アップセル・クロスセルとは?顧客単価を上昇させる営業手法と注意点
アップセルとは
アップセルとは簡単にいえば、顧客が購入した商品と同じ種類で「より上位の商品」を提案し、購入してもらうことです。顧客一人あたりの単価を上げるため、顧客数を増やすことなく総売上が増やせる効率のいいマーケティング施策です。店舗での商品販売からECサイトまで、業種や販売形態を問わず幅広い企業で活用されています。
たとえばスマホの機種変更を行う際に、高機能な最新のモデルを提案することや、動画配信サービスで無料トライアル期間終了間近に有料プランを提案することが、アップセルに該当します。またアップセルと似た手法として「クロスセル」があり、これらを使いわけることや組み合わせることで、売上額を上げられるでしょう。
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- アップセルとは
- クロスセルとは
- アップセルとクロスセルの違い
- アップセルとダウンセルの違い
- アップセルが注目される理由
- アップセルを実施するメリット
- アップセルの売上アップ手法
- 定期購入のアップセル
- ECサイトのアップセル
- アップセル達成の具体策
- アップセルを成功に導くコツ
- ターゲットを絞り込む
- アップセルを提案するタイミング
- 顧客ニーズを満たす施策でアプローチする
- グレードアップに対するメリットを伝える
- アップセル実施の注意点
- 適切なレコメンドを心がける
- 顧客の視点に立つ
- アップセルの成功事例
- SanSan株式会社
- 株式会社ヤクルト球団
- 株式会社トウ・キユーピー
- アップセルは顧客の理解が必須
- BOXILとは
クロスセルとは
クロスセルとは、商品・サービスの購入を検討している顧客に対し、関連した別商品を提案しセットもしくは単体で販売することです。
たとえばパソコンを購入する際、同時にモニターやHDDなど周辺機器の購入を提案するのが、クロスセルに該当します。またAmazonで「よく一緒に購入される商品」が表示されることや、マクドナルドで「ご一緒にポテトやドリンクはいかがですか?」と聞かれることも、クロスセルです。
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとクロスセルは、顧客単価を上げる目的は共通していますが、提案する商品や訴求するタイミングに違いがあります。
アップセルは商品購入を検討中、もしくは商品購入後顧客がよりよいサービスを求めたタイミングで、同じ種類のグレードが高い商品をすすめる方法です。一方クロスセルは顧客が商品購入を検討しているタイミングで、関連した商品や検討している商品の補助的な商品をすすめるのが特徴です。
アップセルとクロスセルは、目的は同じでアプローチの方法が違うマーケティング手法と考えましょう。
アップセルとダウンセルの違い
アップセルと類似した手法としては、「ダウンセル」もあります。ダウンセルとは、商品・サービスの購入を検討している顧客に対し、希望する商品よりも単価の低い商品を提案することです。アップセルとダウンセルの違いは、顧客に提案する商品のグレードです。
アップセルが顧客に対してより高いグレードの商品をすすめるのに対し、ダウンセルはより低いグレードの商品をすすめます。ダウンセルは顧客の希望する商品と予算が合わない場合に有効で、顧客が何も買わずに去るリスクを減らし、機会損失を防ぐのが目的です。
当然顧客単価は下がりますが、何も購入されないよりも、少額でも商品・サービスの販売を優先した、消極的なアプローチともいえるでしょう。また顧客のニーズを満たすことで信頼関係を構築でき、後にリピート購入してくれる可能性もあるため、状況によっては積極的に試すべき手法といえます。
アップセルが注目される理由
アップセルが注目されるようになったのは、市場規模の縮小や競争の激化が理由として挙げられます。一昔前のマーケティングでは、売上を伸ばすため、新規の顧客数を伸ばす施策が重視されていました。たとえばマス広告で大々的に商品を広めて、常に新規顧客が絶えないような工夫をするのが一般的でした。
しかし近年日本は急激な少子高齢化で人口が減少しており、多くの業界は市場規模が縮小傾向にあります。またインターネットの普及により、簡単に情報やものが入手できるようになり、多くの競合商材と比較されやすくなったことで、今までよりも新規顧客を獲得するのが難しくなりました。
そのため苦労して新規顧客を獲得し続けるよりも、既存顧客のロイヤリティ(企業への信頼や愛着)を高め、LTV(顧客生涯価値)の最大化を狙う方がよいと考える企業が増えました。アップセルやクロスセルはこの一環として導入された手法で、現在多くの企業に取り入れられています。
アップセルを実施するメリット
アップセルを実施するメリットは、顧客1人あたりの売上単価を効率よく向上できることです。一般的に新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客へ営業を行うコストの5倍といわれています。既存顧客は、すでに連絡手段を入手し面識もあるため、スムーズに話を聞いてもらえます。
また顧客自身も商品やサービスに関心をもっているか、購入を検討しているケースも多いため成約率が高く、効率よく売上を向上できるでしょう。くわえて、顧客に関する情報もさらに入手できるため、より効果的にマーケティングが行えるメリットもあります。
アップセルの売上アップ手法
次に売上を向上できるアップセルの使い方や、具体的な手法について解説します。
定期購入のアップセル
アップセルが効果を発揮するケースとして、とくにリピート型の定期購入で商品やサービスを買ってもらう施策が挙げられます。通常の商品購入時に定期コースを案内することでLTVが上げられるのはもちろん、定期購入中に上位商品を提案する形のアップセルも高い効果が期待できます。
たとえば基礎コースの受講生に、よりサポートが充実した上級コースへの引き上げを提案するのが定期購入のアップセルです。定期購入している顧客とは、すでにある程度の信頼関係が構築されているため、新規顧客よりもはるかに受け入れてもらいやすいでしょう。
健康食品の定期購入サービスや、教育コンテンツをコースとして提供している企業など、継続的な利でよりよい効果が生まれる商材で、この手法がよく用いられます。
ECサイトのアップセル
ECサイトでは、既存客の基礎的な情報やこれまでの購買履歴を収集・分析し、顧客が興味を示すであろう高いグレードの商品をすすめる方法がよく見られます。
たとえばAmazonでは、「この商品をチェックした人は、こんな商品もチェックしています」といった記載とともに、より高いグレードの商品がいくつも表示されます。これは典型的なアップセルの例であり、このタイプのアップセルは多くのECサイトが採用しているアプローチ方法です。
アップセル達成の具体策
他にも、アップセルを達成するための具体策として次のようなものが考えられます。ただしこれらはあくまでも一例で、工夫次第でさまざまなアップセルのアプローチを生み出せます。
トライアル(お試し版)を用意する
無料サンプルの配布や格安のトライアル価格など、顧客が気軽に注文できる商品を用意し、一定期間経過後に正規の商品をすすめます。
バージョンアップ優待
期間中にバージョンアップすることで、特典が得られるといったキャンペーンを行い、より高グレードな商品への乗り換えを促します。
一定数以上での割り引き
商品を一定数購入したら、特別な割り引きを得られるようにします。
保証・サポートの延長
保証やサポート期間の延長を求める顧客に対し、売りたい商品にさらに有料の保守契約を付加して提案します。
アップセルを成功に導くコツ
アップセルを成功に導くには、誰に対し何をどのように提案するかが重要です。そこで次に、アップセルで行うトークのコツや、戦略について紹介します。
ターゲットを絞り込む
まずアップセルを提案する顧客の絞り込みを行います。アップセルやクロスセルが成功しやすいのは、企業やブランドへのロイヤリティ(企業への信頼や愛着)が高い顧客だといわれています。そのため、顧客を分析しロイヤリティの高低で分類するのが重要です。
ロイヤリティの分類におすすめなのは、NPSと呼ばれる指標です。NPSとは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、アンケートで顧客のロイヤリティを数値化します。具体的には、「あなたは○○を友人や家族にすすめたいと思いますか?」といった質問を行い、0~10点で評価するのが特徴です。
このうち0~6点を「批判者」、7~8点を「中立者」、9~10点を「推薦者」として3つに分類します。「推薦者」に分類された顧客は、アップセルの有力な候補です。また推薦者の割合から批判者の割合を引いた数値がNPSであり、数値の高低で商品・サービス自体がアップセルに向いているかも判断できます。数値の高い商品・サービスは、アップセル・クロスセルに適しているといえるでしょう。
アップセルを提案するタイミング
アップセルを提案するタイミングにも配慮が必要です。もっとも有効なタイミングは、顧客が商品やサービスを購入した直後、もしくは購入の意志が固まりつつあるときだといわれています。
この時期は商品への期待感がもっとも高まっているタイミングです。そのため顧客はより高度な機能をもつ商品への切り替えや、追加コストを払って有料サポート付きのバージョンを申し込みやすくなります。
こういったタイミングを見計らってアクションを起こすことにより、盲目的にアプローチを仕掛けるよりも成功率は大きく上がるでしょう。
顧客ニーズを満たす施策でアプローチする
たとえ的確なタイミングでアップセルを行っても、内容が顧客のニーズに合致するものでなければ意味がありません。そのため、顧客が購入や契約をしたいと思える施策を使って、商品・サービスを提案するのが重要です。
もしどのように選べばいいかわからない場合は、実績のある施策や商品・事業の特性に合った施策を選ぶといいでしょう。先ほども紹介しているように、具体的な施策としては次のようなものがおすすめです。
- トライアルや無料サンプルの提供
- バージョンアップによる特典の提供
- まとめ買いや一定数以上での割り引き
- 保証・サポートの延長
- 長期契約による割り引き(定期コース契約)
- ロイヤリティプログラム(利用金額や購入頻度に応じた特典の用意)の提供
グレードアップに対するメリットを伝える
グレードアップすることで具体的にどういった価値が得られるのか、顧客にわかりやすく説明するのも重要です。顧客は最適なアップセル商品や施策を提案されても、メリットがわかりにくければグレードアップしようとは思いません。
そのためたとえば、グレードアップで追加される便利な機能やサポートについて、顧客目線で説明します。また機能やサポートがどういったシーンで使えるかをイメージしてもらうことで、購入や契約につなげられるでしょう。
アップセル実施の注意点
アップセルは正しいやり方とタイミングで行えば大きな成果を得られますが、アプローチを間違えると、単なる「押し売り」と思われる可能性もあります。とくに次の点に配慮しながら、慎重に行うのが大切です。
適切なレコメンドを心がける
購入フローの途中でアップセルを仕掛ける場合、検討中の製品からあまりにもかけ離れたものをすすめると、顧客は最初から検討し直しになる可能性があります。
そうなると、購入自体を「面倒くさい」と思うようになり、結果的に何も売れない事態になりかねません。そのため相手のニーズを見極めたうえで、顧客が検討中の商品・サービスの延長線上にあるものをすすめましょう。顧客の商品に対するイメージを壊さないようにするのが重要です。
顧客の視点に立つ
売る側の都合だけでアップセルを提案すると、どうしても「押し売り」になりがちです。そのためまずは購入者の視点に立ち、顧客がどういった商品を求めていてるか分析しましょう。
これによって、顧客にすすめるべき機能や追加的サービスが明らかになり、的を射た高グレード商品がレコメンドできます。顧客のニーズを理解し、無用なレコメンドは避けるのが重要です。とくにECサイトでアップセルを仕掛ける場合は、会話による情報収集ができないため、サイトに蓄積された顧客データをしっかり収集・分析する必要があります。
アップセルの成功事例
最後にアップセルを行う際の参考になるよう、実際にアップセル・クロスセルを行った企業の成功事例についていくつか紹介します。
SanSan株式会社
名刺管理システム知られるSanSanでは、既存顧客を「ヘルススコア」で分類し、アップセルやクロスセルを行っているのが特徴です。ヘルススコアは顧客の健全状態を表す数値で、システムの利用環境や顧客との関係性などを点数にし、「極めて良好」「概ね健全」「注意が必要」「対応が必要」の4つに分類しています。
SanSanではこのうち「極めて良好」「概ね健全」の顧客の70%を、アップセルやクロスセルにつなげられています。またユーザーの契約データや利用データが次のように変化した場合、通知が来るように設定しているのが特徴です。
- 短期間のうちに高頻度で特定の機能に触っている
- 特定のデータ使用量が80%以上になる
- ヘルススコアが急激に向上
- 無料トライアルへの申し込み
このように顧客の利用が促進されたタイミングをつかむことで、アップセルやクロスセルを成功させています。
※出典:SanSan「【Sansan DX Department Tour / The 5th】カオスを乗り越えるデータドリブンのカスタマーサクセス」(2024年4月24日閲覧)
株式会社ヤクルト球団
プロ野球球団「東京ヤクルトスワローズ」を運営するヤクルト球団では、ファンクラブ「Swallows CREW」にNPSを導入し、多くの会員のランクを上げることに成功しています。これまで「Swallows CREW」では会員にアンケートを実施していたものの、漠然とした質問を行っていたため、ファンの声を生かせない状況でした。
そこでNPSを導入し、会員の推薦度合いを数値化するとともに、ファンクラブで重視する項目や推薦ポイントなども分析しました。結果、ファンはどの記念品をもらえるかを重視していることが判明。ファンクラブの会員ランクによって選べる記念品が変わるシステムに変更したところ、最高ランクに登録する人が、前年と比べ急増したそうです。
※出典:SELECK「ヤクルトはいかにファンの声を拾い上げるのか?NPSを活かしたファンクラブ運営術」(2024年4月24日閲覧)
株式会社トウ・キユーピー
インターネットを含む通信販売で、キユーピー栄養補助食品や健康食品などを販売しているトウ・キユーピーでは、ECサイトの改善で顧客単価のアップに成功しています。トウ・キユーピーでは、これまでもECサイトで商品購入時に、定期コースの案内を行っていましたが、訴求力が弱い状態でした。
そこでWeb接客ツールを導入して、商品購入時にポップアップを表示し、定期コースを契約するメリットの強調を行いました。結果定期コースの契約数が増え、顧客単価は120%に向上したそうです。
※出典:Sprocket「LPのコンバージョン率大幅改善!Sprocketの手厚い運用サポートで顧客単価120%向上」(2024年4月24日閲覧)
アップセルは顧客の理解が必須
顧客単価の向上に役立つアップセルの基本的な説明をしました。効果的なアップセルのためには、顧客の視点に立って適切なタイミングで商品提案をすることが重要です。売る側の視点だけでは、ただの「押し売り」になりかねません。
そのため相手の話をよく聞き、商品からどのようなベネフィットを得たいのかを把握しましょう。相手の求めるベネフィットを理解し、それをもとにより高グレードな商品の提案をすることで、アップセルの成功率は大幅に上げられます。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」、Q&Aサイト「BOXIL SaaS質問箱」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
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