福利厚生サービスの市場規模!企業の法定外福利厚生の実施状況は?
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法定外福利厚生サービスの市場規模
法定外福利厚生サービスとは、企業が任意で従業員や家族のために提供する福利厚生制度のことです。法律による義務や制限がないため、企業はさまざまな福利厚生サービスを独自に導入できます。
ただし、法定外福利厚生サービスの市場規模は、増大しているとはいえない状況にあります。
一般社団法人日本経済団体連合会が発表している「第64回福利厚生費調査結果報告」によれば、2019年度の企業の福利厚生費は、全産業を平均すると従業員1人1か月あたり108,517円で、このうち、法定福利費が84,392円であるのに対し、法定外福利費は24,125円(前年25,369円)でした。
法定福利費の対現金給与総額比率は、一貫して上昇傾向にあるものの、法定外福利費は1990年代をピークに減少に転じて以来、抑制傾向にあるのが現状です。
※出典:一般社団法人日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告」(2024年10月31日閲覧)
法定外福利厚生の実施状況
企業では、どのような法定外福利厚生が実施されているのでしょうか。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「企業における福利厚生施策の実際に関する調査」によれば、法定外福利厚生制度や施策のうち、企業が実施している割合が高いものは次のとおりです。
- 慶弔休暇制度(90.7%)
- 慶弔見舞金制度(86.5%)
- 病気休職制度(62.1%)
- 永年勤続表彰(49.5%)
- 人間ドック受診の補助(44.6%)
- 家賃補助や住宅手当の支給(44.0%)
このように、休暇制度や慶弔災害、健康管理、住宅に関する福利厚生施策が実施される割合が多いことがわかります。
また、福利厚生制度を実施する企業の規模を比較したデータでは、全体的な傾向として企業規模が大きいほど、福利厚生制度を実施している割合が高い状況です。
たとえば、メンタルヘルス相談では30人未満の企業では17.3%であるのに対して、300人以上の企業では78.2%と大きな差があります。
※出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実際に関する調査」(2024年10月31日閲覧)
企業が充実させたい福利厚生
同調査では、施策のあるなしにかかわらず、施策ごとに今後充実させたい割合についてのアンケート結果が報告されています。
特に多いものは、次のとおりです。
- メンタルヘルス相談(12.4%)
- 治療と仕事の両立支援策(11.5%)
- 人間ドック受診の補助(10.7%)
- 社内での自己啓発プログラム(10.7%)
- ノー残業デー等の設置(10.4%)
- 社員旅行の実施・補助(10.3%)
- 社外の自己啓発サービスの提供・経費補助(10.1%)
このように、健康管理や両立支援、自己啓発、働き方などに関連する福利厚生施策に対して注目が集まっているようです。
企業が福利厚生施策を実施する目的
同調査では、企業が福利厚生制度・施策を実施する目的に関する調査も実施されており、次のような回答となりました。
- 従業員の仕事に対する意欲の向上(調査時点60.1%、今後55.0%)
- 従業員の定着(調査時点58.8%、今後50.1%)
- 人材の確保(調査時点52.6%、今後51.7%)
- 従業員が仕事に専念できる環境づくり(調査時点32.5%、今後38.3%)
- 従業員同士の一体感の醸成(調査時点35.0%、今後30.2%)
調査時点での目的では、従業員の仕事に対する意欲の向上を目的としている企業の割合が高く、次いで従業員の定着や人材の確保といった、雇用の維持や確保を目的にする企業の割合が5割を超える状況にあります。
一方、今後(将来的)の目標としては、企業への信頼感やロイヤリティ醸成、従業員が仕事に専念できる環境づくりといった目的で福利厚生制度を整備・実施したいと答えた企業の割合がやや多い状況です。
アウトソーシング・代行サービスの活用状況
同調査では、福利厚生のアウトソーシングや代行サービスの活用状況についても、データが紹介されています。
調査に回答した2,809社のうち、福利厚生のアウトソーシングサービスを利用している企業は合計421社で、全体の15.0%。1,000人以上規模の企業では、37.5%が福利厚生をアウトソースしている状況です。
また、企業が従業員に一定額のポイントを支給して、従業員がポイントの範囲で福利厚生メニューを選択・利用できる「カフェテリアプラン」について、導入企業は37社で全体の1.3%程度の導入に留まりました。
アウトソーシングで導入される割合が多い施策は次のとおりです。
- 財形貯蓄制度(31.1%)
- 診療所、健康管理センター等医療施設(53.9%)
- メンタルヘルス相談(51.8%)
- 人間ドック受診の補助(53.9%)
- 運動施設・フィットネスクラブの利用補助(47.5%)
- 社外の自己啓発サービスの提供、経費補助(39.7%)
- 社外の自己啓発に関する情報提供(39.9%)
また、福利厚生のアウトソーシングを導入する目的としては、社内業務の簡素化や効率的な事業運営、福利厚生施策のニーズの多様化への対応と答えた企業が多い状況にあります。
法定外福利厚生が充実している企業のメリット
法定外福利厚生制度が充実している企業のメリットは次のとおりです。
- 求職者に選ばれやすくなる
- 従業員から信頼され、離職の防止につながる
- 勤労意欲の向上、生産性の向上が期待できる
それぞれ詳しく解説します。
求職者に選ばれやすくなる
福利厚生が充実している企業は、求職者から高い関心を集めやすくなるといったメリットがあります。
就職活動中の学生や転職を考えている社会人にとって、福利厚生の内容は重要な判断基準の1つです。とくに、法定外の福利厚生が充実していることは、企業が従業員を大切にしているといったメッセージとして捉えられやすいといえます。
たとえば、住宅手当や通勤手当、健康支援プログラムなどが充実していれば、働きやすい環境が整っていると感じられるでしょう。育児や介護に関する支援制度があれば、長期的なキャリアプランを立てやすくなります。
法定外福利厚生の充実は、企業の魅力の向上や優秀な人材の獲得につながるため、採用活動での競争力が向上し、質の高い人材を確保できる可能性が高まります。
従業員から信頼され、離職の防止につながる
充実した福利厚生は、従業員からの信頼を高める効果があるのもメリットです。
従業員の生活をサポートする制度が整備されることで、従業員は会社が自分たちのことを考えてくれているといった実感が得られます。
たとえば、慶弔休暇や慶弔見舞金制度は、従業員の人生の節目に寄り添う姿勢を示すものであり、健康診断の補助や運動施設の利用補助などの健康支援策は、従業員の健康維持に対する会社の関心を表しています。
このような制度の存在が、従業員と会社との信頼関係を強化し、帰属意識を高めることにつながります。結果として、早期離職のリスクが低下し、長期的に安定した雇用関係の構築が可能です。
勤労意欲の向上、生産性の向上が期待できる
福利厚生の充実は、従業員の勤労意欲を高め、生産性の向上につながります。
たとえば、自己啓発支援制度や資格取得支援制度があれば、従業員のスキルアップへの意欲が高まります。また、フレックスタイム制度やテレワーク制度などの柔軟な働き方を支援する制度は、ワークライフバランスの改善に寄与するでしょう。
このような制度の整備・拡充によって、従業員は自身の成長と仕事の両立を図りやすくなり、勤労意欲が向上します。
さらに、福利厚生の充実は従業員のストレス軽減にも効果があります。メンタルヘルスケアや休暇制度の充実により、従業員の心身の健康が保たれ、長期的な視点で高いパフォーマンスを発揮できるようになるからです。
福利厚生の充実は従業員の働く環境を整え、モチベーションを高められるため、企業全体の生産性向上に貢献することが期待できます。
法定外福利厚生を導入する際の障壁
法定外福利厚生が充実していると、さまざまなメリットがある一方で、企業の実施割合はそれほど多くなく、拡大しているわけでもありません。
法定外福利厚生を導入するには、次に挙げる障壁が存在しています。
- 効果検証しにくい
- 運営の手間がかかる
詳しく解説します。
効果検証しにくい
法定外福利厚生導入の障壁の1つが、効果検証が難しいことです。従業員の満足度や生産性の向上といった福利厚生の効果を、直接的な要因として数字化することが難しいです。
たとえば、健康支援プログラムを導入しても、従業員の健康状態の改善にどれだけ寄与したかを正確に測定するのは簡単ではありません。同様に、福利厚生の充実が採用活動や人材定着にどの程度影響しているかを特定するのも難しいでしょう。
このように、間接的な効果こそ期待できるものの、直接業績向上に影響したかどうかを判断できないため、コストに対する効果や利益を想定しにくいのが現状です。
打開策として、従業員満足度調査を活用して、福利厚生制度の導入に対する従業員の意識の変化を観測するとよいでしょう。
運営の手間がかかる
法定外福利厚生の導入と運営には、相当な労力と時間が必要です。
従業員のニーズを把握したうえで、適切な福利厚生プランを設計する必要があるため、アンケート調査や面談などを通じて、従業員の声を丁寧に拾い上げなければなりません。
また、導入後も制度の運用や管理に継続的な労力が求められます。とくに、カフェテリアプランのような柔軟な福利厚生制度では、従業員の選択状況を常に把握したり、必要に応じて制度を調整したりする必要があります。
加えて、福利厚生の利用状況や効果を定期的に評価し、改善点を見出すことも重要です。
これらの業務を担当する人員の確保や育成も課題となりやすく、中小企業では人的リソースの制約が発生するケースが散見されます。
しかし、福利厚生アウトソーシングや代行サービスを利用すれば、こうしたリソースの課題を解決できるでしょう。
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