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電子契約できない契約書類は?できる書類との違い

最終更新日:(記事の情報は現在から103日前のものです)
電子契約ができない書類は、事業用定期借地契約書をはじめとしていくつか存在します。公正証書での発行を義務付けられていたり、相手方の事前承諾が必要だったりするため、該当する場合は紙で契約書を発行しなければなりません。電子契約できない書類を解説し、電子契約ができないケースの例も解説します。

電子契約ができない書類の例

契約書は2022年の宅地建物取引業法改正と、2023年の特定商取引法改正により、ほぼすべて電子化が可能となりました。しかし、例外として電子化できない契約書が存在します。

電子化できない契約書は次のとおりです。

  • 事業用定期借地契約書
  • 任意後見契約書
  • 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
  • 農地の賃貸借契約書
  • 建設工事の請負契約や下請との受発注書面をはじめとする一部の書類

上記の契約書は公証人法で公正証書、すなわち紙での作成が義務付けられています。また、建設工事の請負契約は、相手方の事前承諾がなければ電子契約ができないため紙での契約が必要です。

電子契約ができる書類の例

電子契約ができる書類の例は次のとおりです。

  • 業務委託契約書
  • 秘密保持契約書
  • 発注書(発注請書)
  • 売買契約書
  • 請負契約書
  • 雇用契約書
  • 賃貸借契約書
  • 代理店契約書
  • 保証契約書
  • サービス利用契約書
  • 誓約書
  • 顧問契約書

2021年5月に成立し、同年9月に施行されたデジタル改革関連法によって、多くの場面で書面の電子化が可能になり、現在ではほぼすべての契約書での電子契約が可能です。

また、不動産売買・賃貸借等に関する契約書や重要事項説明書はこれまで電子化が認められていませんでした。しかし、宅地建物取引業法改正借地借家法等が改正され、2022年5月18日以降は電子化が可能となりました。

上記の12種類の書類以外にも、相手方の承諾や希望を得ることで電子化が可能な書類があります。

相手方の承諾が必要な契約書

電子契約する際に相手方の承諾が必要な契約書は次のとおりです。

契約書 根拠条文
建設工事の請負契約書 建設業法19条3項、同法施行規則13条の4
設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書 建築士法24条の7第3項
設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面 建築士法24条の8第2項
下請事業者に対して交付する「給付の内容」等記載書面 下請代金支払遅延等防止法3条2項
不動産売買・交換の媒介契約書 宅建業法34条2第11項、同12項
不動産売買・賃貸借契約の重要事項説明書 宅建業法35条8項、同9項
不動産売買・交換・賃貸借契約成立後の契約等書面 宅建業法37条4項、同5項
定期建物賃貸借の説明書面 借地借家法38条3項、同4項
マンション管理業務委託契約書 マンション管理適正化法72条、73条
不動産特定共同事業契約の成立前交付書面・成立時交付書面 不動産特定共同事業法第24条、第25条
投資信託約款の内容等を記載した書面 投資信託及び投資法人に関する法律5条
貸金業法の契約締結時交付書面 貸金業法16条の2第4項
貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面 貸金業法16条の3第2項
貸金業法の受取証書 貸金業法16条の3第2項
割賦販売法3条2項・3項・同法4条各項の書面 割賦販売法4条の2
割賦販売法35条の3の8・同法35条の3の9第1項・3項の書面 割賦販売法35条の3の22
旅行契約の説明書面 旅行業法12条の4、12条の5、同法施行令1条等

たとえば不動産売買の重要事項説明書はこれまで契約者の意向が変わった、電子契約書が閲覧できないといった、消費者トラブルを防止するために紙での交付を義務付けられていました。

しかし、2021年3月から2022年5月17日まで行われた事業登録を行っている業者は一定条件を満たせば電子書面の交付を認める社会実験を経て、2021年3月より本格的に運用が開始されました。

表に記載した他の書類も同様に相手方の承諾さえあれば電子化が可能です。

相手方の希望が必要な契約書

電子契約する際に相手方の希望が必要な契約書は次のとおりです。

契約書 根拠条文
労働条件通知書面 労働基準法15条1項、同法施行規則5条4項
派遣労働者への就業条件明示書面 労働者派遣法34条、同法施行規則26条1項2号

たとえば労働条件通知書は労働者保護の観点からこれまで書面での交付を法律で義務付けられていました。この書面の交付の義務は労働基準法施行規則の第5条に明記されています。しかし、制定されたのが昭和22年で、施行後長らく改訂されませんでした。

したがって、規制のない雇用契約は電子契約ができるにもかかわらず、労働条件通知書は書面交付しなければならないという矛盾した状態でした。

この矛盾した状態を解消するために2018年に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」によって、電子化が可能となりました。ただし、「労働者が希望したこと」が条件であるため、本人の意向を確認せずメールにて労働条件を通知することは省令で問題になる可能性があります。

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電子契約ができない理由は?

電子契約ができない書類がある理由は、契約の当事者間のパワーバランスや情報格差に有利不利が生じている場合があるからです。このような場合は電子契約ができないケースが多いです。

たとえば、次の間柄が挙げられます。

  • 事業者と消費者
  • 元請と下請
  • 雇用主と被雇用者
  • 賃貸と貸借

これらに当てはまるケースを解説します。

公正証書化する義務のある契約がある

公正証書化する義務のある契約がある場合は電子契約ができません。公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が権限に基づいて作成する公文書のことです。公正証書は紙面で作成され、何かの契約をする際に用いられます。強い証明力があり、人々の大切な権利を守るために重要な役割を果たす証明書です。

金銭の支払いを例に挙げると、きちんと契約内容に書かれた業務を行ったにもかかわらず報酬が支払われなかった場合、本来であれば裁判で確定判決が必要な口座差押のような強制執行の申し立てが行えます。

具体的に公正証書化する義務のある契約書は次の4つです。

  • 事業用定期借地契約
  • 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
  • 任意後見契約書
  • 特定商取引(訪問販売等)の契約等書面

今後、法律が改正されて電子化できる可能性はありますが、現在は公正証書化の義務があります。

消費者トラブルの防止

消費者トラブルを防止するために公正証書が義務付けられているケースがあります。公正証書を残すことでトラブルが起きたときに問題を解決しやすくなるからです。

たとえば、投資信託で「必ず儲かると言われたから投資したのに大損した」というトラブルがあっても、公正証書がなければ証明ができません。このようなトラブルを避けて消費者を守るために、公正証書が義務付けられている書類があります。

また、「不動産契約における重要事項説明書」の説明を受けるにあたって、電子契約するつもりだったが途中で気が変わったり、電子契約書が閲覧できなかったりのトラブルが発生すれば公正証書へ切り替えなければなりません。

これらは情報に差があることが多いため、消費者を守るためにも公正証書が義務付けられています。

書面の電子化に相手方の承諾や希望が必要なものがある

書面の電子化には、相手方の承諾や希望がないとできない書類があります。

たとえば、建設工事請負契約は相手方の承諾を得られた場合のみ、電子契約が利用できます。印紙代が不要になったり保管の手間が減ったりするなどメリットが多いですが、承諾を得るための手間が増えるうえに、承諾が必要な書類はまだ多いため、扱う書類が該当していないか確認しておきましょう。

また、労働条件契約書や派遣労働者への就業条件明示書面は相手方の希望がないと電子契約ができません。

現在は多くの方がスマートフォンを持っているため、相手方から書面での契約書の交付を希望されるケースは少ないと予想されますが、書面でも対応できるように注意するのが大事です。

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電子契約ができない契約書とできる契約書の理解をしておこう

2021年に施行されたデジタル改革関連法によってほとんどの契約書が電子化できるようになりました。

しかし、事業用定期借地契約や特定商取引(訪問販売等)の契約などの書面は、消費者を守るために公正証書の発行が法律で義務付けられています。

電子契約には電子署名法や電子帳簿保存法など、電子化するために覚える必要がある法律があるため、電子契約書を導入するのであればそちらも確認しておくようにしましょう。詳しくはこちらの記事で解説しています。そちらも参考にしてください。

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