フレックスタイム制とは?ルールや導入条件、メリット・デメリット
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フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、従業員が始業・終業時刻や労働時間を自由に決められる勤務制度のことです。
フレックスタイム制を導入する目的は、従業員個人のプライベートと仕事とのバランスのとれた柔軟な働き方を尊重するためです。朝早くに働きはじめて夕方に退社したり、昼ごろ出社して夜遅くまで働いたりと、個人の生活リズムにあわせた勤務が可能になります。
日本でのフレックスタイム制は意外に歴史が古く、1987年の労働基準法改定を受けて1988年4月から法律上の制度として認められました。
フレックスタイム制と変形時間労働制との違い
フレックスタイム制と混同しやすい勤務制度に、変形時間労働制があります。
変形労働時間制とは、一定の期間内での労働時間を企業が柔軟に調整できる制度のことです。変形労働時間制は、年・月・週単位で1日の労働時間を平均化するために、企業が始業時刻と終業時刻を労働基準法で定められた範囲内で決定します。フレックスタイム制では、従業員が1日の労働時間の決定を行う点が異なり、変形労働時間制は1日単位の労働時間を従業員が決めることはできません。
変形時間労働制の目的は、閑散期と繁忙期に合わせて合理的に労働力を調整するためです。閑散期は所定労働時間を短く設定し、その分を繁忙期の労働時間に組み入れることで、残業時間を減らして残業代の削減が可能になります。
フレックスタイム制と裁量労働制との違い
裁量労働制も、フレックスタイム制と混同しやすい勤務制度かもしれません。
裁量労働制とは、「みなし労働時間制」の一つで、労働時間が労働者の裁量にゆだねられている労働契約のことです。労働時間を実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間分を働いたとみなして、労使で契約した時間分が報酬として支払われます。
裁量労働制は、営業職や研究職、士業など、労働時間の算出が難しい場合や、専門性が高い職種で労働者に時間管理を任せた方がよい場合に導入されます。
フレックスタイム制とコアタイム
フレックスタイム制を導入している企業のなかでも、労働を特定の時間だけ義務づける「コアタイム」をルールとして設定しているケースが多く見られます。
コアタイムとフレキシブルタイムとは
コアタイムとは、フレックスタイム制の導入において、この時間帯だけは必ず勤務していなくてはならないと規定した時間を指します。コアタイムを定める場合は、開始時間および終了時間を規定する必要があるので注意しましょう。勤務すべき時間帯のコアタイムと、任意の時間に出退勤してよいフレキシブルタイムを、多くの企業がフレックスタイム制のルールとして規定しています。
コアタイムを設定する理由
昼夜問わず好きな時間に出社・退社できるようにすると、コミュニケーションが取りづらかったり、必要な場面で必要な人材が不足したりする危険性があります。そのため、すべての従業員が顔を合わせるコアタイムを設定し、情報の共有や会議を進行できるよう調整している企業が多いです。
コアタイムを設定するときのポイント
コアタイムをいつにするかは企業によって異なるものの、11時~15時のように午前中の遅い時間帯から午後の早い時間帯までをコアタイムとするのをおすすめします。朝早くの出勤を避けたい従業員、夕方には退勤したいスタッフの要望を叶えられるためです。
コアタイムが1日の労働時間とほぼ同じになる場合や、フレキシブルタイムが極端に短い場合は、フレックスタイム制とは認められないことがあります。
スーパーフレックスタイム制とは
1日24時間のすべてをフレキシブルタイムとし、勤務時間と出勤日を完全に労働者の裁量に任せるコアタイムのない「スーパーフレックスタイム制」を導入している企業もあります。
清算期間とは
清算期間とは、フレックスタイム制において労働者が働く時間を調整できる期間のことです。清算期間の上限は以前は1か⽉でしたが、2019年4月の法改正施行により3か⽉までになりました。従業員は、清算期間のなかで所定労働時間に達するように日々の労働時間を調整します。
フレックスタイム制の導入条件
フレックスタイム制の導入には、就業規則への規定と労使協定の締結が必要となります。
就業規則への規定
労働基準法第32条の3において、フレックスタイム制を適用する場合、それを就業規則に規定しなければならないとされています。就業規則には、始業時間および終業時間を従業員の自主的な判断によって決定する旨を記載しましょう。コアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合には、それぞれの時間帯についても明記しましょう。
労使協定への記載
労使協定で定めるべき事柄は次の6点です。
- フレックスタイム制の対象となる従業員の範囲
- フレックスタイム制の対象となる清算期間(3か月以内)
- 清算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
- 「コアタイム」を定めた場合の開始および終了時刻(任意)
- フレキシブルタイムに制限を設ける場合の開始および終了時刻(任意)
労使協定の届け出
フレックスタイム制の清算期間が3か月までに緩和されたことに伴い、1か月を超える清算期間の場合には、労使協定の労働基準監督署への届け出が必要になります。清算期間が1か月以内の場合には労使協定の届け出は不要です。
1か月を超える清算期間の場合に、労使協定の届け出を怠ると、罰則(30万円以下の罰⾦)が科せられることがあるので注意が必要です。
フレックスタイム制の時間外労働
フレックスタイム制の時間外労働について、36協定の締結や時間外労働の計算方法について説明します。
36協定の締結
フレックスタイム制でも固定労働時間制(定時勤務)と同様に、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて時間外労働や休日労働させる場合には、あらかじめ36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36(サブロク)協定とは、労働基準法第36条にもとづく労使協定のことで、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。
つまりフレックスタイム制においても、従業員が残業をするためには、36協定の締結が必要ということです。36協定を締結せずに残業や休日労働させると、罰則の対象となります。
フレックスタイム制の時間外労働の計算
フレックスタイム制では、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働しても、ただちに時間外労働とはなりません。逆に、1⽇の標準の労働時間に達しない時間も欠勤となるわけではありません。
清算期間における実際の労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。法定労働時間の総枠は、次の数式に従って計算します。
フレックスタイム制の残業代の計算
上記の法定労働時間の総枠を超えた時間外労働の残業(法定外残業)に対しては、割増賃金が支払われます。
あらかじめ取り決められた「所定労働時間」を超えて働いた場合でも、法定労働時間の総枠を超えていない場合の残業(法定内残業)に対しては、割増のない通常の賃金を超過時間分支払う必要があります。
また、フレックスタイム制においても、休憩、休日、深夜労働に関する規定は固定労働時間制(定時勤務)と同様に適用されます。
フレックスタイム制のメリット
大企業を中心に、多くの企業で採用が進んだフレックスタイム制は、労働者にも好評を持って迎えられました。それは、労働者の個性や能力を活かすという当初の目的のほかに、企業側にもメリットが期待されたからにほかなりません。フレックスタイム制の導入メリットを詳しく紹介します。
ワークライフバランスの取れた働き方
子供の送迎など、個人の事情を考慮した、ワークライフバランスに優れた働き方が可能であり、週末を完全フレックスタイム制にすることにより、1日の労働時間を短縮することもできます。そのほかにも、通勤時間帯をずらすことによって、ストレスの少ない効率的な通勤も実現できるようになるでしょう。
残業削減効果
フレックスタイム制では、通常1か月という清算期間が設けられるため、週に40時間以上の労働を行っても即残業とはなりません。つまり、清算期間内の繁忙期で週40時間以上の労働になっても、閑散期でその分の労働時間を減らすなどの調整が可能となり、結果的に残業削減に効果を発揮します。
優秀な人材の確保
フレックスタイム制を導入することによって、生産性と時間管理の意識が高い優秀な人材の離職を防げます。また、フレックスタイム制やテレワークをアピールすることによって、こうした人材を採用・確保できる可能性が高まり、結果的に人的資本の価値の増加につながっていきます。
フレックスタイム制のデメリット
フレックスタイム制は、デメリットが小さくないという指摘もあり、フレックスタイム制を取りやめる企業もあります。フレックスタイム制のデメリットについて詳しく説明します。
職種によって向き不向きあり
フレックスタイム制は、職種によって不都合が生じる可能性が指摘されています。いつ対応が必要かわからない情報システムの職種や、他の職場と密に連絡をとる営業職の場合は、フレックスタイム制には向いていないかもしれません。一方、研究職やデザイナーは成果物を完成させるまでの時間において、労働時間を自由に設定しやすいでしょう。
生産性低下のリスク
従業員が自己管理できなければ勤務時間をルーズにしやすく、反対に仕事の生産性が下がることもあります。時間管理がおろそかになってしまったために、フレックスタイム制の運用を取りやめて、以前の管理体制に戻した企業も少なからず存在します。
組織内外での時間調整が難しい
フレックスタイム制においては、従業員がコアタイム以外に顔を合わせなくてはならないことや、顧客および取引先からの問い合わせに対応すべきケースは起こりえます。リアルタイムのコミュニケーションを重視する企業や部署では、運用に工夫が必要でしょう。
フレックスタイム制についてのQ&A
フレックスタイム制では残業代が出ない?
フレックスタイム制でも残業代は出ます。しかし従来の勤務体系とは時間外労働の計算方法が変わるので注意が必要です。
フレックスタイム制では、1日単位ではなく、清算期間内にまとめて時間外労働時間を計算します。たとえば、清算期間が1か月の場合、1か月の実労働時間が、規定されている総労働時間(所定労働時間)を上回っている場合に、残業代が発生するという計算です。
残業とは反対に、1か月の実労働時間が、規定されている総労働時間を下回った場合には、不足時間控除が発生します。不足時間控除が発生すると規定した時間分労働していないとみなされ、賃金から不足時間分の金額が差し引かれます。
フレックスタイム制の休憩時間は?
フレックスタイム制であっても休憩時間は必要です。厚生労働省のQ&Aによると、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間が必要とされています。これは労働基準法第34条によって規定されており、フレックスタイム制であっても例外ではありません。
フレックスタイム制における有給休暇の扱いは?
フレックスタイム制において有給休暇を取得した場合、就業規則や労使協定に記載されている「標準となる1日の労働時間」にもとづいて計算します。
たとえば標準となる1日の労働時間が7時間の場合、有給を1日取得した清算期間は7時間の労働扱いです。賃金も有給休暇の7時間に値する料金が支払われます。
フレックスタイム制の柔軟な働き方で生産性の向上を
フレックスタイム制について、ルールや導入条件、メリット・デメリット、コアタイムや残業の計算方法について解説してきました。フレックスタイム制を導入することで、従業員のライフワークバランスや生産性の向上といったメリットをもたらします。
フレックスタイム制を法律に則って正しく導入し、勤怠管理システムなどを活用しながら上手に運用していきましょう。
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