人材育成計画とは？立案に役立つテンプレートやおすすめツールを紹介

人材育成計画とは？

人材育成計画とは、企業が長期的なプランをもって社員のスキルを成長させる計画です。企業が成長するためには、「社員がこのような人材になって欲しい」と、定義する必要があります。定義した人材に育成できるように、専門知識やリーダーシップスキルなどを身に付けるための施策を長期的に行う取り組みです。

計画は、社員のスキルの現状把握や成長するための具体的な施策、施策の実行後は定期的な評価とフィードバックを行います。このように、長期的な育成計画を立てることで、一貫した人材育成の実現や社員の早期退職を防ぐ効果が期待できます。

人材育成計画を立てる理由

人材育成計画を立てる理由は次のとおりです。

• 人材の振り返りができる
• PDCAサイクルに組み込める

人材育成計画を進めることで、実践した内容や成果を蓄積できます。そのため、新しいメンバーが加わった際に蓄積したデータを活用し、再現性の高い育成が可能です。

たとえば、IT企業においてプログラミングの知識はあるものの、チームを引っ張る経験が浅い人物が入社したとします。このような場合、システムの構造に応じた予算や顧客のヒアリングといった教育を行うことで、将来的にプロジェクトマネージャーとしてチームをまとめられる人材になるでしょう。

また、人材育成計画はどのような人材に育成するのか、目標を達成するための施策はどのようにするのかが含まれるため、効果検証と改善を計画的に実践できます。

人材育成計画の立て方

人材育成計画の立て方は次のとおりです。

• 現状の組織状態を把握し、課題を抽出する
• 理想の人材像を明確にし、必要なスキルを把握する
• 施策を立案し、人材育成計画書を作成する
• 実行と効果検証のサイクルを回す

それぞれ解説します。

現状の組織状態を把握し、課題を抽出する

現状の組織がどのような状態にあるのかを把握し、課題を浮き彫りにすることから始めます。課題を浮き彫りにしてから実行をしないと、イメージしていた理想の人材像からかけ離れてしまう恐れがあります。

課題を浮き彫りにすることで、必要な育成施策が見えてくるため、現状の組織の状態を把握することが重要です。

代表的な現状の把握方法は次のとおりです。

• スキルマップの作成
• アンケートやインタビューを利用しての経験、スキルの把握
• OJT、プロジェクトなどで得られた評価をもとに現状の把握
• 資格やスキルの認定試験を行う

現状把握を行う際は客観性と公平性を重視する必要があります。客観性や公平性に欠けると、会社だけでなく従業員にも納得ができない評価となってしまうでしょう。また、継続的に取り組みの評価を行うことで、どのように変化したかがわかるため、成果を他の人材育成に活用できます。

理想の人材像を明確にし、必要なスキルを把握する

課題が明らかになれば、どのようなスキルが必要か、どのような人材が理想なのかが見えてきます。たとえば、マネジメントの分野において人材が不足していることがわかれば、マネジメントスキルを身に付けられる育成プランを組む必要があります。

理想の人材像を明確にする際の注意点はできる限り具体的にすることです。理想の人材を考える方法は、経営戦略や企業理念から考える方法、現在の優秀社員をモデルとして考える方法などがあります。

優秀な社員は企業の思い描く社員像に近いことが多いです。そのため、優秀な社員が優秀である要素を分析することが、理想の人材像の把握につながります。

理想の人材像を把握できたら必要スキルを確認しましょう。スキルマップを活用したり人材ポートフォリオを作成したりすることで、現状と理想のギャップが確認できます。さらに、必要なスキルが何か、どのようなスキルを身に付けさせればよいか把握できます。

施策を立案し、人材育成計画書を作成する

現状と理想の人材像、必要スキルが把握できたら、施策を立案し、人材育成計画書を作成します。注意点は次のとおりです。

• 現状から目標を設定する
• 目標を細分化する
• 定期的に成果を測れるようにする

現状のスキルや状態を把握することで、人材育成計画はスタートします。そのため、現状を把握したうえで目標設定することが重要です。また、高すぎる目標はモチベーションの低下につながるため、目標を細分化して現実的な目標を少しずつ達成できるように計画するとよいでしょう。

人材育成計画書を作成したら、目標を達成するために必要な施策を立案します。達成までに必要なスキルが何か、必要なスキルを身に付けるための育成方法はどのようにすればよいかを考えます。

施策を決めるには集団研修やeラーニング、OJTといった手段が有効で、さらにメンタルケアのために個別面談もスケジュールに組み込むとよいでしょう。

実行と効果検証のサイクルを回す

立案した施策を実行に移して出た成果を評価し、施策をブラッシュアップしてさらに実行するといった効果検証のサイクルを回します。参加者が施策を実行した結果、どれくらいのスキルを習得したかを確認します。

確認後は管理者にフィードバックするといったコミュニケーションを取るようにしましょう。結果を元に反省点や改善点を洗い出し、施策をブラッシュアップして再度実行します。

人材育成計画の立案に役立つテンプレート4選

人材育成計画の立案に役立つテンプレートを紹介します。どれも人材育成を推し進める際に有効なテンプレートです。上手く活用して人材育成を効率的に進めましょう。

職業能力評価基準

厚生労働省が公開している職業能力評価基準を活用することで、仕事の内容や必要なスキルを整理し、知識や態度といった細かい内容まで具体的に評価できます。

業種別、職種、職務別にスキルの整理が可能で、事務系職種から電気機械器具製造業やサービス業といった幅広い業種に対応しています。成果を挙げるための具体的な職務行動例も把握できるため、どのようなスキルや知識が必要かの確認ができます。人材育成計画を立案する助けとなるでしょう。

キャリアマップ

キャリアマップとは、職業能力評価基準を元に必要なスキルや知識を身に付けるための道筋を示したテンプレートです。各レベルに応じて習熟の目安が一目でわかるため、人材育成計画の立案に便利です。

キャリアマップを作成することでキャリア形成の道筋がわかり、目標設定と具体的な行動を促せます。また、上司と部下の間のコミュニケーションを活性化し、効率的にスキルの習得が可能です。

職業能力評価シート

職業能力評価シートとは、職務を遂行するうえで必要となるスキルが基準までクリアできているかどうかのチェックができるシートです。

チェック形式で、職種やレベル区分ごとに用意されています。職業能力評価シートを利用することで、自分や部下がどれくらいのスキルを持っているのか、何が不足していて補う必要があるのかが把握できます。

日本の人事部「育成計画書」

日本の人事部からダウンロードできる育成計画書は、社員の育成の際に内容を具体化してスケジューリングするためのテンプレートです。育成項目、必要スキル、現状評価、育成方法、成果の測定方法、達成度の6項目で表せます。

また、「育成計画の達成度を踏まえての問題点・課題」の項目や「今後取り組むべき育成テーマ」といった項目もあるため、評価をした後にどのように育成を進めていくべきかをまとめられます。

人材育成計画を立てる際のポイント

人材育成計画を立てる際のポイントは次のとおりです。

• 経営戦略と連動させる
• 現実的かつ段階的な目標を立てる
• システムを用いて管理・分析する

それぞれ解説します。

経営戦略と連動させる

人材育成計画と経営戦略を連動させることで、人材を最大限に活用できるようになり、効果的に計画を進められます。具体的には次のとおりです。

• 経営戦略と人材戦略の一体化
• 人材戦略を経営戦略に反映
• 経営層と人事部門の連携の強化

経営戦略と人材戦略を一体化させ、反映させることで人材を効果的に活用でき、経営戦略の実現性を高められます。また、経営層と人事部門の連携を強化することで、経営戦略と人材戦略の連動がしやすくなります。

現実的かつ段階的な目標を立てる

現実的かつ段階的な目標を立てることが人材育成計画を立てる際には重要です。あまりに達成が困難な目標を立ててしまうと、現状と理想のギャップが大きすぎて従業員のモチベーションが低下してしまいます。

たとえば、例年売上の成長が年間5～10％程度であるにもかかわらず「売上を前年の200%」といった目標を立ててしまうと、言われた従業員は最初から無理だと諦めてしまうかもしれません。したがって、「この目標なら頑張れば十分にできる」と思える目標を段階的に立てることが重要です。

また、具体的な目標にすることも大切です。抽象的な表現で目標を立ててしまうとイメージの共有が上手くいかずに、何をすればよいのかもあいまいになります。したがって、ゴールから逆算して具体的な目標を立てるようにしましょう。

システムを用いて管理・分析する

手動で人材育成計画を立てるのは難しく、従業員の育成状況を管理したり計画した内容の効果検証を行ったりするのはテンプレートを用いても手間がかかります。したがって、タレントマネジメントシステムを用いて管理・分析するのが効果的です。

タレントマネジメントとは、従業員の能力や資質、スキルを一元管理し、適材適所に配置したり育成を行ったりすることです。タレントマネジメントはそのためのサポートツールです。タレントマネジメントシステムには次のような機能が備わっています。

• 従業員データベースの作成
• スキル管理
• 研修管理
• 目標管理
• データ分析
• 配置シミュレーション

タレントマネジメントシステムは育成に関するさまざまな情報を一元管理できるため、人材育成計画立案の大きな助けです。次項で、おすすめのタレントマネジメントシステムを紹介します。

人材育成計画に役立つタレントマネジメントシステム7選

人材育成計画に役立つタレントマネジメントシステムを紹介します。それぞれの特徴をまとめているので、システム選びの参考にしてください。

カオナビは、従業員の個性や才能を発掘し、人材戦略を加速できるタレントマネジメントシステムです。今まで紙でまとめていたり、頭の中だけで整理したりしていた知識やスキルをデータとして整理できます。スキルを直感的に可視化できるため、自社の強みや不足している点の把握にも役立ちます。おすすめの動画講座を個別に表示する機能により、ひとりひとりに合わせた育成が可能です。

HRBrainは、人材データを一元化し、組織力向上の期待ができるタレントマネジメントシステムです。使いやすさを重視したユーザーインターフェース設計であるため、誰でも簡単に操作できます。既存システムとの連携も可能で、組織ごとの課題に合わせて連携するシステムを選べます。

HRMOSタレントマネジメントは、人材戦略を経営に落とし込めるタレントマネジメントシステムです。人材を適材適所に配置したり離職防止に役立つ機能を備えていたりします。従業員のコンディションの把握が容易であるため、ひとりひとりが活躍できる環境の構築が可能です。また、キーワード検索を活用することで、条件に合った従業員をピックアップできるため、適切な配置に役立ちます。

SmartHRは、人事や労務の効率化から従業員のデータ活用までできるタレントマネジメントシステムです。キャリア台帳に従業員データの集約が可能で、蓄積したデータは人員配置といった業務に活用できます。従業員ひとりひとりの評価やスキル、エンゲージメントが可視化されます。

タレントパレットは、人事に必要な機能を備え、科学的人事が行えるタレントマネジメントシステムです。人材データを社員を紐づけて一元管理が可能です。人材配置のシミュレーションが行えるため、人材の能力を最大限に発揮できます。社員のエンゲージメントやモチベーションの把握ができるため、早期フォローも可能です。

スキルナビは、組織内のスキル活用と成長機会を最大化できるタレントマネジメントシステムです。詳細なスキル評価機能により、社員一人ひとりの能力を正確に測定し、個別の成長ニーズに合わせた育成プランを構築可能です。多様なデータ分析機能も搭載しており、業務パフォーマンスをリアルタイムで把握し、戦略的な人材配置や育成に役立てることができます。

ミイダスは、包括的なサーベイとスキル開発機能を提供するタレントマネジメントシステムです。運用しやすい組織サーベイ機能を通じて、社員の悩みや課題を可視化し、効率的な改善をサポートします。豊富な研修コンテンツを活用したスキルアップが可能で、200以上の講座が無料で受講できるため、社員の能力を効果的に向上させます。

COMPANY Talent Management シリーズは、人材情報の可視化から分析、育成、配置までサポートする統合タレントマネジメントシステムです。目標設定や1on1などの管理に対応しているほか、スキルデータをもとにした研修計画や活躍人材の分析も行え、組織と個人のデータにもとづいた人材育成をサポートします。

人材育成計画を実行し、変化に強い組織へ

人材育成計画とは、長期的な視点を持って人材を成長させるための計画です。企業の成長に「このような人材が必要」といった定義をしたうえで、長期的に育成を行う必要があります。

人材育成計画を立てる際は現状の組織状態を把握し、課題を浮き彫りにする、課題解決に必要なスキルを明確にする、施策を立案して計画書を作成するといった手順が有効です。

計画の立案にはテンプレートやタレントマネジメントシステムといったツールを利用するとスムーズに立案できます。ツールを選ぶ際は各ツールを比較し、気になるツールの資料をダウンロードして自社に合うのか検討してみましょう。

タレントマネジメントシステムは、次の記事でも詳しく紹介しています。