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企業向けサブスクは減速も成長維持 - 解約防ぐ柔軟な対応が鍵を握る

最終更新日:(記事の情報は現在から1675日前のものです)
新型コロナで、動画ストリーミングやネットメディアが好調。一方B2B領域のサブスクリプションサービスは長く大幅な成長が続いていたものの、減速している。ただし引き続き成長トレンドに変わりはなく、かつ柔軟性がもたらす「回復力」があると米Zuoraは指摘する。

コロナで揺れ動くサブスク市場

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)の拡大抑止策として外出を控える人が増え、さまざまな分野に影響を及ぼし始めた。たとえば、店舗は食料品や生活必需品を扱っていない限り、来店者の減少で苦境に立たされている。

対面サービスを必要としないビジネスは、好調なところも多い。コムスコアによると、米国ではNetflixやHuluといったストリーミング映像サービス(OTT)の利用が急増し、ECサイトやニュースサイトのアクセス回数が増えた。いわゆる“巣ごもり消費”だ。

ズオラ(Zuora)の調査レポートをみると、高い成長率で注目されているB2Bサブスクリプション・サービスは、減速したものの成長を続けているという。

好調・不調なサービス分野は?

ズオラは、サブスクリプション・サービスの経済圏を「サブスクリプション・エコノミー」と呼び、加入者の増減などを調査している。先日公表したサブスクリプション・エコノミー・インデックス(SEI)レポート「SUBSCRIPTION IMPACT REPORT: COVID-19 EDITION」では、COVID-19の影響について、企業向けと消費者向けの各種サブスクリプションを対象に調べた。

その結果、サービス提供企業の22.5%は成長が加速していて、12.8%は成長が減速したものの成長基調を維持していた。一方、11.4%はサービス加入者が純減の縮小傾向にあるそうだ。なお、53.3%は加入者獲得率に大きな影響は見られず、COVID-19の影響は限定的だという。

出典:ズオラ / SUBSCRIPTION IMPACT REPORT: COVID-19 EDITION

消費者分野は好調

成長が加速していた分野は、OTT動画ストリーミングやデジタルニュース&メディアだった。これは、冒頭で紹介したコムスコアの調査とも一致する。

電話会社や公益事業、通信ソフトウェアといった分野も大きく成長した。在宅勤務や外出禁止により自宅で過ごす時間が増えたためだろう。これも、家庭での通信データ量急増というコムスコアの調査結果で裏付けられた。

さらに、eラーニングも成長加速分野とされた。学校休業で自宅学習を始めた家庭の増加が影響したと考えられる。

いずれにしろ、主に消費者向けのサブスクリプション・サービスで加入者の増加が見られた。

余暇を楽しむサービスが縮小

加入者の解約が獲得を上回り始めている分野は、旅行・ホスピタリティ、スポーツ関連サービスだった。やはり、移動を伴ったり余暇を楽しんだりするサービスは、厳しい状況にある。

また、消費者のジムやクラブ、習い事、各種ライフスタイルのサブスクリプションも解約が増えているという。これも、旅行などと同じ理由で不調なのだろう。

企業向けサービスは成長を維持

減速したものの成長を続けている分野は、ビジネス向けIoTサービスと中小企業向けソフトウェアだ。

ビジネス向けIoTサービスについては、オフィスビルの空き、建設作業や機械作業の停止といった状況で、契約数が減少したという。ただ、2020年3月の契約数の伸びは過去12カ月間の半分にとどまった一方、同分野の企業は成長を続けているそうだ。中小企業向けソフトウェアは、レストランやサロン、歯科医院などの営業不振が響いて低迷しているが、成長は維持した。

消費者向けのサービスでは、コンシューマーIoT(コネクテッドデバイス)用サービスの必要性が薄れ、関連企業のサブスクリプション契約が減速した。

サブスクビジネスには「回復力」がある

ズオラによると、B2Bサブスクリプション・サービスは過去7年半で350%以上の成長率を記録した。そんな市場でも、現在はCOVID-19の影響で陰りが見られる。

ただし、ズオラは、サブスクリプション・ビジネスには回復力があると指摘する。

解約を防ぐ柔軟な対応がカギ

サブスクリプション・ビジネスにおいては、解約を防ぎ加入者を維持することが重要だ。だが業績不振でサブスクリプション契約の解約を選ぶ加入者は多いだろう。このような場合、請求を一時的に停止するという手段が考えられる。契約者との信頼関係を築き、ロイヤルティを高めることで、加入者を維持できるという。

サービス提供の一時中断を利用可能にするオプションも、解約率の低減につながる。ズオラの調査では、サービスの中断と再開に対応している企業は、年間解約率が同業他社に比べ5%低かったそうだ。また、契約内容を柔軟に変更できるようにしている企業の解約率は20%未満なのだが、そうでない企業は30%以上あった。契約維持の選択肢を用意することも加入者の維持につながる。

さらに、積極的な“工夫”も加入者の獲得が期待できる。コンテンツ無料提供や無料トライアルの期間延長、無料トライアルの実施など、見込み顧客にリーチする方法はいくつも思いつく。多くの社員を在宅勤務させる必要に迫られた企業に対して、使いやすいサービス構成や価格の新オプションを作る方法もある。

ズオラは、サブスクリプション・ビジネスが、新規の1回限りの売上に依存する製品中心のビジネス・モデルよりも柔軟だとした。そのため、変化する環境に迅速に適応して顧客を維持できるというのだ。こうした顧客維持・サポートを担う「カスタマーサクセス」も注目されている。社会変容への素早い対応が今こそ求められている。

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