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減価償却明細書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から124日前のものです)
減価償却明細書とは、企業が事業で使用するために保有している固定資産について、減価償却状況が一覧になった帳簿です。企業会計において正しく税務処理するためには、固定資産ごとに適切な金額や回数で経費計上しなければなりません。減価償却明細書は、その履歴や計算の経緯が一覧で表現された、とくに重要な会計帳簿です。減価償却のルールおよび減価償却明細書の概要を紹介し、減価償却明細書の主な記載事項について詳しく解説しています。また、すぐに使える「減価償却明細書」のひな形も用意しました。

減価償却明細書とは

減価償却費明細書とは、企業が保有する建物や車両、備品などの有形固定資産と、特許技術や商標権およびソフトウェアなどの無形固定資産に対して、それぞれの法定耐用年数に応じた減価償却費に関する詳細を明示した一覧表です。

減価償却明細書に法定の統一書式はないため、パソコン表計算ソフトやWebアプリおよびWebサイトから入手したテンプレートを使って、各企業が独自に作成した表で管理することは問題ありません。

そもそも減価償却とは

減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産を取得した場合に、取得価格をその耐用年数の期間は、必要経費として毎年繰り返し費用計上していく会計手続です。

高額の固定資産を所得した期(会計年度)に一度に全て取得費を経費計上してしまうと、巨額の経費のマイナスによって利益がなくなり、帳簿上の収益が悪化してしまいます。そのため、業務の利益を生み出す目的で長期間使用する固定資産は、数回から数十回に分けて経費計上するのが一般的な会計ルールになりました。

一方で、​​使用可能な期間が1年未満もしくは取得価額が10万円未満なら、取得費用の全額を取得した期に一括で経費計上します。

なお、時間とともに価値が減少するこれらの資産は「減価償却資産」に該当しますが、時間が経っても価値が減少しない土地や骨董・美術品などの資産は減価償却資産ではありません。

減価償却のルール

実際の物理的な耐用年数は、製品(資産)の個別の耐久性や企業側の使用状況によって異なりますが、企業によって耐用年数の扱いが異なるのは、課税の公平の見地から好ましくありません。そこで「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって、資産の種類別に定められた「法定耐用年数」を用いて、減価償却するのが実務ルールになりました。

減価償却明細書と固定資産台帳の使い分け

減価償却明細書と似た書類として「固定資産台帳」があります。減価償却明細書は減価償却費を経費計上すべき固定資産が一覧になった帳簿ですが、固定資産台帳は1つの固定資産にフォーカスして、減価償却の詳細履歴が記載された帳簿です。

減価償却明細書と固定資産台帳は、下記のような目的や用途に応じて帳簿を使い分けます。

帳簿 使用用途
減価償却明細書 ・複数の資産の減価償却状況を詳細に把握するために使用
・固定資産ごとに年度の取得価格、減価償却費、未償却残高を記載
・確定申告や税務調査の際には、減価償却費を経費として計上する根拠として提出
固定資産台帳 ・資産の所有状況を把握するために使用
・個々の固定資産の取得価格や耐用年数、減価償却累計額などを記載
・資産の購入日や型番、シリアルナンバー、設置場所なども記載

確定申告の決算書類である「貸借対照表」や「損益計算書」を作成する際には、減価償却明細書や固定資産税台帳のデータを抜き出して活用します。また、業務で使用する機器や設備の刷新時期は、固定資産ごとの法定耐用年数と実際の損耗状況を比較検討しながら計画し、優先して交換すべき資産を特定します。

つまり、減価償却明細書は会計帳簿の本来の目的に限らず、資産管理の方向性を決定して予算組みをする根拠にもなる重要な書類であるといえます。

減価償却明細書の主な記載事項

実務で用いる減価償却方法は、大きく分けて「定率法」と「定額法」の2種類です。

減価償却明細書の主な記載事項は、この減価償却方法を判断したり計算に必要な係数などの情報を含んでいるため、記載事項の説明に入る前に減価償却の分類について下表にまとめます。

定額法 定率法
大まかな利用主体 個人事業者 法人
※個人が使うには届出が必要
種類の限定 建物や建物附属設備、構築物、ソフトウェアは定額法のみ 機械設備や車両運搬具、工具器具備品については、
・法人:定率法
・個人:定額法
になるため注意
減価償却費の計算方法 取得価額×定額法の償却率 未償却残高×定率法の償却率
初年度の減価償却費 一定 最も大きい
年数の経過と減価償却費 一定 年々減少する
残存価格 最後は0円になる 設定が可能
メリット 計算が簡単 取得から数年は節税効果が大きい
デメリット 取得から数年は事業利益が大きくなり、節税効果は小さい 次第に事業利益が少なくなって、節税効果が薄れていく

定額法では取得価額と償却率をかければ一律の減価償却費が計算できますが、定率法では未償却残高に対して償却率をかけて計算するため、減価償却費を毎年度計算しなくてはいけません。また、償却保証額を下回ると計算方法が変わるため注意が必要です。

ここからは、減価償却明細書の主な記載事項について解説していきます。

科目

科目欄は、取得した減価償却資産の勘定科目名を下記の例のように記載します。

  • 建物:建物
  • 車両:車両運搬具
  • PC:消耗品費または事務用品費、備品など(使用する勘定科目名は金額によって判断)

取得した減価償却資産の詳細な内容や資産ごとの固有識別情報については、次の「資産名」の箇所で記載します。そのため、「科目」には、会計帳簿上の分類となる「勘定科目」のみ記載すれば問題ありません

資産名

資産名には、減価償却資産の具体的な特定情報を記載します。もしも、減価償却資産がパソコンで科目が「事務用品費」の場合、ここで販売メーカーや機種名などを記載します。

同種のパソコンが複数台ある場合には、設置場所や企業内で個別に割り振られた通し識別番号などを記載して、どのパソコンに関する記載なのかを特定できる程度の情報を記載するようにしましょう。

取得年月

取得年月には、減価償却資産を購入した年と月を記載します。購入したのが月の半ばであっても記載は月単位で構いません。年度の途中に購入した場合には、その期に計上する減価償却費は通期の12か月満額ではなく購入月から期末までの月割計算が必要です。

なお、定額法は平成19年4月1日から、定率法は平成19年4月1日と平成24年4月1日からそれぞれ償却率が変わっています。そのため、減価償却費を正確に計上するためには資産の購入時期に応じた適切な償却率の使用が必須であり、購入した年月を正確に記載することが大切です。

取得価格

取得価格は勘定科目の仕訳の際に各勘定科目で使用した金額を用いて記載します。つまり、パソコンなら仕訳の際に借方に記載する「消耗品費」または「事務用品費」もしくは「備品」などで使用した金額です。なお、取得価格は購入価格と同額になるのが一般的です。

購入が割賦払い(ローン)や掛取引(一定期間で区切った後払い)であっても、減価償却明細書に記載する取得金額には影響しません。原則として、取得したときの購入価格を記載します。

未償却残高

未償却残高とは、その期の減価償却が終わったあとに残っている、減価償却が済んでいない残額を記載します。

減価償却資産は、購入した期では減価償却がまだ行われていないため取得価格と未償却残高は同じ金額です。しかし、その期の期末になった時点で減価償却処理が行われるため、取得金額から「当期償却費」を引いた残額を、未償却残高(期末簿価)として減価償却明細書に記載します。

翌期以降の期首時点の未償却残高は、先期に行った取得価格から減価償却費もしくは減価償却累計額を差し引き、会計処理の末に残った期末簿価と同じ金額になります。

耐用年数

会計処理上の耐用年数とは、実際にその資産が実用に耐えられる年数ではなく、減価償却資産の耐用年数等に関する省令で定められた「法定耐用年数」です。

減価償却資産を新品ではなく中古で購入した場合には、下記の「簡便法」によって耐用年数を計算します。ただし、計算した年数に1年未満の端数があれば切り捨て、年数が2年未満のものは全て2年とします。

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産:その法定耐用年数の20%に相当する年数
  • 法定耐用年数の一部を経過した資産:その法定耐用年数から経過年数を引いて、経過年数の20%を加えた年数

償却率

償却率とは、減価償却費を計算する際に計算式で使用する係数です。償却率は耐用年数や計算方法によって変わるため、計算方法と耐用年数に応じた適切な係数を使用しましょう。

月数

月数には、その期にその減価償却資産を事業のために使用する月数を「減価償却の対象月数」として記載します。

減価償却資産を期の途中で購入した場合の月数は、購入月から決算月までの月数(12よりも小さい数値)になります。したがって、期初に購入して1年間継続して事業で使用している場合の月数は、最大数の「12」です。

当期償却費

当期償却費とは、当期に償却する減価償却費です。減価償却資産を期の途中で購入した場合は、減価償却費の年額を12で割って月数を乗じた額になります。

期末簿価

期末簿価とは期末時点での帳簿上の資産価値で、当期の期首の未償却残高から当期償却額を引いた額です。そして、この期末簿価が次の期首の未償却残高になります。

減価償却明細書のひな形(テンプレート)

BOXILでは、減価償却明細書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しました。これから減価償却明細書を作成する方はぜひご利用ください。

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