EPMとは | 概要とメリット、導入時に注意すべき点
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- EPMとは?
- 業務プロセスをプロジェクトとして捉える
- EPMが重視される背景
- ERPとの違いと関係性
- BIとの違いは
- EPMを導入するメリット
- 業務プロセスの「見える化」が可能に
- 業務データやノウハウの活用がしやすくなる
- 部門同士の連携がスムーズになる
- 財務・経営に関する業務精度が向上
- 税法上の要件変化にも対応しやすい
- EPM導入の注意点
- 導入・運用の時間と手間がかかる
- ツールの導入・運用が不可欠
- EPMの進め方
- 基本的な方針を決定する
- 組織の制度・システム設計を行う
- 導入を開始する
- EPMを成功させるポイント
- 必要なデータにアクセスできる環境
- EPMの展開チームを組織
- EPMの進化と今後の展望
- EPMで業務プロセスを可視化
- BOXILとは
EPMとは?
EPMとは「Enterprise Performance Management」の略語で、企業全体の数値や事業を管理するものです。業務をプロジェクトとして管理する性質から「Enterprise Project Management」と訳される場合もあります。また「Corporate Performance Management(CPM)」と呼ばれることもあります。
まずは、EPMの概要から確認しておきましょう。
業務プロセスをプロジェクトとして捉える
EPMは業績を改善するために、ビジネスのプロセスやシステムを最適化する施策を指します。
ビジネスプロセスを最適化する方法はさまざまですが、有効な方法として業務プロセスをプロジェクトとして捉えることが挙げられます。1つのプロジェクトとして多角的に分析をすることで、継続的に業務生産性を向上する取り組みが可能です。
各部門や各部署の状況が見える化されるうえ、分析と改善がしやすくなるため、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。また各部門の業績も計測しやすくなることもポイントです。業績を管理しやすくなれば、経営資源の最適配分も実現できるでしょう。
EPMが重視される背景
大企業を中心にEPMが注目されている背景としては、経営を効率化できるITツールの登場やグローバル化や、時代の変化で企業が競争優位性を獲得しにくくなったことが挙げられます。これにより、企業はいかにシステマチックに業務を遂行し、差別化を図るかが問われるようになりました。
一方で各部門の業務プロセスがあいまいで、効率化できていない企業は多く存在します。しかし、企業間競争が激化している昨今では、それぞれの部門がベストパフォーマンスを発揮しなければ、市場で淘汰されかねません。
そこで、EPMによって問題点を洗い出し、継続的に改善と評価を繰り返すことによりパフォーマンスの向上を目指す企業が増えたわけです。
ERPとの違いと関係性
EPMがビジネスのプロセスを最適化するための施策であるのに対し、ERPはそれを実行するためのITツールを指します。ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、「企業資源計画」と訳します。
企業に関する「経営資源(ヒト・モノ・カネ)」を適切に配分し、有効活用するためのものです。財務会計や販売管理、営業支援などの基幹業務に関する機能はおおよそ備えており、これらをシステムで連携させて業務効率を向上させ、利益の最大化を狙います。
対してEPMは経営に関する業務の分析・改善がメインであり、ERPのなかに機能として搭載されていることもあります。
BIとの違いは
EPMと混同されがちなものにBI(ビジネスインテリジェンス)があります。BIはさまざまな業務データを収集し、多角的に分析することで業務効率化を図るツールです。分析機能やレポーティング機能など、さまざまな機能が実装されており、企業戦略の実行に役立ちます。
一方、EPMは業績評価のためにビジネスプロセスを最適化する取り組みであり、そのために業務プロセスを可視化して管理する手法です。業務プロセスを俯瞰することで、継続的な組織パフォーマンスの改善を目的としています。
ただし、登場した背景や定義こそ異なるものの、近年はEPMとBIとの垣根は低くなっており、両者を連携させることで組織全体の生産性の向上を実現できます。
EPMを導入するメリット
EPMを積極的に導入するメリットとしては、次の点が挙げられます。具体的には業務プロセスの可視化とノウハウの活用、部門間の連携強化などを実現可能です。
業務プロセスの「見える化」が可能に
EPMによって進捗が把握できれば課題を抽出しやすくなります。業務フローの問題点を抽出し改善と検証を繰り返すことで、生産性や収益性を向上できるでしょう。
加えて、プロセス評価によって組織に何が起こっているか、マネジメント層が正確に把握できるのもメリットです。企業戦略の実現にあたって何が課題か、また何が利益につながるかを把握できれば、経営資源の配分の最適化に役立ちます。
業務データやノウハウの活用がしやすくなる
業務を改善するには、当該部門の有する知識やノウハウも適切に管理すべきです。部内でノウハウを積極的に共有する体制を構築することで、社員の業務遂行力の底上げにつながります。
さらに、業務に関するデータも企業全体の資産として蓄積すれば、各部門の業務効率化に役立つでしょう。有形資産だけでなく、業務データやノウハウといった無形資産の活用にも目を向けることで、企業としてのさらなる成長に期待できます。
部門同士の連携がスムーズになる
EPMによって情報の透明性が高まり、それまで部門ごとに独自に活用していた情報の統合が促され、結果的に部門同士の連携も深まるでしょう。
各部門が独立していても、業務プロセスの最適化にあたってはお互いの連携が欠かせません。さらに、情報のやり取りが活発化することで、社員の監視機能も強化されるので、コンプライアンス強化にもつながります。
財務・経営に関する業務精度が向上
EPMに伴うシステムの導入により財務に関する業務効率が向上し、経営判断の速度も上げられます。まずシステムを使ったEPMでは、勘定科目の照合作業といった時間のかかる決算業務が自動化されるため、より本質的な業務に集中でき生産性も向上します。
また自動化によりつねに最新の情報が反映されることもポイントです。最新の正確な情報にもとづいて速くPDCAサイクルを回せるため、スピーディーに経営判断を下せるようになるでしょう。
税法上の要件変化にも対応しやすい
財務に関連する決算処理や報告書の作成は、税法に則って行わなければなりませんが、システムを使ったEPMではこれらの要件変化にも柔軟に対応できます。要件変更に合わせた修正が必要なくなるため、担当者の負担が軽減可能です。
また法令順守はもちろん、複数の報告基準に対応できるため、フォーマットをカスタマイズする必要もなく、作成時間を短縮できるでしょう。
EPM導入の注意点
EPMには多くのメリットがあるものの、次のような注意点もあります。本格的な導入にあたっては、事前に課題となり得る事柄を把握し、しっかりと対策を立てておきましょう。
導入・運用の時間と手間がかかる
EPMを導入し、情報やノウハウを蓄積・活用できるようになるまでには、相応の時間と手間をかけなければいけません。一朝一夕で業務プロセスの最適化はできないので、まずは各部門の抱える業務上の課題を明らかにして、改善と評価を繰り返すことが大事です。
いかなるプロジェクトでもPDCAを回さなければ、安定したパフォーマンスの改善は見込めません。業務プロセスの見える化を実現できるのがEPMのメリットであるため、積極的に課題の把握と改善に努める必要があります。
ツールの導入・運用が不可欠
EPMを実践するにあたっては、専用のITツール・システムの導入が望ましいです。上記のERPやBIツールなどの導入がおすすめで、前述したように作業の自動化で業務効率の向上も期待できます。とくにERPは業務データの一元管理が可能であり、企業全体の経営資源の有効活用に役立ちます。EPMに必要な情報も得やすくなるでしょう。
ただし、EPMによって業務プロセスを最適化するには、システムにデータを入力する手間が発生します。とくに導入のはじめはデータの入力や整理に多くの時間をとられるため、重要な業務が疎かにならないように注意が必要です。
EPMの進め方
EPMをうまく導入するには段階的なステップを踏んで進めることが大切です。EPMの導入を3つのステップに分けて解説します。一度に行うのではなく、段階的に進めることで、EPMの効果を上げ企業全体の業績を押し上げていけるようになります。
- 基本的な方針を決定する
- 組織の制度・システム設計を行う
- 導入を開始する
基本的な方針を決定する
EPMの基本方針を決める前に、まず目的と目標を明確にすることが必要です。EPMを導入して「何をしたいのか」を決定して、具体的な目標を設定します。担当者のみで決定するのではなく、上層部も含めて社内全体の意見を統一することが重要です。
基本方針が決まったら、業務のプロセスを具体的に可視化していきます。プロセスに優先順位をつけて必要なリソースを配分します。一度配分しても状況に応じて調整する柔軟さも大切です。
組織の制度・システム設計を行う
基本方針にしたがって、組織の制度やシステムの設計を行います。スタッフがEPMを使いこなせるように、役割分担と責任者を設定し組織体制を整えていきましょう。その後、スタッフのスキルアップのための教育も実施します。EPMを浸透させるための研修も同時に行っていくこともポイントです。
システムの設計も行う必要があります。業務プロセス管理やデータ共有が行えるシステムの設計・開発、さらにスタッフのためのマニュアル作成も行います。
導入を開始する
体制が整ったら、EPMの導入を開始します。最適なEPM製品を選び、まずは少数部署からはじめていくのがおすすめです。最初は様子を見ながら行っていき、慣れてきた時点で徐々に範囲を広げて、最終的には社内全体に展開するようにしていきましょう。
EPMを成功させるポイント
では、EPMの実践に必要な要素を紹介します。EPMは業務プロセスを鳥の目で捉え生産性を向上するの施策であるため、企業によって取り組むべき事柄は大きく変わってくるはずです。しかし、次のようにEPMを成功へ導くためのポイントは共通しています。
必要なデータにアクセスできる環境
すべての業務部門が、必要なタイミングで必要な情報にアクセスできる環境が必要です。知識やノウハウの共有および活用にあたっては、情報を適宜引き出せる環境が求められるでしょう。
さらに、各部門の状況を正確に把握するために、業務データを整理しリアルタイムデータにもとづいてパフォーマンスを評価できる体制にすることが重要です。
ERPやBIツール、EPMの専用ソフトウェアなどを活用しながら、業務に関する情報を適切に管理・運用できる環境を作りましょう。
EPMの展開チームを組織
各部門が独自にEPMを計画・実践するのも有効ですが、部門をまたいでEPMの実行チームを立ち上げてもよいでしょう。とくにEPMはERPやBIツールといったITシステムの導入・運用が欠かせないため、必要な部門にシステムの利用を定着させ運用できるようサポートする担当が必要です。
各部門とマネジメント層をつなぎ、経営戦略を各部門の業務プロセスに落とし込む役割を持たせることで、部門間の連携も取りやすくなります。また業績の評価と課題の抽出、改善施策の実行といったPDCAを回しやすくなるでしょう。
EPMの進化と今後の展望
EPMは、企業パフォーマンス管理において進化を続けており、今後も技術は進歩することが予想されます。以前まで、企業全体のパフォーマンス管理は財務部門が担当するものであり、Excelといった表計算ソフトを使って改善や管理を行っていました。
しかし手入力による計算や転記はヒューマンエラーが発生しやすく、時間がかかるためうまく経営に活かせませんでした。そこで1990年代に、EPMを管理するオンプレミス型のシステムが登場します。
これにより、レポート作成やデータ連携・収集作業が自動し、データとしての精度や作業効率が一気に上がりました。またEPMを管理するシステムは、クラウド型が登場したことでさらに進化を遂げます。
インターネットを通してシステムを利用できるようになり、価格も下がったことで多くの企業がシステムの導入を行いました。また部門を横断した管理がしやすくなり、リアルタイム性が上がったことで、データ活用の幅も広がっています。
今後はさらに、AIといった新しいテクノロジーを使ったソリューションの提供が期待されています。組織を横断したさらなるEPMの拡張・連携にも注目があつまっており、今後ますますEPMの重要性は増していくでしょう。
EPMで業務プロセスを可視化
EPMとは何か、基本的なところを解説しました。EPMは主に大企業で導入されている手法ですが、近年は中小企業やスタートアップにも広まっているようです。
とくに、企業間競争が激しい業界では、EPMで組織のパフォーマンスを向上し続けることが、市場での生き残りに必要な要素であるのは間違いないでしょう。
EPMはERPやBIツールといったITシステムを活用しながら、各部門の業務の問題点や課題を洗い出し、継続的に改善と評価を繰り返す必要があります。部門同士の連携も強化しつつ、環境の変化に柔軟な対応ができる組織作りに注力しましょう。
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