ナレッジマネジメントと文書管理の違いとは？重要性や導入のコツ

ナレッジマネジメントと文書管理の違い

ナレッジマネジメントと文書管理は、業務の目的に違いがあります。ナレッジマネジメントでは、過去の知識やノウハウを広く社内に共有し、より効率よく利益を追求することを目的としています。一方で、文書管理は文書を適切に管理・利用することが目的です。

どちらも情報を文書化して保存し、保存された文書情報を活用する点で似ているため混同されがちですが、目的が大きく異なります。ナレッジマネジメントと文書管理についてそれぞれより詳しく確認して、違いを明確に理解しましょう。

ナレッジマネジメントとは？

ナレッジマネジメントとは、社内で知識やノウハウを共有し、会社・部署全体で生産性や利益を高めるための手段です。

たとえば、社内である従業員が非常に大きな成果をあげたときに、その方法をナレッジとして社内に広く周知することで、ほかの従業員も同じように大きな成果をあげられるようになります。これがナレッジマネジメントによる利益の拡大の例です。

ほかにも、社内でトラブルが発生したときにもナレッジマネジメントは有用です。トラブル発生の原因や状況、解決策などをナレッジとして社内に蓄積・共有し、トラブルの再発防止や万が一再発したときでも早期解決に役立ちます。

このように社内で蓄積されたナレッジを誰もが活用できる状態にして、より効率よく利益を追求、リスクを回避するための手段がナレッジマネジメントです。

文書管理とは？

文書管理とは、文書のライフサイクルに従って適切に管理すること自体が目的です。

文書は発生・伝達・管理・活用・保存・破棄の6つのステップで処理が行われます。それぞれの段階において適切に文書処理が行われて、必要なタイミングで必要な文書を利用できるようにすることが文書管理の重要な点です。

文書にはそれぞれ異なる目的が設定されています。取引先と契約を結ぶための契約書、適切な納品が行われたことを示す納品書、費用の授受が正しく行われたことを確認する領収書など、文書によって目的は異なります。このような目的の異なる文書が、目的に従って適切に処理されるようにすることが文書管理です。

文書管理を土台にナレッジマネジメントを行う重要性

文書管理を土台としてナレッジマネジメントを行うことは、次のような点から重要です。

• 業務を効率よく行える
• ノウハウが属人化しない
• 新しい人材の早い戦力化を目指せる

業務を効率よく行える

業務を効率よく行うことは、文書管理とナレッジマネジメントのどちらにも共通している目的の1つです。

従業員が売上拡大のナレッジをもっていても、そのナレッジが共有されなければほかの従業員はなかなかうまく売上を拡大できないこともあるでしょう。一方で、ナレッジを社内で共有したとしても、そのナレッジが適切に管理されていなければ必要なときに参照することは難しいです。ナレッジは文書として保存されている場合が多いため、必要な人が必要なタイミングで、適切なナレッジにアクセスできるよう文書管理の仕組みを整える必要があります。

ナレッジを探すために業務時間をムダにしていては本末転倒のため、文書管理の仕組みを利用しナレッジマネジメントを行うことで効率的に業務が行えます。

ノウハウが属人化しない

文書管理をベースとしてナレッジマネジメントを行っていると、業務が属人化せず誰もが同じ水準で業務を行えるようになります。

反対に考えると、ナレッジマネジメントを行っていない場合には業務が属人化する懸念があります。また、業務を任せていた人の退職に伴ってノウハウが失われて業務効率が低下する場合もあるでしょう。

そのような場合でも、ナレッジマネジメントを行っていれば業務やノウハウの属人化を防止可能です。特定の従業員に依存しない体制の構築に役立ちます。

新しい人材の早い戦力化を目指せる

適切な文書管理のもとナレッジマネジメントができていれば、新しい人材が入社した際にも早い戦力化を目指せます。

ナレッジとは、会社がこれまで蓄積してきた知識やノウハウです。過去にうまくいった事例、よい結果にならなかった事例、手法や原因などをナレッジで追体験できることで、新しい人材も既存の従業員と同じような知識レベルになることが期待できます。

従業員育成をすべてOJTに任せていると育成スピードにばらつきが出たり、知識に偏りが出たりとさまざまな問題が発生しかねません。その点、ナレッジマネジメントができていれば、一定の水準を保ったうえで育成ができるため、新しい人材の均質化やスピード感をもった育成ができるでしょう。

ナレッジマネジメントのための文書管理を行うコツ

ナレッジマネジメントのための文書管理を行うコツには次のようなものがあります。

• 必要な情報の取捨選択を行う
• 残った情報をグループ化する
• グループごとの関連性を精査する
• 必要に応じてシステム導入を検討する

4つのコツについて、必ず確認しましょう。

必要な情報の取捨選択を行う

ナレッジマネジメントと文書管理において、必要な情報を取捨選択することは非常に重要です。なぜなら、不要な情報が多いと本当に必要な情報が埋もれてしまい、業務効率が著しく低下するためです。

本当に必要な情報にアクセスしやすい環境を整えるためにも、必要な情報と不要な情報は取捨選択し、必要なナレッジのみをまとめて管理しましょう。

残った情報をグループ化する

ナレッジや文書の取捨選択を行って必要な情報のみを残したら、情報をグループ化しましょう。

グループ化の方法は企業によって便利な方法をとって問題ありません。たとえば、営業に関するナレッジや文書であれば取引先ごとにまとめる場合や、契約年月日によってまとめる場合などが考えられます。企業規模によってまとめてもよいでしょうし、業種や業態によってまとめるほうが便利な場合もあるでしょう。

このようにグループ化の基準は運用に際して最も便利だと思うものを採用して問題ありません。企業ポリシーにもとづいて検索性も高く利用者も閲覧しやすい文書管理ができていれば、適切な文書管理によるナレッジマネジメントができているといえるでしょう。

グループごとの関連性を精査する

ナレッジをグループごとに分類したら、ナレッジごとやグループごとの関連性を精査することでより便利にナレッジが活用できます。

再度営業に関するナレッジを例として考えましょう。たとえば、ナレッジを契約年月日によって分類したと仮定します。その際、企業規模による細分化も同時に行っておけば、時間経過とともに企業規模による売上分布がどのように変化しているのか検討できます。各年の売上分布を確認し事業規模による時期の偏りがあれば、そのナレッジをさらに分析することで受注パターンを把握しやすくなるでしょう。

このようにナレッジごと、分類したグループごとの関連性を精査することで、ナレッジを閲覧しやすくなるだけではなく売上の拡大につなげられる可能性も出てきます。ナレッジを最大限に活用するためにも、グループ分けやそれらの関連付けを実施しておきましょう。

必要に応じてシステム導入を検討する

文書管理ベースのナレッジマネジメントを行う際、必要に応じて文書管理システムの導入を検討しましょう。文書管理システムであればナレッジマネジメントのための文書管理も手間なく簡単に行えるからです。

情報の取捨選択、グループ化および関連付けなどを手作業で行うことは非常に煩雑で手間がかかります。ファイルサーバーでナレッジマネジメントや文書管理を行っている場合には、仕組みの構築をするだけでも大きな労力がかかるでしょう。また、検索性が高くないことや、ナレッジが活用されているかわからないなどの問題も発生しがちです。

システムを導入すれば仕組みの構築は簡便になり、ナレッジの活用状況も閲覧数やダウンロード数などでわかりやすく可視化できる場合もあります。手間なくナレッジマネジメントを行い、構築した仕組みが活用されていることを把握したい場合には、文書管理システム導入も1つの手段であると覚えておきましょう。

ナレッジマネジメント用の文書管理システム導入のメリット

ナレッジマネジメント用の文書管理システムを導入すると次のようなメリットが得られます。

• 検索性が向上し必要な文書を迅速に閲覧できる
• 文書の共有が容易になる
• ペーパーレス化によりコスト削減になる
• 情報を整理しやすく管理コストが削減できる

検索性が向上し必要な文書を迅速に閲覧できる

文書管理システムを導入すると、多くの場合で検索性が向上し必要な文書を迅速に閲覧できるようになることがメリットです。

文書管理システムは電子帳簿保存法やそのほかの法律に対応するために、優れた検索機能がなければサービスとして成り立ちにくい背景があります。そのため、多くの文書管理システムが優れた検索機能を備えており、それがナレッジマネジメントにも役立ちます。

文書の共有が容易になる

システムを導入すれば文書の共有が紙で行っているときよりも便利になるでしょう。

ナレッジは多くの従業員間で共有されてこそ真価を発揮します。しかし、紙でナレッジを共有する場合、人数が多くなれば印刷の時間やコストが大きくなってしまいがちです。その点、文書管理システムであれば共有も簡単なうえに、コメントや編集も気軽に行えます。多くの意見を集めてよりよいナレッジベースを作ることで、ナレッジはより洗練されて企業における価値を高められます。

このように、紙では行いにくい共有や編集を容易にできることも、文書管理システムを利用したナレッジマネジメントのメリットです。

ペーパーレス化によりコスト削減になる

システムを利用したナレッジマネジメントであれば、ペーパーレス化によるコスト削減が実現できることもメリットです。

ナレッジを一つひとつ紙で保存した場合、ナレッジマネジメントが本格化すると紙の数も膨大な量になります。紙での業務は作成から保存、破棄に至るまで印刷代・スペース代・紙ゴミの処理費用などさまざまなコストが発生します。

紙で行っている業務をシステムに置き換えてペーパーレス化が実現できれば、ペーパーベースで行っている業務のコストを削減できるメリットにつながるでしょう。

情報を整理しやすく管理コストが削減できる

システムを導入した場合、情報が整理しやすく管理コストも大きく削減できます。

文書の管理コストとはたんに文書を保存するスペースだけの問題ではありません。ナレッジ文書のグルーピングやグルーピングの見直し、それに伴う文書の移動、さらには文書を閲覧するときの文書検索の時間なども管理コストとして考えられます。

従業員が働いているかぎり人件費がかかっています。ナレッジに限らず文書を探している時間は業務時間の中でも最優先して削減するべきムダな時間であるため、システムの導入により削減することが望ましいです。

セキュリティの強化につながる

システムを導入すれば文書管理業務のセキュリティ強化につながります。

ナレッジを含む紙ベースの文書の場合、社外に簡単に持ち出せるうえに紛失や盗難のリスクがあります。従業員の過失だけではなく、悪意のある人が意図的に重要書類を社外に持ち出せてしまうため、重大な情報漏えいのリスクも高いです。

一方で、システムで文書管理をしている場合、文書を閲覧・印刷・ダウンロードすることに対して制限をかけられます。IDやパスワードでシステムに入るためのセキュリティがあることはもちろん、IPアドレスによる制限ができるシステムもあるため、社内でのみ文書管理システムにログイン可能な環境を構築できます。

このようにシステムの導入はセキュリティ面でもメリットがあり、紙ベースで管理されたナレッジや重要情報が流出するリスクを最小限にしたい場合には、システム導入を検討すべきでしょう。

文書管理システム導入を成功させるためのコツ

ナレッジマネジメントだけではなく、多くの文書をシステム上で管理できる文書管理システムの導入を成功させるためにはコツがあります。次にシステム導入を成功させるためのコツをいくつか紹介します。

• 管理文書と文書のフローを整理する
• 現在の課題を洗い出す
• 課題を解決できるシステムを検討する
• 社内でシステムを浸透させる

管理文書と文書のフローを整理する

管理している文書と文書の取り扱いフローを整理することは、文書管理システム導入の際には重要です。なぜなら、管理する文書の種類とフローによって導入するべきシステムが大きく異なるからです。

文書管理システムには多くのサービスが存在しています。多くのサービスの中から自社に最も適したサービスを選ぶためには、管理したい文書と文書の自社内での取り扱いを把握していなければなりません。ナレッジベースとして活用するのであればワークフロー機能は不要ですし、一時的にしか保管しない文書であればわざわざシステムを利用するまでもないでしょう。

このように、管理したい文書と文書の扱いを理解しておけば、自社に向いているサービスに絞って検討が進められます。

現在の課題を洗い出す

管理する文書と文書フローだけではなく、ナレッジベースの構築や文書管理業務において課題を洗い出すことも重要です。現在抱えている課題も文書管理システムを絞り込む際に重要なファクターになるためです。

たとえば、課題が文書の検索に時間がかかって業務時間にムダが多いことであれば、検索機能に強いシステムが向いています。もしも膨大な量の文書が存在し、管理スペースを圧迫していることが課題であれば、多くの文書を登録し分類できる機能に強いシステムを導入すべきです。

このように、課題によって選定すべきシステムは異なります。現在抱えている課題を解決し目的を達成できるシステムを選ぶためにも、課題の洗い出しとそれに伴うシステム導入で達成すべき目的も明確にしておきましょう。

課題を解決できるサポートが手厚いシステムを検討する

課題や目的が明確になったら課題解決や目的達成ができるシステムに絞って検討を進めましょう。課題や目的を達成する機能を有しているシステムであることは当然として、サービス提供企業がどのようなサポートを行ってくれるかも検討すべきポイントです。

サポートが手厚いサービスを選べば、他社事例も参考にしつつシステム導入によって目的を達成する方法や、システム導入による新たに出てくる課題を予見して回避できる場合もあるでしょう。自社だけで課題解決を目指すのではなく、サービス提供企業のノウハウも活用しながらシステム導入を進めましょう。

文書管理システムでナレッジマネジメントを成功させよう

文書管理システムを利用すればナレッジマネジメントを成功させやすいです。ナレッジマネジメントの成功に必要な検索性・閲覧性に優れていることや、文書の共有が行いやすいなどの条件が文書管理システムの機能によってカバーされるためです。

ナレッジマネジメントには業務の属人化を防止できる、新しい人材をスピーディーに育成できるなど、多くのメリットがあります。業務が属人化したままでは担当が退職したときにノウハウがすべて失われるリスクや、人材育成に時間がかかる状態を放置すると収益構造に悪影響が出るなどのリスクがあります。これらのリスクを回避するためにもナレッジマネジメントは多くの企業にとって有効です。

ナレッジマネジメントを文書管理システムと上手に組み合わせることで、効率的なナレッジの共有や文書業務を行える体制を整えましょう。