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推定効とは?法律上の意味や電子契約における役割を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から0日前のものです)
推定効とは、裁判における証拠が真正に成立したことを一時的に認めることです。電子契約を行う際は、電子署名によって本人性を確保する必要があるため、推定効が大きな意味を持ちます。本記事では、推定効の意味や電子契約における役割を解説します。

推定効とは

推定効とは何かを理解するためには、まず法律における「推定」と「みなす」の違いについて把握することが大切です。それをもとに推定効の意味と役割を解説します。

法律における「推定」と「みなす」の違い

法律における「みなす」の言葉には、「本来性質が異なるもの同士を、条件を満たすと同一物として取り扱う」という意味があります。たとえば、婚姻済みの未成年者と成年者は、本来であれば別々の意味で扱われますが、私法上、婚姻すると成人を迎えたとみなされます。

一方の「推定」とは、「法律上、いったんX=Yとして処理し、新たな証拠の提示により、それが覆されない限りはX=Yとして扱う」という意味です。婚姻中の妻のお腹にいる胎児(X)は、夫の子ども(Y)であるといった形で、一時的な取り決めを結びます。推定はあくまで一時的なものである点から、訴訟で証拠を提示して結果を変更できます。

推定効の意味と役割

X=Yのような、一時的な取り決めを作ることを推定効といいます。専門的には、「真正に成立したものと推定する」とも訳されます。

推定効が働く物事としては、契約書の署名押印が代表的です。署名や押印があれば、書類の作成者や本人の意思表示を確認できるため、契約に合意したことを推定する材料となります。つまり、推定効が働くと、裁判の証拠として使用することが認められることを表します。

電子契約の推定効の働き

電子契約は書面契約とは違い、物理的な署名や押印を行うわけではないため、推定効がどのように働くかがイメージしにくいです。そこで、電子契約上の推定効の働きを詳しく解説します。

電子契約では電子署名によって推定効が成立する

書面契約では署名や押印により推定効が働きます。一方、電子契約で推定効を働かせるには、電子署名が必要です。これは電子署名法の第三条に明記されています。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
※引用:e-GOV「電子署名及び認証業務に関する法律」(2024年10月18日閲覧)

電子署名とは、書面契約における印章やサインにあたるものですが、本人のみが知る秘密鍵によってデータが暗号化されています。そのため、電子署名が付与された電子契約書には、本人性(署名者の特定が可能な性質)と非改ざん性が加わります。

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立会人型の電子署名でも条件次第で推定効が成立する

電子署名には、電子認証局で直接証明書を発行する「当事者型」と、電子契約システム内で本人認証を行える「立会人型」の2つの方法があります。

強固な信頼性を確保できるのは当事者型の電子署名です。当事者型では電子認証局が本人確認を行うため、実印のような法的効力が発揮されます。一方の立会人型では、メールやSMSを使って、電子契約システムの提供事業者の立ち合いのもと本人確認が行われます。

そのため、立会人型では厳密に本人性を担保できないと思われがちです。ただし、固有性の要件を満たすことで、本人性が付与されると同時に推定効が成立します。

電子署名法第3条Q&Aから見る固有性の要件

固有性とは、第三者が容易に同一のものを作成できない状態を指します。

立会人型の電子契約を結ぶ場合、電子契約システムを利用するのが一般的ですが、必ずしも利用者本人が契約を締結したことを証明できるわけではありません。そのため、事業者が提供する署名プロセスや利用者側の認証プロセスにおいて、十分な固有性を満たす必要があります。

上記の点は、総務省・法務省・経済産業省の連名によって公表された「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条Q&A)」に明記されています。

問2 サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による暗号化等を行う電子契約サービスは、電子署名法第3条との関係では、どのように位置付けられるのか。
(中略)
以上の次第で、あるサービスが電子署名法第3条に規定する電子署名に該当するか否かについては、個別の事案における具体的な事情を踏まえた裁判所の判断に委ねられるべき事柄ではあるものの、一般論として、上記サービスは、①及び②のプロセスのいずれについても十分な水準の固有性が満たされていると認められる場合には、電子署名法第3条の電子署名に該当するものと認められることとなるものと考えられる。そして、同条に規定する電子署名が本人すなわち電子文書の作成名義人の意思に基づき行われたと認められる場合には、電子署名法第3条の規定により、当該電子文書は真正に成立したものと推定されることとなると考えられる。
※引用:法務省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(2024年10月18日閲覧)

このような点から立会人型の電子契約であっても、固有性の要件を満たす限り推定効が働きます。

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推定効のポイントを押さえて電子契約の環境を構築しよう

何のトラブルもなく契約が履行される場合、とくに推定効を強く意識する必要はありません。しかし、顧客の個人情報や取引先の機密情報を扱うようなケースでは、法トラブルのリスクが高まることから、推定効が重要な意味を持つようになります。

電子帳簿保存法の改正によって電子契約の機会拡大が見込まれるなか、推定効への理解があいまいな状態では、大きな法トラブルへと発展する可能性もゼロではありません。とくに電子契約システムの導入を検討している場合、推定効とあわせて固有性の要件に対する理解も不可欠です。電子契約の環境を整備する際は、今回紹介した内容を参考に適切な知識を押さえましょう。

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