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ストレスチェック後の産業医の役割とは?面接指導による予防と対策の重要性

最終更新日:(記事の情報は現在から15日前のものです)
ストレスチェックは義務化以降、多くの企業が実施していますが、人事労務の観点からはその後の対応に苦慮している声が聞こえてきます。高ストレスを抱える対象者を面接指導に導くには?産業医が果たす役割の重要性を解説します。

ストレスチェックとは

ストレスチェックは、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを目的とした制度です。労働安全衛生法の改正により、2015年12月から、50名以上の従業員がいる事業所は年1回のストレスチェックの実施が義務づけられています。

また、厚生労働省の第14次労働災害防止計画では、「2027年までに50人未満の企業でのストレスチェック実施率を50%以上にする」という目標が設定されています。

※参照:厚生労働省「『第14次労働災害防止計画」(2025年1月18日閲覧)

ストレスチェックの対象者

ストレスチェック対象者は、その時点で企業が雇用するすべての従業員です。パート・アルバイト・派遣などの雇用形態や就労時間に関係なく、1年に数回しか出社しない従業員でも、継続して雇用関係にあれば対象となります。

例外となるのは使用者である代表や社長および役員のみであり、ストレスチェック実施時点で対象を正社員のみに絞っていると、全社的なストレス状況把握が困難になり、適切な企業対応ができなくなってしまいます。

ストレスチェックの実施者

ストレスチェックの実施者は、労働者のストレス状況を評価し、結果を通知する責任をもつ専門職です。具体的には、次の資格を有する者が該当します。

  • 医師
  • 保健師
  • 看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師のうち、厚生労働大臣が定める研修を修了した者

事業所の産業医がストレスチェックの実施者となることが最も望ましいとされています。外部機関に委託する場合でも、事業所の産業医や産業保健スタッフが共同実施者として関わることが推奨されます。

また、労働者の解雇・昇進・異動などに直接権限をもつ監督的地位にある者は、実施者になれません。

ストレスチェックの実施状況

厚生労働省の調査によると、ストレスチェックの実施状況は、50人以上の事業所で84.7%、50人未満の事業所では32.3%にとどまっています。

※出典:厚生労働省「ストレスチェック制度の実施状況(令和4年)」(2024年12月6日閲覧)

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ストレスチェック後に実施すべき企業対応

ストレスチェックによって高ストレス者であると判断された従業員は、本人の希望により、産業医による面接指導を受けられます。

高ストレス者の基準

それでは、適切な対象者に対してストレスチェックを実施し、高ストレス者であると判断される基準とは何でしょうか。

  • 心身のストレス反応に関する項目の評価点合計が高い者
  • 心身のストレス反応に関する項目の評価点合計が一定以上かつ、仕事のストレス要因および周囲のサポートに関する項目の評価点合計が著しく高い者

一般的には以上のようにして選定されますが、客観的な評価点をもって判断されるわけではなく、社内の衛生委員会による審議が行われたうえで、最終的には事業所で基準を設定します。

このような場合でも、客観的な視点で意見が言える、適切な産業医の存在が重要になってきます。

産業医による面接指導

ストレスチェックの結果、高ストレス者であると判断された従業員から申出があった場合、医師による面接指導を実施することは事業者の義務となります。

従業員は医師による面談を必ず受ける義務はありません。事業者は、産業医面談を拒否する従業員に対して面談の勧奨はできますが、強制はできません。放置すると健康状態が悪化する可能性がある場合には、業務命令としての勧奨も検討するとよいでしょう。

事業者は、ストレスチェック結果の通知を受けた労働者に対して、相談の窓口を広げ、相談しやすい環境を作ることが重要です。厚生労働省は、従業員が高ストレスの状態で放置されないようにする適切な対応を行う観点から、日常的な活動の中で産業医が相談対応を行う体制を整備することを勧めています。

産業医とは

ここまで、ストレスチェック後に企業が実施すべき対応を解説しましたが、高ストレス者の基準や判断、面接指導で重要な役割を果たすのが産業医です。

しかし、企業内でも産業医の存在や役割を把握していないケースが多く見られます。

産業医とは、企業の従業員の健康管理について、専門的な立場から指導・助言を行う医師です。常時50人以上の事業場では、産業医の選任が義務づけられています。また、従業員数が常時1,000人以上の事業所、または500人以上の有害業務を扱う事業所では、常駐して働く専属産業医の選任が義務づけられています。

産業医の要件

産業医となるためには医師である大前提のほかに、労働安全衛生法に規定された、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
  • 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれらの経験者

産業医の職務

産業医の具体的な職務は次のように規定されています。

  • 健康診断・面接指導などの実施、およびその結果にもとづく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理や作業の管理など労働者の健康管理
  • 健康教育、健康相談、その他労働者の健康の保持増進をはかるための措置
  • 労働衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因調査、および再発防止のための措置

また、労働者の健康管理に関して、産業医は事業者に勧告もでき、従業員のメンタルヘルスケアでも重要な役割をもつことがわかります。

次の記事では、メンタルヘルスについて詳しく解説しています。

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産業医の面接指導の流れ

それではストレスチェック後の面接指導は産業医によってどのように行われるのか、その流れを見てみましょう。

面談前の準備

まずは産業医面談にあたって、産業医が参考にする情報を準備する必要があります。

  • 対象従業員の氏名・性別・年齢・所属事業所・部署・役職など
  • ストレスチェックの結果
  • 実施直前1か月の労働時間・日数・業務内容など
  • 健康診断の結果
  • ストレスチェック時が繁忙期か閑散期だったかの情報
  • 職場巡視による職場環境の情報

産業医は、情報とストレスチェックの内容を確認します。

面接指導の目的

過労やストレスによる心身の不調を未然に防止するのが、面接指導の目的です。

そのため、従業員への指導にとどまらず、医学的な見地から、事業者への職場環境改善や労働時間の短縮を勧告します。

面接指導の内容

実際の面接指導では、対象者に対してストレスチェックの結果を含めた次の項目の確認が行われます。

勤務状況の確認

労働時間や業務内容はもちろん、職場での人間関係や業務内容や役割の変化、上司からの支援状況も確認します。

ストレス状態の確認

抑うつ症状を確認し、場合によってはうつ病のスクリーニング検査や構造化面接が行われます。

その他の心身状態の確認

過去の健康診断や現在の生活状況などを聞き取りつつ、うつ病やストレス関連疾患の症状がないかを確認します。

保健指導

気づきとセルフケアを中心とした、ストレス対処法についての指導を行います。

受診指導

面談の結果、受診の必要があると認められた場合、専門機関での受診の勧奨と紹介を行います。

面接指導後に企業が行うこと

面接指導後、企業は可能な限り早い段階で産業医の意見を聴取する必要があり、それに応じた職場環境の改善や対象者の労働時間短縮といった措置を取らなければなりません。

また、面接時の記録は5年間の保存義務があり、次の内容が含まれている必要があります。

  • 面接指導の実施年月日
  • 面接指導を行った産業医の氏名
  • 対象従業員の氏名・勤務状況・心理的な負担状況
  • その他の心身状況
  • 健康保持のための産業医の意見

面接指導において企業が注意すべきこと

労働安全衛生法第66条の10第3項により、面接指導の申出をしたことを理由として、従業員が不利益を被るような措置を取ることは禁止されています。

また、面接指導の結果にもとづき、解雇や退職勧奨、不当な配置転換や役職変更などは行えません。

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ストレスチェック実施促進の助成金

独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)では、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として、事業者や産業医が行う自主的な産業保健活動を支援するため、「団体経由産業保健活動推進助成金」を実施しています。

団体経由産業保健活動推進助成金は、JOHASが提供していた「ストレスチェック助成金」の代わりとして、事業主団体経由での産業保健活動推進のための助成金として提供されます。

対象となる産業保健サービス

団体経由産業保健活動推進助成金の対象となる産業保健サービスは次のとおりです。

  • 労働保険の適用事業所であること
  • 健康診断結果の意見聴取
  • 保健指導
  • 面接指導・意見聴取
  • 健康相談対応
  • 治療と仕事の両立支援
  • 職場環境改善支援
  • 健康教育研修、事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発

※参照:労働者健康安全機構「助成金」(2024年12月6日閲覧)

産業医によるメンタルヘルスケアの重要性

労働者の健康管理を行うための専門知識をもつ医師である産業医は、従業員のメンタルヘルスケアを行ううえで重要な役割を果たしており、とくにストレスチェックにともなう面接指導には欠かせない存在です。

しかし、ストレスチェック義務化の対象とならない従業員数50名未満の事業所では、産業医を選任する義務がなく、ストレスチェック実施も約3割にとどまっています。

変化の激しい市場経済の中では、企業規模にかかわらず、労働者が大きなストレスを抱えているのは紛れもない事実です。企業は、ストレスチェック実施のみにとどまらず、面接指導によるメンタルヘルス不調の予防と対策を強化するためにも、可能な限り産業医の選任を行うことをおすすめします。

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