電子契約法とは?適用対象範囲や対策
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電子契約法とは
電子契約法とは、主に電子商取引において消費者の救済や事業者の損失回避の目的で制定された法律です。「電子消費者契約法」とも呼ばれています。
電子商取引とは、ネットショッピングやサブスクリプションサービスをはじめとする、通信ネットワークを介して行われる取引形態のことです。インターネットの普及やデジタル技術の進化により、電子商取引の市場が拡大するなか、利用者や事業者が安心して取引できる環境を整えようと2001年から同法が施行されました。
法改正で契約成立時期が到達主義に
2020年4月1日の法改正によって、契約の成立時期は到達主義になりました。到達主義とは、承諾の通知が発信されたときではなく、承諾の通知が申込者に到達したときに成立したとすることです。
これにより、BtoC取引で消費者側がリスクを負っていた契約が、一転して事業者が負うことになりました。
電子契約法の対象範囲
電子契約法の対象となるのはあくまでBtoC取引のみであり、BtoB取引やCtoC取引は対象に含まれません。さらにBtoC取引でも、消費者の意思確認が行われなかった場合のみに限られます。
電子商取引におけるBtoC(事業者対消費者)取引とは、たとえば、ネットショップで特定の事業者から商品を購入するケースがあてはまります。一方、オークションサイトやフリマアプリなどで行われる取引はCtoC(消費者対消費者)にあたるため、電子契約法の対象外です。
電子契約法が適用される具体例
電子契約法が適用されるのは、主に次のような場面です。
- 錯誤によって注文内容を間違えたケース
- ワンクリックで決済されてしまったケース
錯誤によって注文内容を間違えたケース
電子商取引における消費者の錯誤は、電子契約法が適用される代表的なケースです。
錯誤には「誤り」や「間違い」といった意味があります。そのため、電子商取引では入力ミスや確認漏れによる注文個数の間違いなどが錯誤にあたります。
本来、民法では上記のような重大な過失があれば契約を取り消せません。一方、電子契約法では消費者の過失も錯誤に含まれるとして注文の取り消しが認められています。
ただし、電子契約でもすべての注文を取り消せるわけでなく、注文内容の確認画面が用意されていないといった、事業者の措置が不十分な場合に限られるので注意が必要です。
ワンクリックで決済されてしまったケース
ワンクリックで注文が処理された場合も電子契約法が適用されます。この場合、取引を無効にできます。
このような措置が認められているのは、近年とくに、ワンクリック詐欺のような不正行為が横行しているためです。そのため、事業者からすると、消費者が決済を行う前に注文内容や契約内容を確認できるページを用意しなければなりません。
電子契約法によって企業が損害を被らないための対策
電子契約法は消費者を救済するための法律ですが、同時に事業者が損害を被らないようにする目的もあわせ持ちます。そのため、電子契約法の理解を深めて対策をとることで、事業者にも損失回避のメリットが生まれます。
企業が具体的にできる方法を解説します。
申込内容を確認できるページを設置する
電子商取引を行う際は、決済の前に申込内容を確認できるページを設けることが大切です。仮に確認ページがなければ、電子契約法によって注文がキャンセルとなり、機会ロスに陥る可能性があります。
確認ページには、注文した商品の概要や個数、金額、発送時期などを明記しましょう。また、消費者の確認意思を明確にするためにも、購入時に必ず経由するページに設置する、表示画面を大きくするといった工夫が必要です。
ボタンをクリックすると注文が成立する旨を明記する
ワンクリックで注文が処理されると電子契約法が適用されることから、それを避けるための取り組みが欠かせません。
たとえば、ボタンをクリックすると注文が成立する旨を、ページ内に表示するといった方法があげられます。結果、ボタンをクリックすることで消費者の意思表示を確認する形になるため、契約を無効化する主張は通用しません。
先ほど紹介した対策とあわせて、ボタンを押すと同時に申込内容の確認画面を表示するのも方法の一つです。
電子契約システムの導入を検討する
電子商取引の方法によっては、電子契約システムを導入したほうが効果的なケースもあります。
たとえば、消費者のもとに書面を発送し、押印を求める契約が該当します。このような契約を電子商取引で行う場合、押印の代わりに電子署名を利用するのが一般的です。
電子契約システムには、電子署名はもちろん、電子証明書やタイムスタンプといった電子契約に必要な幅広い機能が搭載されています。そのため、電子契約システムを導入することで、契約の一連の流れがスムーズになったりペーパーレス化を図れたりと、さまざまな恩恵が得られます。
電子商取引時に押さえておきたい法律
電子商取引や電子契約では、電子契約法のほかにも、関連するさまざまな種類の法律が存在します。代表的な法律は次のとおりです。
- 民法
- 民事訴訟法
- 電子署名法
- 電子帳簿保存法
- IT書面一括法
そのため、電子商取引や電子契約を行う際は、多角的な観点から法的リスクを検討することが大切です。それぞれの法律の概要や押さえるべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
電子契約法のポイントを理解して契約トラブルを防ごう
消費者と電子商取引を行う際は、注文の一方的なキャンセルや責任の所在を巡る係争など、さまざまな契約トラブルに巻き込まれる可能性があります。そのため、トラブルが起こっても冷静に対処できるよう、電子契約法をはじめとする法律への理解が必要です。
電子契約法の目的の一つである、事業者の損失回避という恩恵を得るには、申込内容を確認できるページを設置する、ボタンをクリックすると注文が成立する旨を明記するといった対策が欠かせません。電子商取引を行う際は、契約トラブルのリスクを念頭に、早いタイミングで対策を講じておきましょう。