BOXILマンスリーレポート2020総集編 - 注目SaaSの月次動向を解説
SaaSマーケティングプラットフォーム「BOXIL SaaS」では、資料請求数をもとにSaaS市場動向を考察した「BOXILマンスリーレポート」を2020年4月より発行しています。
本記事は、2020年1月〜12月の資料請求動向をまとめた総集編です。テレワーク対応に追われ、SaaS導入が進んだ1年。のべ約4万2,000人分の資料請求データから2020年を振り返るとともに、今後ニーズが伸びそうな注目のSaaS領域を考察します。
2020年間ランキングトップ10
2020年のBOXIL SaaS年間資料請求人数ランキングTOP10は次のカテゴリです。
新型コロナウイルスは商習慣を一変させました。デジタル化に二の足を踏んでいた企業も取り組まざるを得なくなり、5〜10年分の変化が一気に起きたとも言われています。
夏以降、経済活動の再開とともに出社を再開する企業が増えると、ツールの導入ニーズは働き方の変化を見据えたIT環境構築へと変化しました。在宅勤務のコミュニケーション課題も浮き彫りとなり、出社とかけあわせる「ハイブリッドワーク」など、ニューノーマル時代へ向けた仕組みの検討が行われています。
出社を減らせない要因の一つが「紙」でしたが、コロナ禍でデジタル化の緊急度があがり、ペーパーレス化が進んでいます。行政手続きのデジタル化や、それに伴う法令の改正も相次ぎ、本秋にはデジタル庁が新設されます。
ピックアップSaaSの月次動向を解説
続いて、社会変化とあわせて特徴的な動きが見られた6つのSaaSをピックアップします。
上図は、6カテゴリの月次資料請求人数動向を示したグラフです。社会情勢にあわせてピークが変化していることがわかります。
まず3〜4月は、急きょテレワーク導入に迫られたことから、Web会議システムの資料請求数が急増しました。また“はんこ出社”問題から注目された電子契約システムは、5〜6月に導入検討のピークを迎えます。いずれも夏以降ダウントレンドとなりましたが、導入が進み定着しつつあるとも考えられます。
各ピックアップカテゴリの動向を深掘りします。
Web会議システム
Web会議システムがピークだった4月の資料請求人数は、1月の約5.8倍。3月からでも約1.4倍に急増しました。
「Zoom」ユーザーの増加とともにシステム自体の認知が広まり、検索する人が増えたと考えられます。またZoomのぜい弱性をついたサイバー攻撃が相次ぎ、別途安全なサービスを検討する企業が相次いだ背景もあります。
5月以降は落ち着いたものの、ウェビナー配信用システムや、面接・商談に特化したビデオ会議ツールなど、特定用途向けのWeb会議システムが注目されるようになりました。
電子契約システム
“はんこ出社”問題が大きな話題となったのは4月でした。これを受けて、BOXIL SaaSでも4〜6月に電子契約システムの資料請求数が急増。夏には下がりましたが、コロナ以前と比べると高止まりといってよい状況が続いています。
国内シェア大手のクラウドサインを運営する弁護士ドットコムによると、2019年5月から2020年8月にかけての約1年で導入企業数が倍増したとのこと。注目度の高まりが伺えます。
あわせて契約業務全般をデジタル化する動きが活発に。契約書管理や、AIを活用した契約書レビューサービスを取り入れ効率化する取り組みが行われています。契約・押印にまつわる法整備も進んでおり、引き続き、一定のニーズが続くと考えられます。
経費精算システム
経費精算システムは、交通費や出張旅費、交際費など経費の管理に使用するシステムです。在宅勤務が中心となったことで経費の使い道が変わり、柔軟に運用できるクラウドシステムへの乗り換えを検討する動きが見られました。
帳票関連ではペーパーレス化を進める法改正が相次いでいます。10月には特定条件の取引について紙領収書が不要となったほか、2023年の通称インボイス制度導入に向けて電子請求書の規格を統一する動きも。
社会の変化、法改正への対応、両方の観点から、引き続き堅調な導入検討が続くと予想しています。
CRM(顧客管理システム)
顧客接点がオンライン化すると、紙の名刺情報に頼った顧客情報管理が難しくなり、クラウド上にデータを集約するツールが導入されています。
CRM(顧客管理システム)はその代表。グローバル大手の米国セールスフォース・ドットコムが8月に発表した2021年度第2四半期決算によると、2020年5月〜7月の売り上げは前年比+29%と大幅に増加。世界的に導入が進んだことが伺えます。
緊急性の違いからWeb会議システムほどの山は見られませんでしたが、「オンライン名刺交換」が話題になるのとあわせて、5〜6月にかけて資料請求人数が微増しています。
オンラインマーケティングを強化するにも顧客情報の電子化は避けられず、MAツールとあわせて日本でも活用されると推測されます。
MAツール
MA(マーケティングオートメーション)はマーケティング活動を自動化するためのツール。顧客との接触履歴を管理するとともに、属性分析を活用した自動メール配信などを一元化できます。
顧客接点がオンライン中心に複雑化する中で、アプローチを最適化し効率よく収益をあげる必要性が増しました。とりわけBtoBでは、オフラインの展示会や対面営業が難しくなり、固定電話番号への通電率も低下。Web上の接点活用が必須となりました。
クラウドPBX、CTIといった電話関連システムもニーズが増したほか、人が密集するコールセンターを在宅化するシステムも検討されました。チャットボットと電話応対を組み合わせる顧客対応や、その履歴を管理するシステムもあり、顧客対応の方法が複雑化しています。
BIツール
ビッグデータの分析・活用を行うBI(ビジネス・インテリジェンス)ツール。経営や事業推進において、データに基づく意思決定を支援するものです。“アフターコロナ”へ向けて中長期的な経営改革が模索されるなか、秋以降、じわりと資料請求数が増えています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)では、収集したデータの活用こそが肝要。BIというと大手向きのイメージが強いですが、SaaS型BIなら中小企業でも初期費用を抑えて導入できます。
アフターコロナで注目のSaaSは?
業務ツールが大きく変化した2020年。ではWithコロナ、アフターコロナへ向かう2021年、どういったサービスが注目されるでしょうか。「2021年注目のSaaS」として紹介した7つのトレンドより、「ノーコード・ローコード」と「セキュリティ」に注目します。
- オンライン営業
- オンライン組織
- ノーコード・ローコード
- APIエコノミー
- セキュリティ
- トランザクション
- IoT
まずノーコード・ローコードは、複雑なプログラミングなしでもシステムを調整できる開発手法。非エンジニアでも現場にあわせてフローを組み換えたり、Webサイトやアプリを制作したりでき、IT人材不足が深刻化するなかでもDX進展のきっかけになると期待されています。
そしてセキュリティ。世界中でテレワークが広まりクラウドサービスの活用が進んだことで、サイバー攻撃の手法にも変化が見られます。「オフィスのネットワークなら安全」は通用しなくなりつつあるのです。
セキュリティ企業のマカフィーは、「2021年 脅威予測レポート(2021年1月26日公表)」の中で、クラウドや家庭のIT環境がターゲットになると警告しています。
業務利用のデバイスもネットワーク環境も多様化するなか、「ゼロトラスト」や「エンドポイント」と呼ばれる端末レベルでのセキュリティ対策が重要とされています。リモートアクセスをセキュアに実現するSaaS型サービスも増えました。
総務省もテレワーク向けのセキュリティ対策案内を強化しており、オフィスに限定しないセキュリティ対応が求められています。
まとめ
新型コロナウイルスにより、デジタル化を余儀なくされた2020年。電子契約システムをはじめテレワークに対応するためのSaaS導入が進みました。
一方で、コミュニケーションやマネジメント、リモートワーク環境での生産性担保、人事評価といった、テレワークならではの課題が浮き彫りとなりました。
システムをどう活用し、どう目的を達成するか。経産省が指摘するように、DXの緊急性が高まったいま、企業文化そのものの刷新が問われています。2021年は「変革」と向き合う1年になりそうです。
引用・転載について
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調査概要
期間:2020年1月1日〜12月31日
対象:自然検索経由で資料請求が行われたBOXIL SaaS上の全カテゴリ
サンプル数:約4万2,000人(重複含む)
スマートキャンプ調べ
2020年9月1日、資料請求時にダウンロード対象サービスを確認できる仕様をリリースしました。これにともない、サイト全体で資料請求人数に変動がありましたが、データの調整は行わずそのまま使用しています。