CRM戦略とは?メリットや立案手順と企画推進のポイント
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- CRM戦略とは?
- CRM戦略が必要とされる理由
- 消費者の行動が変化しているため
- 消費者ニーズの移り変わりも激しいため
- 競合との差別化が難しいため
- リピーター育成の重要度が上がっているため
- CRM戦略のメリット
- 顧客満足度が向上する
- LTVを最大化できる
- データドリブンな経営ができる
- 業務が効率化し売上を伸ばしやすい
- CRM戦略を企画し推進する手順
- 課題を分析し目的を明確にする
- 目的にマッチするペルソナを設定する
- カスタマージャーニーを想定する
- 顧客ニーズを把握して企画を立てる
- 部署ごとに連携しながらCRMを実行する
- PDCAを回してよりよいCRMに改善する
- CRM戦略を立案するときのポイント
- 事前に潤沢な顧客データを用意する
- 部署を横断してCRMを実行する
- 成長見込みのある顧客から始める
- 長期的な視点でCRMに取り組む
- 必要ならCRMツールを導入する
- CRMは戦略を立てて行おう
CRM戦略とは?
CRM戦略とは、CRM(Customer Relationship Management)をベースに顧客との良好な関係を築き、売上拡大や安定経営を実現するための戦略です。CRMは日本語で「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」と訳されます。
短期間に市場が劇的に変化することが当たり前になった現代のビジネス環境に、CRMは非常に有効です。CRMを通じて良好な関係を築いてロイヤルカスタマーになった顧客は、継続的に利益をもたらしてくれるため、不安定な市場環境でCRM戦略を用いて売上拡大や安定経営を目指すことは理に適っているといえます。
CRM戦略が必要とされる理由
CRM戦略が必要とされる理由には次のようなものがあります。それぞれの理由を詳しく解説します。
- 消費者の行動が変化しているため
- 消費者ニーズの移り変わりも激しいため
- 競合との差別化が難しいため
- リピーター育成の重要度が上がっているため
消費者の行動が変化しているため
CRM戦略が必要とされる1つ目の理由として、インターネットやスマートフォンの普及により、消費者の行動が大きく変容していることが挙げられます。
顧客が情報を得る手段はTVや新聞、ラジオなどのマスメディアから、インターネットやSNSを中心とするものに変化しています。また、ネット通販の一般化や新型ウイルスの流行により、実店舗での購買活動も苦戦を強いられている状況です。
消費者の行動が変化するのであれば、企業も消費者に対応するために適切な場所・タイミングで商品を提供しなければなりません。そこで、CRMを行っていれば最適な販売活動ができるため、CRMの重要性が増しています。
消費者ニーズの移り変わりも激しいため
CRMが求められるようになった背景には、消費者の行動だけではなく、ニーズが激しく移り変わっていることも挙げられます。
物品そのものだけではなく物品やサービスの体験を重視するケースや、安いものを大量に購入する時代からよいものをより長く大切に使う時代に変わるケースなど、価値観に変化が生じています。
単純にいいものを作れば売れる時代は終わり、店やサイトの雰囲気がよいことだけではなく、その商品を持っていることに対する周囲からのイメージで、物品購入を検討する人もけっして少なくないでしょう。
このように、消費者ニーズの移り変わりを把握し対応するため、商品やサービスの提供者も顧客と積極的に関係を構築し、ニーズの把握に努めなければなりません。つまり、現代はまさにCRMが活躍しやすい環境であり、CRM戦略が注目を集めていることも自然な状況であるといえるでしょう。
競合との差別化が難しいため
ユーザー行動が変化し、提供される商品が多い現代で競合との差別化は容易ではありません。そのような状況で、自社の製品やサービスを選んでもらうことは簡単ではないでしょう。
国内だけではなく国外の企業も競合になりうる現代では、製品やサービスのコモディティ化のスピードはこれまでに類を見ないほどです。そのような状況で継続的に商品を買ってもらうためには、良好な顧客との関係が不可欠です。
そのため、CRMがより重視され、経営の中にCRM戦略を組み込むことが増えていると考えられるでしょう。
リピーター育成の重要度が上がっているため
競合との差別化や新規顧客獲得の難化にともなって、リピーター育成の重要度が増しているため、CRMが重要視されている背景もあります。「1:5の法則」といわれるほど、新規顧客獲得は既存顧客維持よりもコストが大きくかかるとされます。
新規顧客は獲得費用が大きくかかるのにもかかわらず、利益率も低いことが一般的です。そのため、多くの企業が既存顧客のリピーター化、ロイヤルカスタマー化に重きを置き始めたことで、CRMの重要性についても再認識されている状況です。
CRM戦略のメリット
CRM戦略には次のようなメリットがあります。
- 顧客満足度が向上する
- LTVを最大化できる
- データドリブンな経営ができる
- 業務が効率化し売上を伸ばしやすい
顧客満足度が向上する
顧客満足度が向上することは、CRM戦略の最大のメリットといって過言ではありません。顧客満足度の向上は企業にとってメリットが多いためです。
たとえば、顧客満足度が向上すれば解約率が低下する可能性が高いでしょう。商品やサービス自体や、それらを提供する企業のサポートに満足していればサービスを解約する理由はありません。
また、満足度の高い商品やサービスは口コミで広まる可能性も高いです。口コミでサービス認知が広がれば、広告費が削減できたり、より低い獲得単価で新規顧客が獲得できたりするなどコスト面でのメリットも大きいです。
このように顧客満足度が高まることでさまざまなメリットに派生するため、CRM戦略で顧客満足度を高めることはそれ自体が大きなメリットといえます。
LTVを最大化できる
CRM戦略が成功すれば顧客満足度向上とともに、LTVの最大化も目指せます。
LTVとは「Life Time Value」の頭文字をとった略称で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。これはある顧客が取引を開始した際に、取引開始から終了までにもたらす利益を指す言葉です。LTVが高ければ高いほどロイヤルカスタマーに近いとされ、SaaS業界ではとくに重視される指標の1つです。
LTVは多くの企業で重要な指標で、LTVを最大化すれば収益構造はより安定するでしょう。顧客満足度を向上させ解約率の低下を目指し、LTVの最大化により収益構造を安定させることでより盤石な経営を目指せます。
経営に重要な顧客満足度とLTVをどちらも向上させられるものがCRMであるため、CRM戦略はメリットが大きいと考えられています。
データドリブンな経営ができる
CRM戦略を導入すれば、データドリブンな経営ができる点もメリットです。
これまでの経営やマーケティングは経験や勘など、個人のセンスによって行われていたため属人化が発生しやすい点が課題でした。
そこで注目を集めたものがデータドリブンな経営やマーケティングです。あいまいな基準で行われていた経営やマーケティングにおける意思決定をデータを用いて行うようにしたことで、再現性の高い意思決定や施策を実施できるようになりました。
業務が効率化し売上を伸ばしやすい
データにもとづいて施策判断を実施するCRM戦略では、業務を効率化し売上拡大を目指しやすいこともメリットです。
データにもとづかない営業やマーケティングの施策は再現性が低く、手探りの状態で行う施策も多いです。そのため、やみくもに多くの施策を実施する必要があり、施策の中には非効率的な手法も混在しているでしょう。
しかし、CRM戦略を用いて顧客データから判断すれば、必要な施策のみに注力でき業務が効率化するうえ、ある程度の再現性が見込めるため収益の見通しも立ちやすいでしょう。そのため、結果をある程度見越した戦略立案や投資などができ、売上を伸ばしやすいです。
CRM戦略を用いることで業務効率化を図れて、そのうえ売上拡大の見込みがある施策に投下するリソースを注力できることで、ムダのない投資ができることもCRM戦略のメリットといえるでしょう。
CRM戦略を企画し推進する手順
CRM戦略を企画し推進する手順は次のとおりです。
- 課題を分析し目的を明確にする
- 目的にマッチするペルソナを設定する
- カスタマージャーニーを想定する
- 顧客ニーズを把握し企画を立てる
- 部署ごとに連携しながらCRMを実行する
- PDCAを回してよりよいCRMに改善する
課題を分析し目的を明確にする
CRM戦略を導入する際、最初に行うべきことは課題の分析と導入目的を明確にすることです。
改善すべき課題や達成すべき目的、それを数値化したKPIがあいまいなままだと、本来改善すべき課題の解決策とは異なる施策が行われてしまい、非効率的な施策が増えます。売上の拡大のために必要な施策を適切に実施できるよう、課題と目的、KPIはあらかじめ明確にしておきましょう。
目的にマッチするペルソナを設定する
CRM戦略の目的やKPIが定まったら、その目的にマッチするペルソナを設定します。ペルソナとは、自社の商品やサービスの理想的な見込み顧客のイメージです。
一般的なターゲット像とは異なり、より具体的な属性や行動パターン、心理面についてもペルソナ設定を行います。ペルソナを設定することで、見込み顧客がどのような目的で自社サービスの利用を検討しているか、なぜ利用をためらっているかなどを想定しやすくなります。
ペルソナを設定したうえでペルソナが自社サービスを利用するための障壁を取り除き、実際のユーザーの障壁を取り除くことが目的です。
カスタマージャーニーを想定する
ペルソナの次はカスタマージャーニーを想定します。
カスタマージャーニーとは、顧客のサービス認知・検討・購入・継続・再購入に至るまでの過程のことです。カスタマージャーニーを想定することで、顧客の検討ステップごとにどのような課題があり購入を検討しているのか、また実際に購入に至らないのかを分析できます。
分析の結果から顧客のニーズに合わせた訴求ができるようになったり、購入までの障壁を取り除いたりすることで、顧客の購買行動を促進できます。
顧客ニーズを把握して企画を立てる
ペルソナやカスタマージャーニーを設定し分析することで、顧客ニーズを把握した施策の企画立案ができるようになります。
たとえば、製品の認知が広がっていないことが課題だと仮定できれば、まず認知を広げるための施策が有効だと考えられます。認知は十分とれているはずなのにもかかわらず、なかなか市場に商品が広がらないときには、認知を広げる施策ではなく別の施策が必要になるとわかるでしょう。
このように、顧客の行動から購入にいたらない理由を分析することで、どのような施策によって顧客の消費行動を促進できるかを検討します。
部署ごとに連携しながらCRMを実行する
多くの仮定から施策を立案できたら、その施策を優先度の高いものから実施します。CRM施策の実施は全社的な取り組みとして、マーケティング・営業・カスタマー対応・商品開発など、すべての部門が協力して行わなければなりません。
CRMを仕組みとして構築し、顧客データを蓄積・分析・活用することでCRMは戦略的に実施できます。営業やカスタマー対応の部門が収集したデータをマーケティングが分析し、分析結果を顧客対応や商品開発にフィードバックすることでCRMはより制度の高い施策になるでしょう。
PDCAを回してよりよいCRMに改善する
CRM戦略を実施する仕組みが構築できたら、あとはPDCAサイクルを回しながらよりよいCRM施策を繰り返すのみです。
CRM戦略は最初からうまくいくことは少ないでしょう。仮定が誤っていることで、施策が的はずれだったり、想定していたような結果が出なかったりすることも多いはずです。
しかし、実施した施策の改善点をまた分析し、その改善点を踏まえたうえで次の施策を実施することで、成功する確率のより高い施策が実施できるようになります。このサイクルを繰り返すことでより洗練されたCRM戦略となり、施策の成功率も高まっていくでしょう。
CRM戦略を立案するときのポイント
CRM戦略の立案には、次のようなポイントがあります。
- 事前に潤沢な顧客データを用意する
- 部署を横断してCRMを実行する
- 成長見込みのある顧客から始める
- 長期的な視点でCRMに取り組む
- 必要ならCRMツールを導入する
事前に潤沢な顧客データを用意する
CRM戦略の基盤となるものは、顧客データです。顧客データがなければデータをもとにしたCRMは行えないため、顧客データは何よりも重要な情報であることを認識しましょう。
さらに、顧客データは潤沢に用意しなければなりません。潤沢な顧客データがあるからこそ、顧客の傾向が分析できます。もしも少ない顧客データしかない状態でCRM戦略を実施しようとした場合には、その顧客データの結果が少数の顧客に特有のもので偶発的に起きたものなのか、一般的な顧客全体にいえるものなのか判断ができません。
正しくCRM戦略を実施するためにも、事前に潤沢な顧客データを用意することは重要であると認識しましょう。
部署を横断してCRMを実行する
CRMは部署を横断して実施することも重要です。なぜなら、顧客の課題は1つの部署だけでは理解できないことも多いものだからです。
たとえば、サービス開発を行っている部署が営業やカスタマー対応の部門と協力しなければ、的はずれなサービス改善をしてしまう場合があるでしょう。営業やカスタマー対応の部門は日々顧客と直接やり取りをしているため、顧客の要望を汲み取りやすいです。顧客から集めた要望をサービス開発に連携することで、開発部門は顧客が本当に望んだサービスに近づけられます。
このように部署や部門を横断してCRMを実施することで、顧客満足度を向上させられると考えましょう。
成長見込みのある顧客から始める
CRMでなるべく早く成果を出したいなら、成長見込みのある顧客から施策を実施することが望ましいです。
たとえば、新規顧客開拓を行うよりも既存顧客に対して施策を実施するほうが比較的成功しやすいことは、1:5の法則からもわかります。また、過去に購買経験のある顧客、問い合わせを受けたが購入に至らなかった顧客へのコンタクトも、完全新規顧客を獲得するよりは施策成功確率が高いでしょう。
このように成長見込みのある顧客を対象とした施策を優先的に実施することで、CRMの効果を比較的早く感じやすいため、成長見込みがあるグループをあらかじめ分析して、優先度をつけて施策を実施しましょう。
長期的な視点でCRMに取り組む
CRMに取り組むときには長期的な視点で施策を分析することが必要です。なぜなら、顧客との関係値は一朝一夕に改善するものではないためです。
繰り返しになりますが、CRM戦略とは顧客との関係を良好にして満足度向上やLTVの最大化を目指す施策です。顧客との良好な関係の構築は本来時間がかかります。また、CRMを始めることを決めたときから顧客データの収集を始めた場合、データの蓄積にも時間がかかります。
これらのことからCRMは成功させるまでに時間がかかる施策であることを念頭に置いたうえで、成果を急ぎすぎないことがポイントといえます。
必要ならCRMツールを導入する
CRMを実施するときには、CRMツールを使うと便利です。CRMでは多くの顧客データを正しく管理し分析する必要がありますが、表計算ソフトや自社での独自管理では管理や分析が正しく行えないケースも出てくるでしょう。
そこで顧客データの管理や分析をサポートしてくれるCRMツールがあれば、より効率的にCRMを実施できます。CRMツールには次のような機能があります。
- 顧客データを詳細に管理する
- 問い合わせから顧客データ登録までを自動で行う
- CRMツールからの属性に合わせてメール配信を行う
- 営業進捗を管理する 分析を行いレポートにする
これらはCRMツールの機能の一例で、ほかにも多くの機能がありツールを導入することでCRMはより効率的に行えます。なかなか効率的なCRM戦略を実施できない場合、ツールの導入も検討しましょう。
CRMツールについてより詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
CRMは戦略を立てて行おう
顧客行動やニーズの変化に対応するため、CRM戦略は大きな注目を集めています。顧客満足度向上やLTVの最大化にも貢献するCRMは、多くの企業で採用したい施策の1つでしょう。
しかし、事前に潤沢な顧客データが必要であることや、データ収集・顧客との関係値改善に時間がかかることなど、CRM施策ならではの難しさもあります。自社だけでCRMを行うことが難しい場合にはCRMツールも活用し、効率的なCRM戦略の立案・実施を行うことでCRM戦略のデメリットを最小限にできます。
厳しい市場環境で生き残るためにも、ぜひCRM戦略を経営やマーケティングに積極的に取り入れ、売上の拡大や安定した事業運営を目指しましょう。