給与明細の書き方・見方とは?Web作成 - テンプレートも紹介
従業員に対して給与を支払うのは法律で決まっていますが、給与の詳細が書かれた給与明細に関しても発行義務があることをご存じですか。
近年は紙から電子データに移行している企業も増え、給与明細作成に給与計算ソフトを利用している企業も多いでしょう。
この記事では、給与計算の方法と給与明細作成のポイントを解説し、便利なテンプレートも紹介します。すでに給与計算ソフトを比較検討している方は、次の記事もあわせてご参照ください。
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給与明細の無料テンプレート
ボクシルでは、Excelで必要な箇所を記入するだけで作成できる給与明細テンプレートを、無料・登録不要でダウンロードできます。必要な箇所に数値を入力すると、差引支給額を自動計算してくれます。封筒に入れて手渡しする場合は、窓付き封筒なら宛名を枠に合わせて印刷すれば、渡し間違えも防止できるでしょう。
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給与明細とは
給与明細は給与の内訳を記載したものです。支払われる給与や手当のほかに、健康保険や年金などの控除額、出勤日数や有休消化日数からなる勤怠情報が記載されています。
給与明細は発行義務あり
給与明細は、所得税法で給与明細書の交付が義務付けられており、さらに健康保険法、厚生年金保険法、労働保険徴収法で社会保険料の計算書の発行が義務付けられています。
給与明細の構成例
一般的な給与明細の構成項目は次のようになります。
項目 | 詳細 |
---|---|
氏名 | 社員ごとに社員番号、所属、氏名などが明記され誰の給与明細書なのかを明らかにします。 |
勤怠 | 支給の計算の根拠となる勤怠では、出勤日数、有給休暇、欠勤数や残業時間などが記載されます。 |
支給 | 支給項目では、基本給と各種手当(家族手当、住宅手当、残業代、役職手当、通勤手当など)に支払い項目を分けるのが一般的です。 |
控除 | 控除の項目では、健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税などがあります。 |
差引支給額 | 差引支給額とは端的にいうと「手取り給与」のことであり、支給の項目の総額から控除項目の総額を引いたものです。 |
社員番号、所属、氏名
誰の給与明細書なのかを表示するため、社員番号や所属、氏名を記載します。
勤怠
支給の計算の根拠となる勤怠では、出勤日数、有給休暇、欠勤数や残業時間などを記載します。
普通残業・深夜残業・休日出勤・休日深夜では、労働基準法の割増賃金支払いの義務があり、支給の項目での計算の根拠となるものです。欠勤日数、遅刻早退の日数に応じて支給項目の基本給を計算します。
支給
支給項目では、基本給と各種手当(家族手当、住宅手当、残業代、役職手当、通勤手当など)に支払い項目を分けるのが一般的です。
基本給とは各種手当を除いた基本賃金のことです。
ここに、課長、係長、主任といった役職者に対する役職手当、扶養家族をもつ従業員に支給する家族手当、通勤にかかる費用を補填する通勤手当といった各種手当が加わります。
通勤手当は電車をはじめとした公共機関を利用する場合は15万円までが非課税の対象となります。また、自家用車で通勤する場合には、通勤距離数に応じて非課税限度額が決まっています。
片道の通勤距離 | 1か月の非課税限度額 |
---|---|
2km未満 | 全額課税 |
2km以上10km未満 | 4,200円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
※出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(2023年12月14日閲覧)
時間外手当(残業代)の具体的な計算としては、基礎賃金(基本給+各種手当)をもとに、時間単価を計算します。
1か月60時間以下の法定時間外労働には25%の割り増し賃金が発生します。また、1か月60時間を超える法定時間外労働に対しては、2023年4月1日からすべての企業で50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
※出典:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(2023年12月14日閲覧)
控除
控除の項目には、健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税などがあります。
健康保険
健康保険は、会社が加入している保険組合によって掛け率が異なります。保険組合ごとに健康診断の受診時に補助金が出されるといったバリエーションがあります。
厚生年金
厚生年金は、国民年金と会社員のための追加制度である厚生年金の2つの年金制度の保険料が合算されて、厚生年金の保険料として天引きされます。
健康保険・厚生年金では、毎月の給料といった報酬の月額を、区切りのいい幅で区分した標準報酬月額と標準賞与額から保険料を計算します。
計算にあたっては、都道府県ごとの「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を用いて計算が可能です。
※出典:全国健康保険協会「令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)」(2023年12月14日閲覧)
介護保険
介護保険制度では、40歳以上になると介護保険料を負担します。介護が必要な方が適切な介護サービスを受けられるための負担金です。
雇用保険
雇用保険は、会社員の働く環境を守るための保険で、失業した場合に支給されます。対象となるのは、税金や社会保険料などを差し引く前の総賃金で、通勤手当といった所得税の計算では非課税の手当も対象となることに注意が必要です。負担額については、会社側と従業員側で半分ずつ分けられます。
所得税
所得税は、個人の所得に対して課される税金です。毎月の給与から天引きされる所得税は概算であり、年末調整時に正式な納税額が計算され12月の給与で調整されます。
12月の給与で概算していた所得税が正式な納付額よりも多いと還付され、少ないと足りなかった分を徴収されます。
住民税
住民税は、地域社会でかかる費用を住民に分担してもらう税金です。前年度の所得に対して課税された住民税が天引きされます。
前年度の所得に対して課税されるので、社会人1年目の方で、前年度所得がなかった方には課税されません。この住民税の額については、居住地の自治体から送られてくる「住民税決定通知書」の額をもとにします。
差引支給額
差引支給額とは、一般的には手取り給与と呼ばれるもので、支給の項目の総額から控除項目の総額を引いたものです。
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給与明細を作成するときに必要なもの
給与明細を作成するときに必要なものとしては、勤怠データに必要となる「タイムカード」、控除項目の計算に必要となる「健康保険と厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」、「住民税決定通知書」、「健康保険と厚生年金保険の保険額表」、「雇用保険率表」、「給与所得の源泉徴収税額表」があります。
このうち、「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」は全国健康保険協会のWebページ、「雇用保険率表」は厚生労働省のWebページ、「給与所得の源泉徴収税額表」は、国税庁のWebページでダウンロードが可能です。表を見ながら、控除額の計算を行います。
給与計算と明細書作成の流れ
給与計算と明細書を行う流れや作り方について紹介します。給与明細は、次の手順で作成します。
- 労働時間の集計
- 時間外手当の計算
- 諸手当の計算で総支給額の算出
- 社会保険料の計算
- 税金(所得税、住民税)の計算
- 控除額と総支給額の記載
労働時間の集計
タイムカードの勤怠情報をもとに、1か月分の従業員の勤務日数や労働時間を集計します。遅刻や早退がある場合は、就業規則や給与規定で定められた規定を踏まえて計算しましょう。
なお、2019年4月から適用された「働き方改革関連法」により、「労働時間の客観的な把握」が義務付けられ、紙のタイムカードや表計算ソフトといった自己申告型の方法による勤務時間の把握は厳格化されています。
時間外手当の計算
集計した労働時間から、「普通残業」「深夜帯の労働」「法定休日の休日出勤」を集計し、時間外手当を計算します。時間外手当を算出する計算式は、次のとおりです。
【時間外手当 = 時間外労働時間 × 1時間あたりの賃金 × 割増率】
割増率は、時間外労働、休日出勤、深夜労働の種類によって異なります。
- 1か月60時間以下の時間外労働:25%
- 1か月60時間超の時間外労働:50%
- 休日出勤(法定休日に労働):35%
- 深夜労働(午後10時から翌午前5時までの労働):25%(時間外労働の割増率)+25%(深夜労働の割増率)= 50%
上記は一般的な例で、企業によっては就業規則や労使協定で、時間外手当の計算方法や割増率を定めている場合があります。
※出典:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(2023年12月14日閲覧)
※出典:厚生労働省「Q.法定労働時間と割増賃金について教えてください。」(2023年12月14日閲覧)
諸手当の計算で総支給額の算出
給与の総支給額を算出するために、諸手当を計算します。
基本給と時間外手当に、通勤手当、資格手当、家族手当といった諸手当を計算して加算すると、総支給額の算出が可能です。通勤手当は、公共交通機関を利用する場合には、月に15万円まで非課税になります。
※出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(2023年12月14日閲覧)
社会保険料の計算
健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険といった社会保険料の計算をします。
健康保険、厚生年金、介護保険料は、標準月額報酬に保険料率を掛けて算出できます。標準報酬月額とは、4月から6月までの3か月間に従業員に支給した給与の平均額です。雇用保険は、総支給額に雇用保険法で定められた所定の料率を掛けて計算する必要があります。
そして、算出した各種保険料を給与明細の該当欄に記載します。保険料には事業主の負担分が発生しますが、給与明細には従業員が負担する金額のみを記載しましょう。
税金(所得税、住民税)の計算
所得税、住民税といった税金の計算をします。
所得税額を算出するためには、まず給与の課税対象額を計算する必要があります。
【課税対象額 = 総支給額 - 非課税支給額(通勤手当や出張手当など)】
所得税額は、課税対象額から社会保険料を差し引いた金額を「源泉徴収税額表」に当てはめることで算出可能です。源泉徴収税額表は、所得金額や扶養控除などの状況に応じて、所得税額が定められています。
また、住民税については、自治体から発行された「住民税決定通知書」を参照して、明細の該当欄に記載します。
控除額と総支給額の記載
それぞれの控除額の金額と合計控除額を給与明細に記載します。
控除額は「所得税 + 住民税 + 社会保険料」になります。労使協定を締結し、社内預金の積立を行っている場合には、積立額も控除対象として加算が可能です。
総支給額は、基本給、各種手当、交通費などの合計額となります。
給与明細には総支給額から控除額を差し引き、差引支給額を算出したら、該当欄に記載します。差引支給額は、従業員の口座に振り込まれる最終的な支給額のことです。
給与明細の発行
給与明細の作成ができたら、印刷して従業員に渡します。
給与明細の封筒
封筒に入れて手渡しする場合は、給与明細がA4サイズなら長形3号窓付きか洋長形3号窓付きの封筒、B5サイズなら長形2号か長形4号に入れるのがおすすめです。窓付き封筒なら宛名を枠に合わせて印刷すれば、工数削減と渡し間違え防止にもなります。
給与明細の保管
企業側には給与明細を保管する義務はありません。しかし、給与明細を作成するのに必要な情報を記した書類は保管義務があります。
3年間保管が必要な書類
次の書類については労働基準法にもとづいて5年間保管(当分の間は3年)が必要です。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する書類
※出典:「事業主の皆さま、労働者の皆さま未払賃金が請求できる期間などが延長されています」(2023年12月14日閲覧)
7年間保管が必要な書類
次の書類については、7年間保管が必要です。
- 給与所得者の基礎控除申告書(2020年分以降)
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 所得金額調整控除申告書(2020年分以降)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 など
※出典:厚生労働省「No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」(2023年12月14日閲覧)
従業員側の給与明細保管
従業員側であっても、給与明細を保管することは重要です。会社が年金の納付を怠っていないか確認したり、自身で確定申告を行ったりする場合もあるでしょう。従業員は、次のような目的で給与明細が必要となることがあります。
- 年金の納付状況の確認
- 確定申告
- 失業給付の申請
- 残業代の未払い確認
未払い給与や未払い残業代の請求期限は5年(当分の間は3年)※です。そのため、5年間は保管することが必要となります。また、年金に関しては数年経過した後に過去未納分について確認されることもあるので、証明のために給与明細を保管しておくと安心です。
給与明細は、個人情報を含む重要な書類です。紛失や盗難を防止するために、適切に保管するようにしましょう。
※出典:「事業主の皆さま、労働者の皆さま未払賃金が請求できる期間などが延長されています」(2023年12月14日閲覧)
システムの導入で給与計算・明細発行を効率化
給与明細をWebで発行する
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