電子契約の代理署名は有効!代表者以外の契約締結について解説
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- 電子契約における代表者以外の代理対応は有効である
- 代表者からの権限委譲で従業員の名前で行う
- 名義人を代表者のままに従業員が契約する
- 電子契約を代理で行うメリット
- メールアドレスを利用して履歴を残せる
- ログイン履歴を遡り契約者を特定できる
- 電子契約を代理で行うデメリット
- 共有アドレスだけでは履歴確認が難しい
- 不正アクセスやなりすましが行われるリスクがある
- 無権代理が行われる可能性がある
- 相手方が電子署名の代行権をもつことを確認する方法
- 委任状や社内規程を提出してもらう
- 契約メールアドレスが代表のものであると確認する
- 代表者のメールアドレスを共有先に含む
- 担当者の役職を確認する
- 電子契約の代理締結を活用して業務効率化を図ろう
電子契約における代表者以外の代理対応は有効である
電子契約における代表者以外の代理対応は問題なく行えます。契約者双方で代理契約をする場合でも適切な手順を踏んだ契約ならば効力は問題なく発揮され、万が一訴訟問題が起きた場合でも契約書は法的な証拠能力を有します。
代表取締役が本人名義で契約をできれば、契約者双方が安全に契約を締結可能です。しかし、企業活動の契約について、代表取締役がすべての契約に目を通して契約業務を行うことは現実的ではありません。そのため、多くの企業で契約担当者に権限を付与して代理署名対応が行われています。
代表者からの権限委譲で従業員の名前で行う
代表者からの権限委譲を受けて、従業員の名前で契約を行う方法は一般的な電子契約の代理対応です。社内規定や契約内容を根拠として、代表者がもつ権限の一部を役職者や従業員に委譲することで、役職者や従業員が代表者の代理として契約が締結可能です。
会社法14条を参照すると、代理権の委譲について想定された内容が記載されています。
第十四条 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。
2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
引用:e-Gov「会社法第14条」(2024年12月11日閲覧)
会社法第14条を踏まえると、電子契約の代理対応は次のように理解できます。
- 事業に関して一部権利を委譲された従業員は裁判に関する行為以外を行える
- 委譲された権限に制限があった場合でも、第三者である契約相手が制限について知らない場合は契約は有効と判断される
このように、代表者から権限を委譲された従業員が代理対応を行うことは問題なく、さらに、契約についても有効と判断できることが会社法第14条で明確にされています。
名義人を代表者のままに従業員が契約する
代表者から権限委譲をする方法の他に、名義人を代表者にしたまま従業員が契約業務を行うことも一般的な代理方法です。本来は本人が行う押印や電子署名の付与を、他者が行うことは署名代理(押印代理)といわれ、多くの企業で行われているものです。
署名代理(押印代理)による契約では、二段の推定により押印や電子署名の付与がされていれば、契約名義人が本人の意思をもって契約していると判断されます。
そのため、名義人が代表者のままで押印やそれに準ずるものが行われていれば、代表者の意思で代表者自身が押印作業を行ったと推定され、問題なく契約業務は行えます。
しかし、署名代理により締結された契約で名義人と実際の契約者が異なることについて争われた判例はほとんどなく、法的に曖昧な状態です。契約の確実性を高めたいのであれば、名義人本人が契約を行うか、権限委譲を受けた従業員が契約を行うようにしましょう。
電子契約を代理で行うメリット
電子契約を代理で行うことには、次のようなメリットがあります。
- メールアドレスを利用して履歴を残せる
- ログイン履歴を遡り契約者を特定できる
メールアドレスを利用して履歴を残せる
メールアドレスを利用して複数人が確認できる契約の履歴を残せることは、電子契約を代理で行うことのメリットです。メールやメールアドレスでログインしたチャットなどを活用すれば、どのようなやり取りを経て契約に至ったのか、商談の時点でどのような内容に双方が合意していたかなどの履歴を追えます。
メールでやり取りの履歴を追えることで契約内容の認識に相違があった場合に、認識に相違が発生している原因や修正すべき契約内容がわかりやすいため、口頭で契約内容をまとめるよりも事後処理が便利です。
ログイン履歴を遡り契約者を特定できる
電子契約システムを使って電子契約をする場合、ログイン履歴を遡って契約者を特定できることもメリットと考えられます。
契約作業者の記名がなく代表の印章による押印しかない紙での契約の場合、実際に押印作業を行った人の名前はわかりません。しかし、電子契約システムを使って電子契約をするなら、ログイン履歴や作業履歴から誰がいつどのような作業を行ったか明確にできます。
契約作業そのものや契約内容に不備があった場合、作業者を特定して修正を依頼できるため、契約業務の履歴を追えることが大きなメリットと感じられるでしょう。
電子契約を代理で行うデメリット
電子契約を代理で行うことには次のようなデメリットもあります。
- 共有アドレスでは履歴確認が難しい
- 不正アクセスやなりすましが行われるリスクがある
- 無権代理が行われる可能性がある
共有アドレスだけでは履歴確認が難しい
電子契約では契約に至るまでのやり取りの履歴や契約作業そのものの履歴を追えますが、共有アドレスを利用して契約業務を行った場合、操作ログまで確認しないと履歴の確認が難しいケースも存在します。
複数人で共有されているアドレスで契約業務が行われた場合、共有しているメンバーの中で誰が作業したか、ログインしたかまでを追うことが難しく、個人の特定まではできません。
よって、部署やチームメンバー単位ではなく、個人単位で契約の責任の所在を明らかにしたい場合は、共有アドレスではなく個人アドレスで契約業務を行いましょう。
不正アクセスやなりすましが行われるリスクがある
電子契約の大きなデメリットとして、不正アクセスやなりすましが発生する可能性があることが挙げられます。不正アクセスが行われた際、契約情報という重要な内容を含むデータである契約書はサイバー攻撃の標的になりやすいです。もちろん、電子契約システム側でログイン時には2段階認証や2要素認証などのセキュリティ対策、契約時にはメール認証やタイムスタンプなどで改ざんされていないことがわかるように対策されています。しかし、100%安全であるとは言い切れません。
一方で、紙の契約書にも不正な持ち出しやコピーによる情報流出のリスクがあります。紙の契約書は押印のなりすましや改ざんがしにくい反面、持ち出しやコピーの履歴を追えないため、電子契約とは異なるリスクを抱えています。
無権代理が行われる可能性がある
電子契約の代理対応においては、無権代理が行われるリスクがあることも忘れてはならないデメリットです。無権代理とは、権限をもっていない人が本来の権限所有者に代わり、代理で権限が必要な行為を行うことです。
無権代理が行われた場合、契約者本人の追認がなければ無効になるケースや、無権代理人が契約履行や損害賠償を行うケースもあります。従業員が大きな負担を背負うことになるだけではなく、企業としての信頼にも傷がつく可能性もあるため、無権代理が発生することは大きなデメリットです。
ただし、これは紙の契約書でも発生する可能性があるため、書面か電子かを問わず権限の所在を明確にして契約が行えるように社内規定を整備しなければなりません。
相手方が電子署名の代行権をもつことを確認する方法
契約の相手方に電子署名の代行権をもつことを確認する方法には、次のようなものがあります。
- 委任状や社内規程を提出してもらう
- 契約メールアドレスが代表のものであると確認する
- 代表者のメールアドレスを共有先に含む
- 担当者の役職を確認する
それぞれの方法の詳細について、メリットやデメリットも踏まえつつ確認しましょう。
委任状や社内規程を提出してもらう
電子契約を代理で行う場合に、契約権限をもつ代表や役職者から委任を受けていることがわかる委任状や、契約権をもつことがわかる社内規程を提出してもらうことが最も安全な確認方法です。相手方の契約者に代理契約の権限があることが明らかなため、契約者は安心して契約を行えます。
一方で、代表や役職者から従業員一人ひとりに委任状を用いて権限を委任している企業は少なく、社内規程を契約のたびに相手方に要求することも現実的ではありません。方法としては非常に有効的ではあるものの、現実的ではないことがこの方法の問題点です。
契約メールアドレスが代表のものであると確認する
電子契約システムで契約を行うメールアドレスが代表取締役のものであると確認できれば、電子契約の仕組み上それ以上の確認は不要です。一般的に代表のアドレスが使える人は基本的に代表自身であり、機密性の高い情報をやり取りするアドレスを従業員に共有していることは通常考えにくいためです。
さらに、電子署名があれば二段の推定により、契約者本人が契約者の意思で契約を行ったと考えられます。よって、契約締結に利用されたメールアドレスが代表のものであれば、原則的にそれ以上契約者の権限について確認する必要はありません。
ただし、代表者印を従業員が代理で押印することがあるように、一部企業では代表者のメールアドレスをログインに利用するケースもあるため、念のため契約者自身についても確認をしておくとより安全に契約ができます。
代表者のメールアドレスを共有先に含む
代表者のメールアドレスを共有先に含めることも、契約者の代行権確認に有効です。代表者が共有先に含まれていることで、万が一契約者本人に代行権がなかった場合でも、代表者がみなしの追認をしていた、もしくはそれに準ずるような監督責任があったと主張する根拠になります。
ただし、この方法では実際に契約を行っている人に代理契約する権限があるかどうかはわからず、実際の契約を行う人が代表ではないことにも変わりはないため、次善策として考える程度にとどめましょう。
担当者の役職を確認する
契約担当者の役職を確認することも、契約担当者の代行権確認には有効です。契約担当者の名刺やメールの署名欄を確認して、一定以上の役職者であればそれ以上は契約権限の確認をせずに電子署名の付与や押印をした契約の締結権限をもつと判断できます。
これは平成2年2月22日に最高裁判所によって出された判例※を根拠とし、「契約担当の従業員が一定以上の役職であれば、契約相手は契約の権限がある」とみなして契約を行うという割り切った契約の方法です。
役職確認だけで契約を進めれば契約締結はたしかに簡単ですが、リスクがない方法とはいえません。実際は役職者でも権限をもつ部署が異なったり、課長権限・部長権限で行える契約が異なったりする場合もあるため、必要に応じて契約権限の確認は必要です。
※参考:最高裁判所「最高裁判所判例集 事件番号:昭和60(オ)1300」(2024年12月12日閲覧)
電子契約の代理締結を活用して業務効率化を図ろう
電子契約の代理締結を活用すれば、業務効率化が図れます。代表取締役が企業内で行われるすべての契約に目を通して実際に自身で契約締結を行うことは現実的ではなく、従業員に契約業務を任せることで代表取締役はより重要な業務に集中できるためです。
また、従来の紙の契約で行っていたように、電子契約でも従業員が代理で契約業務を行うことは問題ありません。契約自体の効力も有し、万が一の際の法的な証拠能力も認められることが一般的です。
さらに、電子契約を活用することで、これまで紙の契約書で問題となっていた次のような課題も解消されます。
- 手作業による契約書の封入や郵送の手間が削減できる
- 紙代やインク代、郵送代などのコストが削減できる
- 契約書保管スペースにかかるコストを削減できる
- 取引先の引き継ぎの際に、正しい情報で契約情報を引き継げる
- 紙の契約書の持ち出しによる盗難や紛失のリスクを低減できる
電子契約による締結業務の代理は企業活動において多くのメリットがあります。まだ電子契約を導入しておらず、契約業務に課題を抱えている場合は、ぜひ電子契約を検討しましょう。
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