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電子契約の当事者型と立会人型の違いとは?各方式のメリット・デメリット

最終更新日:(記事の情報は現在から29日前のものです)
電子契約システムには当事者型と立会人型があります。当事者型と立会人型の契約締結方法の違いや本人確認の能力の違い、メリット・デメリットについて解説し、どういった場合にどちらの方式がおすすめかを解説します。

電子契約における当事者型と立会人型の特徴

電子契約システムには当事者型立会人型といわれる2つのシステムがあります。

それぞれの電子契約システムの特徴や違い、立会人型の電子契約システムがいわゆる電子署名法上で「電子署名」として認められる理由などを解説します。

当事者型の電子契約とは?

当事者型の電子契約とは、契約者の当事者自身が用意した電子署名によって行う電子契約のことです。A社とB社が契約を行う場合、A社・B社のそれぞれが電子証明書を用意し、その証明書を利用して電子契約を行います。

電子証明書を発行できる認証局とよばれる企業や機関に、必要な書類やデータをもって申請することで電子証明書を発行してもらえます。発行の形式はICカードや電子ファイルなどで、発行された電子証明書のデータを利用して電子契約を行うことで契約締結をする仕組みです。

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立会人型の電子契約とは?

立会人型の電子契約とは、電子契約サービスの提供事業者が実際の契約締結企業の契約に電子署名を付与する電子契約のことです。当事者型が契約を行う本人たちが電子証明書を用意しなければならなかったことに対して、立会人型は契約者が電子証明書を用意する必要がないことが特徴です。A社とB社が電子契約を行うときにC社のサービスを利用し、C社が電子署名を契約データに付与します。

実際に契約を行っているA社とB社が当事者であることは、サービスへのログインやメール認証の組み合わせで確認可能です。メールアドレスは本人だけがアクセス権をもっていることが一般的なため、メール認証が本人確認の代用として有効とされています。

当事者型と立会人型の違いとは?

当事者型の電子契約と立会人型の電子契約は、本人性を担保する法的な証拠能力の強さと、契約までの流れに違いがあります。

本人性を担保する法的な証拠能力は当事者型のほうが強いとされています。当事者型では電子証明書の名義が契約者本人であるのに対し、立会人型は電子証明書の名義が契約者双方ではない第三者です。

契約までの流れは立会人型のほうが手間が少ないです。当事者型を利用する場合、契約者双方が認証局に申請して費用を払い電子証明書を発行してもらわなければなりません。一方で、立会人型はメールアドレスだけで電子署名付きの契約ができるため、電子契約の導入が手間なくスムーズに行えます。

当事者型は手間と費用がかかるが証拠能力が高く、立会人型は証拠能力がやや劣るものの余計な費用や手間をかけずに電子契約できると考えましょう。

立会人型署名が「電子署名」である理由

立会人型は第三者名義の電子署名を利用することから、電子署名及び認証業務に関する法律の「本人による電子署名」に当たらないのではないかと考える方もいるでしょう。

結論からいえば、立会人型の署名でも問題なく電子署名として利用できます。これは立会人型電子契約の電子署名を行っているものは、サービス利用者であるとの政府見解の存在が根拠です。

令和2年に総務省・法務省・経済産業省が連名で作成した電子署名に関する2つのQ&Aによると、立会人型電子署名については次のような見解が示されています。

  • 電子署名法第二条第一項第一号の「当該措置を行った者」に該当するためには必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことは必要にならない。
  • 物理的にA(電子契約サービス事業者)が当該措置を行ったとしても、B(サービス利用者)の意思のみに基づき、Aの意思が介在せず当該措置を行った者はBであると評価できる。

これをまとめると、電子契約システム利用者が立会人型電子契約システムで締結した電子契約は、サービス利用者の意思のみに基づいて署名を付与したものなら、署名付与は利用者によって行われたと評価されます。

よって、立会人型署名でも利用者によって電子署名を付与された契約として判断され、万が一当該契約について法的な紛争が起きた際には、契約の根拠として利用できます。

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当事者型の電子契約のメリット

当事者型の電子契約システムのメリットには次のようなものがあります。

  • なりすましのリスクが小さい
  • 法的効力が高いとされている
  • 厳格な法文書や契約にも安心して使える

なりすましのリスクが小さい

当事者型の電子契約では、なりすましのリスクが小さいことがメリットです。

当事者型の電子契約では、契約者が認証局に本人確認を通して電子証明書の発行を受け、発行された電子証明書を利用して電子署名を行います。よって、電子証明書が紙契約の印鑑にあたり、契約者の本人性や契約書の真正性を担保します。

政府が認めた認定局でしか電子証明書は発行できず、発行の際には本人確認も必要なため、本人名義の電子証明書や証明書を利用した電子署名が付与された電子契約ではなりすましが難しいといえるでしょう。

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法的効力が高いとされている

当事者型の電子契約では、法的な効力が高いと一般的にいわれています。

先に紹介したように、当事者型ではなりすましや改ざんのリスクが小さいです。そのため、法的な紛争になった際に当事者型のほうが本人性や真正性が担保されやすく、法的な効力が高いといわれています。

本人性や真正性を高い精度で確保し、万が一相手方とトラブルになったときにより強い証拠能力がある電子契約書を提示したい場合には、当事者型の電子契約が向いています。

厳格な法文書や契約にも安心して使える

当事者型電子契約なら厳格な法文書や契約にも安心して使えます。ログイン情報やメールアドレスだけで本人性を確認する立会人型の電子契約と比較して、当事者型の電子契約はより強い推定効が得られると考えられています。

そのため、当事者型の電子契約なら、その後の扱いが重要になる厳格な法文書や契約についても安心して契約締結可能です。

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当事者型のデメリット

当事者型の電子契約には次のようなデメリットがあります。

  • 時間と手間がかかる
  • 相手方も同様の形式で契約が必要
  • 定期的な電子署名の更新が必要

時間と手間がかかる

当事者型の電子契約の大きなデメリットは、証明書取得に時間と手間がかかることです。

電子証明書は政府が定めた認定局へ申請し、費用を支払うことで発行されます。申請には電子証明書取得用ソフトのダウンロードや申請に必要なファイルの作成、発行申請などが必要です。

さらに証明機関に応じた手数料の支払いも必要で、法務省によれば3か月1,300円~の費用がかかります。また、電子証明書に記録された商号や代表者資格や氏名などの内容に変更がある場合は、証明機関でも電子証明書が失効する場合があります。失効の際に証明期間が残っていても、手数料の払い戻しがないケースもあり、余計な費用がかかることが当事者型のデメリットの1つといえるでしょう。

相手方も同様の形式で契約が必要

当事者型の電子契約を行う場合、双方の契約者が電子証明書を用意しなければならないこともデメリットと考えられます。

一方が当事者型での契約を望み、相手方が立会人型での契約を望む場合、当事者型の契約を望む契約者は相手方を説得し電子証明書を取得してもらわなければなりません。申請に費用や手間がかかることから説得の難易度も相当で、契約締結までに余計な手間や時間がかかることが懸念されます。

電子契約は書面の契約に比べてスムーズに契約が進むことがメリットとされていますが、当事者型の電子契約を選ぶと契約の進行ペースがやや遅くなることがデメリットといえるでしょう。

定期的な電子署名の更新が必要

電子証明書は証明期間に有効期限があるため、期限が切れないように定期的な更新が必要です。更新のたびに費用がかかり、長期署名に対応した電子契約システムでなければ長期間の継続的な利用が難しいでしょう。

電子証明書の有効期限や、タイムスタンプの有効期限などに気をつけながら、更新作業を漏れなく行わなければならないことも当事者型電子署名のデメリットです。

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立会人型のメリット

立会人型の電子契約は次のようなメリットがあります。

  • 電子証明取得の手間とコストが削減可能
  • メールアドレスのみで契約できる
  • 取引先もメールアドレスのみで契約が可能

電子証明書取得の手間とコストが削減可能

立会人型の電子契約システムを利用すれば、電子証明書を取得する必要はないため取得にかかる手間やコストが削減できます。

当事者型の電子契約でデメリットとされていた電子証明書取得に手間やコストがかかる点を、立会人型の電子契約はカバーしています。当事者型の電子契約よりも気軽に導入しやすい点がメリットです。

メールアドレスのみで契約締結できる

立会人型の電子契約なら、メールアドレスのみで契約の締結ができることもスムーズな電子契約システム導入に役立つでしょう。

立会人型の電子契約ではシステムのログインやメール認証で本人性を担保します。メールアドレスは一般的にアドレスの持ち主しか利用できないことから、本人性が担保されるといわれています。

よって、メールアドレスがあれば電子契約ができる気軽さも立会人型の電子契約のメリットです。

取引先もメールアドレスのみで契約が可能

立会人型の電子契約でメールアドレスのみで契約ができることは、取引先も同様です。当事者型は契約者双方が電子証明書を取得している必要がありますが、立会人型はどちらもメールアドレスのみで契約できます。

取引先に手間と費用をかけさせることがないため、契約に際して余計な交渉を行う必要もありません。契約者間での電子契約に対する姿勢の違いが問題になりにくいことも、立会人型の電子契約のメリットの1つです。

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立会人型のデメリット

立会人型の電子契約には次のデメリットがあります。

  • 当事者型よりなりすましリスクが高い
  • 当事者型より法的効力が低いとされる
  • 契約内容によっては採用しにくい

当事者型よりなりすましリスクが高い

立会人型の電子契約は当事者型の電子契約よりもなりすましリスクが高いといわれます。

メールアドレスを管理するアカウントを乗っ取られたり、パソコンやスマートフォン本体を悪意ある第三者に悪用されたりすると、簡単になりすましや改ざんが可能です。

当事者型では電子証明を利用するためよりセキュアに契約を行えますが、メールアドレスのみで契約を管理する立会人型はセキュリティ面にやや弱点があるといえるでしょう。ただし、近年多く採用される二段階認証二要素認証も活用すれば、セキュリティ面でのリスク低減できます。

当事者型より法的効力が低いとされる

メールアドレスのみで契約管理ができることでセキュリティ面に弱みをもつ立会人型は、法的効力も当事者型より弱いとされています。

ただし、法的効力がないわけではありません。所管省庁でも「立会人型でもサービス利用者の意思のみに基づいて署名を付与したのであれば、署名の付与は利用者が行ったと評価する」としていることから法的な効力にも問題はないでしょう。

あくまでも当事者型と比較した場合に当事者型よりはやや証拠能力が低いだけで、法的な証拠能力には問題ありません。

契約内容によっては採用しにくい

契約内容によってはセキュリティリスクの面から考えて立会人型を採用しないほうがよい場合もあるでしょう。機密レベルが高い契約や、契約後の影響が大きな基幹システムに関する契約などは、万が一のリスクを考慮して立会人型での契約を採用しにくいです。

セキュリティリスクを低減する方法があり、証拠能力もある立会人型の電子契約ですが、契約の重要度や内容によっては採用を熟慮すべきといわざるを得ないでしょう。

当事者型と立会人型を選ぶ基準

当事者型と立会人型の電子契約システムのどちらを採用するべきか、基準を紹介します。基本的には次のような判断基準で電子契約を行いましょう。どのように判断すべきか、詳しく解説します。

  • 法的な効力が高く確実性のある当事者型
  • 手軽に締結できる立会人型

法的な効力が高く確実性のある当事者型

本人性や真正性を高い水準で確保し、法的な効力の高い電子契約を行いたいなら当事者型を選びましょう。

当事者型の電子契約であれば、認証局が発行する本人確認済みの電子証明が必要になるため、セキュリティリスクを小さくして電子契約を運用できます。セキュリティリスクに対する意識の高い官公庁や金融業界などが取引先に多い場合は、当事者型の電子契約を利用することが好まれるでしょう。

手軽に締結できる立会人型

電子契約に手軽さを求める場合は立会人型の電子契約システムが向いています。立会人型の電子契約であれば、契約者自身が認証局に申請し電子証明書の発行を受ける必要もなく、メールアドレスのみで電子契約を導入できて便利です。

立会人型の電子契約であればスピーディーに契約が締結できるため、契約のリードタイム短縮につながり売上の向上や契約業務の効率化が実現できます。

すでに何度も取引をしている信頼関係のある企業との取引や、契約による厳密な契約を求められない企業との取引には立会人型の電子契約システムが向いているでしょう。立会人型の電子契約の手軽さは大きな評価を受けており、実際に多くの企業で導入が進んでいます。

両方を選択できるハイブリッド型も存在する

当事者型と立会人型の両方を使い分けられるハイブリッド型の電子契約システムも存在します。

ハイブリッド型の電子契約システムなら、「A社は厳密な契約を重視しているため双方で契約者名義の電子署名を付与した契約を行う、B社はスピード感のある対応を求められるため立会人型の契約を行う」といった対応が可能です。

取引相手によって当事者型と立会人型のシステムを使い分けることは煩雑になるため、1つのシステムでどちらの形式にも対応できる電子契約システムがあればどの形式でも対応できます。

メリットデメリットを理解して当事者型と立会人型を選ぼう

当事者型の電子契約とは、契約者本人が電子署名を契約に付与する形式の電子契約です。セキュリティリスクが比較的小さく、セキュアな契約を重んじる企業との取引に使いやすいことがメリットです。セキュリティリスクを小さくできる一方、電子証明書の取得に手間や費用がかかることはデメリットで、相手方にも電子証明書利用の手間や費用をかけさせることで、契約締結までに時間がかかる懸念もあります。

立会人型の電子契約とは、電子契約サービスを提供する事業者が、実際の契約締結企業の代わりに電子契約に電子署名を付与する方式の電子契約です。契約者はメールアドレスだけで気軽に電子契約できるメリットがありつつも、当事者型の電子契約よりもなりすましや契約の改ざんが行われるリスクが高いことはデメリットです。

それぞれの方式をどちらも利用できるハイブリッド型のシステムも存在するため、当事者型と立会人型のどちらの方式も利用したい場合は、ハイブリッド型のシステムを採用し電子契約を便利に使いこなしましょう。

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