旅費交通費とは?交通費と旅費の違いや仕訳方法
旅費交通費は、使った電車代や出張交通費以外の代金が含まれるケースがあり、正確な仕訳を行うことにより、今よりも多くの費用が損金算入可能かつ非課税になることがあります。
どういった場合に旅費交通費として認められるのか、そしてどのような経費が非課税になるのかをわかりやすく、実際の仕訳例を交えながら説明します。
また、旅費交通費や経費の仕訳が手間だと感じている方のために、記事の最後に精算の作業を楽にするクラウドサービスも紹介しています。
本記事で掲載している旅費交通費精算システムや、紹介しきれなかった機能・価格をもっと詳しく比較したい方はこちらからダウンロードできます。ぜひツール選定の参考にしてみてください。
目次を閉じる
- 旅費交通費とは
- 旅費と交通費の違い
- 旅費交通費を正確に仕訳するメリット
- 旅費交通費に含まれない費用
- 旅費交通費の仕訳のポイントは移動の目的
- 社員旅行の仕訳
- 旅費の仕訳
- 出張費の仕訳
- 出張費の定義
- 出張仮払金とは
- 出張旅費規程とは
- 出張旅費規程の作成の注意点
- 出張旅費規程の規定項目
- 交通費の仕訳
- 通勤手当における注意点
- 通勤手当でも課税されてしまうケース
- マイカー・自転車通勤の通勤手当
- Suica、PASMOなどの交通系ICカードの仕訳
- ガソリン代は旅費交通費?
- 旅費交通費精算を効率化する経費精算システム
- 楽楽精算
- Concur Expense
- WAVE225旅費・経費精算/稟議
- AI Travel
- 経費精算システムで旅費交通費を正確に仕訳しよう!
- BOXILとは
旅費交通費とは
旅費交通費とは、業務に必要な移動や出張にかかった交通費や旅費などの経費のことです。役員や従業員が業務で利用した交通機関の運賃や、国内の出張に必要な諸経費を処理する費用の勘定科目で、従業員が出張した際に支払う出張の日当も旅費交通費で会計処理します。
また、旅費交通費は税法上、原則損金算入かつ課税仕入に該当し、仕入税控除額の対象になります。
注意したいポイントは、仮に従業員が同じ場所に行ったとしても、目的次第で費用が旅費交通費になる場合と、それ以外の勘定科目になる場合が変わる点です。
旅費と交通費の違い
旅費交通費は勘定科目としては一つですが、交通費に分類できる費用については実費精算のみが認められているのに対し、旅費に分類できる費用は、出張旅費規程を作成することで定額支給できるようになるという違いがあります。
出張費における出張旅費規程については後程解説します。
まず、旅費と交通費の違いを大まかに述べると次のようになります。
- 近距離の移動=交通費
- 遠距離の移動=旅費
具体的にどれくらいの距離からが旅費かという点は定められていませんが、一般的には勤務地から出張先までの距離で定義して、100~150kmを一つの目安とする企業が多いようです。
旅費交通費を正確に仕訳するメリット
仮に旅費交通費の経費が、交際費や福利厚生費に含まれると損金算入できず、また従業員側でも所得税・社会保険料の対象になるので、正確な仕訳が求められます。
要は旅費交通費を正確に仕訳すれば、会社側でも従業員側でも余分な税金を抑えられるのです。
- 会社側:旅費交通費が経費扱いになり、法人税軽減・社会保険料の負担軽減
- 従業員側:所得税の負担軽減・社会保険料負担軽減
また、旅費交通費を正確に仕訳していない場合、法人税や従業員の年末調整を正しく計算できなくなる可能性もあります。
旅費交通費に含まれない費用
旅費交通費の仕訳のポイントは移動の目的
旅費交通費の詳細に入る前に、一見旅費交通費に含まれそうに見えるものの、実は旅費交通費に含めてはいけないものを紹介します。
仕訳の際、一番のポイントになるのは、移動の目的です。移動の目的が、日常の業務と強く関連しているものは旅費交通費に含まれますが、関連性が弱いものについてはその他の勘定科目になることが多いです。
たとえば、次の費用は旅費交通費ではありません。
用途 | 仕訳 |
---|---|
取引先や業界団体の懇親会に参加および招待する際の旅費 | 会議費または交際費 |
不特定多数の消費者の懇親会や展示会に参加および招待する際の旅費 | 広告宣伝費 |
取引先の接待のための送迎および役員・従業員の移動に使ったタクシー代 | 交際費 |
業務に関連する研修会への参加 | 研修費 |
研修旅行 | 研修費または福利厚生費 |
研修旅行が損金算入できる研修費にあたるか、損金算入できない福利厚生費にあたるかは、どの程度業務に関連性があるかに加え、観光をどの程度行っているかが関係しています。
次のような旅行は福利厚生にカウントされる可能性が高いです。
(1)観光渡航の許可をもらっている旅行
(2)旅行あっせんを行う者が行う団体旅行に応募して参加する旅行
(3)業界団体主催の旅行で、主として観光目的と認められる旅行
社員旅行の仕訳
社員旅行の旅費は、福利厚生費としてカウントされ、損金算入すら許されません。
ただし、下記のような例外があります。
その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額であり、少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。
(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること
(2)旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること
出典:国税庁「 No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
たとえば次のような旅行は、給与や交際費に仕訳して適切に処理する必要があります。
(1)役員だけで行う旅行
(2)取引先に対する接待、供応、慰安のための旅行
(3)実質的に私的旅行と認められる旅行
(4)金銭との選択が可能な旅行
旅費の仕訳
まず金額が大きく、節税ポイントも多数ある旅費の仕訳について説明します。出張が頻繁にある会社の方や個人事業主の方は参考にしてください。
出張費の仕訳
旅費に区分される代表格であり、会社でかかるコストの大きな経費の一つが出張費です。出張費について税金を支払いすぎていないでしょうか? 出張費を正確に仕訳していない場合、法人税や従業員の年末調整を正しく計算できなくなる可能性もあります。
出張費を旅費として仕訳するためには、出張旅費精算書の提出が必要です。出張するたびに従業員が提出して、会社で保管しておかなければいけません。
出張旅費精算書については、BOXILで無料テンプレートを公開しているのでぜひ活用してみてください。
出張申請書のテンプレートもあります。
実費精算の場合には、出張旅費精算書の裏面にレシートを貼付します。
出張費の定義
一口に出張費といっても旅費だけではなく、宿泊や食事など出張に伴う費用も含まれます。
- 出張旅費(電車代・航空運賃・有料道路通行料・駐車場代・タクシー代など)
- 宿泊費
- ガソリン代
- 昼食などの飲食代
- 赴任旅費(支度料)
- 出張手当(日当)
内訳のうち、出張旅費以外の費用を精算しわすれないように注意が必要です。
出張仮払金とは
出張する従業員の立替の負担を軽減し、出張旅費相当分を前もって支給しておくのが「出張仮払金」です。
この時の記帳は、事前の概算払いの段階では仮払金で記帳し、金額が確定後に仮払金から旅費交通費へ振りかえます。
仕訳例
出張仮払金として10万円を支給した場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仮払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
その後、出張から従業員が帰ってきて費用清算。内訳として旅費交通費で6万円、交際費で3万円を使用し、1万円を使わずに残した場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
旅費交通費 | 60,000 | 仮払金 | 100,000 |
交際費 | 30,000 | ||
現金 | 10,000 |
内訳として、旅費交通費で6万円、交際費で5万円を使用し、1万円の精算が追加で必要になった場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
旅費交通費 | 60,000 | 仮払金 | 100,000 |
交際費 | 50,000 | 現金 | 10,000 |
出張旅費規程とは
出張のたびに、個人的な出費を選り分けて精算を行うことは、経理の方にとっても出張した従業員にとっても手間です。そんな手間をなくしてくれるのが、「出張旅費規程」です。
出張旅費規程は出張にかかる諸経費の取り扱いを定めた規程で、多くの場合は就業規則の細則で定められます。
出張旅費規程のメリットは次のとおりです。
出張日当が支給できる
出張先での食事代、旅費・宿泊費以外の雑費に対して日当を支給できます。こちらの手当は通常の給与と異なり、非課税所得です。宿泊を伴う出張に限らず、日帰り出張でも手当を支給できます。
日当が経費として認められることで会社側で節税でき、個人も非課税で日当を受け取れるので、二重に節税できます。
出張旅費規程 | 有 | 無 |
---|---|---|
出張旅費 | 旅費交通費(実費/定額、非課税) | 旅費交通費(実費のみ、非課税) |
宿泊代 | 旅費交通費(実費/定額、非課税) | 旅費交通費(実費のみ、非課税) |
日当 | 旅費交通費(実費/定額、非課税) | 給与(実費のみ、課税) |
出張旅費規程を作成せずに出張手当を出してしまうと税務調査の際に、経費が否認されてしまう可能性があるので注意してください。
実費精算をしなくていい=一定の要件で定額支給できる
高いホテル泊まっても安いホテルに泊まっても、払われる額が同じなら不公平感はないでしょう。しかも安いホテルに泊まって、浮いた分の差額はお小遣いにできます(非課税)。
定額になることで会社としては費用の見積もりもしやすくなります。
経費精算の手間がかからない
実費清算ではないのでいちいち領収書を確認して、個人的な費用は差し引いて、といった手間がなくなります。
出張旅費規程の作成の注意点
出張旅費規程の作成の際には、注意しなければいけない点もあります
全従業員が対象
出張旅費規程は全従業員を対象としなければいけません(宿泊費や日当の金額設定を役職ごとに変更することは問題ありません)。
金額の設定
同業種・同規模の他社と比較して高すぎる旅費設定も認められません。税務調査次第ではありますが、合理的に考えて高すぎる旅費は避け、一般常識範囲内で設定しましょう。
出張旅費規程の規定項目
出張旅費規程については、インターネット上にダウンロード可能なテンプレートが数多くあるので、その中で使いやすそうなものを選んで土台とするのがよいでしょう。
出張旅費規程で定めた方がよい規定事項について紹介します。
1. 適用範囲
前述のとおり、全従業員に適用することが必要ですが、注意しなければいけないのが、正社員以外の従業員に対する規定です。正社員以外の従業員に関する規定を入れて、全従業員にどこまでが含まれるかを明確にしましょう。
2. 旅費の種類
旅費の中に何が含まれるかを規定します。一般的には交通費、宿泊費、食費、日当などです。
3. 役職ごとの支払額
社長・役員から部長や一般従業員まで、利用できる交通手段をまとめましょう。鉄道、航空機、船舶など、移動手段ごとに規定するケースが多いようです。
また、移動の際に自家用車を利用した場合はどうするかについても、規定しておくとトラブルが少なくなります。
4. 出張手続き
事前の書類、出張申請書の提出を義務付けましょう。
5. 赴任旅費
必要に応じて赴任に関する旅費支払いも規定しておきましょう。
6. 日帰り出張と宿泊を伴う出張の日当
一般的には日帰り出張の日当は、宿泊を伴う出張の日当の半額と規定することが多いようです。
交通費の仕訳
旅費よりさらに身近な交通費の仕訳について紹介します。
たとえば、交通費の仕訳は次のようになります。
仕訳例
移動で使用したタクシー代1,000円を精算する場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
旅費交通費 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
通勤手当における注意点
交通費に含まれる費用でおそらく、多くの方に関係するのが通勤手当でしょう。
通勤手当は原則非課税ですが、一定額を超えると課税されてしまうので注意が必要です。
次表は、国税庁から発表されている通勤手当の非課税金額一覧です。
区分 | 非課税金額 |
---|---|
交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 150,000円) |
自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高額 31,600円) |
交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度 150,000円) |
交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額と2の金額との合計額(最高限度 150,000円) |
出典:国税庁「 通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
上記の「合理的な運賃等の額」とは、最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路および方法による運賃または料金の額とされています。新幹線通勤は認められる一方、グリーン車の料金は含まれないことが、国税庁の「所得税基本通達」でも明記されています。
通勤手当でも課税されてしまうケース
しかし気を付けていただきたいのは、通勤手当であっても課税されてしまうケースがあることです。
それは、給与に加算される形で通勤手当が支払われる場合です。通勤手当として基本給から区分されていることが非課税対象となる条件になっているのです。
また会社によっては通勤距離に関係なく、一定額を支払っているケースもあるかと思いますが、このような支給の仕方でも課税対象になってしまいます。経理の方は気を付けてください。
マイカー・自転車通勤の通勤手当
マイカー・自転車通勤にも通勤手当が認められます。
マイカーで通勤している人の非課税となる1か月あたりの限度額は、片道の通勤距離に応じて、次のように定められています。
片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
---|---|
2キロメートル未満 | (全額課税) |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
55キロメートル以上 | 31,600円 |
出典:国税庁「 通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
Suica、PASMOなどの交通系ICカードの仕訳
多くの従業員が利用している交通系ICカードですが、現状の勘定科目ではICカードに対応しきっておらず、チャージ分を交通費としてはみなせません。
「貯蔵品」という勘定科目を使用する例も散見されますが、実態を考えると「仮払金」を使用した方が自然でしょう。
仕訳例
Suicaに5,000円をチャージした場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仮払金 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
Suicaを1,000円分使用して移動した場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
旅費交通費 | 1,000 | 仮払金 | 1,000 |
ガソリン代は旅費交通費?
案外気になっている方が多いと感じるのは、仕事で使う車両のガソリン代の仕訳でしょう。
いわゆる消耗品ではありますが、もしかしてこれも旅費交通費に含まれる?と思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
しかしその他にも「車両費」、「車両関係費」、「燃料費」など、複数の候補が勘定科目の中にはあります。
結論からいうと、ガソリン代について明確にこの勘定科目で仕訳しなければならない決まりはなく、上記に挙げたような勘定科目で仕訳している分にはとくに問題ありません。
企業に勤めている方は社内の方針、慣例に従っていただくのがよいでしょう。
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