電磁的方法とは?種類や電磁的方法との違い・関連法律
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- 電磁的方法とは?
- 電磁的方法と電子的方法の違い
- 電磁的方法の種類
- 電磁的方法について定めた関連法律
- 電磁的記録におけるFAXの取り扱い
- 書面で送受信する場合は書面取引として扱う
- 複合機の機能で送信する場合は電磁的記録として扱う
- 電磁的方法を用いた契約書締結のメリット
- 契約にかかる業務を効率化できる
- 書面での契約にかかる費用を削減できる
- セキュリティを強化できる
- 電磁的方法を用いた契約書締結のデメリット
- 電磁的方法を利用できない契約の種類がある
- 契約者双方で電磁的方法の書面利用に同意しなければならない
- システム導入に手間やコストがかかる場合がある
- 電磁的方法を用いた契約をするなら電子契約システムを
電磁的方法とは?
電磁的方法とはメールやインターネット、CDやUSBメモリなどの媒体を介し、人の知覚のみでは認識できない情報処理を行う方法です。これらの方法によって処理された情報は、コンピュータやスマホなどを通さないと媒体内に記録された情報を見られません。
このように、なんらかの専用端末や媒体を利用しなければ情報の操作ができない方法を電磁的方法といい、身の回りでも多く使われています。スマホを通してSNSメッセージを送信することも、パソコンを使ってメールでやり取りをする方法も電磁的方法であり、現代社会には欠かせない情報処理の方法です。
電磁的方法と電子的方法の違い
電磁的方法と電子的方法は、同じような意味合いで使われることもありますが、狭義ではレイヤーに違いがあります。電磁的方法は電子的方法の上位概念であり、電子的方法は電磁的方法に内包される概念です。
より具体的に説明すると、電磁的方法は「電子的方法」と「磁気的方法」の2つを総称した方法や言葉で単一の方法を指す概念ではありません。一方、電子的方法は電子の移動や動きなど、一般に電流といわれるものを利用する方法そのものを指します。
このように、それぞれの概念は厳密は異なるものですが、どちらの方法も人のもつ知覚機能では認識できない点で共通しているため、一般的には同じような意味合いで使われることも多いです。
なお、磁気的方法は磁力を利用するものです。電子や電流を使う電子的方法とはまた異なるため、必要なシーンではそれぞれを使い分けましょう。
電磁的方法の種類
電磁的方法の種類には電子的方法と磁気的方法に加えて、光学的方法もあります。それぞれの方法の身近な具体例をいくつか紹介します。
方法の種類 | 具体例 |
---|---|
電子的方法 | USBメモリ・SSDなど |
磁気的方法 | フロッピーディクス・ハードデイスク(HDD)・磁気テープ・映像記録用VHS・プリペイドカードやポイントカードなど |
光学的方法 | CD-R・DVD・ブルーレイディスクなど |
電子契約や電子帳簿保存法における電磁的方法といえば、これらに類似する方法であると考えましょう。
電磁的方法について定めた関連法律
電磁的方法の利用や取り扱いについて定めた関連法律には次のようなものがあります。
法律名 | 正式名称 | 概要 |
---|---|---|
電子帳簿保存法 | 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 | 国税関係の書類や資料の電磁的方法による保存について定めている。 2022年に改正され、広く電子保存が行いやすくなったり、電子保存が義務化されたりするなどの変更が行われた。 |
電子署名法 | 電子署名及び認証業務に関する法律 | 電子署名や電子署名を付与した情報の取り扱いについて定めることで、情報の円滑な利用が促進されることを目的としている。 |
IT書面一括法 | 書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律 | 各省庁が所管する法令に関して、書面だけではなく電子的な方法による交付を認めるもの。 各法令の一括修正について定めており、単独で機能する法律ではない。 |
e-文書法 | 次の2つの法律の総称 ・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 ・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 |
電子帳簿保存法が国税関係書類や資料に限定して定めていることに対し、その他の書類に関する電磁的方法による記録を対象に定めている。 |
電磁的方法で書類を作成・保管する際は、これらの法律に加えて民法・民事訴訟法などについても理解する必要があります。電磁的方法による書類の処理に不安がある場合は、専門家に相談しながら切り替えを進めましょう。
電磁的記録におけるFAXの取り扱い
FAX(ファクシミリ)は電磁的方法・記録の中でもやや特殊な扱いをしなければなりません。FAXを利用する際にどのように取り扱うべきか、次の国税庁通達を紐解く形で詳しく確認しましょう。
(ファクシミリの取扱いについて)
7-8 ファクシミリを使用して取引に関する情報をやり取りする場合については、一般的に、送信側においては書面を読み取ることにより送信し、受信側においては受信した電磁的記録について書面で出力することにより、確認、保存することを前提としているものであることから、この場合においては、書面による取引があったものとして取り扱うが、複合機等のファクシミリ機能を用いて、電磁的記録により送受信し、当該電磁的記録を保存する場合については、法第2条第5号に規定する電子取引に該当することから、規則第4条に規定する要件に従って当該電磁的記録の保存が必要となることに留意する。
※引用:国税庁「『電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について(法令解釈通達)」(2024年12月13日閲覧)
書面で送受信する場合は書面取引として扱う
FAXの送信元が紙に印刷したものをFAXに通し、受け手がFAXから印刷されたものを受領する場合は、FAXを書面によるやり取りであるとして取り扱います。たしかにFAXを経由し読み取りや印刷の際にデータのやり取りが行われるものの、それぞれが紙を利用して書面のやり取りをすることが前提となっていることから、法的な取り扱いは書面による取引として扱われます。
複合機の機能で送信する場合は電磁的記録として扱う
複合機の機能を使って書面を電子データ化して、受信側も電子データとして書面を閲覧する場合は、電帳法第二条第5項を根拠として、電磁的記録による電子取引として扱われます。また、電子取引として行われた書類は、電子帳簿保存法第四条の規定により印刷して紙媒体としての保存が認められていません。
電子データとしてやり取りしたものは電子データとして保存することが原則であるため、FAXの機能を使ったとしても電子データそのものを保存しなければならないことに注意しましょう。
電磁的方法を用いた契約書締結のメリット
電磁的方法を用いた契約書締結のメリットを次に示します。
- 契約にかかる業務を効率化できる
- 書面での契約にかかる費用を削減できる
- セキュリティを強化できる
契約にかかる業務を効率化できる
契約書を電磁的方法を用いて作成・締結・保管することで、業務を効率化できます。従来紙での契約締結作業にて発生していた、印刷作業や封入作業、送付作業、閲覧したい契約書を探す作業などが不要になります。
書面での契約にかかる費用を削減できる
契約業務に電磁的方法を取り入れることで削減できるものは、ムダな工数だけではありません。工数と同様に、契約業務を行う際に発生していたムダなコストも削減できます。
紙の契約書を作成する場合、紙代やインク代などがかかります。これに加えて取引先に送付するための封筒代・切手代・郵送費も必要です。さらに、場合によっては収入印紙代もかかるため、契約書を締結するだけで多くのコストがかかります。
これらにかかるムダなコストは電磁的方法を用いればすべて削減できるため、電磁的方法にはコスト面でもメリットがあるといえます。
セキュリティを強化できる
契約業務において重要なセキュリティを強化できることも電磁的方法のメリットの1つです。たとえば、電子契約システムを使えばシステムへのログイン・契約書の閲覧・作成や修正などの履歴が残せます。誰がどのような操作を行ったかを履歴で残せるため、不正な契約締結や契約後の修正を行いにくいです。
また、電磁的方法であれば不正な契約書の持ち出しによる契約書の紛失や盗難の発生するリスクも小さくできます。紙の契約書の場合は、万が一不正な複製や持ち出しが行われたとしても、誰が不正を行ったか追跡することは難しいです。
一方、電磁的方法を利用していれば操作履歴が残るうえ、印刷やダウンロードに制限をかけられるシステムもあるため、不正な複製や持ち出しのリスクを最小限に抑えられます。
電磁的方法を用いた契約書締結のデメリット
電磁的方法を用いた契約書締結には次のようなデメリットも存在します。
- 電磁的方法を利用できない契約の種類がある
- 契約者双方で電磁的方法の書面利用に同意しなければならない
- システム導入に手間やコストがかかる場合がある
電磁的方法を利用できない契約の種類がある
契約の中には電磁的方法を利用できないものがあります。たとえば、次のようなものは電磁的方法を用いた契約をできません。
- 任意後見契約書
- 事業用の定期借地権契約書
- 農地の賃貸借契約書
これらは紙媒体の公正証書が必要であることや、電磁的記録でよいと定める法律が整備されていないことなどを理由として、電磁的方法での契約締結はできないものです。
これらの契約を行いたい場合には、書面で契約書を用意することが必要で、すべての契約に電磁的方法が利用できないことをデメリットと感じられることもあるでしょう。
契約者双方で電磁的方法の書面利用に同意しなければならない
電磁的方法を用いた契約を行うこと、いわゆる電子契約には契約者双方の同意が必要な点もデメリットと考えられます。契約者の一方が電子契約メインで、相手方が紙の契約書メインの場合、どちらかの企業は相手方に合わせて、普段扱っていない電子契約か紙による書面の契約を利用しなければなりません。
書面の契約書を利用している場合には、電子契約に何かしらの不安や不満をもっているケースが多いです。そのため、電子契約ではなく書面による契約を求められることも多く、普段電子契約をメインとしている事業者は、場合によっては電子契約と紙の契約の併用が必要でしょう。
電子契約と紙の契約を併用することで契約の管理が煩雑になる点は、電子契約のデメリットといえます。
システム導入に手間やコストがかかる場合がある
システム導入に手間やコストがかかる点も、電磁的方法のデメリットといえます。
電子契約を利用する際は、法的要件に効率的に対応するために電子契約システムを導入することが一般的です。そのため、外部システムを導入する際にかかる導入の手間やコストをデメリットと感じる方も少なくありません。
しかし、システム導入の手間は一時的なもので、その後の持続的な契約業務の効率化を考慮すると、全体的な手間は小さくなることがほとんどです。また、システム導入にかかる費用は契約業務にかかっているムダなコストで相殺できることも多く、こちらもメリットがデメリットを上回りやすいです。
たしかにシステム導入により一時的に手間やコストが増大することは事実ですが、最終的にはシステムを導入して契約業務のムダを削減したメリットの方が大きいことを踏まえて、システム導入を検討しましょう。
電磁的方法を用いた契約をするなら電子契約システムを
電磁的方法とは、データの閲覧にパソコンやスマートフォンを利用しなければ情報処理が行えないデータの処理方法です。このような方法を用いた契約を電子契約といい、電子契約を行う場合は電子契約システムを利用することが一般的です。
電子契約システムの利用には、契約業務にかかるコストやムダな工数を削減し、セキュリティも強化されるメリットがあります。一方で、電子契約ができない契約があることや、電子契約に契約者双方が同意していなければならないなどのデメリットも存在します。
電子契約導入のための工数やコストの観点から考えると、導入後のコスト削減や業務効率化の効果が導入工数やコストを上回ることが多く、メリットの方が大きいことが多いです。現在契約業務にかかっている工数やコストと、導入後に削減される手間やコストを比較して、メリットが大きいようであれば、電子契約システムの導入を検討しましょう。
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