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営業戦略の立て方と手順は?戦術との違い・スタバとマクドナルド事例

最終更新日:(記事の情報は現在から473日前のものです)
激しい競争を勝ち抜くためには、営業戦略を策定する必要があります。ボクシルでは、BtoBの法人営業の視点から、営業戦略の意味や営業戦略の立て方、また営業戦略と営業戦術の違いについて説明します。

営業戦略とは

営業戦略とは、「売上向上や市場シェア拡大といった目的を達成するために、どの市場や顧客に対して、どのような方法でアプローチするか」を明確にした計画です。

言い換えれば、営業目標を達成するためのシナリオ作成といってもよいでしょう。

たとえば商品の販売では、「低価格戦略」と「富裕層のみをターゲットとした高付加価値戦略」の2つの戦略があります。同じ売り上げ目標を達成する場合でも、戦略によって必要なアクションは異なります。組織が一丸となり目標を達成するためにも、長期的な視点を踏まえた営業戦略が必要です。

また営業戦略を立てることで、競合他社との差異化も図れます。

営業戦術とは

営業戦略と一緒によく使われる言葉に営業戦術があります。営業戦術は、営業戦術を成功に導くために決定する施策のことです。。

たとえば、「低価格戦略により年間売り上げ30%アップする」のような戦略を立てた場合、「激安を強調した宣伝」や「富裕層から中堅層へのターゲット変更」などが戦術にあたります。

戦術は中短期の視点で打ち立て、同じ戦略の下で一つの戦術が不成功に終わったら別の戦術に変えることが一般的です。

営業戦略と営業戦術の違いとは

営業戦略は、経営者や営業幹部が定めます。「営業マネージャーの仕事は、営業戦略を立てること」と言ってもよいでしょう。

一方、戦術は経営者や営業幹部だけでなく、現場のスタッフも考えます。

たとえば、営業パーソンが自分に合った営業戦略手法(戦術)を考える場合もあり、チームや全社で共通の手法を採用し、短いサイクルでPDCAを回すこともあります。

営業戦術は営業戦略の一部であるため、戦略が決まっていないと意味のある戦術はとれません。優秀な営業パーソンも、戦略をしっかり見据えた営業トップの下でしか力を発揮できないのと同じです。

このように営業戦略と営業戦術は密接に結びついた概念であり、双方をよく検討することで、はじめて効果的な営業活動を展開できます。

また、営業戦略と営業戦術では、ゴールまでの長さが異なります。

目標の立て方の例としては「来年度までにリピート客を3%増加させる」といった中長期的な目標(KGI)を策定するのは営業戦略です。一方、リピート客を3%増加させるために「Twitterのフォロワー数を3000人にする」「キャンペーンを開催してクーポン券を配布する」など、KGIを達成するために立てる短期的な施策(KPI)が営業戦術にあたります。

一見、同じように見えますが、しっかりと区別して施策を考えるようにしましょう。戦略と戦術を混同してしまうと、どの目標を最終なのかがわからなくなり、どの指標を基準にしたらよいのか迷ってしまいます。

営業戦略は最終的な指標、営業戦術は短期的な指標と捉えてすすめていくようにしましょう。

営業戦略を立てる手順

営業戦略の立案方法には、現状分析やアクションプランの作成が欠かせません。しかし、目的のない現状分析は、時間の浪費に終わってしまいます。また、数値設定の妥当性がなければ、戦略として十分に機能しないでしょう。

営業戦略の立案は次のステップで行いましょう。

  1. 目標設定
  2. 現状把握
  3. コアコンピタンスに基づき方向性を具体化する
  4. 期間と数値の設定(KGIとKPI)
  5. アクションプランの作成
  6. 行動の改善

ここからは各ステップにおける重要なポイントを解説します。

目標設定

営業戦略を立てるには、営業活動の方向性、つまり目的や目標を設定する必要があります。営業の目的は究極的には予算達成できる売上げを立てることです。しかし営業戦略においてはもう少し具体的な目標の設定が必要です。

目標が具体的でなければ、現状や課題を正しく把握できません。そのため定性的なゴールはもちろん、定量的なゴール(KGI)の設定も行いましょう。

現状把握

目標を設定したら現状把握を行いましょう。下記のような情報を総合的に踏まえ、「目標に対する現在地」を明らかにすることが目的です。

  • 人的資源の状況
  • 他社の状況
  • マーケットの状況
  • サービス(商品)の状況
  • 政治や経済の状況
  • その他、社内リソースの状況

戦略を機能させるためには、無理のない計画が必要です。

企業を取り巻く社外環境にも注意しなければ、戦略が的外れとなってしまうでしょう。また社内の状況から大きく乖離している目標は、社員の士気を低下させます。

「達成困難な目標を達成してこそ意味がある」といった考え方もありますが、野心的な目標は「社員の士気と裁量、能力」が十分に伴った環境でなければ機能しません。そのためサービスやマーケットの状況だけでなく、企業を取り巻く状況を俯瞰的に把握しましょう。

解釈やバイアスによる悪影響を最小限に抑えるためにも、なるべくデータや客観的事実をもとに現状把握を行いましょう。

コアコンピタンスに基づき方向性を具体化する

目標と現在地が明確になったら方向性を具体化します。

目標達成のための手段は数えきれません。そのため、ある程度方向性を定めておかなければ、企業としての一体感は生まれず、戦略として機能しません。

戦略を具体化する際は、次のような項目を定義しておきましょう。

  • ターゲット(客層)
  • 提供価値
  • 重点をおくサービスや商品
  • 人的資源や金銭的資源の配分
  • 注力する販促方法

また、これらを定義する際、コアコンピタンスに立脚することも忘れてはなりません。

コアコンピタンスとは、「競合他社が真似できない成功を生み出す核となる能力」のことです。

通常、企業には複数の強みがあります。しかし中には、他社に模倣されやすかったり、成功とは関係性が薄かったりする強みがあります。戦術レベルでは、これらの強みを活かすことも必要です。

しかし長期的な計画である戦略において、戦略が機能しなくなる事態は避けなければなりません。そのため、「本当の強みとは何か?」を十分に検討したうえで戦略を立案しましょう。

期間と数値の設定(KGIとKPI)

「目標、現状、方向性」を定めたら、戦略の運用期間と具体的な数値設定を行いましょう。

企業を取り巻く環境は日々変化しています。そのため、同じ営業戦略が機能する期間は限られています。また、目標に対する戦略の運用期限を定めておかなければ、戦略の良し悪しを評価できません。

戦略の妥当性を高めていくためにも、「KGI、KPI」を設定し、達成までの期間を定めておきましょう。

KGIは最終的に達成したい数値目標のことで、KPIはKGIの構成要素のうち、とくに重要な指標を指します。

KGIやKPIについて詳しく知りたい方は、下記記事も参考にしてください。

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アクションプランの作成

数値設定が完了したら、具体的なアクションを計画します。

営業戦略を実現するためには「誰が、いつまでに、どのような成果に対して責任を持つか」を明らかにしなければなりません。ただし、細かな戦術を定義しすぎると、身動きしづらくなることもあります。

そこで事業規模や営業戦略の影響範囲によって、アクションの粒度を変えましょう。

規模の大きな組織であれば、営業戦略では「人材の育成」や「広告媒体の変更」のようにアクションは抽象的になるでしょう。

一方、規模が小さな組織であれば「人材育成を目的とした研修の実施」や「広告媒体の変更に向けた媒体の選定」のようにアクションを具体化した方が行動を促進できます。

いずれの場合も戦略の骨となるアクションは具体的に定義し、その他の項目には柔軟性を持たせておくことが大切です。

行動の改善

営業戦略は、立てただけでは意味がありません。目的や目標が達成できていない、または達成できそうにないことが見える場合は、戦略や戦術の見直しが必要です。

そのため、「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(検証)→ Act(改善)」のPDCAサイクルを回し、必要に応じて戦略や戦術を修正することを忘れてはなりません。

営業戦略の立案に役立つフレームワーク

現状分析や戦略立案においては、フレームワークが役に立ちます。次の4つを参考に、状況にあったフレームワークを活用してください。

  • 自社理解のためのフレームワーク
  • 市場理解のためのフレームワーク
  • 顧客理解のためのフレームワーク
  • 目標設定のためのフレームワーク

自社理解のためのフレームワーク

妥当性や納得感が高い営業戦略を立案するためには自社理解が欠かせません。まずは自社理解に役立つフレームワークを紹介します。

パレートの法則

パレートの法則とは、「売り上げの8割は2割の社員に依存する」といった経験則です。

経験則であり、絶対的な指標ではありません。しかし、「優秀な社員への依存度」や「特定の商品への依存度」を理解するときに役立ちます。

割合が大きく偏っていた場合、「割合を問題と捉えない」か「割合を下げる」かを検討することで、戦略の方向性を明確にできます。大まかに状況を把握したいときはパレートの法則を活用するとよいでしょう。

SWOT分析

SWOT分析は、内部環境と外部環境を整理することで、戦略立案の基盤を作るフレームワークです。次の4つを検討することで、自社の状況を把握できます。

  • Strength:強み
  • Weakness:弱み
  • Opportunity:機会
  • Threat:脅威

またSWOT分析を行った後は、「クロスSWOT」を行うとよいでしょう。クロスSWOTとは、戦略を検討するためのフレームワークで、「強み×機会」や「弱み×脅威」のように各項目を掛け合わせることで、取るべき戦略の検討に活用できます。

5F分析

5F(ファイブフォース)分析は、次の5つの脅威(フォース)を整理することで、自社の事業に影響を及ぼす可能性を検討できるフレームワークです。

  • 競合他社
  • 代替品
  • 売り手
  • 買い手
  • 新規参入

これらの項目を整理することで、「脅威になりうる競合や状況」、「何にリソースを投資すべきか」などの判断に役立ちます。

市場理解のためのフレームワーク

サービスの成長は、市場の状況に影響を受けます。よい戦略を立てるためには、自社の状況だけでなく、市場や外部環境の調査も必要です。

PEST分析

PEST分析は外部環境を整理するためのフレームワークです。競合他社や顧客だけでなく、さまざまな外部環境が企業活動に影響を与えます。

PEST分析では次の4つの項目を整理することで、会社を取り巻く環境を網羅的に把握できます。

  • Politics:政治
  • Economy:経済
  • Society:社会
  • Technology:技術

3C分析

3C分析は、次の3つの項目の整理に役立つフレームワークです。

  • Company:自社環境
  • Customer:市場、顧客
  • Competitor:競合環境

PEST分析と比較するとミクロな視点で自社の取り巻く環境を理解できることが特徴です。

4P分析

4P分析は自社ブランドの理解に役立つフレームワークです。次の4つを分析することで、現状の自社サービスに関する理解を整理できます。

  • Product:製品
  • Price:価格
  • Place:流通
  • Promotion:販促

顧客理解のためのフレームワーク

営業の立案においては、顧客についての理解はとくに重要です。そのため市場理解に加えて顧客への理解も深めるよう意識しましょう。

AIDMA

AIDMAは、顧客の意思決定を分析するフレームワークです。顧客が商品を購買するまでには、次のような流れがあります。

  1. Attention:注意
  2. Interest:興味
  3. Desire:欲求
  4. Memory:記憶
  5. Action:行動

これらの流れにそって、「どこに問題があるか、顧客の心理状態はどうか?」を検討することで、顧客視点で問題を把握できます。

DECAX

DECAXは、AIDMAモデルと同じく顧客視点の把握に役立つフレームワークです。

  • Discovery:発見
  • Engagement:関係構築
  • Check:確認
  • Action:購買
  • eXperience:体験およびシェア

SNSが発達したことで、ユーザーがサービスを購入するまでの行動に変化が生じるようになりました。

DECAXでは、SNSを通したサービスの「発見」や「関係構築」、「レビューのチェック」に重点をおくことで、AIDMAモデルでは把握しにくい顧客の行動パターンを整理できます。

目標設定のためのフレームワーク

KGIやKPIは、広く使われるフレームワークですが、その他にも目標設定を支援するフレームワークがあります。妥当性が高い目標を設定するために役立つフレームワークを押さえておきましょう。

ランチェスター戦略

ランチェスター戦略とは、「弱者が強者に勝つための戦略検討」に役立つフレームワークです。

高いシェアを誇るサービスは、高い総合力を備えている傾向があります。そのため、同じようなサービスを同じように販売しても成果は期待できません。

そこでランチェスター戦略では、「ビジネス領域」や「訴求する提供価値」を絞ることで、小さな市場でのNo.1を目指します。これを繰り替えし、確実に取れる市場を増やしていく方法がランチェスターの「弱者の戦略」です。

これはランチェスター戦略の一例ですが、ランチェスター戦略を学ぶことで、状況にあった戦略を検討できます。戦略を決める際は、参考にしてください。

SMART

SMARTは、質の高い目標を設定するためのフレームワークです。SMARTでは、次の5つの項目を検討することで、目標の質をチェックできます。

  • Specific:具体的か
  • Measurable:計測できるか
  • Achievable:達成できるか
  • Related:経営目標に関連しているか
  • Time-bound:期限はあるか

戦略を立案しても目標の質が低ければ、社員のモチベーションにはつながらず、士気の低下を招くこともあります。そのため、「具体的な数値」や「期限の設定」だけでなく、経営戦略との関連性や実現可能性も踏まえた目標を設定しましょう。

営業戦略の具体的な事例

誰もが知っている身近な企業からスターバックス(以下、スタバ)とマクドナルドの営業戦略の事例を紹介しましょう。

スターバックス

「第3の場所」としての地位確立を目指しているスタバは、「スタバらしさ」を追及する戦略を立てています。

そして戦略実現のために、次のような戦術を実行しています。

  • 厳選豆の引き立てコーヒーの提供
  • バリスタの起用
  • こだわりの内装
  • セット販売しない

高めの価格設定でも成功しているのは、顧客に「スタバらしさ」の付加価値が十分に理解されているからだと言えるでしょう。営業戦略が戦術とうまく調和している例といえます。

マクドナルド

マクドナルドもスタバ同様世界トップシェアのブランドです。

輝かしい成功を収めているように見えるマクドナルドですが、日本法人においては1990年代に低価格戦略をとり、価格戦争を招く失敗を経験しています。

マクドナルドはこの失敗を活かし、近年は、低価格商品だけでなく競争力のある中価格商品の開発にも注力する戦略に変えて成功。戦術として、ポケモンGOとのコラボといったさまざまなプロモーションやキャンペーンを試行錯誤しながら実施し、成功につなげています。

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営業戦略を工夫して競争に勝とう

営業には競合他社がつきもので、競争相手との厳しい戦いの場となることもあります。競争を勝ち抜くためには営業戦略を立て、適切な戦術を適用する必要があります。

どうやってゲームやスポーツの試合に勝つかを考えることで、手持ちの戦術を駆使するのと同じです。あらかじめ進むべき方向付けとなる戦略を確定し、実行するための戦術を駆使して、営業の体質を強化しましょう。

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