タレントマネジメントをExcel（エクセル）で実践できるのか？メリット・デメリット

タレントマネジメントとは？

タレントマネジメントとは、企業が従業員の能力や専門性などを詳しく把握し、人材を戦略的に活用する仕組みのことです。

従業員一人ひとりの情報を共有することで、適切な人材配置や育成が可能になるほか、人材育成や採用活動に活用できます。また、企業の目標達成と持続的な成長につなげられるのもタレントマネジメントの特徴です。

従業員の才能を引き出し、効果的に活用することが、タレントマネジメントの主な目的といえます。

タレントマネジメントが注目される背景

タレントマネジメントが注目されるようになった背景には、労働市場における環境の変化が影響しています。特に大きな影響を与えているのが、次の3つの要因です。

• 労働人口の減少
• 働くことに対する価値観の変化
• 経営戦略の高速化

少子高齢化が進む現代では、労働人口が減少しています。そのため、企業は人材の確保が困難になったほか、在籍している従業員の能力を最大限に発揮して生産性を上げることが求められています。従業員の能力や特性を把握したうえで、人事戦略を練り、生産性を最大化することが重要になるため、タレントマネジメントが注目されている状況です。

また、従業員の労働に対する価値観が変化しており、転職することへの抵抗感が低下しているのも大きな要因です。タレントマネジメントでは、従業員の仕事に対する満足度調査を行えるため、モチベーションの低い従業員へのフォローや人員の見直しがしやすくなります。

さらに、ビジネスを取り巻く環境の変化により、経営戦略の変化が高速化している状況です。そのため、組織に在籍する従業員の能力を把握して、環境の変化による事業戦略の変更や新展開に即座に対応できるようにする企業が増加していることからも、タレントマネジメントへの注目度が増しているといえます。

タレントマネジメントに必要な項目

タレントマネジメントに必要な項目は次のとおりです。

• 基本情報
• 評価・目標情報
• スキル・キャリア情報

それぞれ詳しく解説します。

基本情報

タレントマネジメントでは、従業員の基本情報が必要です。誰がどのような経歴をもっているのかを可視化できなければ、正確なデータの検索や分析ができなくなります。具体的な項目例は次のとおりです。

• 氏名
• 生年月日
• 住所
• 電話番号
• 学歴
• 社員番号
• 入社日
• 勤続年数
• 所属拠点
• 役職
• 雇用形態
• 職種

評価・目標情報

タレントマネジメントでは、従業員の評価や目標に関する情報も必要です。特定の従業員がどのような経験や実績を積んでいるのか、まとめましょう。評価・目標情報の項目例は次のとおりです。

• 組織における等級
• 期限ごとの目標
• キャリアの目標
• これまでの成果
• 人事的な評価履歴
• 社内での受賞、表彰履歴

これらの情報を正確に残すことで、過去と比較してどれだけ成長しているのか、成果を残しているかが把握しやすくなるため、人事業務において正当に評価しやすくなるメリットがあります。

また、従業員の離職防止やモチベーションの向上・維持、企業内・組織内での最適な人事配置などに活用できます。

スキル・キャリア情報

スキルやキャリアなど、業務に関連する情報もできるだけ把握しておきます。具体的な項目例は次のとおりです。

• 保有資格や取得年
• 従業員がもつスキルの詳細情報
• これまでに社内外で経験した職種
• これまでに経験した業務内容
• 免許情報

これらの情報を正確に把握していれば、人材育成や配置転換、新しいポストへの抜擢などに活用できます。タレントマネジメントにより、これまでの情報を一元的に把握・管理することで、企業における人事戦略の幅広いシーンで活用できるでしょう。

Excel（エクセル）でのタレントマネジメントは可能

タレントマネジメントを行うためには、システムを導入するのが一般的ですが、Excelを使ったタレントマネジメントも可能です。

Excelはパソコンに標準装備されているケースが多く、無料で利用できるため、コストを抑えたタレントマネジメントの運用ができます。

Excelでのタレントマネジメントのメリット

Excelでタレントマネジメントを行うメリットは次のとおりです。

• システム費用がかからない
• 操作に慣れているExcelを使える
• カスタマイズ性が高い

システム費用がかからない

Excelを活用したタレントマネジメントのメリットの1つは、新しいシステムの導入に費用がかからないことです。専用のタレントマネジメントシステムを導入したり、システムを一から開発したりする場合、相応の費用が発生します。

Excelであれば、社内のパソコンにプレインストールされているケースが多いため、導入コストを大幅に削減できるでしょう。また、Excelであれば手軽に始められるため、中小企業でタレントマネジメントを導入したい場合におすすめです。

操作に慣れているExcelを使える

タレントマネジメントにExcelを利用するメリットとして、操作に慣れていることが挙げられます。Excelはほとんどの従業員が日常的に使い慣れている表計算ソフトです。

タレントマネジメントの運用にExcelを活用すれば、従業員にも親しみやすく、ストレスなく取り組めるでしょう。既存のExcel活用ノウハウを活かせるので、わざわざ新しいシステムの操作を覚える必要がなく、スムーズに導入できます。

カスタマイズ性が高い

カスタマイズ性が高いのも、Excelでタレントマネジメントを行うメリットです。Excelはカスタマイズ性が高く、自社の組織構造やニーズに合わせて、柔軟にタレントマネジメントの仕組みを設計できるほか、必要に応じてデータの追加や表示形式の変更を行えます。

企業や組織の実情に合わせた仕組みの構築や運用が、タレントマネジメントでは重要です。ITリテラシーの高い従業員が多い環境であれば、タレントマネジメントシステムを導入するよりも、Excelを使ったほうが向いている場合もあるでしょう。

Excelでのタレントマネジメントのデメリット

一方、Excelでタレントマネジメントを行うデメリットは次のとおりです。

• 管理が複雑になり、リソースが多くかかる
• データの一元管理は困難
• セキュリティに不安が残る
• 人的ミスが起こりやすい
• 閲覧権限を細かく設定できない

管理が複雑になり、リソースが多くかかる

管理が複雑になり、多くのリソースが必要になるのが、Excelを使ったタレントマネジメントのデメリットです。企業が成長するにつれ、従業員の情報は増加していくため、Excelファイルの管理が煩雑になります。

ファイルの共有や更新、バックアップ管理など、手作業での対応では限界を感じるかもしれません。中・大規模な組織になると、Excelの管理に専任者の配置が必要になる場合もあります。

また、データの分析や可視化にもプログラムや関数を複雑に組む必要があり、Excelベースのタレントマネジメントには限界があるといえるでしょう。

データの一元管理は困難

Excelを使ったタレントマネジメントでは、データの一元管理が難しいといった課題があります。

部門ごとにExcelファイルが分散する可能性が高く、最新の情報が社内で共有されずに、組織全体で人材情報を一元管理したり、把握したりするのが難しくなるでしょう。また、Excelファイルが増えていくと、データの重複や矛盾が生じるリスクも高くなります。

Excelを用いた方法では、タレントマネジメントの本来の目的である、組織全体での人材の可視化と最適な活用を実現するのは困難なケースがあります。

セキュリティに不安が残る

セキュリティ面での不安が残りやすいのも、Excelによるタレントマネジメントのデメリットです。

タレントマネジメントには、従業員の個人情報や機密情報が含まれるため、Excelファイルの管理には細心の注意を払わなければなりません。ファイルの共有や保管方法によっては情報漏えいのリスクが高くなるほか、Excelファイルは容易に編集できるため、意図せぬ変更や不正な修正が行われる恐れもあります。

また、Excelを使用する場合業務上の必要性から、多くの従業員がファイルにアクセスするため、情報管理も難しくなるでしょう。

人的ミスが起こりやすい

Excelによるタレントマネジメントでは、人的ミスが起きやすい課題があります。Excelファイルの管理を手作業で行う必要があるため、データの入力ミスや計算式の間違いなど、さまざまなヒューマンエラーが発生するリスクがあります。

特に従業員の異動や採用、退職などの際に、情報の更新漏れや誤りが生じやすいほか、誤ったデータの共有は、組織全体で誤情報が蔓延するケースもあるでしょう。

閲覧権限を細かく設定できない

閲覧権限を設定するのが難しいのも、Excelでのタレントマネジメントを行うデメリットです。タレントマネジメントでは、組織内の立場や役割によって、従業員の情報へのアクセス権限を細かく管理する必要があります。

しかし、Excelにはそういった機能が十分に備わっておらず、柔軟性や管理性に限界があるため、管理する情報のセキュリティ上のリスクが高まる恐れがあります。

Excelでのタレントマネジメント実践手順

実際にExcelでタレントマネジメントを行う手順は次のとおりです。

• 必要なタレントと評価基準を定義する
• 必要な項目をExcelに集約する
• 表やグラフで可視化する
• 必要な施策を洗い出す

それぞれ詳しく解説します。

必要なタレントと評価基準を定義する

まず、組織が目指す方向性や達成したい目標を実現するために必要な人材像を明確にします。具体的にどのようなスキルや経験、価値観をもつ人材が求められるのかを具体的にイメージして、タレントマネジメントの方針を決めましょう。

次に、組織が求める人材の評価項目を設定します。所属部署や経歴、保有するスキルや資格など、評価の対象となる項目を洗い出し、組織の目標やビジョンと照らし合わせて検討してください。

評価項目を明確にすることで、組織にとって最適な人材を見極め、適切な育成や配置ができます。

必要な項目をExcelに集約する

次に、決定した評価項目に沿って必要な情報をExcelに集約しましょう。

既出の「タレントマネジメントに必要な項目」で記載したものを参考に、自社のタレントマネジメントに必要な項目を付け加えて、管理用のExcelファイルを作成してください。

また、実際にデータを収集する場合は、入力用のExcelデータを作成して従業員に配布するのがおすすめです。従業員に関するデータを集めて、タレントマネジメントの基礎を構築しましょう。

表やグラフで可視化する

従業員のデータが収集できたら、Excelの表機能やグラフ機能を活用して、データを可視化しましょう。これにより、組織や部門における強みや弱み、人材の分布やスキルの偏りを確認できます。

必要な人材が足りているのか、適切に配置されているかをチェックしてください。また、将来的に採用や育成が必要な人材に関しても、集めたデータをもとに分析します。

必要な施策を洗い出す

従業員データの可視化と分析が完了したら、必要な施策の洗い出しを行います。組織が掲げる目標の達成に必要なスキルや経験がある人材が不足している場合は、新規採用もしくは中途採用が必要になるでしょう。

また、スキルや経験が不足していても、ポテンシャルの高い従業員がいる場合は、人材育成による穴埋めを行う方法もあります。

人材を採用する場合は、必要なスキルや経験を明記した求人を行い、適切な人材を確保できるよう心がけましょう。従業員を育成する場合は、長所と短所を把握したうえで、適切な教育プログラムや研修プログラムを提供することが重要です。

おすすめタレントマネジメントシステム5選

これまで解説してきたとおり、Excelでのタレントマネジメントはできなくはありません。しかし、データが分散する可能性があるほか、データを適切に可視化するのが難しいのが難点です。

そのため、組織のタレントマネジメントをしっかり行いたい場合は、タレントマネジメントシステムの導入をおすすめします。

タレントマネジメントシステムでは、従業員のスキルや経験、キャリア志向などのデータを一元管理できるほか、適切な人材配置や育成計画、採用管理に役立つ機能が豊富に搭載されています。

おすすめのタレントマネジメントシステムを紹介します。

タレントマネジメントシステムの選び方は次の記事で詳しく紹介しています。

カオナビは、人事に対する深い知見とノウハウをもとにしたタレントマネジメントシステムです。人材データベースとしてはもちろん、従業員の情報を自由に検索できる機能や、条件を満たす従業員を適切に配置する機能、アンケート機能など、タレントマネジメントに必要な機能が網羅されています。3,600社以上が利用している高いシェアを誇るシステムです。

HRMOSタレントマネジメントは、人事と経営をデータでつなぐタレントマネジメントシステムです。組織や人材の可視化やデータ分析、目標・評価業務の効率化、人材育成・研修管理、エンゲージメント向上、離職防止などさまざまな機能が搭載されています。幅広い業界のベンチャー企業から大手企業まで活用されているシステムです。

HRBrainタレントマネジメントは、簡単かつシンプルに使用できるシステムです。人材データの集約や一元管理に加え、従業員のスキル管理、人事評価、離職防止に至るまで1つのシステムで完結できます。自社の課題に合わせて、必要なシステムを組み合わせて利用できるほか、サポートプランも充実しているため、導入しやすいシステムといえます。

SmartHRタレントマネジメントは、人事業務の効率化や人材育成までサポートできるタレントマネジメントシステムです。労務手続きを効率化しながら、最新の従業員データが蓄積される仕組みで、人事施策にデータを活用しやすいのが特徴です。適切な人員配置や経営の意思決定など、さまざまなシーンで活用できるため、業界を問わず多くの企業に採用されています。

JobSuite TALENTSは、簡単な操作でタレントマネジメントが運用できるシステムです。人材データベースや組織シミュレーション、人事業務管理、1on1、アンケートなど、タレントマネジメントに必要な機能がひととおり搭載されています。セキュリティ性能も高いため、これからタレントマネジメントを始めたい場合に使いやすいシステムです。

タレントマネジメントで企業成長を加速しよう

ビジネスを取り巻く環境や働くことへの価値観が変化している現代では、タレントマネジメントの重要性が増しています。タレントマネジメントはExcelでも可能ですが、効率的に運用したい場合は専用のシステムの導入がおすすめです。

本記事を参考に、タレントマネジメントを適切に行い、企業の成長へとつなげていきましょう。