カスタマーサクセス(CS)のKPIとは?目標設定と運用のポイント
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- カスタマーサクセスとは
- カスタマーサクセスの重要性
- カスタマーサクセスのKPIを設定する理由
- 目標が明確になる
- 戦略策定がしやすくなる
- 定量的な分析ができる
- チームのパフォーマンス評価が可能になる
- カスタマーサクセスで見るべき指標
- 顧客成長指標
- 顧客満足度指標
- 顧客エンゲージメント指標
- カスタマーサクセスのKPIを正しく設定する方法
- 1. KGI(重要目標達成指標)を設定する
- 2. 現状を把握する
- 3. KGIをもとにKPI(重要業績評価指標)を設定する
- カスタマーサクセスのKPIを達成するためのポイント
- KPI評価への依存を避ける
- 定期的なKPIの見直しと改善を心掛ける
- 実現不可能なKPIは設けない
- KPI自体の評価も実施する
- カスタマーサクセスのKPIを正しく設定して成果へつなげよう
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客の成功体験を最優先に考え、顧客のニーズや課題に対して最適なソリューションを提供することで、顧客満足度を高めて長期的な関係構築を目指すビジネス戦略です。
製品やサービスを販売するだけではなく、顧客のビジネスやライフスタイルに価値を提供し、顧客の成果や目標達成をサポートすることが重要です。
カスタマーサクセスの重要性
カスタマーサクセスが重要だとされる理由には次のようなことが挙げられます。
- 顧客ロイヤルティの向上が期待できる
- 売上拡大の機会を創出できる
- コストや工数の削減ができる
顧客ロイヤルティの向上が期待できる
カスタマーサクセスによって、顧客は製品やサービスに対する信頼感や満足感を高め、継続的に利用したり、他の人に推奨したりするようになることで、顧客ロイヤルティが向上し、顧客生涯価値(LTV)が高まります。
さらに、顧客満足度やロイヤルティが高まると、口コミやレビューなどが増え、新規の顧客を獲得する機会が増るほか、意見やフィードバックを収集して、製品やサービスの改善に活用できます。
>>顧客ロイヤルティとは?満足度向上実現のマーケティング戦略
売上拡大の機会を創出できる
顧客は製品やサービスの価値を認識し、より多くの機能やオプションを利用したり、他の製品やサービスにも興味をもったりするようになります。これによって、アップセルやクロスセルの機会が増え、売上拡大の機会を創出できます。
コストや工数の削減ができる
カスタマーサクセスによって、顧客は製品やサービスの使い方やメリットを理解し、問題や不満を抱えることが少なくなります。これにより、顧客へのサポートやケアの負担が軽減され、人件費や工数が削減できます。
カスタマーサクセスのKPIを設定する理由
カスタマーサクセスを実践するには、KPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。KPIとは、カスタマーサクセスの成果や効果を測定するための数値や指標のことです。KPIを設定する理由としては、次のようなことが挙げられます。
- 目標が明確になる
- 戦略策定がしやすくなる
- 定量的な分析ができる
- チームのパフォーマンス評価が可能になる
目標が明確になる
カスタマーサクセスのKPIを設定する最大の理由は、目標を明確にすることにあります。
たとえば、顧客維持率やアップセル率などの具体的な数値目標を設定することで、カスタマーサクセスチームは日々の業務を行ううえでの具体的な目標を持てるでしょう。これにより、チーム全体の取り組みが目標達成に向けて一致し、効果的なアクションを取りやすくなります。
戦略策定がしやすくなる
KPIを設定することで、カスタマーサクセスの戦略を策定しやすくなります。
KPIにもとづいて、どのような顧客がリテンション率向上に貢献しているのか、またどのようなアクションが顧客満足度を高めるのかなど、データにもとづいた戦略を立てられるでしょう。これにより、無駄な施策を減らし、リソースを効果的に配分できます。
また、KPIを設定し追跡することで、事業戦略の調整と最適化も可能になります。顧客維持率や顧客生涯価値(LTV)などのKPIは、製品やサービスの市場適合性や顧客基盤の健全性を示す重要な指標です。
これらの指標を分析することで、製品開発の方向性やマーケティング戦略の修正が必要かどうかを判断し、より効果的な事業戦略を立案できます。
定量的な分析ができる
KPIを設定することで、カスタマーサクセスの取り組みの成果を定量的に分析できます。
これにより、どの施策が効果的であったか、またどの領域に改善の余地があるかを客観的に評価できるようになるでしょう。
たとえば、製品の機能利用率やセッション時間などのエンゲージメント指標を測定することで、顧客が製品にどの程度関与しているかを把握し、関与度を高めるための施策を計画できます。
また、顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比較により、顧客獲得を目的とした投資の効率性を評価し、より収益性の高いマーケティング戦略を立てるといったことも実現するでしょう。
チームのパフォーマンス評価が可能になる
KPIを設定することで、カスタマーサクセスチームのパフォーマンスを具体的な数値にもとづいて評価できます。
これにより、高いパフォーマンスを発揮しているチームメンバーの特定や、改善が必要な領域の明確化が行えるため、より効果的なチームマネジメントが可能になるでしょう。
カスタマーサクセスで見るべき指標
カスタマーサクセスで見るべき指標は、「顧客成長指標」「顧客満足度指標」「顧客エンゲージメント指標」と大きく3つに分けられます。
それぞれの指標について、詳しく解説します。
顧客成長指標
このカテゴリーは、顧客基盤の成長と収益性の向上に直接関連するKPIです。
アップセル・クロスセル率
カスタマーサクセスにおいて、顧客成長指標の中で特とくに重視されるのが「アップセル・クロスセル率」です。これは、既存の顧客に対して、追加の製品やサービスが販売できる割合を示します。アップセルは顧客に高価格や高機能の製品・サービスを購入してもらうこと、クロスセルは異なる製品・サービスを提案することです。
たとえば、SaaS企業では、基本プランを使用している顧客に対して、より多くの機能を含むプレミアムプランへのアップグレードを促したり、関連する別のサービスを提案したりすることがあります。これにより、顧客が提供する製品やサービスの価値をより深く理解し、利用を拡大することが期待されるでしょう。
アップセル・クロスセル率の向上は、顧客一人あたりの利益(CLV:Customer Lifetime Value)を高めることに直結します。効果的なアップセル・クロスセル戦略を実行するためには、顧客の使用状況やニーズを正確に理解し、タイミング良く適切な提案を行うことが重要です。これにより、顧客満足度の向上とともに、企業収益の増加を実現できます。
>>アップセル・クロスセルとは?顧客単価を上昇させる営業手法と注意点
顧客維持率(CRR)
カスタマーサクセスにおいて、顧客維持率(CRR:Customer Retention Rate)は企業が顧客をどれだけ長期間保持できるかを示す重要な指標です。顧客維持率が高いほど、顧客満足度が高く、サービスや製品に対する忠誠心が強いことを意味します。逆に、顧客維持率が低いと、顧客の流出が多いことを示し、サービスの改善や顧客エンゲージメントの強化が必要であると考えられます。
たとえば、サブスクリプションモデルを採用している企業では、顧客維持率を高めることで、安定した収益を確保し、予測可能なビジネス運営が可能になるでしょう。これを達成するためには、顧客に価値を提供し続けることが重要です。具体的には、定期的な顧客満足度調査、顧客からのフィードバックにもとづく製品の改善、顧客が遭遇する問題の迅速な解決などが挙げられます。
顧客維持率の計算方法は、特定期間の初めに顧客数から該当期間に失われた顧客数を引いて、期間の初めの顧客数で割って求められます。この指標を定期的にチェックし、顧客維持戦略を適宜調整することで、企業は長期的な成功につながる顧客関係を築けるでしょう。
解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)は、特定期間内にサービスや製品のサブスクリプションを解約した顧客の割合を示すKPIです。この指標はカスタマーサクセスの観点から非常に重要で、企業がどれだけ効果的に顧客を維持できているか、また顧客がどれだけ長期間にわたって製品やサービスを利用し続けているかを示します。
高い解約率は、顧客満足度の低さ、顧客ニーズへの対応不足、あるいは競合他社の製品やサービスへの乗り換えを示唆しています。逆に、低い解約率は、顧客の高い満足度とロイヤルティを反映しており、長期的なビジネス成長に不可欠です。
解約率を低減するためには、顧客がサービス解約に至ってしまう理由を理解し、問題点を解決することが重要です。たとえば、定期的な顧客満足度調査を実施し、顧客のフィードバックにもとづいたサービス改善を行うこと、またはパーソナライズされた顧客エンゲージメント戦略を展開することが挙げられます。
解約率は、特定期間における初期顧客数に対する解約した顧客数の割合で計算されます。この指標を定期的に追跡し分析することで、企業は顧客維持戦略を最適化し、長期的な顧客価値を高められるでしょう。
>>チャーンレートとは?計算式や指標 - SaaS・サブスクリプションでの頻出用語
顧客生涯価値(LTV)
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)は、一人の顧客が企業との関係期間全体でどれだけの収益を生み出すかを示すKPIです。この指標は、カスタマーサクセスの観点から、顧客が企業にとってどれだけ価値があるかを測定するために用いられます。顧客が初めて製品やサービスを購入してから解約するまでの期間にわたって、顧客から得られる総収益を評価することにより、顧客維持戦略やマーケティング戦略の効果を評価できるでしょう。
LTVを最大化するには、顧客満足度の向上、顧客ロイヤルティの促進、アップセルやクロスセルの機会の増加に注力する必要があります。たとえば、定期的な顧客エンゲージメントやパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを通じて、顧客の関与を深め、長期的な関係を構築することが効果的です。
LTVの計算には、平均購入額、購入頻度、顧客維持期間などの要素が含まれます。この指標を追跡することで、マーケティングやカスタマーサービスの戦略をより効果的に調整し、長期的な収益性と成長を確保できます。高いLTVをもつ顧客ほど企業にとって価値が高いとされ、そういった顧客との関係を維持し、さらに深めていくことが企業にとって重要です。
>>LTV(ライフタイムバリュー)とは?マーケティングにおける意味と重要性・計算方法
顧客獲得コスト(CAC)
顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)は、新規顧客を獲得するためにかかる平均コストを示す指標です。このKPIは、マーケティングやセールスに関連する費用を新規顧客数で割ることによって計算され、企業が新規顧客を獲得するためにどれだけの投資をしているかを測定します。CACを把握することで、マーケティング戦略やセールスプロセスの効率性を評価し、投資の最適化を図れます。
顧客獲得コストを低減するためには、ターゲットとする顧客セグメントを明確に定義し、効果的なマーケティングチャネルを選択することが重要です。たとえば、SNSを通じたキャンペーンや、SEOを活用したコンテンツマーケティングなど、コストパフォーマンスの高い手法を選択することが有効でしょう。また、リードを効率的に管理し、高いコンバージョン率を達成するためのプロセスの改善も、CACの低減に貢献します。
CACはLTVとも密接に関連しており、理想的にはLTVがCACを上回ることで、顧客が長期的に企業にとって利益をもたらすことが示されます。企業はCACを定期的にチェックし、改善策を実施することで、より効果的な顧客獲得戦略を構築できるようになるでしょう。
年間契約額(ACV)
年間契約額(ACV:Annual Contract Value)は、1年間に獲得した顧客契約から得られる平均収益を指します。このKPIは、主にサブスクリプションベースのビジネスモデルや長期契約が一般的な業界で用いられ、企業の収益性と顧客の価値を把握するために重要な指標です。ACVを計算することで、企業は一般的な顧客がどれだけの価値をもっているか、また、特定の顧客セグメントや製品ラインが平均よりも高い、または低い価値を提供しているかを理解できます。
たとえば、SaaS企業では、顧客がサブスクリプション契約にもとづいて支払う年間の平均料金をACVとして計算します。ACVを高める戦略としては、プレミアムプランの提案、アップセルやクロスセルの機会の増加、または顧客に対する価値提案の強化が挙げられるでしょう。
ACVの向上は、企業の収益性の向上に直接寄与し、より価値の高い顧客基盤の構築を意味します。しかし、ACVはCACやLTVなど、他の財務指標との関連性も考慮する必要があります。ACVの高い顧客が高いCACを正当化する場合もあれば、長期的に見て利益をもたらさない場合もあるため、総合的な分析が必要です。
顧客満足度指標
このカテゴリーは、顧客が提供される製品やサービスにどれだけ満足しているかを測るKPIです。
顧客推奨度(NPS)
顧客推奨度(NPS:Net Promoter Score)は、顧客が製品やサービスを友人や同僚に推奨する可能性を測定する顧客満足度の指標です。NPSは、顧客に「0から10の範囲で、当社の製品やサービスを友人や同僚におすすめする確率はどれくらいですか?」といった一つの質問を通じて計算されます。回答者は「推奨者(9~10点)」「中立的な回答者(7~8点)」「批判者(0~6点)」の3つのグループに分類されるのが一般的です。
NPSスコアは、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて算出され、結果はマイナス100からプラス100までの範囲で表されます。スコアが高いほど、顧客満足度が高く、顧客のロイヤルティが強いと考えられます。
NPSを利用するメリットは、単一の質問で顧客ロイヤルティの強力な指標を得られる点です。また、NPSスコアを改善することで、顧客満足度の向上、口コミによる新規顧客獲得の増加、最終的には売上の増加につながります。たとえば、ある製品を利用した顧客が高いNPSスコアをつけた場合、該当の製品は顧客に高く評価されており、他の人に推奨されやすいことを意味します。
NPSの活用により、企業は顧客の真の声を聞き、サービスや製品の改善に役立てられるでしょう。ただし、NPSだけに依存するのではなく、他の顧客満足度の指標やフィードバックと併用することで、より総合的な顧客理解を深めることが推奨されます。
>>NPS(ネットプロモータースコア)とは?顧客満足度との違い
顧客満足度(CSAT)
顧客満足度(CSAT:Customer Satisfaction Score)は、特定の製品、サービス、または顧客体験に対する顧客の満足度を測定する指標です。CSATは、顧客に「この製品/サービス/体験にどれだけ満足しましたか?」と質問し、通常は1から5の範囲(1が非常に不満、5が非常に満足)で回答を求める方法で計算されます。CSATスコアは、最高スコア(通常は5)を選んだ回答者の割合として表され、パーセンテージで表示されます。
CSATの主な利点は、特定のタッチポイントやイベント直後における顧客のリアルタイムな感情や意見を捉えられる点です。これにより、企業は顧客の期待を満たすか、それを超える製品やサービスを提供しているかを直接的に評価できます。たとえば、顧客サービスの対応後にCSAT調査を実施し、サポート体験に対する顧客の満足度を測定できます。
CSATスコアを改善するためには、顧客のフィードバックを具体的なアクションプランに変換し、顧客体験の各側面を継続的に改善する必要があるでしょう。低いCSATスコアを受けた場合、問題の原因を特定し、対策を講じることが重要です。一方高いCSATスコアは、顧客が提供された製品やサービスに満足していることを示し、顧客ロイヤルティや繰り返しのビジネスにつながる可能性があります。
CSQL
CSQL(Customer Success Qualified Lead)は、カスタマーサクセスの観点から見たときに、製品やサービスの価値を最大限に活用し、長期的な顧客成功に貢献する可能性が高いと評価されたリードや顧客のことを指す指標です。この指標は、単にリードが生成されたり、初期の販売が行われたりしただけでなく、顧客が製品やサービスを使って実際に成功を達成できるかどうかを考慮に入れています。
CSQLは、カスタマーサクセスチームが定義する特定の基準や条件を満たす顧客に対してのみ適用されます。これらの基準には、製品利用の頻度、特定機能の使用状況、顧客のビジネス目標や成功基準の達成度などを含むことが一般的です。CSQLの概念は、顧客が製品やサービスを十分に利用しているか、そして利用が顧客の成果にどのように貢献しているかを理解することに重点を置いています。
たとえば、あるSaaS製品のカスタマーサクセスチームは、顧客が特定の機能を積極的に使用しているか、メルマガを定期的に開封しているか、または顧客満足度調査に積極的に回答しているかなど、さまざまな指標をもとにCSQLを評価します。これらの行動は、顧客が製品に深く関与しており、利用から価値を得ていることが示されているため、これらの顧客はカスタマーサクセスの観点から高いポテンシャルをもつと見なされるでしょう。
初回解決率(FCR)
初回解決率(FCR:First Contact Resolution)は、顧客が問い合わせをした際に最初の接触で問題が解決される割合を示す指標です。この指標は、顧客サポートの効率性と効果性を測定するために使用され、高いFCRは顧客満足度の向上に直接寄与します。
FCRが高いことは、顧客の問題が迅速に解決されていることを意味し、これにより顧客の時間と労力が節約され、ポジティブな顧客体験が提供されます。顧客が一度の問い合わせで満足する解決策を得られれば、再度問い合わせる必要がなくなり、それによって顧客の信頼とロイヤルティが高まるでしょう。
FCRを向上させるためには、サポートチームのスキルアップやナレッジの充実、FAQや自動応答システムの充実などが重要です。また、顧客からの問い合わせ内容を正確に理解し、迅速に適切な解決策を提供できるよう、効果的なコミュニケーションスキルも必要とされます。
サポートチケットの解決時間
サポートチケットの解決時間は、顧客からの問い合わせやサポートリクエスト(チケットとも呼ばれる)が受け付けられてから、問題が解決されるまでの平均時間を指す指標です。この指標は、顧客サポートの迅速性と効率性を評価するために重要であり、顧客満足度に大きな影響を与えます。
サポートチケットの迅速な解決は、顧客が抱える問題や不便を早期に解消し、顧客体験を向上させるために欠かせません。サポートチームがチケットを迅速に処理することで、顧客は製品やサービスに対する信頼を深め、長期的な顧客関係の構築につながります。
解決時間を短縮する方法としては、チケット管理システムの導入、ナレッジベースの充実、スタッフのトレーニング強化、自動化ツールの活用などがあります。たとえば、よくある問い合わせに対する自動応答システムを設定することで、顧客がみずから解決策を見つけられるようになり、サポートチームの負担を軽減し、より複雑な問題に注力できるようになるでしょう。
また、チケットの優先順位をつけ、緊急度や重要度に応じて対応することで、効率的に問題を解決できます。優先順位の高いチケットに対しては迅速な対応を行い、顧客が重要視する問題への対応を優先することで、顧客満足度の向上につながります。
顧客エンゲージメント指標
このカテゴリーは、顧客が製品やサービスとどれだけ積極的に関わっているかを示すKPIです。
オンボーディング完了率
オンボーディング完了率は、新規顧客が製品やサービスの初期設定や導入プロセスを完了し、実際に使用を開始するまでの割合を示します。この指標は、新規顧客の製品やサービスへの理解度や満足度、そして長期的な顧客エンゲージメントに大きな影響を与えるため、カスタマーサクセスにおいて非常に重要です。
オンボーディングプロセスがスムーズでわかりやすい場合、顧客は製品やサービスの価値を早期に理解し、より積極的に活用する傾向があります。逆に、オンボーディングが複雑で時間を要する場合、顧客のフラストレーションが高まり、使用開始後のエンゲージメントが低下する可能性もあります。
オンボーディング完了率を高めるためには、顧客が容易に製品やサービスを理解し、活用できるようにすることが重要です。これには、使い方ガイドの提供、チュートリアルビデオ、FAQコンテンツの充実、手厚いサポートなどが挙げられるでしょう。
アクティブユーザー数
アクティブユーザー数は、特定の期間内に製品やサービスを実際に使用した顧客の数を示す指標です。この数値は、日次、週次、月次など、異なる時間枠で計測されることが一般的です。アクティブユーザー数を追跡することで、製品やサービスの実際の使用状況やエンゲージメントレベルを把握し、顧客の関与度を評価できます。
アクティブユーザー数は、カスタマーサクセスの観点から重要な意味をもちます。高いアクティブユーザー数は、製品やサービスが顧客に価値を提供している証拠であり、顧客満足度やロイヤルティの高さを示唆していると判断できるでしょう。逆に、アクティブユーザー数が少ない場合や減少傾向にある場合は、顧客のニーズを満たしていない可能性があり、改善の余地があることを示しています。
たとえば、eラーニングプラットフォームがある場合、アクティブユーザー数を追跡することで、どのコースや教材に人気があるか、ユーザーがどれだけの頻度で学習しているかなど、顧客の学習行動に関する考察を得られます。この情報は、コンテンツの改善や新しい学習プログラムの作成、マーケティング戦略の策定に役立つでしょう。
アクティブユーザー数を高めるためには、製品やサービスが顧客の期待に応えるように設計されていること、顧客が継続的に関与したくなるような魅力的なコンテンツや機能を提供することが重要です。また、顧客に対する継続的なコミュニケーションやフィードバックの収集も、アクティブユーザー数の向上に寄与します。
セッション時間
セッション時間は、顧客が製品やサービスを使用している1回の訪問で費やす平均時間を指す指標です。この指標は、顧客が製品やサービスにどれだけ関心をもち、深く関わっているかを示す重要な尺度の一つです。長いセッション時間は、顧客が提供されるコンテンツや機能に高い関心をもっており、価値を見出していると見なせます。逆に、短いセッション時間は、顧客が製品やサービスに関心をもたず、早期に離脱していることを示唆する場合があります。
セッション時間の分析は、とくにWebベースのサービスやアプリケーションにおいて有効です。たとえば、eラーニングプラットフォームでは、セッション時間を分析することで、ユーザーがどの教材に興味をもって長時間学習しているか、どの教材がユーザーの関心を引きつけられないでいるかを特定できます。この情報は、コンテンツの改善やユーザーエクスペリエンスの最適化に役立つでしょう。
カスタマーサクセスの観点からは、セッション時間を延ばすための戦略が重要になります。これには、ユーザーに価値を提供する魅力的なコンテンツの提供、直感的で使いやすいインターフェースの設計、ユーザーの関心を引きつけるための要素の導入などが含まれます。また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、セッション時間を延ばすための改善策を定期的に実施することも、顧客エンゲージメントを高めるためには不可欠です。
口コミ・レビューサイトでの投稿獲得数
口コミやレビューサイトでの投稿獲得数は、顧客が製品やサービスにどれだけ満足しているか、そして満足度を他人と共有したいと考えているかを示す指標です。この指標は、顧客エンゲージメントの高さと製品やサービスの市場での評価を反映しています。顧客がみずからの経験を積極的に共有することは、新たな顧客を獲得するうえで非常に強力な手段となるでしょう。
口コミやレビューは、新規顧客の購入決定プロセスにおいて重要な役割を果たします。多くの顧客は、購入前に製品やサービスについての他人の意見や体験談を参考にします。そのため、肯定的な口コミや高評価のレビューが多いほど、製品やサービスの魅力を効果的に伝え、信頼性を高められるでしょう。
口コミ・レビューサイトでの投稿獲得数を増やすためには、顧客満足度を高める施策の積極的な実施が重要です。また、顧客に対してレビューの投稿を促すためのキャンペーンやインセンティブの提供も、投稿数を増やすための有効な手段です。
さらに、レビューサイトでの投稿を積極的にモニタリングし、顧客からの肯定的なフィードバックに感謝の意を示すとともに、否定的なフィードバックには適切に対応することで、顧客との信頼関係を構築し、ブランドのポジティブなイメージを維持できるでしょう。
製品使用頻度
製品使用頻度は、顧客がどの程度の頻度で製品やサービスを利用しているかを示す重要な指標です。この指標を通じて、企業は顧客が製品にどれだけ依存しているか、また製品が顧客の日常生活や業務プロセスにどの程度組み込まれているかを把握できます。高い製品使用頻度は、顧客の製品への依存度が高いことを意味し、製品の価値と顧客にとっての重要性が高いことを示唆しています。
企業はこのような情報を得ることで、製品の改善や新機能の開発などを行うのに役立てるでしょう。また、製品使用頻度が低い顧客を特定し、彼らに対して追加のサポートやアプローチを提供することで、エンゲージメントの向上を図れます。
製品使用頻度を高めるためには、顧客にとって使いやすく、日常生活や業務プロセスに無理なく組み込める製品設計が重要です。さらに、定期的なフィードバックの収集と顧客の声にもとづいた製品の改善が、長期的な顧客エンゲージメントとロイヤルティの構築につながります。
機能利用率
機能利用率は、提供されている製品やサービスの中で、顧客がどれだけの機能を実際に利用しているかを示す指標です。この指標を把握することにより、企業は顧客が最も価値を見出している機能が特定できるだけでなく、使用されていない機能についても情報を得られます。顧客にとって役立つ機能や改善が必要な機能、さらにはプロモーションが必要な機能を明確にできるでしょう。
たとえば、クラウドベースのCRMシステムを提供している企業の場合、顧客がレポート生成機能を頻繁に利用しているが、キャンペーン管理機能の利用率は低いことがわかったとします。この情報から、レポート機能が顧客にとって非常に価値があること、またキャンペーン管理機能については使用方法を理解してもらうための追加のガイダンスやトレーニングを要することが示唆されます。
機能利用率の分析を通じて、製品開発の優先順位を再評価し、顧客にとって最も価値がある機能の強化や、利用されていない機能に対するマニュアルの用意など、顧客満足度と製品の競争力を高めるための戦略を立てられるでしょう。
また、顧客が製品の機能をフルに活用していないことが明らかになれば、アップセルやクロスセルの機会を見極め、より適切な製品やサービスの提案も可能です。
カスタマーサクセスのKPIを正しく設定する方法
カスタマーサクセスのKPIを正しく設定するためには、次のようなステップで行います。
- KGI(重要目標達成指標)を設定する
- 現状を把握する
- KGIをもとにKPI(重要業績評価指標)を設定する
1. KGI(重要目標達成指標)を設定する
KGI(重要目標達成指標)とは、カスタマーサクセスの最終的な目標や成果を表す指標のことです。KGIは、カスタマーサクセスのビジョンやミッションに沿って設定する必要があります。
KGIを達成するためのプロセスとして必要となるのがKPIのため、最終的な目標達成の時期や判断基準、具体的な数値の設定など、明確にしてく必要があります。
2. 現状を把握する
KGIを設定したら、現状の把握を行いましょう。カスタマーサクセスの現在の状況や課題を分析することで、KGIに対するギャップや改善点が挙げられます。
設定したKGIを達成するためには、どのようなプロセスが必要となるのかを今一度洗い出し、現状との差分を把握します。
3. KGIをもとにKPI(重要業績評価指標)を設定する
KGIをもとにKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。KPIの例としては、「顧客ごとの平均アップセル金額」「製品に関する問い合わせからの転換率」「新規顧客獲得後3か月以内のリピート率」などがあります。
KPIを設定する際には、次のことに注意しましょう。
- SMARTの法則(具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性があり、時間を定めた)に従ったものであること
- KGIに直接関連するものであること
- チームや部門、個人などのレベルに応じて、適切に分配すること
誰が見てもわかりやすい目標であることや、それぞれの評価につなげやすい目標にすることなどを意識して設定しましょう。
カスタマーサクセスのKPIを達成するためのポイント
カスタマーサクセスのKPIを達成するためには、次のポイントを押さえておきましょう。
KPI評価への依存を避ける
カスタマーサクセスチームがKPI達成のために過度に焦点を当てると、本来の目的である「顧客の成功」を見失いかねません。
たとえば、クロスセル率の向上に注力しすぎて、顧客に不要な商品やサービスを推奨してしまう可能性があります。
重要なのは、KPIを指針として利用しつつ、顧客の期待やニーズが満たされることを最優先に考えることです。
定期的なKPIの見直しと改善を心掛ける
市場や顧客ニーズは常に変化しています。そのため、定期的にKPIを見直し、現在のビジネス環境や顧客ニーズに合わせて更新することが重要です。
1か月や半年などの定期的なタイミングで自社のビジョンやミッションに沿ったものであるか、顧客の状況やニーズに合ったものであるかを見直し、問題がある場合には素早く軌道修正できるようにしましょう。
また、KPIが達成された場合にも、次のステップへと進むための新たな目標を設定するようにしましょう。
実現不可能なKPIは設けない
KPIを設定する際には、達成できるレベルや範囲にすることが大切です。達成できないKPIを設定することで無理が生じ、チームや部門、個人のモチベーションやパフォーマンスの低下や顧客の信頼を損なうことになりかねません。
現状のデータや情報をもとにした現実的な目標を決めることや、チームや個人の能力・リソースを考慮するようにしましょう。
KPI自体の評価も実施する
KPI達成のプロセス自体を定期的に評価することも重要です。評価を実施して、KPIに対するPDCAを回すことで、より良い成果へとつながります。
また、KPIがチームの行動や意思決定にどのように影響を与えているかも分析しましょう。このプロセスを通じることで、KPIの設定や運用方法を最適化し、より効果的なカスタマーサクセス活動を行えます。
カスタマーサクセスのKPIを正しく設定して成果へつなげよう
カスタマーサクセスのKPIとは、カスタマーサクセスの成果や効果を測定するための数値や指標のことです。カスタマーサクセスのKPIを正しく設定するには、KGIを設定し、現状を把握し、KGIをもとにKPIを設定する必要があります。
カスタマーサクセスのKPIを達成するためには、KPIの評価だけに頼らず、定期的な内容の見直しや評価の実施が大切です。カスタマーサクセスのKPIとKGIを適切に設定し、運用することで、顧客の成功を最優先に考え、顧客のニーズや課題に対して最適な製品・サービスの提供につながります。
カスタマーサクセスのKPIとKGIの目標設定と運用のポイントを参考にして、カスタマーサクセスの取り組みをより効果的に行いましょう。
カスタマーサクセスをより効果的に行うなら、カスタマーサクセスツールの導入がおすすめです。次の記事ではおすすめのカスタマーサクセスツールや選び方について紹介しているので、ぜひ参考にしてください。