勤務間インターバル制度とは?助成金の条件や金額 - 導入事例
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勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、時間外労働を含む勤務終了時から次回の始業時までに、一定の休息時間を確保する制度です。長時間労働や不規則な勤務が続く業界を中心として、ワークライフバランスの改善に期待されています。2019年度から企業の努力義務となっています。
EUの勤務間インターバル制度
同様の制度はEU諸国でも導入されており、1993年に欧州連合労働時間指令で「24時間につき最低でも連続した11時間の休息」を定めています。たとえば、9時〜17時が就業時間となっている企業でも、時間外労働で終業時間が23時となった場合、翌朝10時までは労働させられません。
勤務間インターバル制度の規定
義務化はされておらず努力義務
勤務間インターバル制度はあくまで事業主に対する努力義務であり、罰則はないものとして発令されました。しかし、勤務間インターバル制度を守れていない企業という評判が広まった際は、採用をはじめ影響する部分が少なからずあるでしょう。
規定時間に満たない場合
終業時刻から始業時刻までの時間が、規定の時間に満たない場合、翌日の始業時刻を遅らせる必要があります。
たとえば、11時間の勤務間インターバルを定めている企業にて、終業時刻が23時で翌日の始業時刻を8時に予定していた場合、始業時刻を10時に繰り下げて11時間分の勤務間インターバルを確保します。翌日の終業時刻を延長するかは規定によります。
勤務間インターバル制度の助成金制度
2017年度に厚生労働省は勤務間インターバル制度を奨励するため、中小企業を対象とした「勤務間インターバル導入コース」の助成金制度を新設しています。詳細は厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)にて確認してください。
勤務間インターバル制度導入に際して必要な研修やシステム構築、労務管理機材費用に対して支払われる助成金で、「9時間以上11時間未満」「11時間以上」といった目標によっても金額が変わります。
助成金制度の対象
助成金制度の対象となる中小企業は次表のとおりです。
また次の4点を満たしている必要があります。
- 労働者災害補償保険の適用
- 労働者の半数以上が9時間以上の勤務間インターバルの対象でない事業場を所有
- 36協定の締結・届出
- 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則を整備
ほかには、勤務間インターバルを推進するための研修を実施したり設備を導入したりする必要があります。
助成金制度の金額
助成金制度では、経費の3/4(※)に値する金額を受け取れます。助成金の上限金額は、休息時間数と取り組み内容によって変動し最大で100万円です。
休息時間数 | 「新規導入」に該当する取組がある場合 | 「適用範囲の拡大」または「時間延長」に該当する取組がある場合 |
---|---|---|
9時間以上11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
また、対象の労働者に対して賃金を3%以上引き上げた場合、上表とは別に上限額が最大240万円まで加算されます。
(※ 常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象における政府指定の取り組みを実施、その所要額が30万円を超える場合のみ経費の4/5に変更)
助成金制度の期限
2021年度の交付申請期限は、2021年11月30日でした。また、助成金の交付が決定した日から2022年1月31日までに取り組みを実施する必要があります。
勤務間インターバル制度の導入事例
KDDI
2015年の春闘での労働組合からの要求で導入を実施しました。最低8時間のインターバル時間を確保することを義務化するように就業規則に規定。また安全衛生管理規程の中に、11時間のインターバルを健康管理の指標として規定したそうです。
「制度導入前には一部の社員からは不安もあったものの、今は受け入れられており、実施して制度もおおむね守られている」という結果になっています。また、今後とも継続して見直しを実施することも決められています。
日立製作所
日立製作所では、労働組合の取り組みをきっかけとして2015年に全社的にインターバル規制を導入しました。対象の従業員が製造部門だけでなく、企画や総務といった事務部門にまで広げられていることが特徴的です。また、労働組合は今後の展開として日立グループ全体への拡大も視野に入れているとのことです。
本田技研工業
本田技研工業は、22時を超えて勤務を行った場合、翌日の出社時間は、22時を起点に超えた時間を15分単位で遅らせられ、次の出社までの時間として、12時間を確保することとされているそうです。標準労働時間は9:00〜18:00で、12時間のインターバル時間をとったために出社時刻が9:00以降となっても、9:00から出社時間までの時間は勤務したものとみなされるのとか。
また、研究所はインターバル時間を終業時間によって9時間半から11時間半を確保できるようになっています。各事業場の仕事の特性や通勤の事情を考慮して、インターバル時間を設定しているそうです。
ユニ・チャーム
ユニ・チャームでは、全社員を対象に最低8時間以上、10時間を目標としたインターバル時間を設定し、就業規則に盛り込んだうえで勤務間インターバル制度を実施しています。従業員が健康に働ける環境を構築し、生産性を向上させることによって、優秀な人材を確保することにつながる、という狙いから導入されました。
具体的には、各従業員のPCに警告メッセージがポップアップで表示される、というアラーム機能付きの勤務表を新規導入して、インターバル時間の管理を行っています。
勤務間インターバル制度のポイント
勤務間インターバル制度を就業規則に記載する際、また導入を進める際に気をつけるべきポイントを紹介します。勤務間インターバル制度導入には、従業員の就業時間が不規則になったり、給与計算が複雑になったりするリスクが考えられます。導入の際は、さまざまなケースを想定し慎重にルールを策定しましょう。
インターバル時間の決定
勤務間インターバル制度は法律とは違い、「最低何時間の休息を確保する」という決まりがないため、企業がこの時間を決定しておく必要があります。助成金制度の利用を踏まえても9時間以上は休息を設けたいところです。
始業時間を遅らせた場合の対応
勤務間インターバル制度によって翌日の始業時間が遅くなった場合、終業時間をどのように扱うか判断します。この場合、「終業時間を変更せずに就業時間を短縮」または「就業時間を変更せずに終業時間を遅くする」の2つの方法が考えられます。
賃金控除の扱い
「終業時間を変更せずに就業時間を短縮」に決定した場合、就業時間が短縮された分の賃金控除を、どのように扱うか決定しておく必要があります。
企業が就業時間短縮分の賃金控除を行うと決定しても、従業員側には勤務間インターバル制度による時間外賃金が発生するため、大きな問題にはならないと思われますが、労使間での合意をもとに慎重に決定すべきです。
勤務間インターバル制度の適用範囲
管理者を除外したり事業所を限定したりなど、勤務間インターバル制度の対象者を決定しておく必要があります。対象の人数によっては補助金制度の適用外となりうるためよく確認しておきましょう。
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