその企業が持っている資産の価値は、異なることも多いので注意が必要です。

損益計算書とは

損益計算書とは、企業の1年間の収益と費用をまとめた表です。P/L(プロフィット&ロスステイトメント)とも呼ばれ、売上高から費用を差し引いた利益が記載されます。

【損益計算書】

  • 売上総利益:売上高から原価や仕入費用を差し引いた粗利益で、企業の収益力を示す指標。
  • 営業利益:売上総利益から営業費用を差し引いた利益で、企業の本業の儲けを示す指標。
  • 経常利益:営業利益に営業外収益や営業外費用を加減した利益で、企業の事業全体から得た利益を示す指標。
  • 税引前当期純利益:経常利益に特別利益や特別損失を加減した利益で、税金を考慮する前の利益を示す指標。
  • 当期純利益:税引前当期純利益から法人税や住民税などの税金を差し引いた利益で、企業の最終的な利益を示す指標。

損益計算書の内容を見ることで、たとえば売上が減少した際に、「本業の儲けが減っているのか」「売上自体が減っているのか」「費用がかさんでいるのか」のように経営の問題点を判断できます。

損益計算書で一番注目すべきは、「営業利益」です。これは、売上総利益から、費用を差し引いた利益のことで、企業の収益力を示す数値です。

また、複数の企業を比較する際は「営業利益率」にも着目しましょう。これは、売上高に占める営業利益の割合です。例として、営業利益が500万円の企業が2つあったとして、一方の売上高は5,000万円、もう一方は5億円だとします。この場合、前者の営業利益率は10%、後者の営業利益率は1%です。このように、営業利益率が高いほど、収益力が高い企業といえます。

利益と資金繰り

損益計算書に利益が記載されていたとしても、必ずしも手元の資金が増えているとは限りません。なぜなら、損益計算書では、現金の流れを直接反映していないからです。

たとえば、在庫は売ったときにはじめて売上原価として計上されますが、実際にお金を支払わなければならないのは仕入れたタイミングです。よって、利益が出ていたとしても、それ以上に在庫を積み増ししていれば、会社全体では現金が減っているケースも考えられます。

これがいわゆる「黒字倒産」です。つまり黒字倒産とは、損益計算書上は利益が出ていても、手元の現金不足により支払えなくなったことが原因の倒産を指します。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書とは、企業の1年間の現金の流れをまとめたものでC/Fと略される書類です。損益計算書では、会計期間での資金の回収状況はわかりませんが、キャッシュフロー計算書を見ればわかります。

キャッシュフロー計算書では、現金の流れが「営業」「投資」「財務」の3つの活動に区分されます。

  • 営業キャッシュフロー:売上や仕入など会社本来の営業活動による現金の流れ
  • 投資キャッシュフロー:投資運用や設備投資、固定資産の売却などの現金の流れ
  • 財務キャッシュフロー:株式発行や金融機関からの資金調達、借入金返済による現金の流れ

キャッシュフロー計算書には、営業活動、投資活動、財務活動によるキャッシュフローが記載されており、それぞれのバランスが重要です。中でも営業活動キャッシュフローは、会社本来の事業活動で現金がどのように動いているかがわかるためとくに重要になります。

キャッシュフロー計算書をなぜ作成するようになったか

キャッシュフロー計算書の作成義務があるのは、金融商品取引法が適用される上場企業のみです。しかし、自主的にキャッシュフロー計算書を作成している企業も多くあります。

企業は手元に現金・預金がなくなったときに倒産してしまうので、キャッシュフロー計算書で現預金の流れを確認することが企業の安定性を高める秘訣です。

また、キャッシュフロー計算書は、企業の財務状況を正確に把握できるため、投資家や融資先への情報提供にも役立ちます。

キャッシュフローの重要性を示す極端な例として、どれだけ赤字であっても手許現金さえあれば倒産しないケースも存在します。

たとえば、現代では生活インフラの一部になりつつあるAmazon.comは、創業以来7年連続赤字で2000年代前半までほぼ赤字だったといわれています。

しかし、Amazon.comはこのような赤字を出しながら急成長を続けていました。これは投資家から資金を募ったり、お金の支払いと受け取りのタイミングをコントロールしたりして、手元に現金が残りやすい体制を作ったためと考えられます。

決算書を作成する流れ

決算書を作成するおおまかな流れについて解説します。

会計年度の残高を集計する

まず、会計年度の決算時の残高を集計します。領収書や請求書、通帳コピーといった会計に必要な資料をすべて集めて当年度の全取引を記帳します。

ただし、決算がせまってまとめて記帳するとミスを引きおこす要因となるので、日々の記帳を徹底することも重要です。

次に、決算整理仕訳を行います。決算整理仕訳とは、年度をまたぐ取引を今月と来期に分けて、会計期間の最後に行う仕訳のことです。作業が完了したら帳簿を確認しながら修正していきます。

さらに、棚卸しや固定資産の減価償却も行いましょう。貸借対照表の表示科目である貸倒引当金の計算も行い、決算時点の残高を確定させます。貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などの回収が困難になった場合に備えて、あらかじめ費用として計上する準備金です。

税額を計算する

決算時点の残高をもとに、法人税や消費税などの税額を計算します。仕訳した各勘定科目を、総勘定元帳に転記を行います。手作業の場合はケアレスミスが発生しやすいので、会計ソフトの利用がおすすめです。

会計ソフトを利用すれば、総勘定元帳については自動で作成できるので、簡単に作業が完了できます。

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決算書を作成する

総勘定元帳に記載された取引を、勘定科目ごとに集計して試算表を作成し、記帳の整合性をチェックします。試算表の借方、貸方の合計値が一致しない場合はミスがあるため、修正が必要です。

試算表にミスがなければ、決算書の作成に入ります。決算書で作成する書類は、貸借対照表や損益計算書に加えて、必要な注記情報を含めた個別注記表を添付します。

決算書の作成後は、税務署に決算書類を提出し、税金を納付します。

財務三表以外の決算書

決算書には財務三表のほかに、「株主資本等変動計算書」と呼ばれる書類もあります。株主資本等変動計算書とは、賃借対照表の中にある純資産の変動額のうち、株主に帰属する「株主資本」の各項目がなぜ変動したのかを報告するための書類です。

そのほか、個別注記表を加えて、決算書を「5表」に分類する場合もあります。個別注記表とは、決算書に記載しきれない事項を補足的に記載する書類です。たとえば、会計方針の説明、重要事項の説明、連結財務諸表の注記などが記載されます。

「決算書」とはどこまでの書類を指すのか?

決算書の意味合いは、場面に応じて微妙に異なるので注意が必要です。

たとえば、税務署に提出する決算書とは税務申告のために必要な書類一式のことを指します。具体的には、貸借対照表、損益計算書に加えて、法人事業概況説明書、法人税申告書、地方税申告書、株主資本等変動計算書などが含まれます。

一方で、銀行や取引先に決算書を求められた場合は、貸借対照表や損益計算書の提出だけを求められていることもあります。

決算書を見せてほしいといわれた場合に、どの書類まで含めるのかは、状況によって異なるので注意しましょう。

決算書の読み方を覚えておこう

決算書は、企業にとって重要な経営情報の宝庫です。一社員であったとしても、決算書を読み解き、経営的な視点をもつことはスキルとしても重要なことです。

決算書といっても難しいものではなく、チェックするポイントは一部の数値のみ。最初から理解を諦めるのではなく、少しずつ見るための目を養っていきましょう。上場企業は決算を公開しており、だれでも見られるので、決算書を読むためのよい練習台となります。

気になる決算書を調べて分析したり、同業他社・ライバル企業の決算書の内容を比較したりして、企業の戦略・財務体質の違いを分析するのもおもしろいかもしれません。

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