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電子契約に印鑑(押印)は不要!必要がないと判断できる法的根拠

最終更新日:(記事の情報は現在から31日前のものです)
電子契約に印鑑の押印は不要です。電子契約に押印が不要な理由や、そもそも書面契約に押印が必要な理由などを解説しています。電子契約の押印について疑問がある人は、ぜひご覧ください。

電子契約に押印は不要

結論からいえば、電子契約に押印や印影は不要です。

そもそも契約は、法令で定められた場合を除いて、契約書やその他の書類を作成しなくても成立することが法律で定められています。一方が契約の内容を提示し締結を申し込み、相手方が条件に納得して提示された契約に承諾するだけで契約は成立するため、契約締結時に書面は不要です。つまり、口約束・書面・電子契約などの方法を問わず契約は締結できます

よって、必ずしも書面や電子契約システムなどで契約書を用意する必要はなく、契約書が不要であるため電子契約においても印鑑の押印も求められないことが一般的といえます。

そもそも書面契約に押印をする理由

民法では契約締結に際して書面や電子契約が不要です。しかし、一般的な日本の商習慣では、書面契約において押印が必要とされている場合が多いです。

契約書に押印が必要な理由として、次のような理由が挙げられます。

  • 契約書の偽造を防ぐため
  • 文書の真正性を成立させるため
  • 二段の推定を適用するため

契約書の偽造を防ぐため

契約書の偽造や改ざんが行われることを防ぐために押印を利用するケースは多いでしょう。

法的には契約書や押印がなくとも契約を成立させられます。しかし、契約内容を記載した書面がなければ、契約成立後に契約者同士の意見が食い違った場合、どちらの意見が正しいかわからなくなる可能性が高いです。

また、書面があったとしても押印が行われていなければ、契約者双方が契約締結後に自身の有利な内容に契約書を書きかえられます。

双方が押印をすることで、契約者それぞれが単独で契約書の偽造や改ざんができないため、契約書に契約者それぞれが押印を行うことが一般的です。

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文書の真正性を成立させるため

文書の真正性が成立していることは企業間の契約にとっては重要であり、真正性を成立させるために押印を行うこともあります。

文書の真正性が成立している契約書で契約を行えば、契約書が正当な権利をもって作成され、複製や改ざんなどが行われておらず本人が押印をしたと証明可能です。つまり、押印があることで適切な権限をもった契約者本人が、間違いなくその契約書に押印したものであると法的に推定されます。

民事訴訟法第二百二十八条第四項においても、私文書に本人や代理人の署名や押印がある場合は、私文書は真正に成立したものと推定すると定められています。よって、契約書に押印があることで、法的にも真正性が成立していると考えることが一般的です。

二段の推定を適用するため

押印があることで「二段の推定」といわれる仕組みにより、本人が契約内容を確認して同意したと認められる可能性が高くなります。

押印や署名があることで、契約者本人が押印したものであると推定されることが一段目の推定です。さらに、過去の判例では押印があれば押印は契約者本人が行ったものであると推定し、そのうえでその契約書の内容に契約者本人が同意していると二段目の推定をしてもよいとされています。

つまり、押印や署名があるだけで、契約は間違いなく契約者本人が行ったものであると主張できるため、契約書に押印や署名を求めることが一般的な契約方法として運用されています。

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電子署名を用いた電子契約で押印が不要な法的根拠

電子署名を用いた電子契約では、押印が不要とされる法的根拠は次のとおりです。

  • 電子署名が押印の代わりになるため
  • 政府見解でも不要と示されているため

電子署名が押印の代わりになるため

電子契約では、電子署名が押印や直筆の署名の代わりになるため真正性を確保できます。

電子契約は電子データによって契約を行うことから、従来の書面での契約の際に利用していた印鑑による押印は不可能です。そこで、電子署名を契約に付与することで押印の代わりのように利用できます。

いわゆる電子署名法第三条には、本人による電子署名が行われているときは真正に成立したものと推定すると定められています。よって、書面による契約や契約書同様に、電子署名があることで真正性を認められるケースが多いでしょう。

政府見解でも不要と示されているため

令和2年(2020年)に内閣府・法務省・経済産業省が行った 「押印についてのQ&A」でも、「契約書に押印をしなくても法律違反にならないか?」との質問に対し、次のように回答しています。

  • 契約は当事者の意思の合致により成立するものである
  • 書面の作成や押印は、特別な定めがある場合を除き必要な要件ではない
  • 特段の定めがある場合を除き、契約の際に押印がなくても契約の効力に影響はない

政府の見解に従えばそもそも契約の際に書面による同意は不要で、同様に印鑑による印影も不要です。よって、政府見解も電子署名がある電子契約であれば、押印が不要であるとの考えを支持すると考えられるでしょう。

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電子契約に印影を利用するリスク

たんに実際の印鑑をデータとして取り込み、電子データに埋め込んだだけの状態で電子契約が成立したとすると、印影や契約データを偽造されるリスクがあります。

また、最近は3Dスキャナや3Dプリンタの技術発展も目覚ましく、印影から印鑑本体を偽造することも容易になっています。画像データとしてだけではなく、実際の書面についても偽造した印鑑で押印されてしまう可能性があるため、実際に利用している印鑑の印影をデータとして利用することは避けましょう。契約書には印影がなければならないと誤った認識をもっていると大変危険です。

電子契約システムに搭載されている印影画像登録機能は、あくまで商習慣的にないと困る企業向けに登録できるもので、電子契約の真正性の担保には関係がありません。

電子契約の印鑑についてよくある質問

電子契約の印鑑についてよくある疑問をまとめました。電子契約で印鑑についての知識がない方は確認しておきましょう

電子印鑑と押印の違いは?

電子印鑑と押印の違いは、形式とその行為です。電子印鑑とは電子データ化された印鑑のことを指し、単に印鑑の印影を画像データ化したものと、画像に電子署名が付与されたものがあります。

印影を単純に画像データ化しただけのものは、デザインの都合で使われることが多く、複製も容易なため法的な効力は弱いとされます。一方、電子署名が付与された電子印鑑であれば、電子署名としての役割も果たすため法的な証拠能力が高いです。

押印とは書面に対して物理的に存在する印鑑で印影を残す行為を指します。民法や民事訴訟法によれば、押印が行われている書面については契約者本人が押印し同意したものであると推定されるため、押印が行われた書面については法的効力が高いとされています。

電子印鑑は電子化された印鑑データのことで、押印は書面に対して実際の印鑑で印影を残すことだと考えましょう。

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電子署名と押印の違いは?

電子署名と押印は付与する対象に違いがあります。電子データに付与されるものが電子署名で、物理的に存在する紙での書面に付与されるものが押印です。法的な効力としてはどちらも相違なく、電子署名であろうと押印であろうと契約書に付与されていれば、本人が同意した証拠として付与されていると考えられます。

電子署名のほうはタイムスタンプとともに付与されることが一般的で、タイムスタンプ付与時点で書類が存在したこと、タイムスタンプ付与時点から書類の内容が変更されていないことなどが証明されます。

電子署名と電子印鑑の違いは?

電子署名と電子印鑑の大きな違いは法的能力の高さです。電子署名が付与された電子契約は法的能力が高く、万が一契約者同士でトラブルに発展した際に、電子契約が双方の主張の根拠として使用されます。電子署名にタイムスタンプが付与されていることでさらに法的能力は高くなり、より強い証拠として取り扱われる場合が多いです。

一方で電子印鑑は法的能力が高くありません。電子印鑑は単純に印鑑の印影をデータ化して契約データに付与しているだけのこともあり、複製や改ざんが容易に行えるため法的な証拠能力は高くないとされています。ただし、電子印鑑に電子署名が付帯しているシステムもあり、この場合は電子印鑑が電子印鑑としての役割を果たすため法的な証拠能力に差はありません。

「電子署名のほうが電子印鑑より法的能力が高いが、電子印鑑に電子署名がセットされている場合はどちらも同様の証拠能力を有する」と覚えておきましょう。

電子署名のメリットやデメリットについては次の記事で詳細に説明をしているため、ぜひ参考にしてください。

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印鑑不要の電子契約で契約は便利に

電子契約において、印鑑による押印は不要とされるケースが多いです。民法や民事訴訟法、いわゆる電子署名法や政府見解でも押印は契約に必須ではないとの見解が優勢で、契約において必ずしも物理的な印鑑による押印は必要ではありません。

しかし、押印があることで契約に同意した人が契約者本人であることや、契約者本人がないように同意したと推定されるため、法的証拠能力をもつ契約書を作りたい場合に押印は便利です。

電子契約では押印ができないため、電子署名で代用できます。電子署名は電子契約における押印の役割を果たすため、今後電子契約を利用するなら電子署名を活用して便利に契約業務を行いましょう。

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