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ビッグデータとは?種類や用途 - 初心者へわかりやすく解説

最終更新日:(記事の情報は現在から317日前のものです)
ビッグデータとは、人間の能力で全体を把握することが難しい巨大なデータ群のことです。企業は、ビッグデータを分析・活用することで、意思決定のサポート、市場トレンドの理解、顧客行動の洞察が可能です。ビッグデータの定義と種類、メリット、活用事例を、初心者でも理解できるようわかりやすく基礎を解説します。

ビッグデータとは

ビッグデータとは、人間の能力で全体を把握することが難しい巨大なデータ群のことです。総務省が公開している平成24年版情報通信白書では、ビッグデータについて「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」と定義しています。また、ビッグデータ(Big Data)と呼べるデータ量には、明確な基準がない点に注意しましょう。

企業は、ビッグデータを分析・活用することで、意思決定のサポート、市場トレンドの理解、顧客行動の洞察などが可能になります。さらに、ビッグデータの活用は、企業の競争力強化や社会の課題解決にもつながるでしょう。

ビッグデータの3つのV

ビッグデータは、次の「3つのV」の特徴があるデータを意味するとされています。

  • 量(Volume):データの量が非常に大きい
  • 多様性(Variety):さまざまな種類・形式のデータが存在する
  • 速度(Velocity):高速でデータが生成・蓄積される

また、近年では、これに真正性(Veracity)と価値(Value)を加えた、「5つのV」をビッグデータの特徴とすることもあります。

  • 真正性(Veracity):データの信頼性や品質に関する側面。信頼性が低いデータや誤ったデータが含まれる場合、正しい分析ができないため、真正性が重要となります。
  • 価値(Value):ビッグデータから得られる情報や洞察が付加価値を持ち、意思決定やビジネス上の価値をもたらすこと。

ビッグデータは、これらの特徴があるデータを効果的に処理、分析、利用するための新しい技術と手法の開発を促しました。これには、AI(人工知能)・機械学習、データマイニング、分散処理、データマイニングなどが含まれます。

ビッグデータの種類

ICT(情報通信技術)により、データの使い道が多様化しています。ビッグデータを構成するデータは多岐にわたりますが、わかりやすい例を一部紹介します。

種類 特徴
マルチメディアデータ Web上の配信サイトにある音声、動画
ソーシャルメディアデータ ソーシャルメディアで書き込まれるプロフィール、コメント
ECサイトのデータ オンラインショッピングの履歴データや行動データ
オフィスデータ オフィスのパソコンにある文書、メール文書
ログデータ サーバー上で自動生成されるアクセスログ
センサーデータ GPSやICカードにより検知される位置情報、乗車履歴
オペレーションデータ 販売管理システムで生成されるPOS、取引明細情報

ビッグデータには、上記のように、数値や文字列といった一般的なデータのほか、音声、動画のような非構造化データも含まれます。データの特徴や特性に応じて分析の手法を使い分ける必要があるでしょう。

また、ビッグデータには、アクセスログのような更新頻度の高いデータも含まれます。従来活用されていたデータと異なるビッグデータの特徴としては、量が膨大、構造化できないデータを含む、高速に生成されるといったことが挙げられます。

ビッグデータを活用するメリット

ビッグデータを活用するメリットについて解説します。

予測分析の精度の向上

ビッグデータは、膨大な量のデータを収集できます。そのため、従来では困難だった精度の高い予測分析が可能になります。

たとえば、顧客の購買履歴や行動履歴を分析することで、顧客のニーズや将来の需要を予測可能です。これにより、マーケティングや商品開発の効率化が図れます。

リアルタイムでのデータ分析

ビッグデータはリアルタイムでの分析も可能です。急速なデータ処理技術の発展により、最新の状況を把握して、迅速な対応が可能になります。

IoTによるビッグデータの収集も進化し、たとえば、工場の生産ラインのデータをリアルタイムで分析することで、故障やトラブルを早期に発見して、被害を最小限に抑えられます。

ユーザー体験の質の向上

ビッグデータをユーザー体験の向上に利用する試みも多く行われています。収集したさまざまな分野のデータを組み合わせて分析することで、ユーザーの好みやニーズに合わせて、パーソナライズされたサービスを提供可能です。

たとえば、Webサイトの閲覧履歴や購入履歴を分析することで、ユーザーの興味や関心に合わせた商品や情報をレコメンドできます。これにより、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。

意思決定のサポート

ビッグデータの分析により、市場のトレンドや競合の動向を把握して、より適切な意思決定が可能になります。これにより、データにもとづいた迅速で的確な経営戦略の実現につながります。

効率化・コスト削減

ビッグデータを活用することで、業務の効率化やコスト削減も実現可能です。たとえば、生産プロセスや在庫管理の最適化により生産性を向上させ、効率的な経営が可能となります。

リスク管理

ビッグデータは、異常検知やパターンの分析を通じて、ビジネスや組織が直面するさまざまなリスクを把握しやすくします。これにより、リスク管理が改善し、潜在的な問題に対する施策が可能になります。

イノベーションの推進

ビッグデータの活用は、新しいアイデアやイノベーションを促進します。データ駆動のアプローチにより、新しいビジネスモデルの発見や製品の改良が可能となり、企業の競争力の向上が期待できます。

ビッグデータの分析手法

ビッグデータ分析の手法のクロス集計」「ロジスティック回帰分析」「決定木分析」「アソシエーション分析」「クラスター分析」を紹介します。これらは2014年データサイエンティストオブザイヤーを獲得した渋谷直正氏が提唱している、5つのビッグデータ分析手法です。

クロス集計

クロス集計とは、特定の2つもしくは3つの情報に限定し、データの集計・分析を行う手法であり、アンケート調査によく用いられる手法です。

たとえば、アンケートの質問項目で得たデータを縦軸に、そして年齢や性別や職業などのデータを横軸に置くことで、属性ごとのデータ集計・分析が行えます。

クロス集計の参考画像

クロス集計で毎食の摂取状況を分析

ECサイトではクロス集計を用いて属性別の顧客満足度や人気商品を把握することで、販売予測を行い、運営に役立てられます。

Excelに標準搭載されているデータ分析の一つであり、非常にポピュラーな分析手法といえます。

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析とは、物事の発生確率を予測する手法の一つであり、医療業界においても良く使用される分析手法です。

たとえば、喫煙者・非喫煙者の肺がん発生率のように「0か1か(発生するかしないか)」をもとに分析され、分析結果が0から1の範囲で表現されるのが特徴です。

ロジスティック回帰分析の参考画像

ロジスティク回帰分析で肺がん発生率を分析

ロジスティック回帰分析で発生確率を分析することにより、より正確なターゲティングが可能となります。

決定木分析

決定木分析(けっていぎぶんせき)とは、樹木上のモデルを活用して要因を分析し、その結果から予測を行うものです。顧客の分類を分析する場合にとくに有効で、「原因」から「結果」を枝分かれ式に分析することにより仮説を立てやすくなります。「原因」→「結果」と上から下へ枝分かれしていく図が樹木のように見えることから、決定木分析と呼ばれています。

決定木分析の参考画像

決定木分析で性別と購入回数を分析

決定木分析は、マーケティングにおいて商品の購買パターンや特定のサービスの利用者を分析し、ターゲットを絞るのに役立ちます。

アソシエーション分析

スーパーやコンビニなどの買い物で何と何が一緒に買われているかを分析する手法です。ビッグデータで有名な「おむつとビールの法則」も、このアソシエーション分析によるものです。一見関連性がないように思えるが、共起性のある事柄の間に埋まる原因を分析することでマーケティングに役立てる手法となります。

アソシエーション分析の参考画像

アソシエーション分析は、関係のある事柄同士で分析をすることも多いです。たとえばビールとバーベキューには相関が見られるでしょう。

アソシエーション分析でスーパーの買い物を分析

スーパーでの買い物を想定した画像を作ってみました。この画像から、トマトとにんじんの相関が見て取れ、一緒に買われるのが多いと予想できます。

しかし、一緒に買われるからといって直接因果関係があるとは限りません。たとえばおむつとビールは一緒に買われることがあるものの、どちらかを買ったからもう片方を買うのは論理としてつながりません。

クラスター分析

クラスター分析とは、異なる性質が混ざり合う集団の中から、似たもの同士を集めクラスター(集団)を作り、対象を分類する手法となります。

クラスター分析は、客観的に分類できる手法なため、マーケティングリサーチにおいてはポジション確認のためのブランド分類や、生活者のセグメンテーションなどが可能です。

単に対象のデータをクラスターに分類するだけでなく、クラスターごとがどのように結合しているのかがわかるためマーケティングに有効な分析手法です。

ビッグデータの身近な活用事例

ビッグデータの活用方法は多岐にわたります。実際にビッグデータの身近な活用事例をいくつか紹介していきましょう。

防犯カメラ

映像の記録用として利用されてきた防犯カメラですが、現在はビッグデータを収集する手段としても利用されています。防犯カメラの映像から、顧客の性別や年齢、来店時間帯、購買品目などを分析することで、顧客のニーズを把握可能です。この情報をマーケティングに活用することで、より効果的な商品やサービスの開発・提供が可能になります。

また、防犯カメラの映像から、店舗の混雑状況を把握することで、店舗のレイアウトや人員配置の最適化もできます。また、犯罪の予兆をいち早く察知することで、犯罪の未然防止や被害の拡大防止も実現可能です。

選挙速報

選挙の出口調査は、投票した人に誰に投票したのかを口頭で聞き、当落を予想するものです。選挙結果の予測にもビッグデータは活用されています。過去の選挙結果のデータと世論調査のデータ、SNSの投稿データなどを組み合わせて分析することで、より精度の高い選挙予測が可能になります。

交通系ICカード

SuicaやPASMOなど、駅の改札でタッチすれば通れる交通系ICカードのデータもビッグデータとして収集され、さまざまな場面に利用されています。駅の改札を通った情報だけでなく、ICカードを使った購買情報も収集可能なため、より効果的な商品やサービスの開発・提供が期待できます。

また、交通系ICカードのデータを分析することで、交通の混雑状況を把握可能です。この情報を活用することで、交通機関の運行計画や、駅の混雑緩和策の検討、災害時の避難誘導のスムーズ化が実現できます。

ソーシャルメディア分析

ソーシャルメディア上でのユーザーの投稿や行動データを収集し、分析することで、商品やサービスに対する顧客の意見や感情を把握できます。企業はこれを利用して製品やサービスの改善やマーケティング戦略に活かしています。

物流の効率化

配送状況や在庫状況のビッグデータをリアルタイムで分析することで、効率的な物流を実現できます。物流業界の「2024年問題」解決のためにも期待される技術です。

医療データ解析

病院や医療機関では、患者の診療記録や検査結果などのデータをビッグデータとして集積し、解析しています。これにより、疾患の予測や治療法の最適化、医療リソースの効率的な利用などが可能になり、より良い治療結果に貢献しています。

スマートホーム技術

スマートホームデバイスやセンサーは、住宅内外のさまざまなデータを収集し、ビッグデータとして活用されています。たとえば、家庭内の電力使用状況やセンサーによる動きの検知データは、省エネルギーやセキュリティの最適化に役立っています。

農業データ分析

農業ではIoTセンサーやドローンといった技術を活用して、土壌状態、作物の生育状況、気象データなどを集めています。これらのビッグデータを分析して、適切な農業施策や作物の管理を行い、生産効率を向上させています。

ビッグデータとテクノロジー

ビッグデータと、クラウドやAI(人工知能)といったテクノロジーの関係を解説します。

ビッグデータとクラウド

ビッグデータとクラウドは密接な関係にあり、クラウドコンピューティングはビッグデータの処理・保存・分析において重要な役割を果たしています。

  • データの収集・蓄積:クラウドストレージサービスを利用して、異なるデータソースからのビッグデータを効率的に収集・蓄積。
  • データの処理:クラウドコンピューティングの大規模な計算能力を利用して、ビッグデータを高速に処理。
  • データの分析:クラウド上の分散処理フレームワークやビッグデータ分析ツールを利用して、大量のデータを分析。
  • 費用対効果の向上:クラウドサービスは従量課金制で提供されることが一般的であり、必要なときに必要なだけのリソースを利用することで、コストを最適化可能です。これにより、ビッグデータの処理においても費用対効果が向上します。

クラウドコンピューティングは、ビッグデータの取り扱いにおいて柔軟性と効率性を提供し、企業にとって非常に重要なツールとなっています。

ビッグデータとAI(人工知能)

ビッグデータと人工知能(AI)は密接に結びついており、互いに相乗効果を生み出しています。ビッグデータとAIの関係について解説しましょう。

  • AIの学習データの供給源:機械学習アルゴリズムは、ビッグデータの大規模なデータセットを利用して自己学習を行います。
  • リアルタイムデータ処理:ビッグデータとAIの組み合わせにより、リアルタイムでのデータ処理が可能。ビッグデータプラットフォームが提供するリアルタイムデータ処理は、AIモデルが迅速な意思決定を行うための基盤となります。
  • 予測分析と意思決定の向上:ビッグデータとAIを組み合わせることで、過去のデータから未来の傾向やパターンを予測可能です。これにより、顧客行動の予測、需要予測、在庫最適化など、ビジネス戦略や意思決定がより効果的に行えます。

ビッグデータとAIの統合は、ビジネスや科学、医療、エンターテインメントなどのさまざまな領域で大きな変革をもたらしています。


そのほかのビッグデータの活用方法や活用事例は、次の記事でチェックできます。

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ビッグデータの活用で新たな価値を創造

ビッグデータは、ただ存在するだけでは何の価値も生み出しません。データ分析によるインサイトをビジネスに結びつけ、必要な形で連携させることにより新たなビジネスチャンスを生む試みがなされています。たとえば下記のものがあります。

  • 業務内容の最適化によるコスト削減
  • 将来的な売上傾向の予測
  • 業務の問題や課題を特定
  • 新たな可能性や仮説の発見

今後、ビッグデータを分析・活用するためのサービスは、ICTの進展とともにリアルタイム性や多様性が増していくでしょう。ニーズの予測、業務効率の促進、ビジネスモデルの創出など多様な用途で役立っていくと考えられます。そのようなビッグデータの活用事例とメリット、問題点を確認し、自社のビジネスに活かしましょう。

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ビッグデータの活用は、企業の競争力強化に貢献する可能性を秘めています。また、ビッグデータの活用はビジネス分野だけに留まらず、社会全体の課題解決にも役立つと考えられており、IoT(Internet of Things)の活用とともにさらに広がっていくことでしょう。

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