「ChatGPT」で大注目のジェネレーティブAI、BtoB活用も進む
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ChatGPTに世界が驚く
米OpenAIのリリースした対話型AI「ChatGPT」が、驚くほどスムーズに人間とやり取りできると評判です。その応答はあまりに自然で、本物の人間が書いているのでないかと疑いたくなります。
入力された文章から新たな文章を生成するChatGPTに対し、少し前に注目された「Midjourney」は、ある情景を描写した文章から画像を生成するタイプのAIです。同様のAIとしては、音楽や映像を作り出すものも開発されています。
何らかの入力から別のデータを生成するこの種のAIは、一般的にジェネレーティブAI(生成AI、生成系AI)と呼ばれます。
ChatGPTの認知度は?
AIは、顧客対応サービスで利用されるチャットボットなど、以前からさまざまな場面で使われてきました。職場や生活に浸透しつつあるAIですが、新たに登場したChatGPTはどの程度認知され、活用され始めているでしょうか。
話題の割に6割が「知らない」
SheepDogが20代から40代の企業経営者および役員を対象に調査(※1)したところ、ChatGPTというサービスを「知らない」との回答が60%にものぼりました。
一方、「知っているが、どんなサービスか正しく理解していない」は11%、「知っており、どんなサービスか正しく理解している」は15%、「知っており、ChatGPTを実際に使ったことがある」は14%です。話題になっている割に、ChatGPTの認知度は高くありません。
※1 SheepDog『60%がChatGPTというサービスを知らないと回答。14%はChatGPTの使用経験あり【ChatGPTに関するアンケート】』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000213.000077217.html
使っている人も今は様子見
ChatGPTの利用状況などについても調べたレトリバの調査レポート(※2)でも、企業経営者のChatGPT認知度は30.6%止まりで、SheepDogの結果と同様です。使用経験がある人は7.8%と、やはり少数派でした。
どのような用途で使っているかを分析したところ、「調べものをする際に活用する」が39.3%でもっとも多く、「Webで検索した内容の深堀や翻訳、企業ページの要約など」データに使われているようです。また「顧客対応自動化で活用」が23.2%と、AIチャットボットとしての活用も多くみられました。
ただし、「結果を過度に信じすぎないようしている」など、正確性や信憑性に用心しているという意見もあります。
ChatGPTからビジネスが将来受ける影響については、「関係ない・まだ不明と思っている」が54.5%と多数を占めました。可能性や効率化を期待する声はあるものの、様子見という姿勢が主流です。
※2 レトリバ『日本全国の経営者4,600名に聞く 「ChatGPT のビジネス・社会への影響度について」』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000022635.html
BtoBツールへの導入も
ビジネスの現場でも、ChatGPTのようなジェネレーティブAIを各種ツールやBtoBサービスへの組み込む動きが始まっています。
ChatGPTベースのAIチャットボット
FAQツールなどとして活用されているチャットボット領域では、AIの搭載が実用化済みです。当然、ChatGPTをAIチャットボットで利用するシステムも出てきました。
たとえば「HRBrain AIチャットボット」(※3)は、チャットボットの質問パターンを自動生成できます。従来だとさまざまな質問パターンをユーザーが作って入力しておく作業が必要だったのですが、ChatGPT導入で質問パターンの自動生成が可能になり、AIチャットボットの初期構築と運用工数が大幅に削減できるそうです。
※3 HRBrain『HRBrainのAIチャットボット、OpenAIのChatGPT API活用により設定工数を大幅削減』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000023143.html
メールの自動作成や音声通話の要約にも
当メディア「BOXIL Magazine」を運営するスマートキャンプが提供するインサイドセールス管理クラウドサービス「BALES CLOUD」(※4)は、ジェネレーティブAIを活用したメール自動作成機能の提供を始めました。見込み顧客とやり取りするメールの作成は、意外と難易度が高く手間がかかるものです。これを自動化することで、工数が削減されるうえ、ノウハウの属人化が解消され、質の向上と均一化に繋がると期待しています。
同様に文章の作成や要約を支援する機能を、Notion Labs Japanの「Notion AI」(※5)、Zoom Video Communicationsの「Zoom IQ」(※6)などで実装されています。またIVRyはこれを音声で展開し、「電話GPT」(※7)や「通話音声要約機能(β)」(※8)といった機能をリリースしています。
※4 スマートキャンプ『「BALES CLOUD」、AI技術を使ったメール自動作成機能をβ版でリリース』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000171.000012765.html
※5 Notion Labs Japan『Notion、「Notion AI」を正式リリース』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000088144.html
※6 Zoom Video Communications『Evolving Zoom IQ, our smart companion, with new features and a collaboration with OpenAI』, https://blog.zoom.us/zoom-iq-smart-companion/
※7 IVRy『電話DXのIVRy(アイブリー)、ChatGPTと会話できる「電話GPT」を特別公開』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000056805.html
※8 IVRy『電話DX SaaSのIVRy、シリーズBで13.1億円の資金調達を実施。AI音声認識・ChatGPTを活用した通話音声要約機能を同時リリース』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000056805.html
旅行プランもChatGPTが提案
旅行プランの検討にもChatGPTが活用されています。旅行情報の提案・比較サービス「AVA Travel」(※9)では、LINEチャットでChatGPTに相談ができるそうです。
たとえば、「東京からアクセスが良くて風情のある場所は?」と質問すると、鎌倉や湯河原への旅行を提案してもらえます。旅行会社の窓口でスタッフにアドバイスをもらいながら旅行プランを組み立てる体験が、チャットで行える時代になりました。
※9 AVA Intelligence『ChatGPTを活用したLINEでのAI旅行提案サービスを『AVA Travel』が提供開始』, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000047676.html
活用進む一方、懸念も
このように、ジェネレーティブAIは着実にツールとして使われ始めています。しかし、いくら自然でもっともらしい出力が得られたとしても、検証せずそのまま利用することは危険です。
この種のAIによる出力は、正解か不正解かを100%判別できる四則演算の結果と異なります。表面上同じ文章だとしても、状況によっては不適切なこともあるでしょう。そもそもAIが判断に使う情報が古かったり間違ったりしていると、出力結果の信頼性も下がります。
AIに機密情報を入力する場合は注意しなければなりません。AIによっては、入力データが学習に再利用され、ほかのユーザーの出力に反映される可能性があるからです。最悪の場合、重要な情報が外部へ漏れてしまいます。逆のパターンとして、他者の著作物や機密情報が出力結果に混入すると、意図せず大きなトラブルに巻き込まれます。制御不能な状況になりつつあることを懸念し、専門家らが開発停止を呼びかける動きもあります(※10)。
ジェネレーティブAIは新しい技術であるため、まだ見つけられていない有効な用途があると同時に、思わぬ落とし穴もあるはずです。積極的に活用方法を探すことは大切ですが、広く情報を集め、リスクを未然に防ぐ用心深さも必要です。
※10 Future of Life Institute「Pause Giant AI Experiments: An Open Letter」, https://futureoflife.org/open-letter/pause-giant-ai-experiments/