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試算表とは?ひな形付きで読み方のポイントまで解説

最終更新日:(記事の情報は現在から6日前のものです)
経営者は、毎日の事業取引を正確に帳簿に記録して、決算書(財務諸表)を作成しなければなりません。その決算書作成の元データになるのが「試算表」であり、仕訳や転記などの間違いを見つけるためにも役立つ帳簿です。本記事では、3つの試算表それぞれの特徴や作成方法、試算表と財務諸表との関係、試算表の見方のポイントなどを解説します。記事の最後ではすぐに使える試算表のひな形がダウンロードできます。

試算表とは

試算表とは、ある期間のなかで行われた事業の取引で動いた数値を集計した表で、事業年度の決算期だけでなく年度の途中でも作成すべき帳簿です。トライアルバランス(T/B:trial balance)と呼ばれることもあります。

必ず行うべき会計帳簿の起票は、毎日行われる取引の仕訳帳への起票と、それらの取引を勘定科目ごとに振り分けた総勘定元帳への転記です。

試算表は、取引を勘定科目ごとにまとめた総勘定元帳から数値を抜き出して作成するものです。試算表の作成については、決算書とは異なり作成義務のない種類の帳簿ですが、作成することで事業の遂行にとってさまざまなメリットが得られます。

試算表はなぜ必要か

試算表を作成する理由は、次の3つのメリットを得るためです。それぞれについて詳しく解説します。

  • 帳簿のミスを見つけられる
  • 短期間の業績を判断できる
  • 融資審査の補助書類になる

帳簿のミスを見つけられる

試算表は借方と貸方の合計金額が必ず一致するため、試算表を作成して合計金額が一致しなければ、帳簿のどこかにミスがあるとすぐにわかります。

決算直前に帳簿を取りまとめている段階で金額が合わなければ、1年分の取引と帳簿とを付き合わせてミスの箇所を探さなければなりません。しかし、定期的に試算表を作成しておけば、短いスパンのなかで帳簿のミスに気づけます。

短期間の業績を判断できる

決算期を待たなくても、事業年途中の一定時期に絞って作成した試算表を見れば、業績の確認や分析ができます。毎月試算表を作成すると、月ごとの資産や負債の増減やキャッシュの動きが細かくチェックできるためおすすめです。また、対前月比や対前々月比もしくは対前年比など、特定の期間や短期間に絞った業績比較ができるため、財務の改善や経営方針転換の初動が早く、細かな舵取りができるようになります。

融資審査の補助書類になる

短期間に絞った試算表は、事業年度末に作成する決算書類よりも新鮮な最新情報であるため、直近数か月の取引に絞った経営分析をするのに向いています。たとえば、金融機関の融資審査の際に直近の業績が堅調であることの説得材料になるなど、金融機関との交渉時に補助書類として有効に活用できます。

試算表と貸借対照表・損益計算書との関係

残高試算表は、決算書類に含まれる貸借対照表や損益計算書などと同じような表記方法であり、貸借対照表や損益計算書を作成する前段階で使用する決算準備書面です。

試算表と貸借対照表および損益計算書との違いは、分類や集計の方法です。

帳簿 特徴
試算表 全ての勘定科目をひとまとめにして、貸方・借方で集計したもの
貸借対照表 決算書にある勘定科目ごとに整理して集計したもの。資産・負債・純資産に該当する勘定科目だけを記載。
損益計算書 決算書にある勘定科目ごとに整理して集計したもの。収益と費用に該当する勘定科目だけを記載。

試算表の作成時期

試算表を作成する時期や頻度に特段のルールはなく、作成者の要望や目的に合わせて作成すべき帳簿です。ただし「短期間に絞って業績の集計や分析ができる」というのが試算表の特徴でありメリットでもあります。したがって、できる限り短期間に的を絞って何度も作成するのが望ましいです。

試算表の作成タイミングは、会社により月末または期末など決められたタイミングで作成され、帳簿に間違いがないことを確認するために使われます。取引数が膨大でも最終的に借方と貸方の合計金額は必ず一致するため、決算期よりも早い段階で間違いが発見できます。

試算表の作成の流れ

試算表を含む会計帳簿の作成の流れは下記のとおりです。

  1. 全ての取引を仕訳帳に記入
  2. 仕訳帳から勘定科目ごとに振り分けて総勘定元帳へ転記
  3. 総勘定元帳から取引額や残高を集計して試算表を作成する

なお、仕訳帳や総勘定元帳への起票頻度は会社ごとのルール次第ですが、毎日記録すればデータの整合性が保ちやすく、月末や年末の締め作業が容易になるためおすすめです。

試算表の種類

試算表にはいくつかの種類があります。それぞれについて解説します。

合計試算表

合計試算表とは、総勘定元帳からデータを抜き出し、勘定科目ごとの借方と貸方の取引額を集計したものです。作成にあたり、勘定科目ごとに借方の取引合計と貸方の取引合計を計算し、合計試算表の下段に反映します。

合計試算表を見れば、会社が一定期間に取引した金額の規模がわかります。

借方 勘定科目 貸方
1,300,000 現金 250,000
450,000 買掛金 700,000
資本金 200,000
売上 2,000,000
450,000 仕入
1,600,000 売掛金 900,000
650,000 給料
200,000 借入金 600,000
4,650,000 4,650,000

借方と貸方の合計金額は必ず一致するため、一致しない場合にはどこかの転記や計算が間違っていることがわかります。

残高試算表

残高試算表とは、総勘定元帳からデータを抜き出し、勘定科目ごとの借方と貸方の残高を集計したものです。作成にあたり、勘定科目ごとに借方の残高合計と貸方の残高合計を計算し、残高試算表の下段に反映します。

残高試算表を見れば、各勘定科目の取引後の残高がひと目で把握できます。

借方 勘定科目 貸方
1,050,000 現金
買掛金 250,000
資本金 200,000
売上 2,000,000
450,000 仕入
700,000 売掛金
650,000 給料
借入金 400,000
2,850,000 2,850,000

借方と貸方の合計金額は必ず一致するため、一致しない場合にはどこかの転記や計算が間違っていることがわかります。

合計残高試算表

合計残高試算表とは、合計試算表と残高試算表を同じ取引の勘定科目を対応させて一つにまとめたものです。

合計試算表だけではわからない各勘定科目の残高や、残高試算表だけではわからない転記や計算のミスが、2つの試算表を組み合わせることで発見しやすくなります。

借方 借方 貸方 貸方
残高 合計 勘定科目 合計 残高
1,050,000 1,300,000 現金 250,000
450,000 買掛金 700,000 250,000
資本金 200,000 200,000
売上 2,000,000 2,000,000
450,000 450,000 仕入
700,000 1,600,000 売掛金 900,000
650,000 650,000 給料
200,000 借入金 600,000 400,000
2,850,000 4,650,000 4,650,000 2,850,000

内側の「合計試算表」と外側の「残高試算表」のそれぞれの合計は必ず一致するため、一致しない場合にはどこかの転記や計算が間違っていることがわかります。

決算整理前・整理後残高試算表

試算表は、原則として決算整理の前と後で作成して、総勘定元帳から転記が正しく行われたかどうかを確認します。

  • 決算整理前 残高試算表:決算仕訳をする「前」に作成
  • 決算整理後 残高試算表:決算仕訳をした「後」に作成

決算整理後残高試算表を作成して問題がなければ、そのデータを転記しながら損益計算書や貸借対照表その他の財務諸表を作成します。

試算表で見るべきポイント

短期間で区切った試算表から読み取れる新鮮な情報は、経営基盤の改善にとって不可欠です。試算表の見方や財務状況の改善について解説します。

転記や仕訳のミス

試算表の借方と貸方取引合計や残高合計が一致しなければ、どこかの転記や仕訳に間違いがあるということになるため、間違い箇所を探して修正します。同時に、仕訳帳や総勘定元帳の各勘定科目についても、勘定科目の仕分けや転記および計算が正確になされているのか確認しておきましょう。

利益の状況

たとえ売上が高くても、仕入や給与や売掛金が高ければ利益率は低くなります。無駄な費用はないか、売掛金債権の回収が遅れていないかなど、期首に想定した売上や利益の進捗状況や原因を分析して経営方針の改善に活用しましょう。

資金繰りの状況

資産が多ければ経営基盤はおおむね健全ですが、過度の負債があり長期間解消されずに滞留している場合は要注意です。

負債は銀行からの借入金や仕入れ先への買掛金などであり、負債が多いと売上が高くても会社内のキャッシュがなくなり倒産を招く恐れがあります。また、売掛金は商品やサービスを販売した代金を受け取る権利ですが、完全なプラス資産とはいえないため、代金を回収するまでは安心できません。取引先からの支払の遅延は早期に手を打って、回収不能の不良債権にならないように注意しましょう。

資産と負債のバランス

現金や売掛金に代表される「資産」と、買掛金や借入金などに代表される「負債」のバランスが重要です。資産に対する負債の比率が高く、解消の兆しがなく時間が経過しているなら、この先で資金繰りが悪化する傾向が高いと判断できます。

特に流動資産と流動負債を比較して、流動負債が流動資産より過度に大きいなら、早急に資金繰りの改善に着手しなければなりません。原価の精査と削減や売掛金の回収など、売上や利益の増大だけでなく、両面で改善が図られているのか慎重に確認しましょう。

合計残高試算表のひな形(テンプレート)

合計残高試算表のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、合計残高試算表を作成する際にはぜひご利用ください。

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